注目製品に秘められた可能性を探る
音楽評論家、高橋健太郎氏が「xDSD」をレポート ― ストリーミングからハイレゾ、ワイヤレスまで徹底検証
一新されたデザインと高級感のある佇まい
製品パッケージは過去のiFiのそれに近いデザインだが、箱から取り出したxDSDには予想した以上のフレッシュなインパクトがあった。デザインが斬新なだけでなく、実物にはソリッドな質感がある。価格的にはmicro iDSDの方が上位のはずだが、高級感はxDSDの方があると言っていい。
波打った金属製のボディは触った感触もとても良い。ボディはnano iDSDよりも薄くて握りやすい。中央に置かれたヴォリュームを含め、突起物がほとんどないデザインもポータブル機器としては好ましい。小さなスイッチなどが突き出ていると、何かの拍子に破損することがあるからだ。重量は127グラム。iPhone SEよりは重いが、iPhone 6以降のiPhoneよりは軽い。
まずはパワーオン。これは中央のヴォリュームを押して行うのだが、このときにxDSDを使用するモードを選択しつつ、起動する必要がある。ヴォリュームを押し続けると、ヴォリュームとその左側のLEDが緑色もしくは青色に光る。この緑色と青色は20秒ごとに入れ替わるのだが、USB接続で使用する場合は緑色の時に、Bluetooth接続で使用する場合には青色の時に、ボリュームから指を離して、本体を起動する。
Bluetooth接続にも興味は惹かれるが、まずはxDSDのUSB DAC+ヘッドホンアンプとしてのポテンシャルを知る上で、緑色のLED点灯状態から始めてみることにした。micro iDSDとの比較のためにPCにxDSD とmicro iDSDをともにUSB接続。2台を切り替えて、同じヘッドフォンで試聴すれば、違いが掴めるだろう。
xDSDのDACとしての基本的なスペックはmicro iDSDと大きく違わない。DACチップにはバー・ブラウン社のDSD1793を搭載。これは世代的には古いマルチビットのDACチップだが、あえてバー・ブラウン社がテキスト・インストゥルメンタル社に吸収される以前のDSD1793にこだわり、独自の制御技術によって、PCM768kHzや DSD512(24.6/22.6MHz)の再生を実現しているのがiFiの技術陣だ。DACチップの数値特性だけを見れば、ESS SABREや旭化成の最新のチップの方がはるかに高性能だが、DSD1793には譲れない音質的魅力があるということなのだろう。iFi製品の持つ自然な音楽再生能力、とりわけ、中域の滑らかさや豊かさはこの頑固なDACチップ選択によるところが大きいのではないかと思われる。