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【特別企画】連続レポート第3回

藤岡誠、マークレビンソンの新インテグレーテッドアンプ「No585」をとことん語る

公開日 2014/12/29 10:26 構成:ファイル・ウェブ編集部
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一体型ながらセパレート方式のアナログアンプ技術を踏襲

藤田 No585はやはりUSB-DAC内蔵に注目が集まっていますが、アンプ部は純然たるアナログ回路として設計されています。プリアンプ部の回路は、2013年に登場したプリアンプ「No52」の開発で得たノウハウを、インテグレーテッドアンプ用に凝縮して搭載しています。

No585にはマークレビンソンのセパレートアンプの開発思想や技術が凝縮されている

藤岡 回路構成は「No52」とほとんど同じということでしょうか?

藤田 No585は一体型ですので、やはり簡素化は行っています。ただし設計思想は共通です。パワーアンプ部についても、ステレオ・パワーアンプ「No532H」のアンプモジュールをそのまま移植しています。このようにNo585のアンプ部の回路設計は、そもそもマークレビンソンが得意とするアナログアンプの要素を、セパレート方式の設計思想そのままに持ち込んでいるのです。またアンプ専用の電源には、巨大なトロイダルトランスを用いたリニアパワーサプライ方式のアナログ電源を採用しています。この辺りもマークレビンソンとしてはオーソドックスな方法が用いられています。

藤岡 アンプ構成がセパレートアンプに準じた構成になっていることはわかりました。それにしても、インテグレーテッドアンプをマークレビンソンが手がけるのは希ですよね。

藤田 そうですね。マークレビンソンの歴史において、No585が2台目のモデルです。本機の前のインテグレーテッドアンプ「No.383L」は、登場したのがもう10数年前です。

藤岡 セパレートアンプに対する一貫した姿勢は創立当時からのものですよね。マーク・レビンソン氏の頭にはインテグレーテッドという言葉はなかったでしょうから(笑)。

対談では“現代のインテグレーテッドアンプのあり方”もひとつのテーマとなった

藤田 一方で、マークレビンソンのインテグレーテッドアンプが欲しい、という声は非常に大きなものでした。ですから前述の「No383L」も大きな支持を得ました。マークレビンソンのアンプは欲しいけれども、セパレートアンプを導入するのは難しい、煩わしいという方も多いでしょう。

藤岡 セパレート方式のアンプの弱点は、やはりスペースファクターの低さです。その点インテグレーテッドアンプは、設置性という点で優れています。マークレビンソンというブランドを愛し、憧れ続けて、いつかは導入したいと考えていたオーディオファイルにとって、設置性と価格の両面でより現実的なインテグレーテッドアンプへの期待は大きかったでしょう。一方でインテグレーテッドアンプは、現代的な機能を内包することが重要な要素です。その機能の代表的なものが、現在はフォノイコライザーではなく、USB-DACという結論なのでしょう。

藤田 “現代のインテグレーデットアンプ”としてUSB-DACという機能を選択したということでしょうね。

藤岡 そういう意味でNo585は“現代版インテグレーテッドアンプの象徴”と言ってもいいのではないかと思います。そういう見方をするならば、私もUSB-DACの内蔵を納得します。マークレビンソンの歴史からすれば、デジタル回路をアナログアンプに同居させるというのは考えられないことですが、それでも現代のニーズに対応するという意味では、非常にタイムリーだと思います。そして、同居させる自信があるだけの対策を施してきたということでしょう。

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