[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第99回】にわかに活気づく “平面駆動ヘッドホン” 注目3機種聴き比べ!
■主流ではなかったはずの平面駆動型ヘッドホンが、にわかに活気づいてきた
平面駆動型ヘッドホンは、製品としては実はかなり以前からちょくちょく存在してはいたのだが、本当に「ちょくちょく」レベルだ。主流のドーム型とあまりにも異なる方式なので、その開発や製造には独特のノウハウが必要だったりしたものと思われる。なのでそれを製品として完成させた例は少なく、また製品はおおむねハイエンドの価格帯だ。
…という感じだったのだが、価格帯はやはりハイエンド枠だがしかし、製品数においては活気づいてきた!というのがこのところなのだ。「音さえよければ金なら(出せる範囲でがんばって)出す!」というヘッドホンファンの増加によって、メーカー側の「高くなってもいいなら平面型でやってやんよ!」が成立する状況になってきたのかもしれない。
といっても実は、平面型への新規参入メーカーが一気に増えたわけではなく、これまでも地道に平面型を推進してきたメーカーが前述の状況の変化によって注目を集めたり、気合いを入れた新製品を出してきたり、そしてそこに新規参入メーカーも加わったり…といった様相だ。
…ということで今回はそんな3メーカーの新製品をチェック。まずはざっくり概要をご説明していこう。以下、並びはお値段順だ。
では以降は「現代平面型ヘッドホン」の代表たる各製品をチェックしていくが、その前に試聴再生システムについても簡単に紹介。今回はUSB-DAC兼ヘッドホンアンプとしてOPPO「HA-1」を利用させてもらった。
これは正直デスクトップに置けるか置けないかの限界サイズに近い大きさなのだが、とにかく根本的に音がよいのでハイエンドヘッドホンの試聴にも全く不足がない。同社が得意とするデジタルの部分は当然として、重厚充実なアナログ回路は、発熱は多少気になるものの、精緻さと力強さを超高度に兼ね備える。各ヘッドホンの潜在能力を存分に引き出してチェックできるアンプだ。
また今回ピックアップしたヘッドホンのうち、PM-1とLCD-XCはバランス駆動対応。HA-1もバランス駆動対応なので、その面でも両モデルの実力を引き出せる。あと個人的には、ディスプレイにスペクトラム(周波数分布)またはアナログVUメーターを表示できるビジュアル的な楽しさや、固定にも可変にも設定できてリモコンでミュートもできるライン出力(ミュートスイッチは本体側にもほしかったが)のおかげで、プリアンプとしてパワードモニタースピーカーと組み合わせても使いやすいといったところも好印象だ。
なお平面駆動型を採用しているヘッドホンとしては、他にスタックスの「イヤースピーカー」シリーズもある。しかしあちらはさらに根本的に駆動原理が異なる「静電駆動(コンデンサー)」方式を採用しており、同社が販売する専用のヘッドホンアンプでしか駆動できないので注意してほしい。
閑話休題。
では次頁より、まずはFOSTEX「TH500RP」(実売目安7万5,800円)から見ていこう。
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