公開日 2023/05/19 11:00
デノン、110周年モデルの技術を投入したネットワークプレーヤー「DNP-2000NE」。HDMI搭載でテレビも接続可能
現行で唯一のネットワーク専用機
デノンは、Hi-Fiネットワークプレーヤー製品「DNP-2000NE」を6月23日より発売する。価格は275,000円(税込)。
■HEOSを「ほぼDCD-A110」な機構で楽しめるネットワーク専用機
デノンにとっては2016年の「DNP-2500NE」以来、かつ現行ラインナップでは唯一となるネットワークプレーヤー専用機。担当の田中氏は「蓄音機から始まり、世界初のCDプレーヤーを世に送り出すなどしてきたデノンにはプレーヤーメーカーである、という自負がある。そんなデノンだから、入門機や複合機では飽きたりないオーディオファンのシステムを活かす、最新のネットワーク専用機を開発した」と語る。
核となるネットワークシステムには同社「HEOS」を用いつつ110周年CDプレーヤー「DCD-A110」の技術を多数投入しており、「中身はほぼA110」だと説明。A110シリーズとも組み合わせて使えるようにと、プレミアムシルバーに加えグラファイトシルバーをラインナップしたという。
同社のアナログ波形再現技術の最新かつ最上位バージョン「Ultra AL32 Processing」を搭載。これはDCD-A110にて開発されたもので、PCM信号を最大1.536MHz/32bitに拡張、デジタル録音時に失われたデータを高精度で復元することにより、歪みのない繊細な描写、正確な音の定位、豊かな低域など原音に忠実な再生を実現するとしている。
なお、前モデルのDNP-2500NEは最大768kHzだったため、オーバーサンプリング比は2倍となっており、これで理論上S/Nを-3dB改善できたとのこと。
DAC部もA110同様、ステレオDACを左右チャンネルに2基ずつの計4基(8ch分)搭載したクアッドDAC構成となっており、1.536MHzにオーバーサンプリングされた信号を768kHzに分割し、DAC 1基ずつに入力。片chあたり計4chのDACを用いる並列構成によって4倍の電流出力を得られ、6cBのS/N向上と、よりエネルギッシュなサウンドを実現したという。
DCD-A110ではDACチップにTI製の「PCM1795」を採用していたが、本製品ではESS製の「ES9018K2M」を採用する。元々はPCM1795を使う予定だったものの、昨今の半導体の入手状況から、確保できるPCM1795は既存製品のために使い、代わりにES9018K2Mを新規採用することにしたそうだ。
同社サウンドマスター・山内慎一氏は、PCM1795の代替にES9018K2Mを選んだ理由について「個人的に音の傾向が近いところがあると思う。(ES9018K2Mは)キャラクターが素直で使いやすく、チューニングも行いやすいため採用した」と語っていた。
また、クロックをDACの近くに配置してD/A変換の精度を高める「DACマスタークロックデザイン」も踏襲。44.1kHz系/48kHz系の2つの超低位相雑音クロック発振器を搭載し、ソースに応じて切り替えるほか、ジッターリデューサーを用いることでジッターを徹底的に抑制している。
I/V変換アンプ部には山内氏が選定した高音質パーツや、SYコンデンサー、SXコンデンサーなど「SX1 LIMITED EDITION」で使われたカスタムパーツを用いたフルディスクリート回路を採用。
パーツ面ではFFCケーブル(フィルム状のケーブル)に銅テープを巻いたものを新規採用。デジタルプレーヤーは電波などが漏れやすく、それを防ぐために音と機能のバランスを鑑みつつ開発したという。そのほかの箇所でも至る所で高品質/カスタムパーツが用いられている。
アナログ基板はL/Rで完全なシンメトリー構成とし、左右の音質の均質化を実現。さらにデジタル/アナログ基板をノイズアイソレーション回路によって電気的に遮断することで、デジタル回路からのノイズがアナログ回路に流入することを防いでいる。
電源トランスにはDNP-2500NEで実績のある高出力EIコアトランスをベースに、本機にあわせてカスタマイズした専用品をデジタル/アナログ回路で1つずつ、計2個搭載。トランス部分からデジタル/アナログ回路を完全に独立させ、相互干渉とノイズの回り込みを防いでおり、トランスは強固なスチール製トランスベースを介してシャーシに取り付けることで、周辺回路に不要な振動が伝わらないようにしてある。
アナログオーディオ用電源回路には、山内氏がチューニングを施した専用の3,300μF大容量カスタムブロックコンデンサーを搭載。アナログオーディオ基板に電源供給するケーブルも音への影響が大きいため、工場での作業性が落ちることを承知したうえで、音質重視の太めのものを採用したそうだ。
以上のようにさまざまな機構を搭載していることから、スチール製シャーシの下にボトムプレートを加えて低重心化と高剛性化を実現。内外部の不要振動を排除し、音質を向上させる「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」を採用するほか、トップカバーはDNP-2500NEと比べて天面のネジを減らし、代わりにエンボス加工で剛性を確保している。
■デノンHi-Fiコンポーネントでは初のHDMI端子搭載
ネットワークシステムにはHEOSを用いるため、スマホ/タブレットの専用アプリからAmazon Music HDやSpotifyなどのサービスを操作・利用可能。他のHEOS搭載製品と連携したマルチルーム接続や、Denon Homeシリーズ、Amazon EchoなどAlexa対応デバイスと組み合わせての音声操作にも対応する。
大きな特徴のひとつが、デノンのHi-Fiコンポーネントとして初めてHDMI端子を装備したことだ。HDMI ARC対応のためテレビと繋げばテレビの音声をHi-Fiオーディオシステムでも楽しむことができ、「自慢のオーディオ機器を家族みんなで楽しめる」とアピールする。
HDMI CECにも対応するため、CEC対応テレビと繋げばテレビリモコンで電源オン/オフ、音量調整が可能。さらにIRコントロール対応のデノン製プリメインと組み合わせた場合は、テレビ・プレーヤー・アンプまで一括してテレビリモコンで操作できるようになる。
ほか入力端子としてUSB-B×1(リア)、USB-A(フロント)×1、光デジタル×2、同軸デジタル×1を装備。2.4/5GHzデュアルバンドWi-FiやAirPlay2、Bluetoothにも対応する。
再生フォーマットは、背面のUSB-Bに接続してUSB-DACとして使用した場合が最大DSD 11.2MHz、PCM 384kHz/32bitで、フロントのUSB-Aと接続した場合やWi-FiでNASなどとネットワーク接続した場合、光/同軸デジタル出力で接続した場合がDSD 5.6MHz、PCM 192kHz/24bitとなる。
アナログ出力にはRCA端子をボリューム固定/可変で1系統ずつと、ゲイン切り替え機能付きのヘッドフォン端子を1系統装備。デジタル出力には光デジタルと同軸デジタルを1系統ずつ備える。外形寸法は434W×170H×421Dmm(アンテナを立てた場合)で、質量は9.7kg。
音決めはサウンドマスターの山内氏が行っており、フィロソフィーである「Vivid & Spacious」の実現に加え、同じCD音源でもCD再生とリッピングデータで音が違う、と感じる方にも満足してもらえるよう、メディアやファンクションが異なっても同じ音が楽しめるよう注力したとのこと。
■編集部インプレッション
発表にあたってDNP-2000NEの試聴の機会を得たので、簡単ではあるがインプレッションを記したい。
まずはNASとネットワーク接続して、HEOSからNASのローカルファイルを再生。驚いたのがS/N感が非常に高い、ということだ。機器のボリュームを落とした際の無音と、演奏が静まった際の無音の区別がほとんどつかず、「この曲の試聴はここまでか」と思ったらまだまだ続きがあった、というシーンが幾度となくあった。
女性ボーカルの作品ではボーカルや楽器のニュアンスを精細に描写。クラシックではオーケストラの各楽器を綺麗に描き分けてくれて、解像感の高さや空間表現の上手さがよく分かる。まさに「Vivid & Spacious」が体現されたサウンドだ。
続いてPCを接続し、USB-DACの状態で試聴した。同じ曲で比較したわけではないものの、確かに先ほどのネットワーク再生時からキャラクターが変わったような印象はない。再生ソフト・アプリによる音の違いが出るのは致し方ないが、どのモードでもサウンドがブレないのは嬉しいところだろう。
今回は試すことができなかったが、HDMI端子を搭載してテレビと繋げるようになったことも大きい。昨今はHDMI搭載のHi-Fiプリメインアンプなどテレビ“も”楽しめるピュアオーディオがトレンドになりつつあるが、すでにお気に入りのオーディオシステムを持っている方なら、本製品をプラスすればリビングオーディオが実現できるわけだ。
既発売のプリメイン「PMA-900HNE」もHEOSを搭載するが、そちらは複合機かつエントリー帯のモデル。DNP-2000NEならより高品位なネットワーク再生ができるようになるだけでなく、スマホアプリからの操作やマルチルーム再生など、HEOSの柔軟さをシステムに組み込めることも特筆しておきたい。
■HEOSを「ほぼDCD-A110」な機構で楽しめるネットワーク専用機
デノンにとっては2016年の「DNP-2500NE」以来、かつ現行ラインナップでは唯一となるネットワークプレーヤー専用機。担当の田中氏は「蓄音機から始まり、世界初のCDプレーヤーを世に送り出すなどしてきたデノンにはプレーヤーメーカーである、という自負がある。そんなデノンだから、入門機や複合機では飽きたりないオーディオファンのシステムを活かす、最新のネットワーク専用機を開発した」と語る。
核となるネットワークシステムには同社「HEOS」を用いつつ110周年CDプレーヤー「DCD-A110」の技術を多数投入しており、「中身はほぼA110」だと説明。A110シリーズとも組み合わせて使えるようにと、プレミアムシルバーに加えグラファイトシルバーをラインナップしたという。
同社のアナログ波形再現技術の最新かつ最上位バージョン「Ultra AL32 Processing」を搭載。これはDCD-A110にて開発されたもので、PCM信号を最大1.536MHz/32bitに拡張、デジタル録音時に失われたデータを高精度で復元することにより、歪みのない繊細な描写、正確な音の定位、豊かな低域など原音に忠実な再生を実現するとしている。
なお、前モデルのDNP-2500NEは最大768kHzだったため、オーバーサンプリング比は2倍となっており、これで理論上S/Nを-3dB改善できたとのこと。
DAC部もA110同様、ステレオDACを左右チャンネルに2基ずつの計4基(8ch分)搭載したクアッドDAC構成となっており、1.536MHzにオーバーサンプリングされた信号を768kHzに分割し、DAC 1基ずつに入力。片chあたり計4chのDACを用いる並列構成によって4倍の電流出力を得られ、6cBのS/N向上と、よりエネルギッシュなサウンドを実現したという。
DCD-A110ではDACチップにTI製の「PCM1795」を採用していたが、本製品ではESS製の「ES9018K2M」を採用する。元々はPCM1795を使う予定だったものの、昨今の半導体の入手状況から、確保できるPCM1795は既存製品のために使い、代わりにES9018K2Mを新規採用することにしたそうだ。
同社サウンドマスター・山内慎一氏は、PCM1795の代替にES9018K2Mを選んだ理由について「個人的に音の傾向が近いところがあると思う。(ES9018K2Mは)キャラクターが素直で使いやすく、チューニングも行いやすいため採用した」と語っていた。
また、クロックをDACの近くに配置してD/A変換の精度を高める「DACマスタークロックデザイン」も踏襲。44.1kHz系/48kHz系の2つの超低位相雑音クロック発振器を搭載し、ソースに応じて切り替えるほか、ジッターリデューサーを用いることでジッターを徹底的に抑制している。
I/V変換アンプ部には山内氏が選定した高音質パーツや、SYコンデンサー、SXコンデンサーなど「SX1 LIMITED EDITION」で使われたカスタムパーツを用いたフルディスクリート回路を採用。
パーツ面ではFFCケーブル(フィルム状のケーブル)に銅テープを巻いたものを新規採用。デジタルプレーヤーは電波などが漏れやすく、それを防ぐために音と機能のバランスを鑑みつつ開発したという。そのほかの箇所でも至る所で高品質/カスタムパーツが用いられている。
アナログ基板はL/Rで完全なシンメトリー構成とし、左右の音質の均質化を実現。さらにデジタル/アナログ基板をノイズアイソレーション回路によって電気的に遮断することで、デジタル回路からのノイズがアナログ回路に流入することを防いでいる。
電源トランスにはDNP-2500NEで実績のある高出力EIコアトランスをベースに、本機にあわせてカスタマイズした専用品をデジタル/アナログ回路で1つずつ、計2個搭載。トランス部分からデジタル/アナログ回路を完全に独立させ、相互干渉とノイズの回り込みを防いでおり、トランスは強固なスチール製トランスベースを介してシャーシに取り付けることで、周辺回路に不要な振動が伝わらないようにしてある。
アナログオーディオ用電源回路には、山内氏がチューニングを施した専用の3,300μF大容量カスタムブロックコンデンサーを搭載。アナログオーディオ基板に電源供給するケーブルも音への影響が大きいため、工場での作業性が落ちることを承知したうえで、音質重視の太めのものを採用したそうだ。
以上のようにさまざまな機構を搭載していることから、スチール製シャーシの下にボトムプレートを加えて低重心化と高剛性化を実現。内外部の不要振動を排除し、音質を向上させる「ダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクション」を採用するほか、トップカバーはDNP-2500NEと比べて天面のネジを減らし、代わりにエンボス加工で剛性を確保している。
■デノンHi-Fiコンポーネントでは初のHDMI端子搭載
ネットワークシステムにはHEOSを用いるため、スマホ/タブレットの専用アプリからAmazon Music HDやSpotifyなどのサービスを操作・利用可能。他のHEOS搭載製品と連携したマルチルーム接続や、Denon Homeシリーズ、Amazon EchoなどAlexa対応デバイスと組み合わせての音声操作にも対応する。
大きな特徴のひとつが、デノンのHi-Fiコンポーネントとして初めてHDMI端子を装備したことだ。HDMI ARC対応のためテレビと繋げばテレビの音声をHi-Fiオーディオシステムでも楽しむことができ、「自慢のオーディオ機器を家族みんなで楽しめる」とアピールする。
HDMI CECにも対応するため、CEC対応テレビと繋げばテレビリモコンで電源オン/オフ、音量調整が可能。さらにIRコントロール対応のデノン製プリメインと組み合わせた場合は、テレビ・プレーヤー・アンプまで一括してテレビリモコンで操作できるようになる。
ほか入力端子としてUSB-B×1(リア)、USB-A(フロント)×1、光デジタル×2、同軸デジタル×1を装備。2.4/5GHzデュアルバンドWi-FiやAirPlay2、Bluetoothにも対応する。
再生フォーマットは、背面のUSB-Bに接続してUSB-DACとして使用した場合が最大DSD 11.2MHz、PCM 384kHz/32bitで、フロントのUSB-Aと接続した場合やWi-FiでNASなどとネットワーク接続した場合、光/同軸デジタル出力で接続した場合がDSD 5.6MHz、PCM 192kHz/24bitとなる。
アナログ出力にはRCA端子をボリューム固定/可変で1系統ずつと、ゲイン切り替え機能付きのヘッドフォン端子を1系統装備。デジタル出力には光デジタルと同軸デジタルを1系統ずつ備える。外形寸法は434W×170H×421Dmm(アンテナを立てた場合)で、質量は9.7kg。
音決めはサウンドマスターの山内氏が行っており、フィロソフィーである「Vivid & Spacious」の実現に加え、同じCD音源でもCD再生とリッピングデータで音が違う、と感じる方にも満足してもらえるよう、メディアやファンクションが異なっても同じ音が楽しめるよう注力したとのこと。
■編集部インプレッション
発表にあたってDNP-2000NEの試聴の機会を得たので、簡単ではあるがインプレッションを記したい。
まずはNASとネットワーク接続して、HEOSからNASのローカルファイルを再生。驚いたのがS/N感が非常に高い、ということだ。機器のボリュームを落とした際の無音と、演奏が静まった際の無音の区別がほとんどつかず、「この曲の試聴はここまでか」と思ったらまだまだ続きがあった、というシーンが幾度となくあった。
女性ボーカルの作品ではボーカルや楽器のニュアンスを精細に描写。クラシックではオーケストラの各楽器を綺麗に描き分けてくれて、解像感の高さや空間表現の上手さがよく分かる。まさに「Vivid & Spacious」が体現されたサウンドだ。
続いてPCを接続し、USB-DACの状態で試聴した。同じ曲で比較したわけではないものの、確かに先ほどのネットワーク再生時からキャラクターが変わったような印象はない。再生ソフト・アプリによる音の違いが出るのは致し方ないが、どのモードでもサウンドがブレないのは嬉しいところだろう。
今回は試すことができなかったが、HDMI端子を搭載してテレビと繋げるようになったことも大きい。昨今はHDMI搭載のHi-Fiプリメインアンプなどテレビ“も”楽しめるピュアオーディオがトレンドになりつつあるが、すでにお気に入りのオーディオシステムを持っている方なら、本製品をプラスすればリビングオーディオが実現できるわけだ。
既発売のプリメイン「PMA-900HNE」もHEOSを搭載するが、そちらは複合機かつエントリー帯のモデル。DNP-2000NEならより高品位なネットワーク再生ができるようになるだけでなく、スマホアプリからの操作やマルチルーム再生など、HEOSの柔軟さをシステムに組み込めることも特筆しておきたい。