注目製品に秘められた可能性を探る
音楽評論家、高橋健太郎氏が「xDSD」をレポート ― ストリーミングからハイレゾ、ワイヤレスまで徹底検証
有線接続ではさらに音質の変化が楽しめる
最後にiPhoneとxDSDをLightning-USBカメラアダプタを使って接続するパターンに進む。この場合はiPhoneをxDSDを二段重ねにして使うことになるが、Bluetooth接続による転送レートのボトルネックはなくなる。『Seymour Reads the Constitution!』をApple Music、Deezer Hifi、OTOTOYアプリの順に聴いていくと、音質差はBluetooth接続よりもさらに鮮明になる。
だが、xDSDのスペックからすれば、OTOTOYアプリの上限の24bit/48kHzよりもはるかに上位のハイレゾ再生も可能だ。xDSDは出荷時のファームウェアでPCMは32bit/384kHz 、DSDは11.289MHzまでをサポート。超ハイレゾ・オーディオ用のファームウェア(5.20)に変更すれば、32bit/768kHzのPCM、22.57MHz のDSDにも対応するのだ(ただし、この場合はMQAはサポートされなくなる)。
そこでiPhoneにインストールしてあるHibikiソフトウェアを使って、さらなるハイレゾ再生もテストしてみた。『Seymour Reads the Constitution!』の24bit/88.2kHz版をiPhoneのHibikiフォルダにインストール。Hibikiソフトウェアで再生すると、これはもう見事なハイレゾ再生だ。Bluetooth接続とは違う地平に躍り出た感がある。HibikiソフトウェアはPCM音源のアップサンプリングも可能なので、88.2kHz → 352.8kHzにアップサンプリングした再生も試してみた。
ほとんど遅延もなく、352.8kHzでも動作するのに驚いたが、音質的にはピアノが少し硬質になった気がした。この音源に関してはオリジナルの24bit/88.2kHzで聴くのが良いようだ。しかし、16bit/44.1kHzの音源の場合はHibikiによるアップサンプリングが有効なことも多いのだろう。
Hibikiソフトウェアを使えば、iPhoneとxDSDでDSDのネイティヴ再生も可能だ。この場合はまずHibikiのシステム設定でモードをPCMからDoPに切り替える必要がある。Hibikiでは11.2MHzのDSDはPCM変換しての再生になるので、5.6MhzのDSDで発売されているボノボスの『23区』を聴くことにする。この場合も動作の遅延はほとんど感じることなく、DSDのネイティヴ再生が始まる。
『23区』のDSD版は、ボノボスのワイドレンジで、エッジの効いたバンド・サウンドを硬さのないナチュラルな質感で聴かせてくれる。xDSDのタイトな音質はDSD再生に向くのではないかとも思った。ラウドでいながら、空気感が澄んでいて、気持ち良い。iPhoneのストレージ容量を考えると、収納できるDSD音源の数には限りがあるだろうが、その気になれば、外出先でも5.6MHzのDSDのネイティヴ再生を楽しめる。Quiet Comfort25はノイズ・キャンセリング機能があるので、電車内だって、DSDの繊細な空気感に触れられる。これはちょっとした優越感も味わえるかもしれない。
というわけで、長いレポートになってしまったが、それだけxDSDはいろんな使い勝手、楽しみ方の可能性を秘めたマシンであると言っていいだろう。ポタアンとしては少し高めの価格に感じられるかもしれないが、このサイズ、機能性を考えれば満足度は高い。携帯機器はボディの質感などの魅力も重要だろうから、ぜひ店頭で一度、触れてみて欲しい。
※本記事は、OTOTOYに掲載されたものです。基本的な表記等はOTOTOYの表記としております