【特別企画】連続レポート第3回
藤岡誠、マークレビンソンの新インテグレーテッドアンプ「No585」をとことん語る
■美しいまでの左右独立構成の基板配置
藤岡 No585の筐体のトップカバーを取り外すと、見事なまでに左右独立配置された基板を確認することができます。
藤田 左右独立構成は、マークレビンソンがこれまで貫いてきたもののひとつです。創立からと言ってしまうと語弊があるのは、マーク・レビンソン氏が在籍した時代はどちらかというとモジュールを使った合理的な回路構成を採用していたからです。それがマドリガル時代になり、左右を完全に独立させたデュアル・モノラル構成を採用するようになりました。この流れが現在のマークレビンソンに繋がっています。ジャンパー線などをほとんど使うことなく、基板同士のコネクションだけで信号のやり取りをしています。
藤岡 かなり進化した表面実装をしていることが、内部構成を見ればひと目でわかります。インテグレーテッドアンプには内部配線があちこち右往左往しているものもありますが、No585の内部構成は整然としています。そして、プリアンプ部だけでなくてパワーアンプ部も、デュアル・モノラル構成で有機的に組み立てています。理に適っていますよね。この辺りの合理性はマドリガル時代からだと思います。マーク・レビンソン氏の時代はいわば手作りで、“工業製品”という雰囲気はあまりありませんでした。当然、その素晴らしさもあるのですが。
藤田 そうですね。
藤岡 大規模な製造を行うためにはプリント基板が必要になりますが、基板のパターンの美しさは大事な要素です。しかも単に美しければ良いというわけではなく、近接配置してもよい回路、逆に遠ざけなければならない回路があります。しかも、それを配線図通りにやってもだめなのです。デジタル回路にも言えますが、信号線が短ければ短いほど好ましいところと、信号線を伸ばしても大丈夫ななところを把握して、相互の干渉を極小化するようなパターンが大切です。マークレビンソンのアンプはそれを具現化しています。パワーアンプ部の構成はいかがでしょうか。
藤田 トランジスターによるディスクリート構成です。出力は3パラレル・プッシュプルで、しかもバランスアンプですから、片チャンネルあたり12個のトランジスターを使っています。ディスクリート構成は、マークレビンソンのパワーアンプの設計思想の本質と言えます。
■音質と使い勝手を両立したボリューム回路
藤岡 アンプの操作性については、プリアンプ「No52」に準じているとのことですね。トーンコントロールは非搭載ですが、バランスコントロールは備えています。ボリューム回路についても改めて説明を伺いたいです。
藤田 ボリューム回路は、マーク・レビンソン氏の在籍時代からプリアンプの一番重要な要素として捉えられてきました。当時、業務用のミキシングコンソールに使われているボリューム素子を使うことで高い信頼性と精度を得ていたことは有名です。No585については電子ボリュームを採用していますが、いわゆるラダー型の固定抵抗切り替え方式となります。基板に並んだ複数のアナログ抵抗を電子スイッチで電気的に切り替えて、ボリュームを調整します。
藤岡 最大80dBまでの間を0.1dBステップで調整可能と、ステップがものすごく細かいですね。調整ステップが細かすぎると、逆に音量を変えるのに手間がかかることがありますが、No585はボリュームノブを回転させるスピードで音量の変化率を変えられますね。
藤田 ゆっくり回せば0.1dBステップで細かく調整ができますが、早く動かせば大きく音量が変わる、いわゆる可変レゾリューションボリュームを採用しています。
藤岡 固定抵抗切替式のボリュームを採用しているアンプでは、ノブを早く回すとボリュームICの影響で音がぶつ切りになったりすることがあります。しかし、No585ではそのようなことはありませんでした。安心して素早く回せますし、思った通りの音量調整ができました。
藤田 ノブを回転させる速度で調整値が変化するボリューム自体は、プリアンプ No52の前世代から採用されましたが、No52から可変ボリュームの変化カーブを切り替えられるようになりました。ゆっくりとした細かな調整を得意とするカーブと、大胆な変化を選べるカーブ、大音量のときは変化が小さく小音量のときは変化が大きくなる2段性を持つカーブと、3通りから選べる形になっています。
藤岡 3つめは能率の高いスピーカーとの組み合わせで有効ですね。残念ながら、リモコンからの音量調整はボリュームカーブの切り替えに対応していません。
藤田 リモコンでもボリュームカーブの選択ができるようにして欲しいというリクエストは、すでにマークレビンソンに出しています。
藤岡 No585の筐体のトップカバーを取り外すと、見事なまでに左右独立配置された基板を確認することができます。
藤田 左右独立構成は、マークレビンソンがこれまで貫いてきたもののひとつです。創立からと言ってしまうと語弊があるのは、マーク・レビンソン氏が在籍した時代はどちらかというとモジュールを使った合理的な回路構成を採用していたからです。それがマドリガル時代になり、左右を完全に独立させたデュアル・モノラル構成を採用するようになりました。この流れが現在のマークレビンソンに繋がっています。ジャンパー線などをほとんど使うことなく、基板同士のコネクションだけで信号のやり取りをしています。
藤岡 かなり進化した表面実装をしていることが、内部構成を見ればひと目でわかります。インテグレーテッドアンプには内部配線があちこち右往左往しているものもありますが、No585の内部構成は整然としています。そして、プリアンプ部だけでなくてパワーアンプ部も、デュアル・モノラル構成で有機的に組み立てています。理に適っていますよね。この辺りの合理性はマドリガル時代からだと思います。マーク・レビンソン氏の時代はいわば手作りで、“工業製品”という雰囲気はあまりありませんでした。当然、その素晴らしさもあるのですが。
藤田 そうですね。
藤岡 大規模な製造を行うためにはプリント基板が必要になりますが、基板のパターンの美しさは大事な要素です。しかも単に美しければ良いというわけではなく、近接配置してもよい回路、逆に遠ざけなければならない回路があります。しかも、それを配線図通りにやってもだめなのです。デジタル回路にも言えますが、信号線が短ければ短いほど好ましいところと、信号線を伸ばしても大丈夫ななところを把握して、相互の干渉を極小化するようなパターンが大切です。マークレビンソンのアンプはそれを具現化しています。パワーアンプ部の構成はいかがでしょうか。
藤田 トランジスターによるディスクリート構成です。出力は3パラレル・プッシュプルで、しかもバランスアンプですから、片チャンネルあたり12個のトランジスターを使っています。ディスクリート構成は、マークレビンソンのパワーアンプの設計思想の本質と言えます。
■音質と使い勝手を両立したボリューム回路
藤岡 アンプの操作性については、プリアンプ「No52」に準じているとのことですね。トーンコントロールは非搭載ですが、バランスコントロールは備えています。ボリューム回路についても改めて説明を伺いたいです。
藤田 ボリューム回路は、マーク・レビンソン氏の在籍時代からプリアンプの一番重要な要素として捉えられてきました。当時、業務用のミキシングコンソールに使われているボリューム素子を使うことで高い信頼性と精度を得ていたことは有名です。No585については電子ボリュームを採用していますが、いわゆるラダー型の固定抵抗切り替え方式となります。基板に並んだ複数のアナログ抵抗を電子スイッチで電気的に切り替えて、ボリュームを調整します。
藤岡 最大80dBまでの間を0.1dBステップで調整可能と、ステップがものすごく細かいですね。調整ステップが細かすぎると、逆に音量を変えるのに手間がかかることがありますが、No585はボリュームノブを回転させるスピードで音量の変化率を変えられますね。
藤田 ゆっくり回せば0.1dBステップで細かく調整ができますが、早く動かせば大きく音量が変わる、いわゆる可変レゾリューションボリュームを採用しています。
藤岡 固定抵抗切替式のボリュームを採用しているアンプでは、ノブを早く回すとボリュームICの影響で音がぶつ切りになったりすることがあります。しかし、No585ではそのようなことはありませんでした。安心して素早く回せますし、思った通りの音量調整ができました。
藤田 ノブを回転させる速度で調整値が変化するボリューム自体は、プリアンプ No52の前世代から採用されましたが、No52から可変ボリュームの変化カーブを切り替えられるようになりました。ゆっくりとした細かな調整を得意とするカーブと、大胆な変化を選べるカーブ、大音量のときは変化が小さく小音量のときは変化が大きくなる2段性を持つカーブと、3通りから選べる形になっています。
藤岡 3つめは能率の高いスピーカーとの組み合わせで有効ですね。残念ながら、リモコンからの音量調整はボリュームカーブの切り替えに対応していません。
藤田 リモコンでもボリュームカーブの選択ができるようにして欲しいというリクエストは、すでにマークレビンソンに出しています。