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公開日 2018/05/15 10:13

【HIGH END】オルトフォン、ダイヤモンドカンチレバー採用の100周年記念カートリッジ「MC Century」

100年の全てを結集
オーディオ編集部:浅田陽介
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ortofon(オルトフォン)は5月10日(木)より独ミュンヘンにて開催された「Munich HIGH END 2018」にて、同社100周年を記念する最新カートリッジ「MC Century」を発表した。全世界100個の限定品となる。日本での発売価格はまだ未定だが、およそ150万円程度となる見込みで、正式なアナウンスは今秋が予定されている。

今回発表されたオルトフォンの100周年記念モデルとなるMCカートリッジ「MC Century」

オルトフォンは、かねてよりアニバーサリーモデルを開発中であることをアナウンスしてきたが、今回のHIGN ENDでその全貌が明らかになったかたちだ。

同社のCOAT(Chief Officer of Acoustics and Technolgy)であるライフ・ヨハンセン氏は、「これまでオルトフォンが培ってきた技術と、新しいアプローチを融合させた製品」として、MC Centuryの完成度に自信を見せる。

オルトフォンのプロダクトにおける全ての責任者であるライフ・ヨハンセン氏

「MC Centuryは、オルトフォンとして初めてダイヤモンドカンチレバーを採用した製品です。基本となる素材や技術は、これまでのフラッグシップであるMC Annaから変更ありませんが、カンチレバーをダイヤモンドとしたことで、それぞれ新たに設計を見直してチューニングをしています」。
 
「ダイヤモンドカンチレバーを採用した理由は、やはりその硬さにあります。ダイヤモンドの結晶構造は非常にまっすぐで、かつ高い強度を持つ素材ですので、針先からピックアップした信号を最も効率よく伝送することができるんです。事実、ボロン等と聴き比べても、より繊細なディテールが表現できることや優れた定位、そして広いダイナミックレンジを再生することが可能ですので、今回採用を決意いたしました」。

カンチレバーにはダイヤモンドを採用。空芯コイルを採用する本機のアーマチュアは非磁性体のものを採用している

ヨハンセン氏が話すとおり、磁気回路等の素材や構造はMC Annaを踏襲しているが、このダイヤモンドカンチレバーを採用したことでその硬さや形状、ダンピングシステムなど細かな部分が変更されている。実はここに、“オルトフォンだからこそ” ともいうべきノウハウが存分に込められている。

「ボディは昨年発売したMC Windfeld Tiの際にも採用した、チタンの中でも最も高い高度を誇るチタンをSLM(Selective Laser Manufacturing)テクノロジーを用いて成型しています。このチタンは切削等では加工が極めて困難なものですが、レーザーで溶かしながら成型できるSLMテクノロジーによって、カートリッジという極めて小さな筐体を成型することができました」。

MC Centuryのボディ。加工が難しい極めて高い硬度を持つチタンを独自のSLM技術で成型している

ボディ上部には3点のヘッドシェル接地点を用意。ボディと一体成型されているなど、徹底した共振排除が行われている

「また、コイルはMC Annaと同様に空芯コイルと採用していますが、その理由は、空芯コイルは最も針先の動きを良くすることができるからです。しかし、純粋にコイルだけを動かす空芯コイルの場合は、当然ながら発電量が稼ぎにくいと一般的には言われています。これを解決するには、磁力線を意図するところにまとめることが非常に重要で、私達はこの磁気回路を収めるアーマチュアに非磁性体を自社で成型して採用しています。これによって、磁力線を理想的な形でコントロールすることができるので、空芯コイルのメリットをバラツキなく安定して供給することを実現できました」。

実はこのアーマチュアの成型こそが、オルトフォンの技術力の高さを示している。オルトフォンは系列会社にオルトフォン・マイクロテックという主に医療分野での精密部品を手がける会社を持つ。空芯コイルのメリットをフルに発揮させるためには、どのような構造が必要で、また同様な素材が必要となるのか。オルトフォンはその理想を全て自社内でコントロールすることができるのだ。またダンパーについても自社内で生産することが可能なため、その硬さや特性をカートリッジに合わせて理想的なものにできる。

こうした、これまでのオルトフォンが培ってきた世界でも最先端を行く加工技術と開発力。そして何より「アナログへのパッション」というオルトフォンの企業理念に至るまで全てを盛り込んだのが、このMC Centuryと言える。型番が示すとおり、オルトフォンの100年の全てがこのカートリッジに収められているのである。

HIGH END2018ではMC Centuryのデモも行われていた

ボディ側面には、「100」をデザインしたロゴがあしらわれている

「こうして出来上がったMC Centuryですが、やはり聴いていただきたいのはその音です。私自信も、このMC Centuryで聴く音は、率直に素晴らしいものだと自負しています。オルトフォンがどのようなフィロソフィーを持ち、それをどのような技術で、そしてどのような音で表現しているのか。MC Centuryの音からは、そんな私達のパッションを存分に感じていただけるはずです」。

MC Centuryは現在のアナログオーディオ市場を見渡しても、世界的に最も高価な部類に入るカートリッジである。しかし、そんなオルトフォンの全てを結集させたその音は、HIGH END 2018の会場でひときわ大きな注目を集めていた。

ORTOFON 「MC Century」
SPEC●出力電圧(1kHz、5cm/sec時):0.2mV●チャンネルバランス(1kHz時):0.5dB●チャンネルセパレーション(1kHz時):25dB●チャンネルセパレーション(15kHz時):22dB●周波数特性:20Hz〜20kHz(±1.5dB)●トラッキング性能(315Hz、適正針圧時):80μm●コンプライアンス:9μm/mN(ダイナミック、ラテラル)●スタイラス:Special polished Nude Ortofon Replicant 100●カンチレバー素材:ダイヤモンド●トラッキング半径:r/R 5/100μm●適正針圧:2.3g●トラッキング角:23°●内部インピーダンス(DC時):6Ω●推奨ロードインピーダンス:10Ω以上●ボディ素材:SLM チタニウム●自重:15g

同じく100周年記念モデルとなるConcorde Centuryも展示された

正式には発表されていなかったものの、SPUのアニバーサリーバージョンも参考展示として用意されていた


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