公開日 2022/12/19 14:42
「人生観が変わるくらいの衝撃をもたらす」Roon聴き比べイベントを徹底レポート。CEOのEnno氏もオンラインで登場
Roon Core対応機も多数用意
さる11月26日(土)、秋葉原のオーディオ専門店ダイナミックオーディオH.A.L.IIIにて、「Roon」の魅力を深堀りするイベントが開催された。RoonのCEOであるEnno Vandermeer氏もオンラインで登場したこのイベントの模様をレポートしよう。
イベントは全部で4部構成となっており、ソフトウェアとしてのRoonの魅力の解説に加えて、Roonに対応するハードウェア(Roon Ready対応機、Roon Core対応機)の聴き比べを行うなど、5時間に渡ってさまざまな角度からRoonの楽しみ方を探る内容となった。ナビゲーターには土方久明氏が登場。20名以上の来場者の半数近くがすでに「Roonユーザー」と、スタート時から高い期待が渦巻いていた。
第1部ではRoon Coreの聴き比べ。Roon CoreはRoonのソフトウェアを動かすための “頭脳” となる存在であり、強力なマシンパワーを必要とする。そのためこれまではPC/Macが使われることが多かったが、ここに来て「オーディオ機器」として展開される製品が増えてきた。
今回は、純正サーバーとして発売されている「Nucleus」「Nucleus+」と、Silent Angelの「Z1」、500万円オーバーの “Windowsパソコン” TAIKO AUDIOの「SGM EXTREME」、さらに来春発売が予定されているfidataの新サーバー「HFAS2」(予価110万円)の5機種を用意。Roonの動向を最初期から追いかけてきた土方氏も、「こんな聴き比べができるまでにRoonが広がってきたことは本当にすごいことです」と驚きを隠せない。
スピーカーにはB&W「802 D4」、プリ&パワーアンプにはエソテリックの「C-02」「S-02」、DACにはdCSの「Vivaldii APEX DAC」と万全の体制。課題曲としてアデルの「to be lovers」を用意し、それぞれの聴き比べがスタートした。
声の伸びやかさや消え際のニュアンス感が印象的な「Nucleus」、ヴォーカルの浸透力の高い「Z1」、重心が低く空間表現に優れた「HFAS2」とそれぞれに違いを聴かせてくれたが、やはりTAIKO AUDIOの「SGM EXTREME」の音は別次元。表現のディテールまで詳らかにしてしまう見通しの良さと、絹のように上質な手触り感の両立が見事で、アデルの艶やかさにため息が溢れる。
SGM EXTREMEは、普通のパソコン向けとしてありえないリニア電源やコンデンサ類が搭載されているが、オーディオ的に考えると「理にかなった仕組み」になっているということで、まさにオーディオのためだけのモンスターマシン。500万円を超える価格にも関わらず、すでに日本でも複数の実売が出ているそうで、参加者からは「やっぱりTAIKOの音別格」の声も聞こえた。
続いて第2部は「Roon Ready」対応機5機種の聴き比べ。音源ライブラリから「RAAT」と呼ばれる独自のプロトコルで伝送される、いわゆる「プレーヤー」「再生機能」に該当する製品となる。こちらも、iFi audioの「ZEN Stream」という5万円台の製品から、「NEO Stream」、Silent angelの「M1T」、80万円overのSONOREの「Signature Rendu SE optical」にエソテリックの「N-03T」まで全5機種が用意された。
土方氏によると、RAATのメリットとして、UPnP/OpenHomeではパケットをどんどん送りつけていくことになるのに対し、RAATではRoon CoreがFLACの解凍やMQAのデコードを行い、プレーヤーの負荷を見ながら音楽データを適切に送り出すことができるため、Roon Ready(=プレーヤー)側ではより精度の高いDA変換が行えるという。
ここでは、Silent Angelの「Z1」(Roon Core)から、USB出力で「M1T」(USB DACとして使用)に送り出す場合と、RAATで送り出す(Roon Readyとして使用)というマニアックな聴き比べも実施。USB出力に対し、Roon Readyでは耳に刺さる部分が穏やかになり、非常に落ち着いたオーディオライクな音になる印象だ。
また、エソテリックの「N-03T」は、最新のファームウェアアップデートによりRoon専用モードも実装されたため、こちらはOpenHomeとRoonの聴き比べも実施。リンダ・ロンシュタットの「星に願いを」を試聴楽曲としたが、OpenHomeでは音の艶やかさや華やかさが印象的、Roonでは包み込まれるような優しさが前面に出てくるようで、どちらとも優劣つけがたい…クラシックやEDMなどではどんな違いが出るか、さらなる探求を深めたい思いに駆られる。
そして第3部はお待ちかね、RoonのCEOのEnno Vandermeer氏がオンラインで登場。太陽インターナショナルの内田社長の通訳で、リアルタイムの質疑応答の時間が設けられた。
Roonの現在の開発環境についてEnno氏は、「何よりもユーザーの意見を大切にしています。Roonを使っているみなさんがどういうふうに使っているか、あるいはどこに課題を感じているかなどをヒアリングして、どの点を優先的に開発を進めるか日々議論を行っています」とのこと。外部のエンジニアやコンサルタントに頼らず、すべてをオーディオファンである開発チームがコントロールすることで、何よりオーディオファンにとって使いやすものであることを優先して開発しているという。
また新たにアップデートされた「Roon ARC」も詳しく解説。スマートフォンを活用して、自宅(のRoon Core)に保管されている音楽ライブラリを、車の運転中やオフィス、また休暇中でもアクセスできるようにする新しいサービスで、この秋の大型アップデートによって実現した。Enno氏はRoon ARCの目的について、「どこへ行っても好きな音楽を再生できるようにすることが理想です」とし、「私自身も、キッチンやオフィス、ドライビング中など常にRoonを楽しんでいます」と自身が第一のユーザーであると誇らしげに語る。
現在連携しているTIDAL/Qobuz/HIGHRES AUDIOのストリーミングサービスに加えて、新たに台湾の「KKBOX」との連携が決定していると発表。ほかにも複数社との協議が進んでいるという。KKBOXはアジア圏で影響力の強いサービスとなっており、日本語での表現がさらにリッチになる可能性も期待できそうだ。
Dolby Atmosなどの空間オーディオについての対応については、「マーケットがどうなるかをしっかりと見極めた上で判断したい」とコメント。「フォーマット戦争には巻き込まれたくない」と語り、時が来たらサポートも考えるが、少なくとも今すぐの対応は考えていないとのこと。
日本のRoonの有料ユーザーはすでに6,000人を超えており、その声も非常に大切にしているという。オンラインコミュニティも、英語ベースにはなるが活発な情報交換や交流が行われているとし、日本のユーザーもぜひ積極的に参加してほしいと呼びかけた。
最終章となる第4部は、土方氏とオリオスペック酒井氏による「Roonの使いこなし」の時間。楽曲情報から関連するアーティストを手繰っていく楽しみや、「フォーカス」と呼ばれる絞り込み機能で自身のライブラリの傾向を確認するなど、基本の操作に加えて踏み込んだ使い方が紹介された。
土方氏のおすすめは、「Valence」と呼ばれるAIを活用したレコメンド機能。いわゆるラジオ的な使い方が可能で、自分の好みの音楽や、今再生されている音楽に近い音楽をAIが自動で選定し再生してくれる。「レコメンドの性能が非常に優秀なので、新しいアーティストとの出会いも増えますし、僕自身もかなり楽しんじゃってます」と土方氏。再生楽曲の横に「Good」「NG」ボタンも装備されているので、曲ごとにそのボタンをチェックすればさらにAIが「賢く」好みの音楽を学習してくれる。
Roonをここまで掘り下げて探求できるのは、長年デジタル再生の最先端を追求してきたダイナミックオーディオH.A.L.IIIだからこそ。昨今は、CD再生機にもUSB入力やRoon Readyに対応しているものも増えてきており、店長の島 健悟氏も「CDだけではなく、Roonも活用してもっとたくさんの音楽を楽しんでほしい」とアピール。
イベントの最後に土方氏は、「Roonは人生観が変わるくらいの体験をもたらしてくれる素晴らしいソフトウェアです」とRoonの衝撃を改めて強調。「本気でオーディオを聴くときはもちろん、ながら聴きも楽しくて、音楽に触れている時間がますます増えていくと感じます」と語り、多くのオーディオファンにもっとRoonを楽しんでほしいと締めくくった。
第1部:Roon Coreの聴き比べ
イベントは全部で4部構成となっており、ソフトウェアとしてのRoonの魅力の解説に加えて、Roonに対応するハードウェア(Roon Ready対応機、Roon Core対応機)の聴き比べを行うなど、5時間に渡ってさまざまな角度からRoonの楽しみ方を探る内容となった。ナビゲーターには土方久明氏が登場。20名以上の来場者の半数近くがすでに「Roonユーザー」と、スタート時から高い期待が渦巻いていた。
第1部ではRoon Coreの聴き比べ。Roon CoreはRoonのソフトウェアを動かすための “頭脳” となる存在であり、強力なマシンパワーを必要とする。そのためこれまではPC/Macが使われることが多かったが、ここに来て「オーディオ機器」として展開される製品が増えてきた。
今回は、純正サーバーとして発売されている「Nucleus」「Nucleus+」と、Silent Angelの「Z1」、500万円オーバーの “Windowsパソコン” TAIKO AUDIOの「SGM EXTREME」、さらに来春発売が予定されているfidataの新サーバー「HFAS2」(予価110万円)の5機種を用意。Roonの動向を最初期から追いかけてきた土方氏も、「こんな聴き比べができるまでにRoonが広がってきたことは本当にすごいことです」と驚きを隠せない。
スピーカーにはB&W「802 D4」、プリ&パワーアンプにはエソテリックの「C-02」「S-02」、DACにはdCSの「Vivaldii APEX DAC」と万全の体制。課題曲としてアデルの「to be lovers」を用意し、それぞれの聴き比べがスタートした。
声の伸びやかさや消え際のニュアンス感が印象的な「Nucleus」、ヴォーカルの浸透力の高い「Z1」、重心が低く空間表現に優れた「HFAS2」とそれぞれに違いを聴かせてくれたが、やはりTAIKO AUDIOの「SGM EXTREME」の音は別次元。表現のディテールまで詳らかにしてしまう見通しの良さと、絹のように上質な手触り感の両立が見事で、アデルの艶やかさにため息が溢れる。
SGM EXTREMEは、普通のパソコン向けとしてありえないリニア電源やコンデンサ類が搭載されているが、オーディオ的に考えると「理にかなった仕組み」になっているということで、まさにオーディオのためだけのモンスターマシン。500万円を超える価格にも関わらず、すでに日本でも複数の実売が出ているそうで、参加者からは「やっぱりTAIKOの音別格」の声も聞こえた。
第2部:Roon Ready対応機の聴き比べ
続いて第2部は「Roon Ready」対応機5機種の聴き比べ。音源ライブラリから「RAAT」と呼ばれる独自のプロトコルで伝送される、いわゆる「プレーヤー」「再生機能」に該当する製品となる。こちらも、iFi audioの「ZEN Stream」という5万円台の製品から、「NEO Stream」、Silent angelの「M1T」、80万円overのSONOREの「Signature Rendu SE optical」にエソテリックの「N-03T」まで全5機種が用意された。
土方氏によると、RAATのメリットとして、UPnP/OpenHomeではパケットをどんどん送りつけていくことになるのに対し、RAATではRoon CoreがFLACの解凍やMQAのデコードを行い、プレーヤーの負荷を見ながら音楽データを適切に送り出すことができるため、Roon Ready(=プレーヤー)側ではより精度の高いDA変換が行えるという。
ここでは、Silent Angelの「Z1」(Roon Core)から、USB出力で「M1T」(USB DACとして使用)に送り出す場合と、RAATで送り出す(Roon Readyとして使用)というマニアックな聴き比べも実施。USB出力に対し、Roon Readyでは耳に刺さる部分が穏やかになり、非常に落ち着いたオーディオライクな音になる印象だ。
また、エソテリックの「N-03T」は、最新のファームウェアアップデートによりRoon専用モードも実装されたため、こちらはOpenHomeとRoonの聴き比べも実施。リンダ・ロンシュタットの「星に願いを」を試聴楽曲としたが、OpenHomeでは音の艶やかさや華やかさが印象的、Roonでは包み込まれるような優しさが前面に出てくるようで、どちらとも優劣つけがたい…クラシックやEDMなどではどんな違いが出るか、さらなる探求を深めたい思いに駆られる。
第3部:Enno Vandermeer氏が登場!
そして第3部はお待ちかね、RoonのCEOのEnno Vandermeer氏がオンラインで登場。太陽インターナショナルの内田社長の通訳で、リアルタイムの質疑応答の時間が設けられた。
Roonの現在の開発環境についてEnno氏は、「何よりもユーザーの意見を大切にしています。Roonを使っているみなさんがどういうふうに使っているか、あるいはどこに課題を感じているかなどをヒアリングして、どの点を優先的に開発を進めるか日々議論を行っています」とのこと。外部のエンジニアやコンサルタントに頼らず、すべてをオーディオファンである開発チームがコントロールすることで、何よりオーディオファンにとって使いやすものであることを優先して開発しているという。
また新たにアップデートされた「Roon ARC」も詳しく解説。スマートフォンを活用して、自宅(のRoon Core)に保管されている音楽ライブラリを、車の運転中やオフィス、また休暇中でもアクセスできるようにする新しいサービスで、この秋の大型アップデートによって実現した。Enno氏はRoon ARCの目的について、「どこへ行っても好きな音楽を再生できるようにすることが理想です」とし、「私自身も、キッチンやオフィス、ドライビング中など常にRoonを楽しんでいます」と自身が第一のユーザーであると誇らしげに語る。
現在連携しているTIDAL/Qobuz/HIGHRES AUDIOのストリーミングサービスに加えて、新たに台湾の「KKBOX」との連携が決定していると発表。ほかにも複数社との協議が進んでいるという。KKBOXはアジア圏で影響力の強いサービスとなっており、日本語での表現がさらにリッチになる可能性も期待できそうだ。
Dolby Atmosなどの空間オーディオについての対応については、「マーケットがどうなるかをしっかりと見極めた上で判断したい」とコメント。「フォーマット戦争には巻き込まれたくない」と語り、時が来たらサポートも考えるが、少なくとも今すぐの対応は考えていないとのこと。
日本のRoonの有料ユーザーはすでに6,000人を超えており、その声も非常に大切にしているという。オンラインコミュニティも、英語ベースにはなるが活発な情報交換や交流が行われているとし、日本のユーザーもぜひ積極的に参加してほしいと呼びかけた。
第4部:Roonの使いこなしを解説
最終章となる第4部は、土方氏とオリオスペック酒井氏による「Roonの使いこなし」の時間。楽曲情報から関連するアーティストを手繰っていく楽しみや、「フォーカス」と呼ばれる絞り込み機能で自身のライブラリの傾向を確認するなど、基本の操作に加えて踏み込んだ使い方が紹介された。
土方氏のおすすめは、「Valence」と呼ばれるAIを活用したレコメンド機能。いわゆるラジオ的な使い方が可能で、自分の好みの音楽や、今再生されている音楽に近い音楽をAIが自動で選定し再生してくれる。「レコメンドの性能が非常に優秀なので、新しいアーティストとの出会いも増えますし、僕自身もかなり楽しんじゃってます」と土方氏。再生楽曲の横に「Good」「NG」ボタンも装備されているので、曲ごとにそのボタンをチェックすればさらにAIが「賢く」好みの音楽を学習してくれる。
Roonをここまで掘り下げて探求できるのは、長年デジタル再生の最先端を追求してきたダイナミックオーディオH.A.L.IIIだからこそ。昨今は、CD再生機にもUSB入力やRoon Readyに対応しているものも増えてきており、店長の島 健悟氏も「CDだけではなく、Roonも活用してもっとたくさんの音楽を楽しんでほしい」とアピール。
イベントの最後に土方氏は、「Roonは人生観が変わるくらいの体験をもたらしてくれる素晴らしいソフトウェアです」とRoonの衝撃を改めて強調。「本気でオーディオを聴くときはもちろん、ながら聴きも楽しくて、音楽に触れている時間がますます増えていくと感じます」と語り、多くのオーディオファンにもっとRoonを楽しんでほしいと締めくくった。