公開日 2019/11/08 17:31
日本でもいよいよ本格始動。 ハイレゾストリーミングはネットオーディオソースの本命だ!
オーディオ評論家・山之内 正氏&土方久明氏が語る
今秋Amazon Music HDやmora qualitasがローンチしたことで、日本でもハイレゾストリーミングが本格的に始まった。ここでは10月19日に発売した『季刊Net Audio vol.36』に掲載されるハイレゾストリーミング特集記事より、早い時期からオーディオソースとしてストリーミングを取り入れている山之内 正氏、土方久明氏による対談の全文をお届けしよう。
■オーディオファンのソースとしては「44.1kH/16bit以上」であることが鍵
―― Amazon Music HDとmora qualitas、この秋、ふたつのハイレゾストリーミングが日本で立ち上がりました。本項では、お二人が思うハイレゾストリーミングの素晴らしさやこれからの課題などを語っていただきたいと思います。現在のハイレゾストリーミングはTIDAL、QobuzにAmazon Music HDとmora qualitasが加わり4大サービスがあるといった状況になっておりますが、ここまでに至るまでの流れを俯瞰して語っていただけますでしょうか?
山之内 正氏(以下、山之内氏): まずハイレゾ音源の配信については、ストリーミングが始まる前、2007年くらいからダウンロード配信が始まっていました。高音質ストリーミングとなると、2008年にベルリン・フィルのデジタルコンサートホールが映像つきのストリーミングを始めています。時期が非常に早く、ひとつの先駆けとして注目されました。
2008年当時のものなので音源は320kbpsのクオリティでしたが、最大の付加価値は映像があることです。また、ナクソスのミュージックライブラリのような、データベースの完成度が非常に高いストリーミングサービスに関しても、やっぱり大きな付加価値があるので利用する人は今もいると思います。
これらは規模は大きくないものの、付加価値の高いストリーミングサービスの先駆けとして、実は10年以上前からスタートしていました。そのような下地と言える期間が何年か続いて、海外では2013、2014年くらいから本格的にハイレゾストリーミングが注目されるようになった経緯があります。
日本では2013年秋にソニーがハイレゾに参入し、ロゴを作ってウォークマンをハイレゾ対応にさせたことでハイレゾの認知も高まりました。同じ頃、カンヌで行われたイベント「MIDEM」では、HD tracksのデイヴィッド・チェスキーやQobuzのイブ・リーゼルが参加したセッションが行われたのですが、ほぼ全員が「これから高音質ストリーミングの時代が来る」という意見でした。
その後、海外ではTIDALの44.1kHz/24bitのストリーミングや、Qobuzの96kHz/24bitストリーミングが始まりました。サービス対象地域がどう展開するかという課題がありますが、ハイレゾストリーミングの流れは確実に広がっています。
土方久明氏(以下、土方氏): その通りですよね。この配信に関して、日本は世界的に見ても一番遅れている地域のひとつでした。
僕が最初にストリーミングに接したのは、2010年前半にソニーが始めたミュージックアンリミテッドです。当時2,500万曲が月額980円で聴けて、サービスは2015年くらいに終わってしまいましたが、ストリーミングというものを意識したのはその頃です。すごい時代が始まったなと思いましたが、僕はオーディオファンなのでCD以下の音質に馴染めず、ソースのひとつにはなり得ませんでした。
その後、2014年10月にTIDALがスタートして、次の年にはLINNの「DS」がKazooと共にTIDALに対応しました。その時に初めて、ストリーミングを一つのソースとして認識するようになったんです。
僕のオーディオにおける出来事の中で、一番ショッキングでインパクトがあったのがストリーミングでした。それまでは音楽ソフト1作品に対してお金を出すというスタイルでしたが、ストリーミングというのは、1に対してほぼ無限大(と感じられるほど)のソフトが聴けるわけですから。
そしてTIDALを聴くようになって、CD同等の音質がストリーミングで聴けるというのも衝撃的でした。続いてQobuzがハイレゾストリーミングを開始し、TIDALもMQAを採用したTIDAL Mastersをスタートして、CDクオリティ以上か、それ以下かという線引きができました。
ただ一番大きな問題は、日本でこれらのサービスが正式スタートしていなかったことです。TIDAL、Qobuzは海外でアカウントを取ってきて使用するといった裏技を使わざるを得なかったのです。
海外メーカーの製品ではTIDALに対応しているものもありましたが、国産の機器はほぼ圧縮のストリーミング止まりでした。僕はイベントなどで「Spotifyで良い楽曲をかければ」と思い試してみたのですが、来場者の反応はいまひとつ。海外製品などでハイレゾストリーミングをかけるとあからさまに反応が良かったです。
ここに来て今回「日本でもハイレゾストリーミングサービスが正式にスタートした」ということは、オーディオファンにとって大きな福音なのです。これからは対応製品も増えていくことでしょう。
■オーディオファンのソースとしては「44.1kH/16bit以上」であることが鍵
―― Amazon Music HDとmora qualitas、この秋、ふたつのハイレゾストリーミングが日本で立ち上がりました。本項では、お二人が思うハイレゾストリーミングの素晴らしさやこれからの課題などを語っていただきたいと思います。現在のハイレゾストリーミングはTIDAL、QobuzにAmazon Music HDとmora qualitasが加わり4大サービスがあるといった状況になっておりますが、ここまでに至るまでの流れを俯瞰して語っていただけますでしょうか?
山之内 正氏(以下、山之内氏): まずハイレゾ音源の配信については、ストリーミングが始まる前、2007年くらいからダウンロード配信が始まっていました。高音質ストリーミングとなると、2008年にベルリン・フィルのデジタルコンサートホールが映像つきのストリーミングを始めています。時期が非常に早く、ひとつの先駆けとして注目されました。
2008年当時のものなので音源は320kbpsのクオリティでしたが、最大の付加価値は映像があることです。また、ナクソスのミュージックライブラリのような、データベースの完成度が非常に高いストリーミングサービスに関しても、やっぱり大きな付加価値があるので利用する人は今もいると思います。
これらは規模は大きくないものの、付加価値の高いストリーミングサービスの先駆けとして、実は10年以上前からスタートしていました。そのような下地と言える期間が何年か続いて、海外では2013、2014年くらいから本格的にハイレゾストリーミングが注目されるようになった経緯があります。
日本では2013年秋にソニーがハイレゾに参入し、ロゴを作ってウォークマンをハイレゾ対応にさせたことでハイレゾの認知も高まりました。同じ頃、カンヌで行われたイベント「MIDEM」では、HD tracksのデイヴィッド・チェスキーやQobuzのイブ・リーゼルが参加したセッションが行われたのですが、ほぼ全員が「これから高音質ストリーミングの時代が来る」という意見でした。
その後、海外ではTIDALの44.1kHz/24bitのストリーミングや、Qobuzの96kHz/24bitストリーミングが始まりました。サービス対象地域がどう展開するかという課題がありますが、ハイレゾストリーミングの流れは確実に広がっています。
土方久明氏(以下、土方氏): その通りですよね。この配信に関して、日本は世界的に見ても一番遅れている地域のひとつでした。
僕が最初にストリーミングに接したのは、2010年前半にソニーが始めたミュージックアンリミテッドです。当時2,500万曲が月額980円で聴けて、サービスは2015年くらいに終わってしまいましたが、ストリーミングというものを意識したのはその頃です。すごい時代が始まったなと思いましたが、僕はオーディオファンなのでCD以下の音質に馴染めず、ソースのひとつにはなり得ませんでした。
その後、2014年10月にTIDALがスタートして、次の年にはLINNの「DS」がKazooと共にTIDALに対応しました。その時に初めて、ストリーミングを一つのソースとして認識するようになったんです。
僕のオーディオにおける出来事の中で、一番ショッキングでインパクトがあったのがストリーミングでした。それまでは音楽ソフト1作品に対してお金を出すというスタイルでしたが、ストリーミングというのは、1に対してほぼ無限大(と感じられるほど)のソフトが聴けるわけですから。
そしてTIDALを聴くようになって、CD同等の音質がストリーミングで聴けるというのも衝撃的でした。続いてQobuzがハイレゾストリーミングを開始し、TIDALもMQAを採用したTIDAL Mastersをスタートして、CDクオリティ以上か、それ以下かという線引きができました。
ただ一番大きな問題は、日本でこれらのサービスが正式スタートしていなかったことです。TIDAL、Qobuzは海外でアカウントを取ってきて使用するといった裏技を使わざるを得なかったのです。
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