公開日 2020/12/28 06:40
生活と音楽の関係。マランツMODEL 30シリーズのデザインを、インテリアコーディネーターと考える
【特別企画】
マランツから、16年ぶりにデザインを全面刷新したHi-Fiコンポーネント“MODEL 30シリーズ”「MODEL 30」「SACD 30n」が登場した。インテリアや家電、ガジェットなどオーディオ機器の周辺環境が変化してきたことを踏まえ、マランツの伝統を受け継ぎつつ新たなマイルストーンとなる洗練されたデザインをまとった同シリーズ。デザインを担当したD&Mホールディングスの鈴木丈二氏とオーディオ評論家の大橋伸太郎氏、大和ハウス工業の玄 晴夫氏とインテリアコーディネーターの金指有美氏が、MODEL 30シリーズのデザインについて語り合った。
■音楽の聴き方は変化した。オーディオ機器はどうあるべきか。
大橋:音楽の聴き方が大きな変化を迎えているなか、マランツの新たな顔を備えたMODEL 30シリーズが登場しましたね。
これまではCDやアナログレコードといったパッケージメディアが中心にありましたが、今やストリーミングにサブスクリプションでお金を払って音楽を聴く時代です。ですから、大多数の方はパッケージを買わなくなってきている。好きな音楽の世界が、実際に目には見えない、ネットワークの向こう側の存在になってきている。しかも音楽を聴くシステム自体もどんどん小さくなってきて、完全に隠してしまうことすら可能になっている。
だからこそ、逆に、音楽を聴くということをロマンだと捉えて、対話性のあるコンポーネントがもう一度欲しいというニーズが出てくるのではないでしょうか。私は、MODEL 30シリーズはそれに応えるものだと感じています。
鈴木:はい、MODEL 30シリーズは、音楽の聴き方が大きく変化するなかで、オーディオ機器がこのかたちであることの価値とは何なのかをまず考えることからスタートしました。
そもそもオーディオ製品のデザイントレンドですが、大きな流れとしてはどんどんミニマル化しています。これは日本国内のオーディオ市場が小さくなってきはじめて、海外オーディオに目を向ける方が増えてきたことも関係しているように思います。
ミニマルな方向に振れていくということは、インテリアや周りの環境に対して強く主張しない、むしろオーディオ機器の方からインテリアに調和していく方向になっていると捉えています。
しかし、マランツブランドはかなり特殊で、個性的なブランドです。そういうブランドの製品デザインを変えるにあたって、脈絡のないトレンドに沿ったデザインにするのではなく、これまで築き上げたものを継承するということが大切であると考えました。
長く続くマランツの歴史のなかには、ポートホールや左右対称レイアウトなど、アイコニックな要素が沢山あります。こういったものは必ず継承していこう、MODEL 30シリーズはマランツの歴史の流れが進んだ先にあるものなのだ、と意識していました。
そのうえでマランツの新しい顔はどうあるべきかを考えたとき、「音楽性を大事にする」というコンセプトがあがりました。これを表現したのが、フロントパネルの左右にある「螺旋」をモチーフにしたパターンです。
■“音楽の生まれるところ”を表現した「螺旋」デザイン
大橋:私には、この「螺旋」は「音の波動」のように感じられてなりません。音楽というのは空気中の分子の収縮、拡散が波動を生んで生み出されるものです。つまり、あらゆる音楽が波動であり、MODEL 30シリーズはそれを表象しているのだ、と。
鈴木:まさに「ここから音楽が発生している」というイメージ、音の広がりをビジュアライズしたものです。それを演出するために照明など色々なものも仕込んで、音楽性そのものが見えるかのようにしたいと考えました。螺旋をモチーフにすることはかなり初期から決まっていました。音の広がりとともに、マランツブランドをもう一度広げたいという願いもこめています。
大橋:人間の聴覚と視覚というのは脳の中でクロスオーバーして、この周波数を聴くとこの色が想起されるというような現象があるそうですね。「共感覚(synesthesia)」というそうです。今回の螺旋は見ていると、さざなみのように音楽が聞こえてくる。良い音がする予感がする、というのは優れたオーディオ製品の条件だと思います。
たとえば1970年代のマランツにMODEL 1250というプリメインアンプがありました。それはすごく豪華な金色のパネルで、ウッドケースがあって、トーンコントロールもバス/ミッド/トレブルがあってすごくつまみが多い……だけど、かっこいいんですよ。その金色のパネルを眺めていると、カウント・ベイシー・オーケストラのまばゆい金管アンサンブルが聞こえてくるような、そんな存在だったんです。音楽が聞こえてくるデザインの代表だと思います。だから逆に、室内楽が好きな人は敬遠するかも知れない(笑)。でもそれって趣味製品にとっては大事なことだと思うんです。
鈴木:そう思います。デザインを考えるうえで、10人のお客様全員に好かれるデザインというものは目指していません。「好きじゃない」と言われても、残念ではありますがそれでいいと思っています。全てを満たすデザインはないですし、それがマランツの姿勢だと私は思っています。
■音楽の聴き方は変化した。オーディオ機器はどうあるべきか。
大橋:音楽の聴き方が大きな変化を迎えているなか、マランツの新たな顔を備えたMODEL 30シリーズが登場しましたね。
これまではCDやアナログレコードといったパッケージメディアが中心にありましたが、今やストリーミングにサブスクリプションでお金を払って音楽を聴く時代です。ですから、大多数の方はパッケージを買わなくなってきている。好きな音楽の世界が、実際に目には見えない、ネットワークの向こう側の存在になってきている。しかも音楽を聴くシステム自体もどんどん小さくなってきて、完全に隠してしまうことすら可能になっている。
だからこそ、逆に、音楽を聴くということをロマンだと捉えて、対話性のあるコンポーネントがもう一度欲しいというニーズが出てくるのではないでしょうか。私は、MODEL 30シリーズはそれに応えるものだと感じています。
鈴木:はい、MODEL 30シリーズは、音楽の聴き方が大きく変化するなかで、オーディオ機器がこのかたちであることの価値とは何なのかをまず考えることからスタートしました。
そもそもオーディオ製品のデザイントレンドですが、大きな流れとしてはどんどんミニマル化しています。これは日本国内のオーディオ市場が小さくなってきはじめて、海外オーディオに目を向ける方が増えてきたことも関係しているように思います。
ミニマルな方向に振れていくということは、インテリアや周りの環境に対して強く主張しない、むしろオーディオ機器の方からインテリアに調和していく方向になっていると捉えています。
しかし、マランツブランドはかなり特殊で、個性的なブランドです。そういうブランドの製品デザインを変えるにあたって、脈絡のないトレンドに沿ったデザインにするのではなく、これまで築き上げたものを継承するということが大切であると考えました。
長く続くマランツの歴史のなかには、ポートホールや左右対称レイアウトなど、アイコニックな要素が沢山あります。こういったものは必ず継承していこう、MODEL 30シリーズはマランツの歴史の流れが進んだ先にあるものなのだ、と意識していました。
そのうえでマランツの新しい顔はどうあるべきかを考えたとき、「音楽性を大事にする」というコンセプトがあがりました。これを表現したのが、フロントパネルの左右にある「螺旋」をモチーフにしたパターンです。
■“音楽の生まれるところ”を表現した「螺旋」デザイン
大橋:私には、この「螺旋」は「音の波動」のように感じられてなりません。音楽というのは空気中の分子の収縮、拡散が波動を生んで生み出されるものです。つまり、あらゆる音楽が波動であり、MODEL 30シリーズはそれを表象しているのだ、と。
鈴木:まさに「ここから音楽が発生している」というイメージ、音の広がりをビジュアライズしたものです。それを演出するために照明など色々なものも仕込んで、音楽性そのものが見えるかのようにしたいと考えました。螺旋をモチーフにすることはかなり初期から決まっていました。音の広がりとともに、マランツブランドをもう一度広げたいという願いもこめています。
大橋:人間の聴覚と視覚というのは脳の中でクロスオーバーして、この周波数を聴くとこの色が想起されるというような現象があるそうですね。「共感覚(synesthesia)」というそうです。今回の螺旋は見ていると、さざなみのように音楽が聞こえてくる。良い音がする予感がする、というのは優れたオーディオ製品の条件だと思います。
たとえば1970年代のマランツにMODEL 1250というプリメインアンプがありました。それはすごく豪華な金色のパネルで、ウッドケースがあって、トーンコントロールもバス/ミッド/トレブルがあってすごくつまみが多い……だけど、かっこいいんですよ。その金色のパネルを眺めていると、カウント・ベイシー・オーケストラのまばゆい金管アンサンブルが聞こえてくるような、そんな存在だったんです。音楽が聞こえてくるデザインの代表だと思います。だから逆に、室内楽が好きな人は敬遠するかも知れない(笑)。でもそれって趣味製品にとっては大事なことだと思うんです。
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12/20 10:05 更新