公開日 2017/12/12 08:00
「東芝REGZAは大丈夫」 − 今後も続く高画質への挑戦、新映像エンジンも開発中。村沢社長に聞く
'18年3月にハイセンス傘下の新体制へ
11月14日に発表された、中国・ハイセンスによる東芝映像ソリューション株式会社の買収(関連ニュース)。東芝本体の経営状況を受けて、テレビなど映像事業の売却が囁かれていたが、それが現実のものとして発表された。
東芝映像ソリューション株式会社は2018年3月1日から、ハイセンスが95%の株式を持ち、残り5%を東芝が持つ新体制に変わる。現在は各国の独禁法をクリアする手続きなどを行っている段階で、2月末までにはそれらの手続きを終え、新たな体制へ移行する予定だ。
この発表を受けて、多くのAVファンが気になるのは、TOSHIBAブランド、REGZAブランドのテレビが今後どうなってしまうのか、ということだろう。
実際、中国の巨大メーカーの資本が入るというニュースを受けて、ブランドの存続すら危ぶむ声がネット上に相次いで投稿された。果たして実態はどうなのか。同社 取締役社長の村沢圧司氏、設計統括部 部長の岩井啓助氏に話を聞いた。
■これまで買ったREGZAも、今後買うREGZAも、修理・サポート体制は変わらない
まず事実関係を整理しておこう。11月14日時点でのニュースリリースには「株式譲渡後も東芝映像ソリューションの社名変更などは行われず、TOSHIBA・REGZAブランド映像商品の自社開発・販売・修理を継続する」旨が記載されていた。
研究開発など未来を向いた話の前に、修理やサポート体制について聞いた。特に今は、冬のボーナスがちょうど出たタイミングで、4Kテレビが気になっている方も多いはず。REGZAの購入を検討している方にとっては、サポート体制がどうなるかは大変気になるところだ。
質問に対して村沢社長は、「これまで販売したREGZAや、これから発売するREGZAにおける修理体制やサポート体制も、これまでと変わらず継続します」と明言。「東芝のREGZAを買っていただいて大丈夫です。それどころか今後、映像事業をますます強化していきます」と力強く宣言した。
なおハイセンスが95%の株式を取得した後も、東芝映像ソリューションの事業組織や販売体制は、現在と変わらない体制で運用する。「株主が変わるだけで、お客様からみたらこれまでと何も変わりません」と村沢社長は説明。これらの方向性については、東芝とハイセンスが取り決めたもので、今後大きく変わることはないという。
■ハイセンス傘下でスケールメリットや新たな投資に期待
村沢社長はむしろ、新体制になることのメリットを強調する。
「REGZAは近年、日本市場向けのみの展開となっていたので、率直に申し上げて、規模面では弱点を持っていました。一方のハイセンスは、テレビメーカーとして世界3位のシェアを誇り、年間1,800万台規模の生産規模を持っています。このスケールメリットを活かせば、これまでの品質をまったく変えず、コストを下げられる可能性があります」。
また村沢氏は、「東芝本体の経営問題のゴタゴタがあり、これまでは成長投資を行うことが難しかったのですが、今後は新たな投資によって、技術開発力と商品販売力を強化することも可能になります」と説明。今後ハイセンスとの話し合いで細かなところを詰めていくが、広告や販売への投資を増やせる可能性があると見込んでいるようだ。
■研究部門と設計開発部門が一体化。開発効率が高まる
ここからは、REGZAの今後の研究開発体制について見ていこう。
村沢社長はREGZAの研究開発について「歴代REGZAを開発してきた研究部門と設計開発部門の技術者によって、高画質モデルの開発や商品化を、さらに強化していきます」と宣言した。
「さらに強化する」という言葉が心強いのだが、それにはもちろん裏付けがある。
これまでのREGZAの開発は、主に2つの拠点で行われていた。東芝映像ソリューションに属する「設計統括部」が、おもに直近1〜2年先の製品までの技術開発を行っていた一方、東芝本体にも「ソリューション開発センター」という100名弱の組織があり、こちらでは2〜3年先の未来を見据え、映像エンジンや、TimeOnなどクラウドサービスの研究開発を行っていたのだ。
たとえば映像エンジンを例に取ると、東芝映像ソリューションから東芝に対してエンジンの開発委託を行っていた、という関係だった。
新体制では、この関係も変わる。東芝本体のソリューション開発センターが東芝映像ソリューションに移り、東芝映像ソリューション社内に研究部門と設計開発部門が一体化する。これは開発効率を上げるためで、結果として最先端映像技術を駆使した新製品をスピーディーに投入できるようになるという。100名弱の研究部門のエンジニアが移管することで、東芝映像ソリューション自体も今までの700名程度から800名程度へと増員される。
■新映像エンジンも開発中。画質を突き詰める姿勢は変わらない
このような体制で、どのようなREGZAを作っていくのか。質問すると、村沢社長は「高画質を突き詰めるという、これまでの姿勢は全く変わりません」と言い切った。
「ある意味で頑固な開発体制なのかもしれませんが、今後も高画質・高音質というところには徹底的にこだわっていきます。今後、有機ELの比率はさらに高まるかもしれません。あるいは、数年後には8Kに変わるかもしれません。そのようにパネルデバイスが変わっても、我々は独自の映像エンジンで、最高の画質をそのパネルから引っ張り出す。そのための研究を続けています」。
映像エンジンについては、設計統括部 部長の岩井啓助氏が、REGZAファンにとって大変心強いことを明かしてくれた。
「実はいま、研究部門では新たな映像エンジンを作っています。先ほど、研究部門は2〜3年先を見た研究開発を行っているとご紹介しましたが、タネは先に蒔いておかないと実りません。いま開発しているエンジンは、2019年の製品に搭載することを目標にしています。これまでの2K/4Kの世界を超えて、8Kまでカバーする、パワフルで演算処理能力が高く、画質をさらに高められるエンジンです」。
村沢社長も「4K/HDRの時代になって、そしてこれから8Kも出てくるなかで、どうやって画質をさらに向上させるか、すでに様々な開発を行っています。また今後は、海外も視野に入れた開発を行う可能性もありますので、どう対応するか、技術者同士で熱く会話が交わされているようです」と、新体制によって、研究開発が一体化されるメリットを説く。
■4K/大型テレビが増え、東芝映像ソリューションには追い風
東芝が新エンジンの開発を急ぐ背景には、市場環境として、国内テレビ需要が復活すると予想されることがある。
地デジ以降の特需に沸いた2009年〜2011年以降、2012年から昨年までは、国内テレビ市場は微減を続け、今年もほぼ横ばいの見込みだ。
一方、地デジ移行期に購入したテレビの買い換えサイクルは、8年から長くても10年程度と考えられ、今後は買い換え需要が一気に高まる。さらに来年以降は毎年のようにビッグスポーツイベントが控えていることから「2018年〜2020年までは市場が再び拡大する」と村沢社長は説明する。「2020年度は900万台と予想しているが、これもあくまでコンサバな数字。1,000万台規模まではいきそうだと考えています」。
また、2018年12月には4K BS放送の開始も控えている。こういった市場環境を背景に、同社調べで今年、40V型以上のテレビのうち71.5%だった4K比率が、今後さらに増えると予測。2020年には85%以上になる可能性があるという。
さらに、リビングに置かれているテレビの大型化も加速している。これまで日本では32V型の比率が高かったが、徐々に大型化が進み、いまでは3分の1以下になった。今後はさらに40V型以上の比率が高まると予想される。
「つまり今後、4K化と大画面化がさらに加速していきますが、これが東芝REGZAにとって追い風となります」と村沢社長。大型になればなるほど、東芝が得意とする映像処理技術が重要になる。東芝映像ソリューションは、これを好機と捉えているのだ。
「2018年から2020年までは市場が間違いなく盛り上がります。今回の新体制になったことで、その市場拡大に『なんとか間に合った』というのが実感です。未来への投資ができ、大きく増えるニーズを取り込めますから」。
一方で8Kについては、「基本的な開発はすでに終わっており、準備は怠りなく済んでいます」とするものの、「まずは4Kを根付かせることが大事です。せっかくお客様が4Kに向いているときに、8Kで中途半端な商品を出すと、かえって混乱させてしまう可能性があります」と、まずは4Kに焦点を当てて商品開発やマーケティングを行っていく考えを示した。
放送だけでなく、VOD/SVODなどの高画質化についてはどう考えているのか。これについては岩井氏が「もちろん、お客様の求めるもの、よく見られるコンテンツに対してしっかり高画質化するということをやっていきます」と説明する。
「もともとREGZAはずっと超解像技術をやってきており、実はネット動画の高画質化をやったのはCELL REGZAがはじめてです。そういう意味では、取り組みは早かったのです。とはいえ、これまでは放送の高画質化に注力している傾向はあったので、今後はネット動画の高画質化にも力を注いでいきます」。
なお東芝映像ソリューションでは、テレビだけでなくBDレコーダーやプレーヤー、サウンドバー、デジタルサイネージなどの事業を手がけているが、これらの開発・販売についても継続して行われるという。これも東芝ファンにとって朗報と言えるだろう。具体的には4K放送のレコーダーなどが期待されるところだが、これについては「まだ今のところ決めていない」(村沢氏)という。
◇
新体制においても、最先端の映像技術をコアコンピタンスとした成長戦略により、映像事業をさらに強化するという東芝映像ソリューション。AVファンにとって、数々の名機を送り出してきた東芝のテレビ事業が今後も変わらず継続されるというのは、大変心強いことだ。今後のREGZAがどう進化していくのか、期待が高まる。
東芝映像ソリューション株式会社は2018年3月1日から、ハイセンスが95%の株式を持ち、残り5%を東芝が持つ新体制に変わる。現在は各国の独禁法をクリアする手続きなどを行っている段階で、2月末までにはそれらの手続きを終え、新たな体制へ移行する予定だ。
この発表を受けて、多くのAVファンが気になるのは、TOSHIBAブランド、REGZAブランドのテレビが今後どうなってしまうのか、ということだろう。
実際、中国の巨大メーカーの資本が入るというニュースを受けて、ブランドの存続すら危ぶむ声がネット上に相次いで投稿された。果たして実態はどうなのか。同社 取締役社長の村沢圧司氏、設計統括部 部長の岩井啓助氏に話を聞いた。
■これまで買ったREGZAも、今後買うREGZAも、修理・サポート体制は変わらない
まず事実関係を整理しておこう。11月14日時点でのニュースリリースには「株式譲渡後も東芝映像ソリューションの社名変更などは行われず、TOSHIBA・REGZAブランド映像商品の自社開発・販売・修理を継続する」旨が記載されていた。
研究開発など未来を向いた話の前に、修理やサポート体制について聞いた。特に今は、冬のボーナスがちょうど出たタイミングで、4Kテレビが気になっている方も多いはず。REGZAの購入を検討している方にとっては、サポート体制がどうなるかは大変気になるところだ。
質問に対して村沢社長は、「これまで販売したREGZAや、これから発売するREGZAにおける修理体制やサポート体制も、これまでと変わらず継続します」と明言。「東芝のREGZAを買っていただいて大丈夫です。それどころか今後、映像事業をますます強化していきます」と力強く宣言した。
なおハイセンスが95%の株式を取得した後も、東芝映像ソリューションの事業組織や販売体制は、現在と変わらない体制で運用する。「株主が変わるだけで、お客様からみたらこれまでと何も変わりません」と村沢社長は説明。これらの方向性については、東芝とハイセンスが取り決めたもので、今後大きく変わることはないという。
■ハイセンス傘下でスケールメリットや新たな投資に期待
村沢社長はむしろ、新体制になることのメリットを強調する。
「REGZAは近年、日本市場向けのみの展開となっていたので、率直に申し上げて、規模面では弱点を持っていました。一方のハイセンスは、テレビメーカーとして世界3位のシェアを誇り、年間1,800万台規模の生産規模を持っています。このスケールメリットを活かせば、これまでの品質をまったく変えず、コストを下げられる可能性があります」。
また村沢氏は、「東芝本体の経営問題のゴタゴタがあり、これまでは成長投資を行うことが難しかったのですが、今後は新たな投資によって、技術開発力と商品販売力を強化することも可能になります」と説明。今後ハイセンスとの話し合いで細かなところを詰めていくが、広告や販売への投資を増やせる可能性があると見込んでいるようだ。
■研究部門と設計開発部門が一体化。開発効率が高まる
ここからは、REGZAの今後の研究開発体制について見ていこう。
村沢社長はREGZAの研究開発について「歴代REGZAを開発してきた研究部門と設計開発部門の技術者によって、高画質モデルの開発や商品化を、さらに強化していきます」と宣言した。
「さらに強化する」という言葉が心強いのだが、それにはもちろん裏付けがある。
これまでのREGZAの開発は、主に2つの拠点で行われていた。東芝映像ソリューションに属する「設計統括部」が、おもに直近1〜2年先の製品までの技術開発を行っていた一方、東芝本体にも「ソリューション開発センター」という100名弱の組織があり、こちらでは2〜3年先の未来を見据え、映像エンジンや、TimeOnなどクラウドサービスの研究開発を行っていたのだ。
たとえば映像エンジンを例に取ると、東芝映像ソリューションから東芝に対してエンジンの開発委託を行っていた、という関係だった。
新体制では、この関係も変わる。東芝本体のソリューション開発センターが東芝映像ソリューションに移り、東芝映像ソリューション社内に研究部門と設計開発部門が一体化する。これは開発効率を上げるためで、結果として最先端映像技術を駆使した新製品をスピーディーに投入できるようになるという。100名弱の研究部門のエンジニアが移管することで、東芝映像ソリューション自体も今までの700名程度から800名程度へと増員される。
■新映像エンジンも開発中。画質を突き詰める姿勢は変わらない
このような体制で、どのようなREGZAを作っていくのか。質問すると、村沢社長は「高画質を突き詰めるという、これまでの姿勢は全く変わりません」と言い切った。
「ある意味で頑固な開発体制なのかもしれませんが、今後も高画質・高音質というところには徹底的にこだわっていきます。今後、有機ELの比率はさらに高まるかもしれません。あるいは、数年後には8Kに変わるかもしれません。そのようにパネルデバイスが変わっても、我々は独自の映像エンジンで、最高の画質をそのパネルから引っ張り出す。そのための研究を続けています」。
映像エンジンについては、設計統括部 部長の岩井啓助氏が、REGZAファンにとって大変心強いことを明かしてくれた。
「実はいま、研究部門では新たな映像エンジンを作っています。先ほど、研究部門は2〜3年先を見た研究開発を行っているとご紹介しましたが、タネは先に蒔いておかないと実りません。いま開発しているエンジンは、2019年の製品に搭載することを目標にしています。これまでの2K/4Kの世界を超えて、8Kまでカバーする、パワフルで演算処理能力が高く、画質をさらに高められるエンジンです」。
村沢社長も「4K/HDRの時代になって、そしてこれから8Kも出てくるなかで、どうやって画質をさらに向上させるか、すでに様々な開発を行っています。また今後は、海外も視野に入れた開発を行う可能性もありますので、どう対応するか、技術者同士で熱く会話が交わされているようです」と、新体制によって、研究開発が一体化されるメリットを説く。
■4K/大型テレビが増え、東芝映像ソリューションには追い風
東芝が新エンジンの開発を急ぐ背景には、市場環境として、国内テレビ需要が復活すると予想されることがある。
地デジ以降の特需に沸いた2009年〜2011年以降、2012年から昨年までは、国内テレビ市場は微減を続け、今年もほぼ横ばいの見込みだ。
一方、地デジ移行期に購入したテレビの買い換えサイクルは、8年から長くても10年程度と考えられ、今後は買い換え需要が一気に高まる。さらに来年以降は毎年のようにビッグスポーツイベントが控えていることから「2018年〜2020年までは市場が再び拡大する」と村沢社長は説明する。「2020年度は900万台と予想しているが、これもあくまでコンサバな数字。1,000万台規模まではいきそうだと考えています」。
また、2018年12月には4K BS放送の開始も控えている。こういった市場環境を背景に、同社調べで今年、40V型以上のテレビのうち71.5%だった4K比率が、今後さらに増えると予測。2020年には85%以上になる可能性があるという。
さらに、リビングに置かれているテレビの大型化も加速している。これまで日本では32V型の比率が高かったが、徐々に大型化が進み、いまでは3分の1以下になった。今後はさらに40V型以上の比率が高まると予想される。
「つまり今後、4K化と大画面化がさらに加速していきますが、これが東芝REGZAにとって追い風となります」と村沢社長。大型になればなるほど、東芝が得意とする映像処理技術が重要になる。東芝映像ソリューションは、これを好機と捉えているのだ。
「2018年から2020年までは市場が間違いなく盛り上がります。今回の新体制になったことで、その市場拡大に『なんとか間に合った』というのが実感です。未来への投資ができ、大きく増えるニーズを取り込めますから」。
一方で8Kについては、「基本的な開発はすでに終わっており、準備は怠りなく済んでいます」とするものの、「まずは4Kを根付かせることが大事です。せっかくお客様が4Kに向いているときに、8Kで中途半端な商品を出すと、かえって混乱させてしまう可能性があります」と、まずは4Kに焦点を当てて商品開発やマーケティングを行っていく考えを示した。
放送だけでなく、VOD/SVODなどの高画質化についてはどう考えているのか。これについては岩井氏が「もちろん、お客様の求めるもの、よく見られるコンテンツに対してしっかり高画質化するということをやっていきます」と説明する。
「もともとREGZAはずっと超解像技術をやってきており、実はネット動画の高画質化をやったのはCELL REGZAがはじめてです。そういう意味では、取り組みは早かったのです。とはいえ、これまでは放送の高画質化に注力している傾向はあったので、今後はネット動画の高画質化にも力を注いでいきます」。
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