[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第130回】エントリーポータブルの夏! 6万円台で買えるハイレゾDAP 注目モデル一斉テスト
▼X5 2nd gen.の音質
音質面においての実際の役割はさておき、印象としては「DAC部分の精密感+アンプ部分の力強さ=全面対応!」みたいな感じだ。シャープさがほしい部分はシャープにしてくれているし、ガシッとした力強さがほしい部分もそうしてくれている。低域から高域まで音の立ち上がりも収まりもスパッとしていて、ここはアンプの力を特に感じさせるところだ。
AK JrやPAW5000と比べて際立った個性というのは感じさせないのだが、平均点というか総合力としてはちょいリードかも…という気もする。それは各メーカーの技術力の問題ではなく各製品のコンセプトの違いからだろう。X5 2ndは先代X5からの小型化は実現しているがAK JrやPAW5000ほど攻めた小型化はしていない。
例えばだが、X5 2ndのバッテリー容量はAK JrやPAW5000の倍やそれ以上。しかし連続再生時間は倍というわけではない。ということはバッテリー容量の余裕の分を消費電力の多い高性能なチップや回路構成に割いているといった推測もできるわけだ。実際にはそんな単純な話ではないだろうが、そんな憶測をしたくもなるだけの力を感じさせるモデル。
相対性理論「たまたまニュータウン (2DK session)」ではバスドラムのぐっと引き締まった太さの音像、そこからのスパンとした抜けっぷりがまず光る。ハイハットシンバルのシャインと美しい鈴鳴り感もこのモデルは特に優秀だ。低音と高音での大きなリズムと細かなリズム。そのコントラスト、コンビネーションをより綺麗に気持ちよく見せてくれる。ベースも大きなエネルギーをぎゅっと集中させてほどよい音像に込めたような、コンパクトでいて力強い音にしてくれている。やくしまるえつこさんの歌声もやや細身でよい感じにシャープ。
全面対応型なのでどの曲に特に合うという感じでもないのだが、適当な再生が難しい曲でもさらりとこなすという意味では喜多村英梨さん「掌 -show-」だろうか。現代的なシンフォニックでゴシックなスピードメタルといった感じで、これでもかという音数、情報量が詰め込まれている。しかしじゃあすっきりとした解像感とすっとしたアタック感で描き出せばいいかというと、それだけではメタルとしてのヘヴィさが表現できない。
このX5 2ndは細かな音まで逃さない解像感、低音域でのバスドラ連打やうねるベースまで不明瞭にしない自然なアタック感、ハムバッカーギターとハイゲインアンプから叩き出されるディストーションギターの密な厚み。それらを満遍なく再現してくれる。この総合力はやはり大きな魅力だ。
…というのが各モデルの素の音の方向性でありそのレベルだが、その先の音質チューニング機能にも個性がある。いわゆるイコライザ的な機能はあまり使いたくない方も多いだろうが、「好みの音になるのであれば手段は選ばん!」という方はこのあたりもチェックしておいてほしい。