公開日 2024/12/23 12:10
エソテリック、Grandiosoシリーズ初のネットワーク機器も登場。ダイナミックオーディオ4Fの名物デジタル再生イベントをレポート
DELA、fidata、エディスクリエーション、マランツ、aurenderと話題のブランドが大集結
ダイナミックオーディオ5555 4FのH.A.L.IIIにて、今年納めの人気イベント「Network Audio/PC Audio Time VOL.18〜ストリーミングとダウンロードの共存〜」が12月14日(土)に開催された。エソテリックの初のGrandiosoクラスのネットワークプレーヤーが先行お披露目されたほか、イベント初登場のaurender、DELAの100万円オーバーのネットワークハブなど周辺アクセサリーの聴き比べなども実施。ネットワークオーディオの最前線を学べるイベントの模様をレポートしよう。
このイベントは、毎回5時間を超えるぶっ続けで種々の聴き比べを行うまさに “耐久マラソン” 。18回目となる今回も、ネットワークオーディオの猛者たちが30名近く集結し、さまざまな機器の実力に耳を傾けてきた。
今回は全部で7部構成。土方久明氏がナビゲーターとなり、今年10月に正式に国内スタートしたQobuzのデモンストレーションに加えて、fidata、エソテリック、エディスクリエーション、DELA、aurender、そしてオリオスペックのオーディオPCが登場。テーマごとに分かれて解説と試聴が進められた。
土方氏は冒頭で、「新型のストリーマーから周辺機器まで、いまの旬の機器を集めました。この1年に感じたネットワークオーディオの今を率直に語っていきたいです」とコメント。貴重な製品の聴き比べに来場者の期待も高まってくる。
第1部Qobuzのパートでは、日本のカントリーマネージャーである祐成氏が登場。e-onkyo musicとQobuzの統合の苦労について振り返りながら、「良い音を届けたい、という思いはどちらのチームも共通していました」と断言。続けて良質な音源の重要性もさることながら、そのポテンシャルを引き出すためには良質なオーディオ機器との連携が必要と強調する。
Qobuz独自の取り組みとして、世界各国のQobuzのスタッフが執筆するマガジンや、オーディオメーカー、音のプロが選ぶプレイリストが充実している点を訴える。「今後は日本のオーディオブランドや代理店、オーディオ評論家のプレイリストも拡充していきたいです」と展望を語ってくれた。
第2部はfidataの時間。ダイナミックオーディオの島氏は、ストリーミングの時代だからこそ、ダウンロードで音源を購入することの重要性を改めて問いかける。「私がQobuzが大きく評価している理由のひとつは、ストリーミングとダウンロード、どちらも用意されていることにあります。ストリーミングで気に入った音源があったら、ぜひ購入して手元に置いておいて欲しいです。そのためにも良質なオーディオサーバーの重要性は欠かせません」と訴えた。土方氏もそれを受けて、「ストリーミングを使うほど、自分が手元に持っている音源が愛おしくなりますよね」と深く頷く。
このパートでは、同一音源について、Qobuz、Amazon Music、fidataのサーバー内に保存したハイレゾ音源の聴き比べを実施。記者のインプレッションとしては、ダウンロード音源が最も透明度が高く清涼感に一日の長を感じる。一方amazonは高域の華やかさに美点が感じられ、やはりサービスごとに若干の音質傾向があることが改めて確認できた。
第3部はエディスクリエーションの時間。今年の香港ショウで発表になったネットワークハブ「Silent Switch2」と光アイソレーター「Fiber Box3」をメインにデモンストレーションを実施。これらの大きな特徴として、両機のクロックを独自のケーブルで同期させる「クロック・バズ・テクノロジー」が活用できることにある。
今回のデモでは、同社のスタンダードモデルのハブからスタート。続けて、「ハブのグラウンドを切った状態」「光アイソレーターを追加した状態」「クロック・バズを追加した状態」「上記はそのままにエクスクルーシブモデルに変更した状態」と5パターンの聴き比べを実施。エディスクリエーションはネットワーク由来のノイズ対策を長年追求してきたブランドだけあって、それぞれの音質差をしっかり聴き取ることができた。
タクトシュトック代表の庵 吾朗さんが最近気になっているという南アフリカ・マリ共和国の音楽ロキア・トラオレの「ZEN」など、ふだんオーディオイベントではあまり再生されない曲を再生。新しい音楽への出会いのチャンスが広がるのもQobuzの楽しみの一つで、トラディショナルとポップスをミックスしたような不思議な音世界にも魅了されてしまう。
折り返しの第4部はDELAの時間。今年発売された120万円オーバーのフラグシップネットワークハブ「S1」がすでに大きな話題を集めており、お客さんの期待値も高い。RJ45を7系統、SFPポートを4系統と、オーディオ用ハブとしては最大級のポート数を搭載。ポートごとにオンオフや通信速度を変更できるなど、音質のためのさまざまな機能が盛り込まれている。
今回は「S100/2」と「S1」の聴き比べのほか、S1の“通信速度違い”の聴き比べも行われた。通信速度は早い方が良い、と考えられがちだが、DSDの再生でも100Mbpsあれば十分で、その方が消費電力も少ないため音質上有利、という新しいアイデアが生まれてきている。S1はそういった需要にも応えた製品となる(なおさすがに10Mbpsではハイレゾ再生は厳しいとのこと)。今回のテストでは、100Mbpsの方がより濃厚で密度感高いサウンドのように感じられた。
ほかにも、SFPポートに直接挿入できるメタル導体のケーブル “ダイレクト・アタッチ・ケーブル” 「C1」も登場。ルーミン、リン、スフォルツァートなどSFPポート搭載のプレーヤーも増えてきており、使いこなしの幅も広がる。
第5部はマランツ、今年発表された同社初の200万円クラスのネットワークプレーヤー兼プリアンプ「Link 10n」を引っ提げての久々の登場である。
マランツ担当の高山氏は、「マランツは2007年に、日本で最初にネットワークプレーヤーNA7004を出したメーカーなのです」とネットワークオーディオとの関わりの深さを語る。それから約15年、プリメインアンプ一体型やCDプレーヤー一体型など、さまさまなスタイルでネットワークオーディオのかたちを提案し続けてきた。
Link 10nは、SACDプレーヤー同様に独自開発のディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering」を搭載。1bit DACのフィリップスの流れを組んだまさにマランツが誇るお家芸で、内部で11.2MHzDSDにアップサンプリングしたのちにDA処理がなされている。
プリアンプ機能は「MODEL 10」譲りの高品位なもので、マランツ流のネットワーク再生の最高峰を狙う。もちろんHEOSモジュール搭載でAmazon Music再生にも対応する(なお現時点でQobuzには対応していない)。
「低音の揺らぎや鐘の音の残響感も感じて欲しい」ということから、ドゥダメル指揮による『ベルリオーズ:幻想交響曲』を再生。さまざまな音が響き合う鐘の音の深さは非常に印象的で、アナログ部のしっかりとした作り込みが生きていることを感じさせてくれた。土方氏も「この価格帯の製品をコスパという言葉で語りたくはありませんが、まさにリーズナブルエクスペンシブという言葉がふさわしい、非常に素晴らしい製品です」と称賛を送る。
第6部はエソテリック。なんと同社のGrandiosoシリーズ初のネットワーク機器「Grandioso N1T」が世界初お披露目。事業部長の加藤徹也氏も「昨日の夜までファームウェアを書いていました」というほどのできたてホヤホヤ製品。
エソテリックも本イベントの常連ブランドのひとつだが、同社からネットワークプレーヤーが発売された当初(2016年のN-05がデビュー作)は、「(特に日本市場では)売り上げに苦戦した」と営業担当の佐伯氏。しかしそこから8年、日本におけるネットワークオーディオのスタイルも大きく広がり、昨今はしっかりファンがついてきている手応えもあるという。
Grandioso N1Tは、型番から分かる通り、DACを持たないネットワークトランスポート製品。もちろんPixel Magic社のネットワークソリューションを搭載する。ブランドとしての初のSFPポートを搭載するほか、Grandioso P1X/D1Xにも搭載されるES Link Digital端子も搭載されている。つまり、N1TをヘッドとしてエソテリックのディスクリートDACを活用する、というような使い方も可能となるわけだ。島氏も「パッと聴きでもGrandioso N1Tの良さが光りますね」と高評価。
今回は「N-01XD」のDAC部を使用して再生を行ったが、ホワイトスネイクのライブアルバムを活用して聴き比べを行うと、特に印象的なのはES Link Digitalで繋いだ際のハードロックの「暑苦しさ」!ハードロックをHiFi機器で聴くと、見通しが良いが、一方で汗の飛び散るような暑苦しさが薄れて少しさみしい…と思うこともあった。しかしこの伝送方式ではライブ会場の熱気もダイレクトに伝わってきて全身がカッと熱くなる。
そろそろお尻も痛くなってくる第7部。今回イベント初参戦、唯一の海外勢であるaurenderブランドの登場である。aurenderは2013年と非常に早い時期からネットワークオーディオに特化してきたブランドで、「DLNAの音質上の課題を解決するべく」研究開発を進めてきた技術者集団だという。
その解決法のひとつが「キャッシングサーバー」という考え方だ。DLNAでは、サーバーとレンダラーとコントローラーが常時情報をやり取りしていることになるが、それが音質劣化の原因になるのではないかと彼らは考えた。そこで、かける曲をプレーヤー側で「キャッシュ」(一時的に保管)することで、その問題の解決を図る。aurenderのネットワークプレーヤーはすべてSSDなどの内蔵ストレージを持ったものであることも、それを裏付けている。
最新のネットワークプレーヤー「A1000」から、エリカ・バトゥのライブ「リム・ショット」を再生。冒頭のマイルス・デイビスからのサンプリングも印象的で、鮮度高い女性ボーカルの生々しさに魅了させる。不要な機能をオフにするクリティカル・リスニングモード(フロントのディスプレイも消灯する)ではシンバルの細やかさなど情報量がさらに豊かになり、透明感をより引き出してくれた。
耐久イベント最後の時間はオリオスペックの担当で、同社が展開するオーディオ専用のroon server「canarino for Roon」を紹介する。「Nucleus+を超えよう!」という思いで開発したもので、Rockを活用、PCオーディオに長く取り組んできた同社ならではのノウハウで音質を追求している。もちろんオリジナルの12V出力が可能な強化電源「canarino DC power supply 12V」も活用できる。
最後はイベントを締めくくるにふさわしい、ゆっくり女性ボーカルを楽しむ時間。松任谷由美の「優しさにつつまれたなら」、そして酒井さんのフェイバリットな原田知世「天国に一番近い島」。原田知世の透明度高い声が、各種比較試聴に疲れた脳みそを優しくほぐしていく。
イベントの終わりに島氏は、「ストリーミングとダウンロードが共存するスタイルを応援して行きたいと考えています」と改めて宣言。Qobuzの利便性は最大限活用しながらも、気に入った曲は購入してアーティストの活動をしっかりサポートしていく。そうして作り上げた自分だけのライブラリをどういい音で楽しんでいくか、デジタル再生への探求はまだまだ終わらないことを改めて確認したイベントであった。
このイベントは、毎回5時間を超えるぶっ続けで種々の聴き比べを行うまさに “耐久マラソン” 。18回目となる今回も、ネットワークオーディオの猛者たちが30名近く集結し、さまざまな機器の実力に耳を傾けてきた。
■Qobuz日本マネージャー「良い音を届けたい思いは変わらない」
今回は全部で7部構成。土方久明氏がナビゲーターとなり、今年10月に正式に国内スタートしたQobuzのデモンストレーションに加えて、fidata、エソテリック、エディスクリエーション、DELA、aurender、そしてオリオスペックのオーディオPCが登場。テーマごとに分かれて解説と試聴が進められた。
土方氏は冒頭で、「新型のストリーマーから周辺機器まで、いまの旬の機器を集めました。この1年に感じたネットワークオーディオの今を率直に語っていきたいです」とコメント。貴重な製品の聴き比べに来場者の期待も高まってくる。
第1部Qobuzのパートでは、日本のカントリーマネージャーである祐成氏が登場。e-onkyo musicとQobuzの統合の苦労について振り返りながら、「良い音を届けたい、という思いはどちらのチームも共通していました」と断言。続けて良質な音源の重要性もさることながら、そのポテンシャルを引き出すためには良質なオーディオ機器との連携が必要と強調する。
Qobuz独自の取り組みとして、世界各国のQobuzのスタッフが執筆するマガジンや、オーディオメーカー、音のプロが選ぶプレイリストが充実している点を訴える。「今後は日本のオーディオブランドや代理店、オーディオ評論家のプレイリストも拡充していきたいです」と展望を語ってくれた。
■fidata -ストリーミングの時代だからこそダウンロードも大切-
第2部はfidataの時間。ダイナミックオーディオの島氏は、ストリーミングの時代だからこそ、ダウンロードで音源を購入することの重要性を改めて問いかける。「私がQobuzが大きく評価している理由のひとつは、ストリーミングとダウンロード、どちらも用意されていることにあります。ストリーミングで気に入った音源があったら、ぜひ購入して手元に置いておいて欲しいです。そのためにも良質なオーディオサーバーの重要性は欠かせません」と訴えた。土方氏もそれを受けて、「ストリーミングを使うほど、自分が手元に持っている音源が愛おしくなりますよね」と深く頷く。
このパートでは、同一音源について、Qobuz、Amazon Music、fidataのサーバー内に保存したハイレゾ音源の聴き比べを実施。記者のインプレッションとしては、ダウンロード音源が最も透明度が高く清涼感に一日の長を感じる。一方amazonは高域の華やかさに美点が感じられ、やはりサービスごとに若干の音質傾向があることが改めて確認できた。
■エディスクリエーション -ネットワーク環境整備の重要性-
第3部はエディスクリエーションの時間。今年の香港ショウで発表になったネットワークハブ「Silent Switch2」と光アイソレーター「Fiber Box3」をメインにデモンストレーションを実施。これらの大きな特徴として、両機のクロックを独自のケーブルで同期させる「クロック・バズ・テクノロジー」が活用できることにある。
今回のデモでは、同社のスタンダードモデルのハブからスタート。続けて、「ハブのグラウンドを切った状態」「光アイソレーターを追加した状態」「クロック・バズを追加した状態」「上記はそのままにエクスクルーシブモデルに変更した状態」と5パターンの聴き比べを実施。エディスクリエーションはネットワーク由来のノイズ対策を長年追求してきたブランドだけあって、それぞれの音質差をしっかり聴き取ることができた。
タクトシュトック代表の庵 吾朗さんが最近気になっているという南アフリカ・マリ共和国の音楽ロキア・トラオレの「ZEN」など、ふだんオーディオイベントではあまり再生されない曲を再生。新しい音楽への出会いのチャンスが広がるのもQobuzの楽しみの一つで、トラディショナルとポップスをミックスしたような不思議な音世界にも魅了されてしまう。
■DELA -通信速度でも音質は変わる?-
折り返しの第4部はDELAの時間。今年発売された120万円オーバーのフラグシップネットワークハブ「S1」がすでに大きな話題を集めており、お客さんの期待値も高い。RJ45を7系統、SFPポートを4系統と、オーディオ用ハブとしては最大級のポート数を搭載。ポートごとにオンオフや通信速度を変更できるなど、音質のためのさまざまな機能が盛り込まれている。
今回は「S100/2」と「S1」の聴き比べのほか、S1の“通信速度違い”の聴き比べも行われた。通信速度は早い方が良い、と考えられがちだが、DSDの再生でも100Mbpsあれば十分で、その方が消費電力も少ないため音質上有利、という新しいアイデアが生まれてきている。S1はそういった需要にも応えた製品となる(なおさすがに10Mbpsではハイレゾ再生は厳しいとのこと)。今回のテストでは、100Mbpsの方がより濃厚で密度感高いサウンドのように感じられた。
ほかにも、SFPポートに直接挿入できるメタル導体のケーブル “ダイレクト・アタッチ・ケーブル” 「C1」も登場。ルーミン、リン、スフォルツァートなどSFPポート搭載のプレーヤーも増えてきており、使いこなしの幅も広がる。
■マランツ -初の200万円クラスのネットワークプレーヤーの実力は?-
第5部はマランツ、今年発表された同社初の200万円クラスのネットワークプレーヤー兼プリアンプ「Link 10n」を引っ提げての久々の登場である。
マランツ担当の高山氏は、「マランツは2007年に、日本で最初にネットワークプレーヤーNA7004を出したメーカーなのです」とネットワークオーディオとの関わりの深さを語る。それから約15年、プリメインアンプ一体型やCDプレーヤー一体型など、さまさまなスタイルでネットワークオーディオのかたちを提案し続けてきた。
Link 10nは、SACDプレーヤー同様に独自開発のディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering」を搭載。1bit DACのフィリップスの流れを組んだまさにマランツが誇るお家芸で、内部で11.2MHzDSDにアップサンプリングしたのちにDA処理がなされている。
プリアンプ機能は「MODEL 10」譲りの高品位なもので、マランツ流のネットワーク再生の最高峰を狙う。もちろんHEOSモジュール搭載でAmazon Music再生にも対応する(なお現時点でQobuzには対応していない)。
「低音の揺らぎや鐘の音の残響感も感じて欲しい」ということから、ドゥダメル指揮による『ベルリオーズ:幻想交響曲』を再生。さまざまな音が響き合う鐘の音の深さは非常に印象的で、アナログ部のしっかりとした作り込みが生きていることを感じさせてくれた。土方氏も「この価格帯の製品をコスパという言葉で語りたくはありませんが、まさにリーズナブルエクスペンシブという言葉がふさわしい、非常に素晴らしい製品です」と称賛を送る。
■エソテリック -Grandioso N1Tが世界初お披露目!-
第6部はエソテリック。なんと同社のGrandiosoシリーズ初のネットワーク機器「Grandioso N1T」が世界初お披露目。事業部長の加藤徹也氏も「昨日の夜までファームウェアを書いていました」というほどのできたてホヤホヤ製品。
エソテリックも本イベントの常連ブランドのひとつだが、同社からネットワークプレーヤーが発売された当初(2016年のN-05がデビュー作)は、「(特に日本市場では)売り上げに苦戦した」と営業担当の佐伯氏。しかしそこから8年、日本におけるネットワークオーディオのスタイルも大きく広がり、昨今はしっかりファンがついてきている手応えもあるという。
Grandioso N1Tは、型番から分かる通り、DACを持たないネットワークトランスポート製品。もちろんPixel Magic社のネットワークソリューションを搭載する。ブランドとしての初のSFPポートを搭載するほか、Grandioso P1X/D1Xにも搭載されるES Link Digital端子も搭載されている。つまり、N1TをヘッドとしてエソテリックのディスクリートDACを活用する、というような使い方も可能となるわけだ。島氏も「パッと聴きでもGrandioso N1Tの良さが光りますね」と高評価。
今回は「N-01XD」のDAC部を使用して再生を行ったが、ホワイトスネイクのライブアルバムを活用して聴き比べを行うと、特に印象的なのはES Link Digitalで繋いだ際のハードロックの「暑苦しさ」!ハードロックをHiFi機器で聴くと、見通しが良いが、一方で汗の飛び散るような暑苦しさが薄れて少しさみしい…と思うこともあった。しかしこの伝送方式ではライブ会場の熱気もダイレクトに伝わってきて全身がカッと熱くなる。
■aurender -ネットワークの音質改善を追求する技術者集団-
そろそろお尻も痛くなってくる第7部。今回イベント初参戦、唯一の海外勢であるaurenderブランドの登場である。aurenderは2013年と非常に早い時期からネットワークオーディオに特化してきたブランドで、「DLNAの音質上の課題を解決するべく」研究開発を進めてきた技術者集団だという。
その解決法のひとつが「キャッシングサーバー」という考え方だ。DLNAでは、サーバーとレンダラーとコントローラーが常時情報をやり取りしていることになるが、それが音質劣化の原因になるのではないかと彼らは考えた。そこで、かける曲をプレーヤー側で「キャッシュ」(一時的に保管)することで、その問題の解決を図る。aurenderのネットワークプレーヤーはすべてSSDなどの内蔵ストレージを持ったものであることも、それを裏付けている。
最新のネットワークプレーヤー「A1000」から、エリカ・バトゥのライブ「リム・ショット」を再生。冒頭のマイルス・デイビスからのサンプリングも印象的で、鮮度高い女性ボーカルの生々しさに魅了させる。不要な機能をオフにするクリティカル・リスニングモード(フロントのディスプレイも消灯する)ではシンバルの細やかさなど情報量がさらに豊かになり、透明感をより引き出してくれた。
■ストリーミングとダウンロードが共存するスタイルを応援したい
耐久イベント最後の時間はオリオスペックの担当で、同社が展開するオーディオ専用のroon server「canarino for Roon」を紹介する。「Nucleus+を超えよう!」という思いで開発したもので、Rockを活用、PCオーディオに長く取り組んできた同社ならではのノウハウで音質を追求している。もちろんオリジナルの12V出力が可能な強化電源「canarino DC power supply 12V」も活用できる。
最後はイベントを締めくくるにふさわしい、ゆっくり女性ボーカルを楽しむ時間。松任谷由美の「優しさにつつまれたなら」、そして酒井さんのフェイバリットな原田知世「天国に一番近い島」。原田知世の透明度高い声が、各種比較試聴に疲れた脳みそを優しくほぐしていく。
イベントの終わりに島氏は、「ストリーミングとダウンロードが共存するスタイルを応援して行きたいと考えています」と改めて宣言。Qobuzの利便性は最大限活用しながらも、気に入った曲は購入してアーティストの活動をしっかりサポートしていく。そうして作り上げた自分だけのライブラリをどういい音で楽しんでいくか、デジタル再生への探求はまだまだ終わらないことを改めて確認したイベントであった。