公開日 2024/11/15 11:55
<InterBEE>ゼンハイザー、“次世代ワイヤレス伝送システム”「Spectera」発表。本国エンジニアに詳細を訊く
日本国内では現状使用できない
今回のInterBEEにおいて、ゼンハイザーは次世代のプロ向けワイヤレスマイク伝送の新しいソリューション「Spectera」(スペクテラ)を発表した。日本国内では電波法の問題により現在は使用できず、発売も未定。だが、すでにドイツやアメリカなど50数カ国では使用可能となっており、国内での正式展開も待たれる。
その最新情報について、ゼンハイザー本国のエンジニア、フォルカー・シュミットさんも交えて詳しい話を伺った。
今回の「Spectera」には、ゼンハイザーが推進する新しいワイヤレス伝送の規格「WMAS」(Wireless Multichannel Audio Systems)が初採用されていることが大きな特徴となる。これは6MHz以上の “ワイドバンド” を使った新しい伝送の規格となり、これまでの狭いバンドを使った場合に比べて、フェーディングと呼ばれる受信レベルの低下が発生しにくい。そのため、より安定した伝送が実現できるという。
また、1つの周波数帯域で最大64ch(入力32ch、出力32chの双方向)まで送受信できるため、機材をよりコンパクトに収めることができるというメリットもある。
しかし一方で、6MHzの帯域は地上波デジタルが使用しており、地上波デジタルの帯域はワイヤレス伝送において非常にプライオリティが高い。それと競合する帯域をワイヤレスマイクの伝送に使用することは、法律面も含め非常に難易度が高いものとなる。
ゼンハイザーがこのWMASの技術を模索し始めたのは2013年。それから10年かけ、粘り強い関係各所へのアプローチによって、ドイツ、そしてアメリカ国内での認証を獲得。そしてこの9月、WMASを搭載した「Spectera」をグローバル発表したという経緯がある。
同じ6MHz帯を使用していてもテレビと競合しない理由について、ゼンハイザージャパンの藤井さんによると、「ワイドバンドのほうが他のデバイスに影響を与えにくい」という特性があるという。電力密度を比較すると、ナローバンドの方はパワー密度が非常に高いが、WMAS(6MHzもしくは8MHz)は密度が低い。密度が低いと、前後の帯域にノイズとして紛れ込みにくくなるそうで、フォルカーさんも「WMASは他のデバイスに影響を与えにくい、“POLITE”(礼儀正しい)規格です」と胸を張る。
そんなWMASを採用した “次世代ワイヤレスシステム” Spectera。この製品開発にあたっては、「使いやすさ」「信頼性」、そして「ニーズに合わせて変化できるエコシステム」を考えていたという。
Specteraは、1Uサイズの受信機と、複数のボディパックで構成される。ボディパックにはマイクとイヤモニの双方を装着できるようになっており、受信機とWMASで接続される。これまではそれぞれのデバイスが必要であったところを、ひとつにまとめることができるのだ。こういったコンパクト化は、イヤホンとマイクの両方を展開するゼンハイザーの得意とするところだろう。
また、これまでは接続するボディパックの台数分の受信機が必要となっていたが、先述の通りこれは1台で64chまで伝送可能。さらに、よりオーディオクオリティを高める、あるいはレイテンシーを抑えるために、複数のチャンネルをひとつの音声信号に割り当てることもできる。メインのパフォーマーには複数チャンネルを割り当て、他の人には1つのチャンネルで伝送する、といった使い分けも可能になるそうだ。
今後ゼンハイザーからもWMAS対応製品が登場するだろうが、WMAS自体はゼンハイザーが舵取りをおこなっているものの、オープンな規格として策定されている。そのため、他ブランドがこの規格を採用したワイヤレスマイク、受信機、トランスミッター等を開発、WMASのエコシステムを発展させていくことを歓迎する考えでもあるようだ。
Specteraはヨーロッパ、アメリカ以外にも、アジア圏ではシンガポールやタイ、インドネシアなどですでに認証が通っているという。フォルカーさんも、「この製品はプロオーディオ業界の “ゲームチェンジャー” となる製品と認識しており、日本での認証に時間がかかることも理解しております。政府や認証団体と連携をとりながら、日本でも使用できるように今後も働きかけていきたいと考えています」と力強い。
最後にフォルカーさんから日本市場へのメッセージを。「日本は私たちにとってとても重要な市場です。日本のクリエイターはとても賢く、親切でオープンで、新しい技術に強い関心を持ってくれています。それは私たちの未来のプロダクトへのとても大きな推進力です。私たちはマーケティング・カンパニーではなくて、あくまで技術に基礎を置いた会社であることを誇りに思っています。日本のユーザーからのたくさんのフィードバックは、私たちにとってもとても大切なものです」。
Specteraが日本でも正式に使用できるようになれば、制作現場においてもより効率的かつハイクオリティなコンテンツ制作が可能になるだろう。引き続きプロオーディオ業界の最新事例についても注視していきたい。
その最新情報について、ゼンハイザー本国のエンジニア、フォルカー・シュミットさんも交えて詳しい話を伺った。
今回の「Spectera」には、ゼンハイザーが推進する新しいワイヤレス伝送の規格「WMAS」(Wireless Multichannel Audio Systems)が初採用されていることが大きな特徴となる。これは6MHz以上の “ワイドバンド” を使った新しい伝送の規格となり、これまでの狭いバンドを使った場合に比べて、フェーディングと呼ばれる受信レベルの低下が発生しにくい。そのため、より安定した伝送が実現できるという。
また、1つの周波数帯域で最大64ch(入力32ch、出力32chの双方向)まで送受信できるため、機材をよりコンパクトに収めることができるというメリットもある。
しかし一方で、6MHzの帯域は地上波デジタルが使用しており、地上波デジタルの帯域はワイヤレス伝送において非常にプライオリティが高い。それと競合する帯域をワイヤレスマイクの伝送に使用することは、法律面も含め非常に難易度が高いものとなる。
ゼンハイザーがこのWMASの技術を模索し始めたのは2013年。それから10年かけ、粘り強い関係各所へのアプローチによって、ドイツ、そしてアメリカ国内での認証を獲得。そしてこの9月、WMASを搭載した「Spectera」をグローバル発表したという経緯がある。
同じ6MHz帯を使用していてもテレビと競合しない理由について、ゼンハイザージャパンの藤井さんによると、「ワイドバンドのほうが他のデバイスに影響を与えにくい」という特性があるという。電力密度を比較すると、ナローバンドの方はパワー密度が非常に高いが、WMAS(6MHzもしくは8MHz)は密度が低い。密度が低いと、前後の帯域にノイズとして紛れ込みにくくなるそうで、フォルカーさんも「WMASは他のデバイスに影響を与えにくい、“POLITE”(礼儀正しい)規格です」と胸を張る。
そんなWMASを採用した “次世代ワイヤレスシステム” Spectera。この製品開発にあたっては、「使いやすさ」「信頼性」、そして「ニーズに合わせて変化できるエコシステム」を考えていたという。
Specteraは、1Uサイズの受信機と、複数のボディパックで構成される。ボディパックにはマイクとイヤモニの双方を装着できるようになっており、受信機とWMASで接続される。これまではそれぞれのデバイスが必要であったところを、ひとつにまとめることができるのだ。こういったコンパクト化は、イヤホンとマイクの両方を展開するゼンハイザーの得意とするところだろう。
また、これまでは接続するボディパックの台数分の受信機が必要となっていたが、先述の通りこれは1台で64chまで伝送可能。さらに、よりオーディオクオリティを高める、あるいはレイテンシーを抑えるために、複数のチャンネルをひとつの音声信号に割り当てることもできる。メインのパフォーマーには複数チャンネルを割り当て、他の人には1つのチャンネルで伝送する、といった使い分けも可能になるそうだ。
今後ゼンハイザーからもWMAS対応製品が登場するだろうが、WMAS自体はゼンハイザーが舵取りをおこなっているものの、オープンな規格として策定されている。そのため、他ブランドがこの規格を採用したワイヤレスマイク、受信機、トランスミッター等を開発、WMASのエコシステムを発展させていくことを歓迎する考えでもあるようだ。
Specteraはヨーロッパ、アメリカ以外にも、アジア圏ではシンガポールやタイ、インドネシアなどですでに認証が通っているという。フォルカーさんも、「この製品はプロオーディオ業界の “ゲームチェンジャー” となる製品と認識しており、日本での認証に時間がかかることも理解しております。政府や認証団体と連携をとりながら、日本でも使用できるように今後も働きかけていきたいと考えています」と力強い。
最後にフォルカーさんから日本市場へのメッセージを。「日本は私たちにとってとても重要な市場です。日本のクリエイターはとても賢く、親切でオープンで、新しい技術に強い関心を持ってくれています。それは私たちの未来のプロダクトへのとても大きな推進力です。私たちはマーケティング・カンパニーではなくて、あくまで技術に基礎を置いた会社であることを誇りに思っています。日本のユーザーからのたくさんのフィードバックは、私たちにとってもとても大切なものです」。
Specteraが日本でも正式に使用できるようになれば、制作現場においてもより効率的かつハイクオリティなコンテンツ制作が可能になるだろう。引き続きプロオーディオ業界の最新事例についても注視していきたい。