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公開日 2006/04/03 17:15
わが家にハイビジョン“ハンディカム”がやってきた − ソニー「HDR-HC3」を斎賀和彦氏がレポート
手軽な本格派ハイビジョンカメラが登場した
ビデオカメラ分野で昨年最大のヒットモデルと言えば、ハイビジョン撮影を一気に一般家庭へと普及させたHDVコンシューマー機、ソニー「HDR-HC1」であろう。ソニーが先日発売した世界最小・最軽量のハイビジョン“ハンディカム”「HDR-HC3」はそのHC1の後継機としてよりコンパクト化を行ったまさにパスポートサイズHDVカメラである。HC3の主な特徴をHC1との違いを中心に見ていこう。
さらに小型化したボディ
長さで139mmとなり、冬物コートならポケットに入ってしまうサイズを実現。常時持ち歩きが苦にならない。さらにバッテリーの装着方法が工夫され、大容量バッテリー使用時にも出っ張らなくなった。ただし、それに伴いバッテリー着脱レバーがボディ内側に寄ったため三脚使用時にバッテリー交換はやや苦労する。
高精細になった液晶モニター
液晶モニターは同じ2.7inchサイズだが、画素数が約21万ドットと高解像度化し、さらにクリアフォト液晶の採用で視認性、色再現性が向上した。反面、ファインダーは逆に低解像度とスペックダウン。液晶モニター重視の設計となった。
ブラッシュアップされたCMOS
レンズの焦点距離は41〜485mm(35mm換算)と、HC1と同じだが、f値は望遠側で若干暗くなった。一見、不利に思えるがセンサーが新開発のクリアビットCMOSとなり、光量が少ない状況での描写力が改善している。
HDMI端子搭載CMOS
次世代型のHDMI端子を持つプラズマや液晶テレビも一般的になってきた現在、映像と音声を1本のケーブルで繋ぐことができるこの端子を、カメラが搭載した意味は大きい。
■画質傾向 − メリハリの効いたチューニング。暗所撮影機能が向上した
今回はHDR-HC3との比較撮影用として、ソニーHVR-A1Jを使った。本機はレビュー中で紹介している前モデルHDR-HC1をベースにした業務用HDVカメラ。タイムコードやDVcam対応、ガンマイクの標準装備などの業務用機能強化はあるが、レンズを含め、通常のHDV撮影時にはHC1と同じだ。
HC3の画質の傾向は、前モデルのHC1によく似ている。ただ、よりメリハリ型のチューニングらしく、エッジをしゃっきりと立てる傾向にあるようだ。
暗いシチュエーションに強くなったとされるHC3だが、暗めの室内撮影では確かにS/N感が向上しているように見える。色乗りも僅かに良くなっているが、その差が実感できるのはアンダーめの条件下くらいだろう。光量の十分ある屋外では両者の違いはほとんど感じない。望遠時のf値低下の影響も通常撮影においては感じるほどの不利さはないようだ。ただし、センサーの小ささゆえ被写界深度はかなり深めで、ボケを上手く活かした撮影などは苦手だ。
■ハンドリング − ハンドリング感は良好。コンパクトさを活かした撮影を楽しみたい
質感の高いアルミのヘアライン素材を使った金属外装は、手に触れる触感もあわせ、コンパクトなボディに巧みな高級感を与えている。ビデオカメラが似たようなデザインばかりになるなか、持つ喜びを感じさせる。ブラックモデルとシルバーモデルで表面加工が異なるのもユニーク。
レンズを中心に曲面で構成されたボディは、持つというより、掴む、とか包む、といった印象が近い。適度に指をかける凸凹がデザインされ、ハンドリングの感覚は良好。HC1ではレンズキャップ方式だったが、HC3ではソニーお得意のレンズカバーになり、さらに電源のオンオフ連動で開閉するため使い勝手は格段に向上した。
手動でピント合わせやズーム操作ができたフォーカスリングはコンパクト化のなかで無くなり、代わりにコントロールダイヤルと呼ばれる回転型の操作スイッチがついた。これをまわすことでフォーカスや明るさを調整できるもので、すぐ横のマニュアルボタンをフォーカスや明るさ、AE、WBシフトなどにアサインできるなど高機能を誇るマニュアル操作系だが、液晶モニターを開くと手が当たりやすいなど、決して使いやすいとはいえない。やはり、コンパクトさを活かしてオート主体で使うのが向いたカメラだろう。
コートのポケットに入るコンパクトさに、圧倒的な画質のHDVを詰め込んだのが本機。小型化のため、マニュアル操作系はややしわ寄せを受けているが、旅行や入学式、運動会といったシチュエーションで、気軽にオートで美しい画が撮れる、手軽な本格派カメラといえよう。
レポート:斎賀 和彦(Kazuhiko Saika)
1963年名古屋生まれ、東京都在住。東京ムービー新社で劇場映画「AKIRA」参加後、CF制作会社 井出プロダクションで企画演出として多くのコマーシャルフィルムに携わる中で、ノンリニア映像編集の黎明期に立ち会う形となる。「デジタルスケープ」チーフトレーナーを経て、東北芸術工科大学デザイン工学部情報デザイン学科で理論と実践の両面から映像を教える。並行して写真・映像等の企画・制作を行うほか、デジタル編集を中心にビデオ専門誌等に執筆。デジタルハリウッド大学院非常勤講師。
ビデオカメラ分野で昨年最大のヒットモデルと言えば、ハイビジョン撮影を一気に一般家庭へと普及させたHDVコンシューマー機、ソニー「HDR-HC1」であろう。ソニーが先日発売した世界最小・最軽量のハイビジョン“ハンディカム”「HDR-HC3」はそのHC1の後継機としてよりコンパクト化を行ったまさにパスポートサイズHDVカメラである。HC3の主な特徴をHC1との違いを中心に見ていこう。
さらに小型化したボディ
長さで139mmとなり、冬物コートならポケットに入ってしまうサイズを実現。常時持ち歩きが苦にならない。さらにバッテリーの装着方法が工夫され、大容量バッテリー使用時にも出っ張らなくなった。ただし、それに伴いバッテリー着脱レバーがボディ内側に寄ったため三脚使用時にバッテリー交換はやや苦労する。
高精細になった液晶モニター
液晶モニターは同じ2.7inchサイズだが、画素数が約21万ドットと高解像度化し、さらにクリアフォト液晶の採用で視認性、色再現性が向上した。反面、ファインダーは逆に低解像度とスペックダウン。液晶モニター重視の設計となった。
ブラッシュアップされたCMOS
レンズの焦点距離は41〜485mm(35mm換算)と、HC1と同じだが、f値は望遠側で若干暗くなった。一見、不利に思えるがセンサーが新開発のクリアビットCMOSとなり、光量が少ない状況での描写力が改善している。
HDMI端子搭載CMOS
次世代型のHDMI端子を持つプラズマや液晶テレビも一般的になってきた現在、映像と音声を1本のケーブルで繋ぐことができるこの端子を、カメラが搭載した意味は大きい。
■画質傾向 − メリハリの効いたチューニング。暗所撮影機能が向上した
今回はHDR-HC3との比較撮影用として、ソニーHVR-A1Jを使った。本機はレビュー中で紹介している前モデルHDR-HC1をベースにした業務用HDVカメラ。タイムコードやDVcam対応、ガンマイクの標準装備などの業務用機能強化はあるが、レンズを含め、通常のHDV撮影時にはHC1と同じだ。
HC3の画質の傾向は、前モデルのHC1によく似ている。ただ、よりメリハリ型のチューニングらしく、エッジをしゃっきりと立てる傾向にあるようだ。
暗いシチュエーションに強くなったとされるHC3だが、暗めの室内撮影では確かにS/N感が向上しているように見える。色乗りも僅かに良くなっているが、その差が実感できるのはアンダーめの条件下くらいだろう。光量の十分ある屋外では両者の違いはほとんど感じない。望遠時のf値低下の影響も通常撮影においては感じるほどの不利さはないようだ。ただし、センサーの小ささゆえ被写界深度はかなり深めで、ボケを上手く活かした撮影などは苦手だ。
■ハンドリング − ハンドリング感は良好。コンパクトさを活かした撮影を楽しみたい
質感の高いアルミのヘアライン素材を使った金属外装は、手に触れる触感もあわせ、コンパクトなボディに巧みな高級感を与えている。ビデオカメラが似たようなデザインばかりになるなか、持つ喜びを感じさせる。ブラックモデルとシルバーモデルで表面加工が異なるのもユニーク。
レンズを中心に曲面で構成されたボディは、持つというより、掴む、とか包む、といった印象が近い。適度に指をかける凸凹がデザインされ、ハンドリングの感覚は良好。HC1ではレンズキャップ方式だったが、HC3ではソニーお得意のレンズカバーになり、さらに電源のオンオフ連動で開閉するため使い勝手は格段に向上した。
手動でピント合わせやズーム操作ができたフォーカスリングはコンパクト化のなかで無くなり、代わりにコントロールダイヤルと呼ばれる回転型の操作スイッチがついた。これをまわすことでフォーカスや明るさを調整できるもので、すぐ横のマニュアルボタンをフォーカスや明るさ、AE、WBシフトなどにアサインできるなど高機能を誇るマニュアル操作系だが、液晶モニターを開くと手が当たりやすいなど、決して使いやすいとはいえない。やはり、コンパクトさを活かしてオート主体で使うのが向いたカメラだろう。
コートのポケットに入るコンパクトさに、圧倒的な画質のHDVを詰め込んだのが本機。小型化のため、マニュアル操作系はややしわ寄せを受けているが、旅行や入学式、運動会といったシチュエーションで、気軽にオートで美しい画が撮れる、手軽な本格派カメラといえよう。
1963年名古屋生まれ、東京都在住。東京ムービー新社で劇場映画「AKIRA」参加後、CF制作会社 井出プロダクションで企画演出として多くのコマーシャルフィルムに携わる中で、ノンリニア映像編集の黎明期に立ち会う形となる。「デジタルスケープ」チーフトレーナーを経て、東北芸術工科大学デザイン工学部情報デザイン学科で理論と実践の両面から映像を教える。並行して写真・映像等の企画・制作を行うほか、デジタル編集を中心にビデオ専門誌等に執筆。デジタルハリウッド大学院非常勤講師。