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公開日 2015/09/02 18:27

【インタビュー】米NetflixのCEOが4K/HDRコンテンツや日本展開のビジョンを語る

「HDRは規格が一本化すれば開始できる」
構成:編集部 小澤貴信
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Netflixは日本国内でのサービスを正式に開始した(関連ニュース)。Phile-webでは、このタイミングに合わせて来日中の同社CEO(最高経営責任者)であるリード・ヘイスティング氏にインタビューを実施。Netflixの日本導入における展望から4Kコンテンツ提供、今後の展開までを聞いた。

NETFLIX CEO 最高経営責任者 リード・ヘイスティングス氏

リード・ヘイスティングス氏は、1997年にNetflixを共同創業。現在では同社CEOと共に、Facebook社の取締役も務めている。2007年から2012年にかけては、マイクロソフト社の取締役も歴任した。特に教育分野における熱心な慈善事業家とも知られ、人口知能の研究で科学修士号を取得しているという経歴も持つ人物だ。


ヘイスティングス氏 もうNetflixを試していただけましたでしょうか? 僕らの1番のチャレンジは、Netflixの魅力をみなさんに知ってもらうことです。魅力をご理解いただくには、言葉を尽くして説明するよりも、使っていただくのが1番だと思っています。ですから、まずは無料の1ヶ月間、じっくり使っていただきたいですね。気に入ってもらえればメンバーになってもらえるし、解約はいつでもできます。だからこそ我々がやらなければいけないのは皆さんが見たいと感じる、かつ質の高いコンテンツをより多く用意することだと思います。

−−多くの方に使っていただけるようにどのような工夫をされていますか?

ヘイスティングス氏 他社サービスでは視聴するためにもっと煩雑な操作や手続きが必要なものが多いですよね。Netflixはいかにリラックスしてみてもらえるかを重視しています。

−− Netflixの日本でのサービスインをご自身ではどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。

ヘイスティングス氏 すでに日本でも、多くのインターネットテレビ(VOD)のサービスが始まっています。そしてグローバルではさらにたくさんのサービスが存在します。それだけでなく、地上波放送や衛星放送、ケーブルテレビの放送局がインターネットテレビに移行していく動きもすでに始まっています。アメリカのCBSも、日本のNHKもそうですよね。そしてCBSもNHKも元々はラジオ局で、そこからテレビ局へと変貌を遂げたという歴史があります。そして今、テレビ局のインターネットテレビへと移行が始まっているのです。

−−なるほど。

ヘイスティング氏は、ラジオ局がテレビ局へと移行したように、テレビ局もインターネットテレビへと移行していく流れにあると分析する

ヘイスティングス氏 インターネットが大きな変化をもたらしているということですね。その非常に大きな潮流の中にNetflixもあるわけです。もっとたくさんのコンテンツをお届けしたいし、さらにグローバルな市場を形成していきたいと考えています。

−−すでに配信が始まっている『テラスハウス』から、先日発表された又吉直樹氏の芥川賞受賞作品『火花』の映像化まで、Netflixによる日本独自コンテンツも続々と発表されています。

ヘイスティングス氏 『テラスハウス』は、日本での現在のシーズンが終わった後にはアメリカでの配信が始まります。今までは日本にしか市場がなかった『テラスハウス』が、グローバルな市場に展開していくことになるのです。それは他の国で作られたNetflixのコンテンツも同様で、それらはグローバルに展開していくことになります。

ただ、時間はかかります。開始1年目は、日本で一人一人のお客様にいかに満足していただけるかが大事だと考えております。数字はどうでもいいと正直思っています。Netflixを気に入っていただけるか、満足していただけるかどうか。もちろん長期的には数の上でも成功したいですが。

『テラスハウス』をはじめとする日本向けのオリジナルコンテンツは、積極的にグローバル展開していくという

−−Netflixにはたくさんの4Kコンテンツが用意されていますが、世界的に4Kコンテンツは加入者獲得に貢献しているといえる状況でしょうか。

ヘイスティングス氏 多くの国ではまだ4Kテレビの発売が始まったばかりですから、4Kコンテンツを視聴しているユーザーの割合という意味ではまだまだ10%以下ということになると思います。ただNetflixの視聴時間全体の5〜10%が4Kコンテンツであるという数字もでています。

そして、いま最もたくさんの4Kコンテンツを見れるサービスはNetflixです。新規に制作する独自コンテンツもほとんど4Kで作成しています。4Kコンテンツのストリーミングには最低15Mbpsの回線速度が必要なので、国によっては難しい面もありますが、回線が発達した日本ではまず問題ないですよね。

−−4Kと共に、HDR(ハイダイナミックレンジ)への対応もアナウンスされていますが、現時点での対応状況はどうなっているのでしょうか。

ヘイスティングス氏 HDRコンテンツに映された空のシーンをみると、サングラスが欲しくなるようなまぶしさで、実際に空を見上げているようですよね。HDRについてはテレビメーカーと共に作業を進めていますが、残念ながらHDRの標準となる規格がまだ一本化されていません。UHDアライアンスとドルビービジョンでどちらが標準になるのかまだわかりませんが、どちらのHDR対応にも対応できるだけのスペックで各作品は撮影していており、配信できる準備はすでにできています。

HDRコンテンツの配信についてもすでに準備ができており、あとはテレビに搭載される規格が一本化されるのを待つだけだとヘイスティングス氏は語る

−−日本ではアニメが非常に人気ですが、Netflixが日本で独自制作するコンテンツの中にはアニメも含まれているのでしょうか。

ヘイスティングス氏 日本のアニメは、日本以外の国々でも非常に人気がありますよね。今は詳しいことは言えませんが、すでに関連する方々とはお話を始めていますので、いずれオリジナルのアニメコンテンツも配信することになるでしょう。

−−日本では若者のテレビ離れが話題になっています。日本のテレビ放送をどのように捉えられていますか?

ヘイスティングス氏 若者のテレビ離れは世界中で進んでいることですよね。「自由」と「選択」には誰もが惹かれるものです。朝でも夜中でもいつでも見られる、テレビでもスマートフォンでもタブレットでもどこでも見られるという自由。そして自分が見たいものを選択できるということ。リニアに放送するテレビでは選択の余地は少ないですよ。

既存のテレビとNetflixをはじめとするインターネットテレビの関係というのは、固定電話とスマートフォンの関係に置き換えられると思います。そして固定電話から携帯電話への移行は20年かかりました。リニアなテレビからインターネットテレビへの移行もそれくらいかかるのではないでしょうか。

−−日本では自国のコンテンツへの需要が高いとのことですが、日本では他国より日本のコンテンツの割合は増えていくのでしょうか。

ヘイスティングス氏 もちろんグローバルな視聴者にも、日本のコンテンツを届けていきたいと思います。その第1弾となるのが『テラスハウス』です。『テラスハウス』を最初の日本代表として世界に送り出すことについては、みなさまそれぞれお考えがあるでしょうが(笑)。国内コンテンツの割合については、まず日本でサービスを続けて、お客様の反応を見てからということになるでしょう。我々のアルゴリズムは、より多くの視聴者がより多くのコンテンツを見るほどに、どういう番組が求められているのかを分析することができますので、それによって変わっていくでしょう。

−−提携先としてソフトバンクを選んだ理由を教えてください。他国でもこうした提携はおこなっているのでしょうか。

ヘイスティングス氏 ソフトバンクとNetflixは、今の状況を打破しようというビジョンを持っているという点でとても似ている会社です。ソフトバンクとお会いしたときには、級友と再会したような気分でした。世界中でそういったパートナーシップは結んでいますが、ここまでユニークかつ独占的なものは前例がないです。

NETFLIXはタブレットやスマホからも視聴できる。ヘイスティングス氏は視聴できる環境を選べる「自由」と「選択」もNETFLIXの魅力だと語る

−−Netflixで提供している4K番組のなかで1番お気に入りの番組はなんでしょうか。

ヘイスティングス氏 いまは『マルコス』ですね。今朝も時差ぼけで早く起きてしまったので見ていました。4Kストリーミングの画質も美しいです。4K作品以外では、『ボージャック・ホースメン』という作品をよく見ていました。こちらはアニメーションのコメディですね。

−−地上波放送では、ニュースやスポーツ中継などリアルタイム性のあるコンテンツも大きな人気があります。こうしたコンテンツをNetflixで配信する計画はないのでしょうか。

ヘイスティングス氏 ノー、ですね。スポーツ、ニュース、ミュージックビデオ、それから電子書籍。いずれも配信するつもりはありません。Netflixが配信するのは映画であり、ドラマ、バラエティーなどのテレビ番組です。

−−例えばミュージックビデオなどは、Netflixとの相性は悪くないと感じますが。

ヘイスティングス氏 それはYouTubeで楽しめばよいでしょう(笑)。他より秀でたいのであれば、何かにフォーカスする必要があると考えています。

−−又吉直樹さんの『火花』を、Netflixが独占的に映像化して配信することが発表されました。なぜNetflixは、優れた原作、あるいはクリエーターによる作品を実現できるのでしょうか。

ヘイスティングス氏 先ほど申した「自由」と「選択」にクリエーターのみなさまも惹かれているのだと思います。又吉さんにも吉本興業にも様々なオプションがあったと思いますが、Netflixが世界中の方々に「自由」と「選択」を提供できるという点を認めてくださったのだと思います。

インタビュー会場には、一般家庭のリビングを模したデモスペースが用意されていた

−−日本にローンチしてまだ数時間ですが、手応えは感じていますか。

ヘイスティングス氏 初動という意味ではエクセレント!ですね。ただ、実際の数字については最初に申し上げたとおりそれほど気にしていません。私たちがローンチ1年目に目指しているのは、一人一人のお客様にどれだけ満足していただけるかです。ユーザーの数を追うよりは、Netflixを愛してくれる人を一人でも増やしたいですね。

−−日本、そして全世界におけるNetflixの現時点のビジョン、そして目標を教えてください。

ヘイスティングス氏 2016年には、全世界でNetflixのサービスを開始したいと考えています。YouTubeのようにインターネットがつながっていればあらゆる国で視聴できるようにしたいのです。主要国においては独自コンテンツも続々と制作していきますし、ひとりでは一生かかっても見終わらないだけのコンテンツを提供していく予定です。

目標ですが、全ての世界の3分の1がユーザーになってくれることです。そしてすでにアメリカでは、国民の3分の1がNetflixのユーザーになっています。その他でも同様の成長を遂げています。ただ各国の市場はそれぞれユニークですから、日本で学ぶことは多いと考えています。

−−本日はありがとうございました。

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