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公開日 2006/01/09 11:41
<山之内 正のCES 2006 レポート>次世代ディスク編:手放しで喜べない規格競争の過熱ぶり
今年のCESで最大の話題を呼んだトピックはブルーレイディスク(BD)とHD DVDの攻防である。両陣営ともに再生専用機とハイビジョンパッケージソフトの発売を初めてアナウンスし、次世代ディスクの全貌がようやく見えてきた。これは今回のCES取材の大きな収穫だった。
米国市場を皮切りに3月末からHD DVDのプレーヤーとソフトが発売されるとあって、会場では複数のブースでHD DVDの映像が流れ、DVDとの画質の違いや新たに加わった付加機能の便利さをアピールする光景が目立った。派手な映像と音で来場者を圧倒するようなデモが多いのはあくまで米国流ということで仕方がないが、HDならではの精緻な映像に大きな力があることは紛れもない事実である。
一方のBDも来場者の目にとまる頻度では負けていない。発売を予定しているメーカー数が多いので、それだけ目に付く機会が多いのである。ブルーをあしらったBDソフトのパッケージデザインが目立ちやすいことも功を奏している。ソニーがプレイステーション3にBDを搭載するなど、PCとの連携を強めたHD DVDに比べて派手な話題も多い。デモンストレーションの内容はHD DVDと大差ないが、画質の違いと容量の余裕を前面に打ち出すデモンストレーションが目立ったのがHD DVDとの違いである。
いずれにしても、プロトタイプのプレーヤーが中心だった昨年までの展示とは様相が一変し、見本市会場は発売を間近に控えた期待感に満ちている。DVDが登場する直前の雰囲気に似ており、かつて20数年前にCDが初めて登場した時期よりも、話題の大きさではるかに上回っている。
しかし、喜んでばかりはいられない。なにしろ似たようなフィーチャーのパッケージソフトが2種類のフォーマットでほぼ同時期に登場するという、異常な事態が現実になってしまったのだ。
実際に製品が登場するのは春以降であり、フォーマット競争はまだ前哨戦に過ぎないのだが、その前哨戦の過熱ぶりは尋常ではない。CESの期間中、ヒートアップした競争が繰り広げられているものの、不思議なことにどちらも特に有利な材料は見えてこないのである。
一見するとハードの発売時期が若干早く価格も安いHD DVDにアドバンテージがあるように見えるが、BDは参入メーカー数、機種数ともHD DVDを圧倒しており、1〜2ヶ月程度の遅れが大勢を決するとも思えない。
相手陣営を意識しすぎたのかどうか定かではないが、ハードとソフト導入のために両者が高級ホテルで仕掛けたイベントは結果として似たようなメンバーを集めてほとんど同じスタイルで開催され、引き分けに終わった。いまのところ互角の戦いで、両者の出発点はほぼ同じと考えていいだろう。
競争が激化している理由はいうまでもないだろう。規格統一の望みが断たれたことで、自分たちのフォーマットが生き残るためには相手を打ち負かす以外に方法がなくなってしまったのである。
次世代ディスクの未来図をやや乱暴に描くと、BDが残る、HD DVDが残る、どちらも消滅するという3つの筋書きしかない。どちらか一方が別の用途に活路を見出すことはあるかもしれないが、ハイビジョンパッケージソフトとして2つのフォーマットが共存するという構図はどう考えてもあり得ない。むしろ、パッケージソフトがなくなっても、配信でビジネスが成り立つと読んでいる映画会社もあるかもしれない。
その厳しい近未来が見えているからこそ、価格を下げたり、仲間を増やすことによって、少しでも優位を保とうとする。今回のCESに象徴されるような激しいつばぜり合いが、今後あらゆる局面で激しく展開することになるだろう。
しかし、その競争が消費者のメリットになりえないことは冷静に考えれば誰でも気付くことだが、残念ながら両陣営の当事者には見えていないようだ。
もし最終的に規格が統一されていたら、何のわだかまりもなく、次世代ディスクの誕生を祝うことができたはずだ。待望の次世代ディスク登場が現実になったが、どこか気分がすっきりしないままCESの会場をあとにした。
(山之内 正)
[ces2006]
米国市場を皮切りに3月末からHD DVDのプレーヤーとソフトが発売されるとあって、会場では複数のブースでHD DVDの映像が流れ、DVDとの画質の違いや新たに加わった付加機能の便利さをアピールする光景が目立った。派手な映像と音で来場者を圧倒するようなデモが多いのはあくまで米国流ということで仕方がないが、HDならではの精緻な映像に大きな力があることは紛れもない事実である。
一方のBDも来場者の目にとまる頻度では負けていない。発売を予定しているメーカー数が多いので、それだけ目に付く機会が多いのである。ブルーをあしらったBDソフトのパッケージデザインが目立ちやすいことも功を奏している。ソニーがプレイステーション3にBDを搭載するなど、PCとの連携を強めたHD DVDに比べて派手な話題も多い。デモンストレーションの内容はHD DVDと大差ないが、画質の違いと容量の余裕を前面に打ち出すデモンストレーションが目立ったのがHD DVDとの違いである。
いずれにしても、プロトタイプのプレーヤーが中心だった昨年までの展示とは様相が一変し、見本市会場は発売を間近に控えた期待感に満ちている。DVDが登場する直前の雰囲気に似ており、かつて20数年前にCDが初めて登場した時期よりも、話題の大きさではるかに上回っている。
しかし、喜んでばかりはいられない。なにしろ似たようなフィーチャーのパッケージソフトが2種類のフォーマットでほぼ同時期に登場するという、異常な事態が現実になってしまったのだ。
実際に製品が登場するのは春以降であり、フォーマット競争はまだ前哨戦に過ぎないのだが、その前哨戦の過熱ぶりは尋常ではない。CESの期間中、ヒートアップした競争が繰り広げられているものの、不思議なことにどちらも特に有利な材料は見えてこないのである。
一見するとハードの発売時期が若干早く価格も安いHD DVDにアドバンテージがあるように見えるが、BDは参入メーカー数、機種数ともHD DVDを圧倒しており、1〜2ヶ月程度の遅れが大勢を決するとも思えない。
相手陣営を意識しすぎたのかどうか定かではないが、ハードとソフト導入のために両者が高級ホテルで仕掛けたイベントは結果として似たようなメンバーを集めてほとんど同じスタイルで開催され、引き分けに終わった。いまのところ互角の戦いで、両者の出発点はほぼ同じと考えていいだろう。
競争が激化している理由はいうまでもないだろう。規格統一の望みが断たれたことで、自分たちのフォーマットが生き残るためには相手を打ち負かす以外に方法がなくなってしまったのである。
次世代ディスクの未来図をやや乱暴に描くと、BDが残る、HD DVDが残る、どちらも消滅するという3つの筋書きしかない。どちらか一方が別の用途に活路を見出すことはあるかもしれないが、ハイビジョンパッケージソフトとして2つのフォーマットが共存するという構図はどう考えてもあり得ない。むしろ、パッケージソフトがなくなっても、配信でビジネスが成り立つと読んでいる映画会社もあるかもしれない。
その厳しい近未来が見えているからこそ、価格を下げたり、仲間を増やすことによって、少しでも優位を保とうとする。今回のCESに象徴されるような激しいつばぜり合いが、今後あらゆる局面で激しく展開することになるだろう。
しかし、その競争が消費者のメリットになりえないことは冷静に考えれば誰でも気付くことだが、残念ながら両陣営の当事者には見えていないようだ。
もし最終的に規格が統一されていたら、何のわだかまりもなく、次世代ディスクの誕生を祝うことができたはずだ。待望の次世代ディスク登場が現実になったが、どこか気分がすっきりしないままCESの会場をあとにした。
(山之内 正)
[ces2006]