公開日 2014/05/17 15:00
【独HighEnd】キーパーソンに訊く、独スピーカーブランド“オーディオフィジック”の哲学とは?
注目のスピーカー専業ブランド
現地時間の5月15日より、ドイツ・ミュンヘンにて開催されている「Munich High End 2014」。世界各国からさまざまなハイエンドオーディオブランドが集結する本イベントではあるが、会場をみて感じるのは地元、ドイツのブランドが高い支持を獲得していることである。
創業30年近い歴史を誇るスピーカーブランド、オーディオフィジックもその例外ではなく、製品の随所に見られる加工精度の高さやサウンドで高い人気を獲得しているブランドだ。会場内では、最上位モデルである「CARDEAS」をはじめとしたデモが行われており、ブースは大きな賑わいを見せている。
今回、会場にて営業を統括するStefan Dreischarf氏と、開発の責任者であるManfred Diestertich氏の2名のキーパーソンに、オーディオフィジックについてインタビューする機会に恵まれた。
オーディオフィジックが昨年、日本に再上陸し話題を呼んだことは記憶に新しい。しばらく輸入取り扱いが途絶えていたこともあり、日本では”知る人ぞ知る存在”ではあるものの、地元ドイツでは実にポピュラーなスピーカーブランドである。それでありながら、社内全体の売り上げ構成の70%はドイツ国外で構成。このことは、オーディオフィジックが我々日本のオーディオファンが考えているよりもずっと規模の大きなスピーカーメーカーであることを物語っている。
― Dreischarf氏:「オーディオフィジックは1985年に創業して以来、およそ30年近い歴史を誇りますが、いまやその売り上げの約70%が海外で占めるスピーカーメーカーにまで成長いたしました。今回のMunich High End 2014でも、およそ80%は海外からの来場者で占めているなど、おかげさまでドイツ国内にとどまらず世界中で非常に高い評価をいただいております」
同社がドイツのユーザーだけではなく、世界中のオーディオファイルに支持された背景には、その柔軟な製品開発能力にある。現在、オーディオフィジックのスピーカーは「REFERENCE」「HIGH END」「CLASSIC」、そしてセンタースピーカーを用意する「CENTER」という4つのラインから構成されているが、それぞれが密接に関係したラインアップを用意しているのだ。
― Diestertich氏:「多くのメーカーは”トップモデルこそ最高のサウンド”という展開をしていますが、私達はそうではありません。オーディオファイルの皆様が実際に使用されているお部屋は実にさまざまな広さがあります。例えば、狭いオーディオルームで楽しまれている方に巨大な最上位モデルを導入いただいても最高の結果が得られるとは限らないんです。ですから、実際の皆様の環境でお選びいただけるように、それぞれのラインアップには異なる部屋のサイズに適合したジュニアクラス、ミドルクラス、ハイクラスの製品を用意しています。例えば、最初はエントリーモデル「CLASSIC 10」を導入いただいて、次はその上位ラインに位置するHIGH END「SITARA25」を導入、とお客様がアップデートしていけるイメージですね」
一般的なオーディオファイルが使用できる部屋のサイズは、当然その国の環境によって大きく異なる。だからこそ、フラッグシップ機に固執しない、サイズからアプローチするオーディオフィジックの製品開発は多くのオーディオファイルに「オーディオフィジックのベストなサウンド」を提供する重要な要素となっているのだ。
こうした製品開発アプローチで、現在全18モデルをラインアップするオーディオフィジックのスピーカーだが、それらに共通するのはブランドの明確なポリシーである。
― Dreischarf氏:「そのクラスの中でベストな音楽を鳴らす。シンプルですが、これがオーディオフィジックのポリシーです」
― Diestertich氏:「私たちには”No Loss of Fine Detail”というキャッチコピーがあります。これは”音源には必ず全ての音楽情報が刻まれているはず”という考え方に基づいたもので、この音楽情報はすべて音楽ファンの皆様へお届けできると考えています。私が製品開発の過程で聴いた全ての音楽情報を、皆様へ余すところなくお伝えしたいというのがオーディオフィジックのベースともなっている考え方なのです。多くのスピーカーブランドは高度なテクノロジーを追い求めています。これは正しいことですが、その反面、パッと聴いた時のインパクトがあっても長く聴いていられないサウンドとなっているスピーカーが多いのも事実だと、私は思います。私達もユニットを始めとしてさまざまなテクノロジーを開発していますが、その全ては”長時間ゆったりと音楽が楽しめる音”を実現するためのものです。あくまで音楽的であることが最優先。この音楽からのアプローチこそが、オーディオフィジックの製品における基礎となっています」
この音楽的なサウンドの実現へむけ、REFERENCE LINEとHIGH END LINEでは全体を7度傾けて厳密なタイムアライメント管理を行っているほか、ユニットをマウントした際のキャビティなど全て緻密な管理に基づいた製品開発を行っている。その一方でCLASSIC LINEでは、それらとはまた異なるガラスを採用したスタイリッシュなボディが特徴だが、これにはきちんとした理由があるようだ。
― Dreischarf氏:「良い音を皆様に提供したいと思った場合、スタイルは非常に重要な要素となるんです。特に一般家庭へ導入いただこうと考えた場合、スリムであることは極めて重要な意味を持ちます。エンクロージャーへガラスを使用していることは、皆さんが非常に驚かれるポイントではありますが、実はここにも、オーディオフィジックのテクノロジーが隠されているんです」
同社のスピーカーの特徴に、ボディ対して横向きにウーファーをマウントしていることが挙げられるが、一見ウーファーが見えないCLASSICシリーズでもこの構造をしっかり踏襲しており、ウーファーは内部に隠されている。
エンクロージャーをよく見るとガラス製のエンクロージャーには、微妙に隙間があることが分かるが、この隙間こそが低域のコントロールに大きな役割を担っているのだ。一般的にガラスは強度の問題などスピーカーにとってさまざまな問題を抱える素材ではあるが、オーディオフィジックでは柔軟なアプローチによってガラスによるスタイリッシュさとガラスの弱点を見事に解決した設計を実現した。
音楽性への追求と柔軟なアプローチ、そして常にユーザーの環境を考慮した製品設計など、オーディオフィジックが随所で高い評価を獲得する理由には、同社のサウンドに対する高い完成が大きく関係しているのである。
創業30年近い歴史を誇るスピーカーブランド、オーディオフィジックもその例外ではなく、製品の随所に見られる加工精度の高さやサウンドで高い人気を獲得しているブランドだ。会場内では、最上位モデルである「CARDEAS」をはじめとしたデモが行われており、ブースは大きな賑わいを見せている。
今回、会場にて営業を統括するStefan Dreischarf氏と、開発の責任者であるManfred Diestertich氏の2名のキーパーソンに、オーディオフィジックについてインタビューする機会に恵まれた。
オーディオフィジックが昨年、日本に再上陸し話題を呼んだことは記憶に新しい。しばらく輸入取り扱いが途絶えていたこともあり、日本では”知る人ぞ知る存在”ではあるものの、地元ドイツでは実にポピュラーなスピーカーブランドである。それでありながら、社内全体の売り上げ構成の70%はドイツ国外で構成。このことは、オーディオフィジックが我々日本のオーディオファンが考えているよりもずっと規模の大きなスピーカーメーカーであることを物語っている。
― Dreischarf氏:「オーディオフィジックは1985年に創業して以来、およそ30年近い歴史を誇りますが、いまやその売り上げの約70%が海外で占めるスピーカーメーカーにまで成長いたしました。今回のMunich High End 2014でも、およそ80%は海外からの来場者で占めているなど、おかげさまでドイツ国内にとどまらず世界中で非常に高い評価をいただいております」
同社がドイツのユーザーだけではなく、世界中のオーディオファイルに支持された背景には、その柔軟な製品開発能力にある。現在、オーディオフィジックのスピーカーは「REFERENCE」「HIGH END」「CLASSIC」、そしてセンタースピーカーを用意する「CENTER」という4つのラインから構成されているが、それぞれが密接に関係したラインアップを用意しているのだ。
― Diestertich氏:「多くのメーカーは”トップモデルこそ最高のサウンド”という展開をしていますが、私達はそうではありません。オーディオファイルの皆様が実際に使用されているお部屋は実にさまざまな広さがあります。例えば、狭いオーディオルームで楽しまれている方に巨大な最上位モデルを導入いただいても最高の結果が得られるとは限らないんです。ですから、実際の皆様の環境でお選びいただけるように、それぞれのラインアップには異なる部屋のサイズに適合したジュニアクラス、ミドルクラス、ハイクラスの製品を用意しています。例えば、最初はエントリーモデル「CLASSIC 10」を導入いただいて、次はその上位ラインに位置するHIGH END「SITARA25」を導入、とお客様がアップデートしていけるイメージですね」
一般的なオーディオファイルが使用できる部屋のサイズは、当然その国の環境によって大きく異なる。だからこそ、フラッグシップ機に固執しない、サイズからアプローチするオーディオフィジックの製品開発は多くのオーディオファイルに「オーディオフィジックのベストなサウンド」を提供する重要な要素となっているのだ。
こうした製品開発アプローチで、現在全18モデルをラインアップするオーディオフィジックのスピーカーだが、それらに共通するのはブランドの明確なポリシーである。
― Dreischarf氏:「そのクラスの中でベストな音楽を鳴らす。シンプルですが、これがオーディオフィジックのポリシーです」
― Diestertich氏:「私たちには”No Loss of Fine Detail”というキャッチコピーがあります。これは”音源には必ず全ての音楽情報が刻まれているはず”という考え方に基づいたもので、この音楽情報はすべて音楽ファンの皆様へお届けできると考えています。私が製品開発の過程で聴いた全ての音楽情報を、皆様へ余すところなくお伝えしたいというのがオーディオフィジックのベースともなっている考え方なのです。多くのスピーカーブランドは高度なテクノロジーを追い求めています。これは正しいことですが、その反面、パッと聴いた時のインパクトがあっても長く聴いていられないサウンドとなっているスピーカーが多いのも事実だと、私は思います。私達もユニットを始めとしてさまざまなテクノロジーを開発していますが、その全ては”長時間ゆったりと音楽が楽しめる音”を実現するためのものです。あくまで音楽的であることが最優先。この音楽からのアプローチこそが、オーディオフィジックの製品における基礎となっています」
この音楽的なサウンドの実現へむけ、REFERENCE LINEとHIGH END LINEでは全体を7度傾けて厳密なタイムアライメント管理を行っているほか、ユニットをマウントした際のキャビティなど全て緻密な管理に基づいた製品開発を行っている。その一方でCLASSIC LINEでは、それらとはまた異なるガラスを採用したスタイリッシュなボディが特徴だが、これにはきちんとした理由があるようだ。
― Dreischarf氏:「良い音を皆様に提供したいと思った場合、スタイルは非常に重要な要素となるんです。特に一般家庭へ導入いただこうと考えた場合、スリムであることは極めて重要な意味を持ちます。エンクロージャーへガラスを使用していることは、皆さんが非常に驚かれるポイントではありますが、実はここにも、オーディオフィジックのテクノロジーが隠されているんです」
同社のスピーカーの特徴に、ボディ対して横向きにウーファーをマウントしていることが挙げられるが、一見ウーファーが見えないCLASSICシリーズでもこの構造をしっかり踏襲しており、ウーファーは内部に隠されている。
エンクロージャーをよく見るとガラス製のエンクロージャーには、微妙に隙間があることが分かるが、この隙間こそが低域のコントロールに大きな役割を担っているのだ。一般的にガラスは強度の問題などスピーカーにとってさまざまな問題を抱える素材ではあるが、オーディオフィジックでは柔軟なアプローチによってガラスによるスタイリッシュさとガラスの弱点を見事に解決した設計を実現した。
音楽性への追求と柔軟なアプローチ、そして常にユーザーの環境を考慮した製品設計など、オーディオフィジックが随所で高い評価を獲得する理由には、同社のサウンドに対する高い完成が大きく関係しているのである。