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注目製品に秘められた可能性を探る

音楽評論家、高橋健太郎氏が「xDSD」をレポート ― ストリーミングからハイレゾ、ワイヤレスまで徹底検証

公開日 2018/06/22 14:55 高橋健太郎
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軽量化、ポータブル性を備えながら損なわれないパワー

試聴音源にはOTOTOYではじまったワーナー作品の配信のなかから、ランディ・ニューマンの昨年発表のアルバム『DARK MATTER』をえらんだ。このアルバムは恐ろしく音が良い。CDで聴いても十分にすばらしいが、24bit/96kHzのハイレゾ音源ではオーケストレーションの広がりや歌やピアノの瑞々しさにゾクゾクさせられる。最近はオーディオ機器のテスト取材などがあると、このアルバムのハイレゾ版を必ずもっていくようになっている。

ランディ・ニューマン『DARK MATTER

試聴用のヘッドフォンは愛用のゼンハイザーHD600。低域に誇張がないモニター・バランスで、ゼンハイザーの歴代のヘッドホンの中でも最も気に入っていたモデルだが、世界的にもファンが多かったようで、昨年、リイシューされた。仕事場のiMacのAudivanaでDACにmicro iDSDを指定し、HD600で聴き始めたランディ・ニューマンは思った通りのサウンドで、安心して聴ける。柔らかな音場の広がりはこの組み合わせならでは。試聴目的だったことを忘れて、すっと音楽に没入してしまう。

さて、micro iDSDとxDSDを入れかえてみる。DACチップは同じだし、スペックも同じだから、似たサウンドだろうと予想していたら、似ている部分もあるが、確実に違うニュアンスもある。xDSDの方がきりっとした現代性があるとでも言えばいいか。micro iDSDに比べると、柔らかな音場の広がりは控えめになる分、音楽の聴きどころを強く訴えかけてくる。細かな楽器音にハッとさせられる瞬間も多い。低域はややタイト。高域の抜けや空間の透明度はmicro iDSDよりも高いかもしれない。どちらが良いかというと、これは甲乙つけ難い。聴く音源によって変わってくるだろう。

SENNHEISER  HD600

よりラウドなサウンドを聴いてみようと、試聴音源をフレイミング・リップスの『Greatest Hits,Vol.1』に変えたが、インパクトならxDSD、アトモスフィアならmicro iDSDという印象は変わらない。どちらも魅力ある。DAC部の基本構成は変わらないとすると、これはアナログのアンプ部の違いが大きいのかもしれない。ヘッドホンアンプとしてのスペックを見比べてみると、これはかなりの差がある。micro iDSDの出力は三段階で切り替えられ、ターボ・モードでは16Ωで最大8V/4000mWの高出力だ。対して、xDSDは16Ωで2.82V/500mW。といっても、一般的なヘッドホンンアンプと比べれば、xDSDも余裕あるスペックで、音質的にも非力という印象はない。ゼンハイザーのHD600は300Ωのハイ・インピーダンスで、決して鳴らしやすいヘッドフォンではないが、まったく問題は感じられない。

The Flaming Lips『Greatest Hits, Vol. 1』

では、もっとオーヴァースペックなヘッドフォンではどうか? 昨年から話題を集めている米ABYSS社の平面駆動型ヘッドフォン、Dianaで聴いてみることにする。受注生産で価格的にも40万円を越えるこのヘッドホンはインピーダンスこそ40Ωだが、能率は91dbと極端に低い。micro iDSDで鳴らす場合もターボ・モードにしないと音量不足になる。xDSDではさすがに役不足だろうと思ったが、実際に試聴してみると、そんなことはなかった。中央のヴォリュームは出力に応じて、LEDの色が変わるのだが、それが赤に変わる寸前で適正音量が得られる。少なくとも、出力不足を感じることはない。

ABYSSのDianaは恐ろしく鮮烈かつオープンなサウンドなので、試聴音源もそれに合わせたものにしてみる。ジョニ・ミッチェルの『ドンファンのじゃじゃ馬娘』の24bit/192kHzだ。micro iDSDとxDSDで比較試聴すると、ジャコ・パストリアスのベースの深々としたローエンドや広がりあるステレオ感ではmicro iDSDの方が優れている。しかし、ジョニ・ミッチェルのギターの切れ味や音楽全体のスピーディーな躍動感ならxDSDだ。ともあれ、それなりの電源回路を持つ据え置き型のヘッドホンアンプでもなかなか鳴らしきれないDianaをiFiのバッテリー駆動のヘッドホンアンプが確実に駆動してみせたのには驚いた。

ABYSS DIANA

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