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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第130回】エントリーポータブルの夏! 6万円台で買えるハイレゾDAP 注目モデル一斉テスト

公開日 2015/07/31 12:52 高橋 敦
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■各モデルの音質調整機能

▼AK Jrの音質調整機能

AK Jrは5バンドのグライコ、グラフィックイコライザーを搭載。周波数は固定で何Hzという表示はない。EQをオンにすると全体の音量がぐっと下がるので、EQをブースト方向で調整するかEQに合わせてボリューム自体を上げるかという使い方になる。メーカープリセットはなしでユーザー設定の複数保存もできない。

これぞグライコ!メインの設定画面ではなくて再生中画面の「…」アイコンから呼び出す

PRO EQ。開発者によるプリセットということで「こっちの音が開発者の本命なんじゃ…」疑惑を感じることは内緒だ

しかし注目はAK伝統の「PRO EQ」だ。こちらはグライコとは別に用意されているプリセットで、メーカーのエンジニアがおすすめするセッティング。その設定内容は明かされていないが、歴代共によりフラットでモニター志向のチューニングという印象だ。このモデルでも同様で、これをオンにすると低音楽器のボリューム感が気持ち控えられてソリッドさやクリアさが引き立てられる印象。

といっても音を激変させるものではなく「気持ち程度」の変化。EQなしの音こそメーカーが自信を持っておすすめする音であり、このPRO EQもそこから大きく外れるものではないのは当然。あくまでも微調整のための機能と考えておくのがよいだろう。

▼PAW5000の音質調整機能

PAW5000は音質調整の幅が広く自由度も高い。また別途にDSPを搭載しており、基本動作の安定性や軽快さを犠牲にせずに高精度な音質調整を実現している。ということで「音の基本的な方向性は好みなんだけれど部分的に少しだけしっくりこない」みたいな印象の場合は、音質調整で好みにかなり近付けられる可能性も高い。

まず第一のそして最も手軽で効果の大きい音質調整機能は「DAMP」スイッチだ。これは後述のふたつと違ってデジタル領域での調整ではない。電気回路からの出力直前の段でHIGHはコンデンサーを通さない、LOWはコンデンサーを通さことで音質を変化させている。

「DAMP」スイッチはソフトウェア設定ではなくハードウェアスイッチで実装されている

DAMPのHとLは音量の差が大きいので切り替え時は突然の大音量に注意(Hの方がでかい)。音量はボリュームとGAINでうまく合わせるべし

コンデンサーを通さずストレートに出すHIGHの方がはっきり明瞭な音がすると想像するかもだが、実際は逆。コンデンサーを通すことで帯域が整理されるためか、LOWの方が中低域がすっきりして抜けやいわゆる解像感は高い。HIGHの方がこれぞPAW5000!的なほぐれやウォームさ、LOWは個性を薄めてより一般論的な良音質といった印象だ。個人的にはLOWを常用している。

デジタル領域での音質調整機能のひとつめは「ATE」。単なるEQだけではなく、ステレオイメージの調整といったいくつかの機能を複合的に適用するもののようだ。こちらはプリセットから選んで利用する形式。

こういったあまり見慣れない名前と効果のものが並ぶ

一方EQのプリセットは比較的おなじみでわかりやすい名前のものも多い

デジタル領域での音質調整機能のもうひとつはこちらは普通のパライコ、パラメトリックイコライザータイプのEQ。5つの帯域(Hz)を指定して±12dBで調整できる。プリセットが用意されている他にユーザー設定も複数保存可能。また高低両端の帯域はBPF(バンドパスフィルター)ではなくLSF/HSF(ロー・シェルビング・フィルター/ハイ・シェルビング・フィルター)に設定することもできる。例えば高域のある帯域を指定してブーストしたとき、

BPFだと__ー_のように指定した帯域だけ
HSFだと__ーーのように指定した帯域より高い帯域すべて


…がブーストされるといった違いだ。

こんな感じで設定を一望できるのでわかりやすい

各帯域を設定していく

例えば僕の場合だと、

・4kHz周辺以下の中高域を動かすと声の質感等が変わりすぎる
・4dBを超える調整も変化が大きすぎると感じる


ということで、

・8kHzをBPF、12kHzをHSFで+4dB
・全体を-2dBして全体の音量を調整


という設定がしっくりきた。薄くかけるだけでも自分で自分のツボを押さえれば「このEQ…使えるぞ!?」と実感できる。

▼X5 2nd gen.の音質調整機能

X5 2nd gen.は10バンドで±6dBという十分な機能を持つグラフィックイコライザーを装備。プリセットも必要十分。ユーザー設定はひとつしか保存できないが、イヤホンごとや場面ごとの使い分けを考えなければ問題ないだろう。

音楽のジャンルを元にしたわかりやすいプリセットが用意されている

プリセットと並んで用意されている「Custom」をユーザーが自由に設定変更できる

PAW5000のパライコほどの自由度はないが10バンドという十分な細かさは確保。また自由度の高いすぎるパライコより周波数が決め打ちされているグライコの方を使いやすく感じる方も少なからずと思う。諸々鑑みて、素の音と同じく音質調整機能もバランスよく扱いやすいタイプと言える。

■まとめ

ということで、都合の良いことに音も使い勝手もそれぞれの個性が分かれる形だ。いや記事として書きやすいという意味での都合の良さもあるが、ユーザー視点でも「個性が被らないので選択肢の幅が広がってくれている」というのは嬉しいところだろう。エントリークラスが一気に充実したことは、今後のハイレゾポータブルプレーヤー分野全体にもよい影響を及ぼしてくれると期待したい。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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