公開日 2018/05/19 12:03
【HIGH END】LUMIN、Naimなどが新ネットワークプレーヤーを発表。SOtMからオーディオ用ハブ
逆木一が注目したネットワーク/PCオーディオ<2>
MUNICH HIGH END 2018の会場で、特にファイル再生に関連して気になったブースについて、数回に分けて紹介していく。本記事では、ファイル再生機器の中でストレージを搭載せず音源の再生に特化した「プレーヤー」関連製品に注目する。
■LUMIN
LUMINは、新たなネットワークオーディオプレーヤー「X1」を出展した。本機は「S1」以来長らく更新のなかった、同ブランドのフラグシップとなる。価格は14,000ドルを予定しており、約2ヶ月後の発売を予定しているとのこと。
従来モデルからの強化点は多岐にわたるが、まずDACチップにはESS社のES9038PROをデュアルで搭載し、オーディオ回路基板を一新。再生可能な音源のスペックもPCMが最大768kHz/32bit、DSDが22.4MHz(DSD512)となった。現状で、ネットワーク入力でここまでのスペックを受けられる製品は限られていると言える。
アナログ音声出力に加えて、USB音声出力も搭載。同ブランドの「U1」同様、USB出力のネットワークオーディオトランスポートとしても使用可能だ。LUMIN Appでの操作や各種音楽ストリーミングサービスのサポート、Roon Ready、MQA再生対応といった機能は同ブランドのプレーヤーと共通する。
ネットワーク入力は、一般的な「RJ45」ポートにくわえ、「SFP」ポートも搭載。これにより、例えば本機をSFPでルーターに接続し、RJ45で同社サーバー「L1」に繋ぐといった接続方法が可能になる。なお、同社スタッフによればSFPで光メディアコンバーターを使ってネットワークに接続した方がRJ45よりも音質的に優れるとのこと。
外部電源はプレーヤー部と同様にアルミ削り出し筐体となり、プレーヤー部と接続するDCケーブルも刷新された。X1用のDCケーブルは従来モデルにもオプションとして用意されるとのこと。
また、LUMIN初のパワーアンプ「AMP」も出展。価格はX1と同じく14,000ドルを予定している。8Ωで160Wの出力を持つアナログアンプでありながら、シャーシ全体をヒートシンクとすることで、同社のプレーヤーと合わせた放熱孔のないデザインを実現している。通常のステレオ使用のほか、デュアルモノまたはブリッジでも使用も可能だ。
もともとLUMINはアンプ一体型の製品「M1」をラインナップしており、AMPはLUMINのプレーヤーの洗練された操作性と音質をより高い次元で融合させるための製品と言える。試聴ブースではX1とAMPの組み合わせでVivid Audioのスピーカーをドライブしていた。
ブース内にはAMPやX1のDCケーブルの制作でコラボレーションしたというWestminsterLab社のモノラルパワーアンプ「UNUM」も展示されていた。ハイエンドの会場入り口でも製品をアピールするなど、LUMINのX1とAMPにかける意気込みが感じられた。
■AURALiC
優れたネットワークプレーヤーを擁するAURALiCは、新製品「G1」シリーズのネットワークトランスポート「ARIES G1」とストリーミングDAC(同社はネットワークプレーヤーをこう呼ぶ)「VEGA G1」を出展した。いずれのモデルも先行した上位機「G2」シリーズのコンセプトを引き継ぐ、同社のネットワークトランスポート「ARIES」とUSB-DAC「VEGA」の後継機にあたるモデルである。価格はARIES G1が2,199ドルで、VEGA G1が3,799ドル。
同社独自のハードウェア・プラットフォームである「Tesla」を搭載しており、ネットワークプレーヤーとしての機能は基本的に共通。専用アプリ「Lightning DS」を使った操作のほか、各種音楽ストリーミングサービスへの対応、Roon Readyといった最新のネットワークオーディオプレーヤーに求められる機能は完全に網羅している。アルミ削り出しプレートを組み合わせたシャーシの質感は非常に良い。
ちなみに、VEGAの前モデルはネットワーク入力を持たない純粋なDACだった。後継機のVEGA G1が「ストリーミングDAC」になったことについて、同社代表のWANG XUANQIAN氏から興味深い話を聞くことができた。
AURALiCがユーザーに対するアンケートや市場調査を行った結果、以前はPCとUSB-DACを接続して音楽を聴くユーザーが多かったが、最近ではTIDALやQobuzをはじめとする音楽ストリーミングサービスを利用するために、「ストリーマー」を求めるユーザーが多くなった。そのため、VEGA G1はネットワーク入力を搭載したのだという。
ブースではG2シリーズの製品でデモが行われ、ネットワークオーディオプレーヤーのエントリーモデル「ALTAIR」やアンプ一体型製品「POLARIS」も展示されていた。
■Lindemann
Lindemannはコンパクトな「Limetree」シリーズを出展。同シリーズにはネットワークトランスポート「Bridge」とネットワークプレーヤー「Network」が含まれる。ネットワークプレーヤーとしての機能は共通で、PCM384kHz・DSD256対応など、先端のスペックを搭載している。
Lindemannは同社のネットワーク対応製品について、「Lindemann Streaming 2.0」の名称で、各種音楽ストリーミングサービスへの対応やRoon Readyといった高機能を実現するプラットフォームであることをアピールしていた。
専用アプリの出来映えも素晴らしい。当日はQobuzの音源を使ってデモが行われていたが、操作へのレスポンスの速さは申し分ない。
今回出展された「Limetree」シリーズや先行する「musicbook」シリーズなど、最近ではコンパクトかつ高機能な製品を志向しているLindemannだが、それらの成果を踏まえたフルサイズの製品が今後登場するかにも注目したい。
■SOtM
SOtMは新製品としてオーディオ用ハブ「sNH-10G」を出展。LAN入力は、RJ45を8ポート、SFPを2ポート搭載。また、マスタークロック入力も搭載する。sNH-10Gは「SFPポートを搭載するオーディオ用ハブ」という画期的な製品であり、光メディアコンバーターの使用で、ネットワークオーディオ関連機器に流入するノイズの低減が期待できるという。
LUMINから同じくSFPポートを搭載するX1が登場しており、今後ネットワークオーディオ関連機器でSFPポートの搭載が広まる可能性もある。また、先に紹介したAurenderのACS10もアイソレートが施されたLAN端子を搭載しており、ネットワーク経由で入り込むノイズについて、いよいよ機器のレベルで対処しようとする動きが出てきたと感じる。
sNH-10Gの価格は未定ながら、同社代表のil won Lee氏によれば、sNH-10Gはあくまでも「熱烈なオーディオファイルのための製品」とのことだ。
そのほか、ブースでは同社のファイル再生関連アクセサリーが一挙に展示されていた。
■Naim Audio
黎明期からネットワークオーディオに取り組んできたNaim Audioは、ネットワークプレーヤーの新製品として「ND 555」「NDX 2」「ND5 XS 2」の3機種を発表した。価格はND 555が15,999ドル、NDX 2が5,999ドル、ND5 XS 2が2,799ドルとなる。発売はND 555が6月、NDX 2が7月、ND5 XS 2が8月になる予定。
それぞれ500シリーズ、Classicシリーズ、XSシリーズに位置付けられるネットワークプレーヤーで、3年の開発期間を経て登場。最新のDSP技術とアナログ技術を組み合わせることで、従来を超える性能を引き出したとする。
最上位のND555は、自社開発のネットワーク再生ボードにおけるデジタル信号処理にLow-Voltage Differential Signalling(LVDS)を同社として初採用。これによりタイミングエラーを最小限に抑え、低ノイズ化も実現できるという。40bit SHARCプロセッサーによる信号処理、重要な回路を振動からアイソレートするサブシャーシ、独自の DR regulator技術による電源なども特徴とする。
DACチップにはマルチビット方式の「PCM1704」を採用。PCM系は384kHz/32bit、DSDは5.6MHzの再生に対応する。独自のコントロールアプリも用意し、Roon Ready、TIDALやSpotifyなどのストリーミング再生、Chromecast Built-in、AirPlayなど豊富なソースの再生が可能だ。
同社は、欧州を中心に高い人気を誇るワイヤレスミュージックシステム「Mu-so」や、新製品の「Uniti」シリーズの展示も行った。
Unitiシリーズは「Nova」「Star」「Atom」から成り、いずれもアンプを搭載するオールインワンシステムとなっている。システムを容易にマルチルームに発展でき、展示の仕方も含めて熱心なオーディオファイル向けというよりはライフスタイル志向の製品と感じるが、PCM 384kHz/32bit・DSD128に対応するなど、ネットワークオーディオプレーヤーとしても一線級のスペックを持っている。
Naim Audioは同グループのスピーカーブランドのFocalと共同ブースを展開しており、試聴室ではFocalのKANTA N゜2と組み合わせたデモを行っていた。
■StreamUnlimited
会場で見かけた興味深い展示として、StreamUnlimited社のブースを紹介する。同社が展示していたのは完成品のオーディオ機器ではなく、「ネットワークオーディオプレーヤー開発のためのソリューション」である。
様々なモジュールが用意されており、それらは実際に機能を確かめられる状態で展示されていた。特にプレミアムモジュールと位置付けられた「Stream810」は、各種音楽ストリーミングサービスだけでなく、DSDやMQAにも対応するとのこと。
同社のブースは小さなスペースではあったが、ひっきりなしに来場者が訪れては盛んに情報交換が行われていた。オーディオにおけるネットワークの重要性の高まりとともに、ミュンヘンハイエンドの「ビジネスショウ」としての側面を強く感じた展示だったと言える。
(逆木 一)
■LUMIN
LUMINは、新たなネットワークオーディオプレーヤー「X1」を出展した。本機は「S1」以来長らく更新のなかった、同ブランドのフラグシップとなる。価格は14,000ドルを予定しており、約2ヶ月後の発売を予定しているとのこと。
従来モデルからの強化点は多岐にわたるが、まずDACチップにはESS社のES9038PROをデュアルで搭載し、オーディオ回路基板を一新。再生可能な音源のスペックもPCMが最大768kHz/32bit、DSDが22.4MHz(DSD512)となった。現状で、ネットワーク入力でここまでのスペックを受けられる製品は限られていると言える。
アナログ音声出力に加えて、USB音声出力も搭載。同ブランドの「U1」同様、USB出力のネットワークオーディオトランスポートとしても使用可能だ。LUMIN Appでの操作や各種音楽ストリーミングサービスのサポート、Roon Ready、MQA再生対応といった機能は同ブランドのプレーヤーと共通する。
ネットワーク入力は、一般的な「RJ45」ポートにくわえ、「SFP」ポートも搭載。これにより、例えば本機をSFPでルーターに接続し、RJ45で同社サーバー「L1」に繋ぐといった接続方法が可能になる。なお、同社スタッフによればSFPで光メディアコンバーターを使ってネットワークに接続した方がRJ45よりも音質的に優れるとのこと。
外部電源はプレーヤー部と同様にアルミ削り出し筐体となり、プレーヤー部と接続するDCケーブルも刷新された。X1用のDCケーブルは従来モデルにもオプションとして用意されるとのこと。
また、LUMIN初のパワーアンプ「AMP」も出展。価格はX1と同じく14,000ドルを予定している。8Ωで160Wの出力を持つアナログアンプでありながら、シャーシ全体をヒートシンクとすることで、同社のプレーヤーと合わせた放熱孔のないデザインを実現している。通常のステレオ使用のほか、デュアルモノまたはブリッジでも使用も可能だ。
もともとLUMINはアンプ一体型の製品「M1」をラインナップしており、AMPはLUMINのプレーヤーの洗練された操作性と音質をより高い次元で融合させるための製品と言える。試聴ブースではX1とAMPの組み合わせでVivid Audioのスピーカーをドライブしていた。
ブース内にはAMPやX1のDCケーブルの制作でコラボレーションしたというWestminsterLab社のモノラルパワーアンプ「UNUM」も展示されていた。ハイエンドの会場入り口でも製品をアピールするなど、LUMINのX1とAMPにかける意気込みが感じられた。
■AURALiC
優れたネットワークプレーヤーを擁するAURALiCは、新製品「G1」シリーズのネットワークトランスポート「ARIES G1」とストリーミングDAC(同社はネットワークプレーヤーをこう呼ぶ)「VEGA G1」を出展した。いずれのモデルも先行した上位機「G2」シリーズのコンセプトを引き継ぐ、同社のネットワークトランスポート「ARIES」とUSB-DAC「VEGA」の後継機にあたるモデルである。価格はARIES G1が2,199ドルで、VEGA G1が3,799ドル。
同社独自のハードウェア・プラットフォームである「Tesla」を搭載しており、ネットワークプレーヤーとしての機能は基本的に共通。専用アプリ「Lightning DS」を使った操作のほか、各種音楽ストリーミングサービスへの対応、Roon Readyといった最新のネットワークオーディオプレーヤーに求められる機能は完全に網羅している。アルミ削り出しプレートを組み合わせたシャーシの質感は非常に良い。
ちなみに、VEGAの前モデルはネットワーク入力を持たない純粋なDACだった。後継機のVEGA G1が「ストリーミングDAC」になったことについて、同社代表のWANG XUANQIAN氏から興味深い話を聞くことができた。
AURALiCがユーザーに対するアンケートや市場調査を行った結果、以前はPCとUSB-DACを接続して音楽を聴くユーザーが多かったが、最近ではTIDALやQobuzをはじめとする音楽ストリーミングサービスを利用するために、「ストリーマー」を求めるユーザーが多くなった。そのため、VEGA G1はネットワーク入力を搭載したのだという。
ブースではG2シリーズの製品でデモが行われ、ネットワークオーディオプレーヤーのエントリーモデル「ALTAIR」やアンプ一体型製品「POLARIS」も展示されていた。
■Lindemann
Lindemannはコンパクトな「Limetree」シリーズを出展。同シリーズにはネットワークトランスポート「Bridge」とネットワークプレーヤー「Network」が含まれる。ネットワークプレーヤーとしての機能は共通で、PCM384kHz・DSD256対応など、先端のスペックを搭載している。
Lindemannは同社のネットワーク対応製品について、「Lindemann Streaming 2.0」の名称で、各種音楽ストリーミングサービスへの対応やRoon Readyといった高機能を実現するプラットフォームであることをアピールしていた。
専用アプリの出来映えも素晴らしい。当日はQobuzの音源を使ってデモが行われていたが、操作へのレスポンスの速さは申し分ない。
今回出展された「Limetree」シリーズや先行する「musicbook」シリーズなど、最近ではコンパクトかつ高機能な製品を志向しているLindemannだが、それらの成果を踏まえたフルサイズの製品が今後登場するかにも注目したい。
■SOtM
SOtMは新製品としてオーディオ用ハブ「sNH-10G」を出展。LAN入力は、RJ45を8ポート、SFPを2ポート搭載。また、マスタークロック入力も搭載する。sNH-10Gは「SFPポートを搭載するオーディオ用ハブ」という画期的な製品であり、光メディアコンバーターの使用で、ネットワークオーディオ関連機器に流入するノイズの低減が期待できるという。
LUMINから同じくSFPポートを搭載するX1が登場しており、今後ネットワークオーディオ関連機器でSFPポートの搭載が広まる可能性もある。また、先に紹介したAurenderのACS10もアイソレートが施されたLAN端子を搭載しており、ネットワーク経由で入り込むノイズについて、いよいよ機器のレベルで対処しようとする動きが出てきたと感じる。
sNH-10Gの価格は未定ながら、同社代表のil won Lee氏によれば、sNH-10Gはあくまでも「熱烈なオーディオファイルのための製品」とのことだ。
そのほか、ブースでは同社のファイル再生関連アクセサリーが一挙に展示されていた。
■Naim Audio
黎明期からネットワークオーディオに取り組んできたNaim Audioは、ネットワークプレーヤーの新製品として「ND 555」「NDX 2」「ND5 XS 2」の3機種を発表した。価格はND 555が15,999ドル、NDX 2が5,999ドル、ND5 XS 2が2,799ドルとなる。発売はND 555が6月、NDX 2が7月、ND5 XS 2が8月になる予定。
それぞれ500シリーズ、Classicシリーズ、XSシリーズに位置付けられるネットワークプレーヤーで、3年の開発期間を経て登場。最新のDSP技術とアナログ技術を組み合わせることで、従来を超える性能を引き出したとする。
最上位のND555は、自社開発のネットワーク再生ボードにおけるデジタル信号処理にLow-Voltage Differential Signalling(LVDS)を同社として初採用。これによりタイミングエラーを最小限に抑え、低ノイズ化も実現できるという。40bit SHARCプロセッサーによる信号処理、重要な回路を振動からアイソレートするサブシャーシ、独自の DR regulator技術による電源なども特徴とする。
DACチップにはマルチビット方式の「PCM1704」を採用。PCM系は384kHz/32bit、DSDは5.6MHzの再生に対応する。独自のコントロールアプリも用意し、Roon Ready、TIDALやSpotifyなどのストリーミング再生、Chromecast Built-in、AirPlayなど豊富なソースの再生が可能だ。
同社は、欧州を中心に高い人気を誇るワイヤレスミュージックシステム「Mu-so」や、新製品の「Uniti」シリーズの展示も行った。
Unitiシリーズは「Nova」「Star」「Atom」から成り、いずれもアンプを搭載するオールインワンシステムとなっている。システムを容易にマルチルームに発展でき、展示の仕方も含めて熱心なオーディオファイル向けというよりはライフスタイル志向の製品と感じるが、PCM 384kHz/32bit・DSD128に対応するなど、ネットワークオーディオプレーヤーとしても一線級のスペックを持っている。
Naim Audioは同グループのスピーカーブランドのFocalと共同ブースを展開しており、試聴室ではFocalのKANTA N゜2と組み合わせたデモを行っていた。
■StreamUnlimited
会場で見かけた興味深い展示として、StreamUnlimited社のブースを紹介する。同社が展示していたのは完成品のオーディオ機器ではなく、「ネットワークオーディオプレーヤー開発のためのソリューション」である。
様々なモジュールが用意されており、それらは実際に機能を確かめられる状態で展示されていた。特にプレミアムモジュールと位置付けられた「Stream810」は、各種音楽ストリーミングサービスだけでなく、DSDやMQAにも対応するとのこと。
同社のブースは小さなスペースではあったが、ひっきりなしに来場者が訪れては盛んに情報交換が行われていた。オーディオにおけるネットワークの重要性の高まりとともに、ミュンヘンハイエンドの「ビジネスショウ」としての側面を強く感じた展示だったと言える。
(逆木 一)