公開日 2016/11/09 10:00
SHUREキーマンに訊くモノづくりの哲学。カスタムIEMやBluetooth対応イヤホンの展開は?
技術や音への基本的考えに迫る
Phile-web読者にもおなじみのブランド、SHURE(シュア)。しかしざっくりと「イヤホン・ヘッドホンブランドのひとつ」という理解に止まっている方も少なからずなのではないだろうか。
もちろんそれも間違ってはいない。彼らがイヤホン・ヘッドホン分野に優れた製品を多くラインナップしていることは事実だ。
だが、シュアはガチの業務用音響機器ブランドであり、そのイヤホンやヘッドホンの多くもそもそもはプロシューマー、ミュージシャンやサウンドエンジニアに向けたものだ。結果としてそのクオリティはオーディオリスナーにも認められ、やがてシュアもその需要を意識し、今ではミュージシャンからリスナーまで多くのユーザーを想定した製品開発も行っている。
とはいえやはり彼らの根本はプロユース製品。そういう立ち位置のブランドは他にもあるがその中でもシュアは特に、コンシューマー向けの派手な要素を打ち出さない、ストイックな製品展開を行なっている印象がある。
のだがそれ故に「堅実だが地味」のようにも思われがちな部分もある。むしろそこにこそシュアの凄みがあると思うのだが、地味な部分というのは何しろ地味なので、そこにスポットを当てられる機会はあまりない。
10月下旬、シニア・カテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏とシニア・プロダクト・マネージャーのショーン・サリバン氏が、アジアエリアを市場調査のため回る旅路の中で日本にも訪れると聞いた。大きな新製品はないタイミングだから新製品新技術ではなく地味なこだわりの部分のお話を伺えるチャンスかも?
そこでシュアに打診したところ、シュア・ジャパン、そして当のお二人の快諾を得ることができた。
ということで今回はシュアのお二人に、これまでにはあまり時間を割いて聞くことのできなかった細かな部分を細かく聞いてみた。いわゆる「神は細部に宿る」的に、そこにこそシュアの在り方の核が見えるてくるのではないか。そんな期待をしながらインタビューをスタートさせた。
結果として「SE215」の話題が中心となったが、それはSE215についてから話し始めたら、いきなりそこに色濃くシュアの考え方が出ていたからだ。話の内容としては他のモデルの設計にも通じる部分が多いと思うので、そういう話として読み進めてもらえればと思う。
以下の記事は聞き手側の発言を「ーーー」、シュア側メンバーの発言を「シュア」と整理し、僕、高橋が整理した形でお届けする。
ド定番「SE215」に込められたシュアのこだわり
ーーー コンデンサー型イヤホンシステム「KSE1500」の発売から1年が経ちました。前回お会いしてお話を聞いたときは発売前でしたが、発売後の実際の反響はいかがですか?
シュア 供給を追いつかせるのに苦労しています。自信作ではありますがやはり高額なシステムですので、この売れ行きは想定を超えたものです。
ーーー イヤホン部分もアンプ部分も極めて繊細であったり高電圧に対する安全面から求められる水準が高かったりと、製造にも苦労しそうなモデルだなと感じているのですが…
シュア ええ。開発も大変でしたがそれ以降も、組み立てはもちろん、パーツの調達から苦労しています。このモデルの製造はほとんどハンドメイドです。カスタム製品並みの手間や時間がかかっています。
ーーー 最新の「KSE1500」に対してロングセラー「SE215」にはリモコンマイク付きモデルが追加されましたね。
シュア 「SE215m+ Special Edition」ですね。ベースモデル「SE215 Special Edition」も我々の想定を完全に上回る人気を得て今も売れ続けています。「SE215」シリーズは今や「SE」シリーズを代表する人気モデルです。
ーーー 「SE215」は「Special Edition」も含めて、ダイナミック型ドライバー搭載でありながら遮音性も他のモデルに劣りませんよね?シュアのイヤホンはステージモニターなわけですから、遮音性を重視するのは当然です。ですがダイナミック型ドライバーを搭載して高い遮音性を確保するのは難しいと聞いています。ドライバーに負荷をかけずにスムースに動かすにはベントポート、空気を抜く穴が必要だけれどそうすると遮音性は下がる、というように。
シュア サウンドのバランス、サウンドクオリティとフィット感と遮音性のバランス……それらのバランスを達成するのはとても難しいです。我々がイヤホンに初めてダイナミック型ドライバーを搭載したのは2002年のモデル「E2c」で、「SE215」の前ではいちばん多く販売されたプロダクトです。ですのでSE215開発時にはE2cのよいところは継承して直すべきところは改善することが必要でした。その直そうとしたことのひとつがフィット感、装着の快適さなのですが…
ーーー 先ほどの「サウンドクオリティとフィット感と遮音性のバランス」のうちひとつの要素に手を加えるとなると、結果として全てを調整し直さなくてはならなくなった?
もちろんそれも間違ってはいない。彼らがイヤホン・ヘッドホン分野に優れた製品を多くラインナップしていることは事実だ。
だが、シュアはガチの業務用音響機器ブランドであり、そのイヤホンやヘッドホンの多くもそもそもはプロシューマー、ミュージシャンやサウンドエンジニアに向けたものだ。結果としてそのクオリティはオーディオリスナーにも認められ、やがてシュアもその需要を意識し、今ではミュージシャンからリスナーまで多くのユーザーを想定した製品開発も行っている。
とはいえやはり彼らの根本はプロユース製品。そういう立ち位置のブランドは他にもあるがその中でもシュアは特に、コンシューマー向けの派手な要素を打ち出さない、ストイックな製品展開を行なっている印象がある。
のだがそれ故に「堅実だが地味」のようにも思われがちな部分もある。むしろそこにこそシュアの凄みがあると思うのだが、地味な部分というのは何しろ地味なので、そこにスポットを当てられる機会はあまりない。
10月下旬、シニア・カテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏とシニア・プロダクト・マネージャーのショーン・サリバン氏が、アジアエリアを市場調査のため回る旅路の中で日本にも訪れると聞いた。大きな新製品はないタイミングだから新製品新技術ではなく地味なこだわりの部分のお話を伺えるチャンスかも?
そこでシュアに打診したところ、シュア・ジャパン、そして当のお二人の快諾を得ることができた。
ということで今回はシュアのお二人に、これまでにはあまり時間を割いて聞くことのできなかった細かな部分を細かく聞いてみた。いわゆる「神は細部に宿る」的に、そこにこそシュアの在り方の核が見えるてくるのではないか。そんな期待をしながらインタビューをスタートさせた。
結果として「SE215」の話題が中心となったが、それはSE215についてから話し始めたら、いきなりそこに色濃くシュアの考え方が出ていたからだ。話の内容としては他のモデルの設計にも通じる部分が多いと思うので、そういう話として読み進めてもらえればと思う。
以下の記事は聞き手側の発言を「ーーー」、シュア側メンバーの発言を「シュア」と整理し、僕、高橋が整理した形でお届けする。
ド定番「SE215」に込められたシュアのこだわり
ーーー コンデンサー型イヤホンシステム「KSE1500」の発売から1年が経ちました。前回お会いしてお話を聞いたときは発売前でしたが、発売後の実際の反響はいかがですか?
シュア 供給を追いつかせるのに苦労しています。自信作ではありますがやはり高額なシステムですので、この売れ行きは想定を超えたものです。
ーーー イヤホン部分もアンプ部分も極めて繊細であったり高電圧に対する安全面から求められる水準が高かったりと、製造にも苦労しそうなモデルだなと感じているのですが…
シュア ええ。開発も大変でしたがそれ以降も、組み立てはもちろん、パーツの調達から苦労しています。このモデルの製造はほとんどハンドメイドです。カスタム製品並みの手間や時間がかかっています。
ーーー 最新の「KSE1500」に対してロングセラー「SE215」にはリモコンマイク付きモデルが追加されましたね。
シュア 「SE215m+ Special Edition」ですね。ベースモデル「SE215 Special Edition」も我々の想定を完全に上回る人気を得て今も売れ続けています。「SE215」シリーズは今や「SE」シリーズを代表する人気モデルです。
「SE215」はイヤホン「SExxx」シリーズの中でエントリークラスのモデル。しかし単にエントリークラスというだけではなく「リケーブル可能なダイナミック型ドライバー搭載モデル」という独自のポジションも持たされている。シュアの他のBA型ドライバー搭載モデルと同レベル=ダイナミック型ドライバー搭載イヤホンとしては破格の遮音性を備えることも大きなポイントだ。 オリジナルモデルは2011年の発売だが、未だに高い人気を誇る。低域強化、リモコンマイク追加、それらに付随するカラー変更といったバリエーション展開の多さも、その人気を受けてのことだろう。 |
ーーー 「SE215」は「Special Edition」も含めて、ダイナミック型ドライバー搭載でありながら遮音性も他のモデルに劣りませんよね?シュアのイヤホンはステージモニターなわけですから、遮音性を重視するのは当然です。ですがダイナミック型ドライバーを搭載して高い遮音性を確保するのは難しいと聞いています。ドライバーに負荷をかけずにスムースに動かすにはベントポート、空気を抜く穴が必要だけれどそうすると遮音性は下がる、というように。
シュア サウンドのバランス、サウンドクオリティとフィット感と遮音性のバランス……それらのバランスを達成するのはとても難しいです。我々がイヤホンに初めてダイナミック型ドライバーを搭載したのは2002年のモデル「E2c」で、「SE215」の前ではいちばん多く販売されたプロダクトです。ですのでSE215開発時にはE2cのよいところは継承して直すべきところは改善することが必要でした。その直そうとしたことのひとつがフィット感、装着の快適さなのですが…
ーーー 先ほどの「サウンドクオリティとフィット感と遮音性のバランス」のうちひとつの要素に手を加えるとなると、結果として全てを調整し直さなくてはならなくなった?
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