公開日 2007/10/08 13:33
<岩井喬の真空管フェア(1)>ヒノオーディオ/山本音響工芸/カインラボの注目製品
第13回真空管オーディオ・フェアが10月6日より、東京・秋葉原損保会館にて開催された。毎年、秋のこの時期には複数のオーディオイベントが同時に開催され、地方から上京されるオーディオファンにとっては時間が幾らあっても足りないほど、それぞれのイベントが有意義なものであると思う。
この真空管オーディオ・フェアは出展社は比較的少ないものの、密度感が濃いイベントとして定着してきた感がある。真空管が軸になっているからといって、決して懐古的なサウンドで溢れているわけではない。有機的な響きで溢れたサウンドも楽しめる、奥深い出展の数々が集まるイベントとなっており、一味違った新たなオーディオの魅力に気付ける2日間であると考えている。
その中から特徴的なイベントを行っていた出展ブースのいくつかをご紹介していきたいと思う。
■ヒノオーディオ
北米パイオニアでTAD製品の立案に携わってきたというエド氏が独立、管球アンプで聴くアルテックサウンドを小型スピーカーでも実現できないかというアイデアを具体化した小型スピーカーがMhiの「EVIDENCE MM01A」(ペア¥84,000)である。新開発4.5インチウーファーユニットは通常の低域再生を担うよりも広い帯域をカバーしているという。それは一つのユニットで倍音も含めたボーカル帯域を再生したいという試みから生まれたそうで、組み合わされる高域ユニットはパイオニア製リボントゥイーターユニットである。能率は管球アンプを意識したという言葉通り90dBというスペックを持っている。
同社では長年スピーカーキャビネットのキットを取り扱ってきているが、今回登場したのはスパイラルホーンキットである。発売はいま少し先ということだが、オリジナルユニット付きでペア5万円ほどの価格を予定しているという。構造的にはバックロードホーンと同じタイプとなるのだが、取り付け口径の違うユニットでも装着できるよう、ユニット周辺部を切り抜いてあるキャビネット構造はユニークである。
さらに同社は近年管球アンプのキット及び完成品も数多く手がけているのだが、新たに2A3シングルアンプキット「NewHG-2A3」と300Bシングルアンプキット「NewHG-300B」が出展されていた。Jamesトランスタイプ、タンゴトランスタイプ、さらにタムラトランスタイプと好みのトランスを使えるようラインナップを揃える予定だという。価格的にはタンゴタイプの方が5〜6000円ほど高くなるのではないかとのこと。そして昨年の同イベントで出展されていたモデルをバージョンアップさせた「HE-55M Limited」(2台1組¥1,000,000)も出展。新開発の実用新案申請中であるEK回路により中低域〜高域にかけて厚みを持たせたサウンドつくりを行い、高音質であるショットキーダイオードの採用など、全体的にブラッシュアップを計っているが価格は据え置かれている。本機は同社のフラッグシップでもあるが、バージョンアップしても同じ価格というのはとても良心的だ。
■山本音響工芸
美しい木材ベースのシャーシを用いたアンプやラックなどでおなじみの同社であるが、プリアンプを用いずに使うことができる、ボリューム付き2A3シングルパワーアンプ「A-011」(RCA製2A3付き¥399,000)のサウンドが出展ブースで確認できた。試聴時はチェコで製造されている高級真空管・エミッションラボ製2A3が換装されていた。直熱三極管シングルアンプ特有の澄み切ったサウンドに、エミッションラボ製真空管の効果が加わってよりエッジの効いた、質感表現の深いものとなっているようであった。
この時接続されていたスピーカーは、アルテック604-8Kが搭載された「YS-604」(1本¥630,000)である。170リットルという大型のエンクロージャーに収められ、堂々とした佇まい。同社ならではの角が取れたフォルムと木目を生かした美しい塗装処理により、ユニットがさらに際立っている。シングルアンプとの組み合わせということもあるが、穏やかで落ち着きのある傾向とどっしりと重心の下がった厚みのある低域感はさすが15インチユニットといえるものだ。マンタレイホーンからの高域サウンドもきつさはなく、CDでもアナログソースでも難なく再生をこなしていた。
■カインラボラトリージャパン
同社のブースでは取り扱いブランドの中でも特にオーディオスペース製品を中心にラインナップが勢揃いしていた。今回初出展となったのは同ブランドのフラッグシップである「Reference」シリーズの最新プリメインアンプ・モデル「Reference-3.1」(300B・¥346,500/KT88・¥262,500)の300B版とKT88版である。
ともに基本的な入出力や構成は近いものとなっており、出力段が3極管の300Bプッシュプルか5極管のKT88プッシュプルかという部分が相違点となる。ともに負帰還がかけられた構成で、帰還量の切り替えも行える。またMM型フォノアンプも内蔵しているのでアナログユーザーにも嬉しい配慮となっている。ちなみに300B版ではヒーターがDC点火となっており、KT88版はUL/3極管切り替えが行える。筐体デザインは上級モデル譲りで、非常に安定感とゴージャスさが光る、高級アンプといった風貌となっている。好みによって繊細な300B版か押し出し感の強いKT88版か選択できるというポイントはとてもユニークだと思う。
そして「Reference」シリーズの最高峰「Reference One」の縮小版ともいえる「Reference Three」(ペア¥735,000)も出展されており、深みのある広大なサウンドを提供していた。出力が「Reference One」の半分に近い26W/chとなっているが、1本の845を1本の300Bでドライブするというモノラルブロック構成なので、アンプの動作的な余裕度は大変高くなってくるのではないだろうか。
(岩井喬)
この真空管オーディオ・フェアは出展社は比較的少ないものの、密度感が濃いイベントとして定着してきた感がある。真空管が軸になっているからといって、決して懐古的なサウンドで溢れているわけではない。有機的な響きで溢れたサウンドも楽しめる、奥深い出展の数々が集まるイベントとなっており、一味違った新たなオーディオの魅力に気付ける2日間であると考えている。
その中から特徴的なイベントを行っていた出展ブースのいくつかをご紹介していきたいと思う。
■ヒノオーディオ
北米パイオニアでTAD製品の立案に携わってきたというエド氏が独立、管球アンプで聴くアルテックサウンドを小型スピーカーでも実現できないかというアイデアを具体化した小型スピーカーがMhiの「EVIDENCE MM01A」(ペア¥84,000)である。新開発4.5インチウーファーユニットは通常の低域再生を担うよりも広い帯域をカバーしているという。それは一つのユニットで倍音も含めたボーカル帯域を再生したいという試みから生まれたそうで、組み合わされる高域ユニットはパイオニア製リボントゥイーターユニットである。能率は管球アンプを意識したという言葉通り90dBというスペックを持っている。
同社では長年スピーカーキャビネットのキットを取り扱ってきているが、今回登場したのはスパイラルホーンキットである。発売はいま少し先ということだが、オリジナルユニット付きでペア5万円ほどの価格を予定しているという。構造的にはバックロードホーンと同じタイプとなるのだが、取り付け口径の違うユニットでも装着できるよう、ユニット周辺部を切り抜いてあるキャビネット構造はユニークである。
さらに同社は近年管球アンプのキット及び完成品も数多く手がけているのだが、新たに2A3シングルアンプキット「NewHG-2A3」と300Bシングルアンプキット「NewHG-300B」が出展されていた。Jamesトランスタイプ、タンゴトランスタイプ、さらにタムラトランスタイプと好みのトランスを使えるようラインナップを揃える予定だという。価格的にはタンゴタイプの方が5〜6000円ほど高くなるのではないかとのこと。そして昨年の同イベントで出展されていたモデルをバージョンアップさせた「HE-55M Limited」(2台1組¥1,000,000)も出展。新開発の実用新案申請中であるEK回路により中低域〜高域にかけて厚みを持たせたサウンドつくりを行い、高音質であるショットキーダイオードの採用など、全体的にブラッシュアップを計っているが価格は据え置かれている。本機は同社のフラッグシップでもあるが、バージョンアップしても同じ価格というのはとても良心的だ。
■山本音響工芸
美しい木材ベースのシャーシを用いたアンプやラックなどでおなじみの同社であるが、プリアンプを用いずに使うことができる、ボリューム付き2A3シングルパワーアンプ「A-011」(RCA製2A3付き¥399,000)のサウンドが出展ブースで確認できた。試聴時はチェコで製造されている高級真空管・エミッションラボ製2A3が換装されていた。直熱三極管シングルアンプ特有の澄み切ったサウンドに、エミッションラボ製真空管の効果が加わってよりエッジの効いた、質感表現の深いものとなっているようであった。
この時接続されていたスピーカーは、アルテック604-8Kが搭載された「YS-604」(1本¥630,000)である。170リットルという大型のエンクロージャーに収められ、堂々とした佇まい。同社ならではの角が取れたフォルムと木目を生かした美しい塗装処理により、ユニットがさらに際立っている。シングルアンプとの組み合わせということもあるが、穏やかで落ち着きのある傾向とどっしりと重心の下がった厚みのある低域感はさすが15インチユニットといえるものだ。マンタレイホーンからの高域サウンドもきつさはなく、CDでもアナログソースでも難なく再生をこなしていた。
■カインラボラトリージャパン
同社のブースでは取り扱いブランドの中でも特にオーディオスペース製品を中心にラインナップが勢揃いしていた。今回初出展となったのは同ブランドのフラッグシップである「Reference」シリーズの最新プリメインアンプ・モデル「Reference-3.1」(300B・¥346,500/KT88・¥262,500)の300B版とKT88版である。
ともに基本的な入出力や構成は近いものとなっており、出力段が3極管の300Bプッシュプルか5極管のKT88プッシュプルかという部分が相違点となる。ともに負帰還がかけられた構成で、帰還量の切り替えも行える。またMM型フォノアンプも内蔵しているのでアナログユーザーにも嬉しい配慮となっている。ちなみに300B版ではヒーターがDC点火となっており、KT88版はUL/3極管切り替えが行える。筐体デザインは上級モデル譲りで、非常に安定感とゴージャスさが光る、高級アンプといった風貌となっている。好みによって繊細な300B版か押し出し感の強いKT88版か選択できるというポイントはとてもユニークだと思う。
そして「Reference」シリーズの最高峰「Reference One」の縮小版ともいえる「Reference Three」(ペア¥735,000)も出展されており、深みのある広大なサウンドを提供していた。出力が「Reference One」の半分に近い26W/chとなっているが、1本の845を1本の300Bでドライブするというモノラルブロック構成なので、アンプの動作的な余裕度は大変高くなってくるのではないだろうか。
(岩井喬)