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公開日 2006/08/29 18:14
FHP、60/50V型フルHD PDPなどを10月から順次量産 − シングルスキャンで低コスト化
富士通日立プラズマディスプレイ株式会社(FHP)は、60/50V型フルHD PDPと、解像度を向上させた50V型 HD PDPパネルを開発し、今年10月から順次量産を開始する。
量産開始時期は、50V型HDパネルが今年10月、60V型フルHDパネルが今年11月、50V型フルHDパネルが来年3月。このパネルを搭載したテレビセットの発売は、早くても1〜2ヶ月先になる。
同社では、昨年12月に42V型フルHDパネルを開発し(関連ニュース)、来年春に出荷を開始することを発表していた。本日、出荷時期は来年6月に遅れることが明らかにされたが、60/50V型のフルHDパネルが発表されたことで、来年6月以降は42/50/60V型のフルHDパネルが揃うことになる。HDパネルは37/42/50/55V型を生産し、フルHDと合わせて7種類のパネルを国内に供給していく計画だ。
なお、同社では昨年9月に55V型フルHDパネルの開発を発表、今年夏に商品化すると発表していたが、55V型は開発を中止したことが明らかにされた。
今回発表したパネルを搭載したテレビセットは日立製作所などが販売することになる。このため、テレビセットの販売価格を現段階で推測することは難しいが、同社説明員の話によると、60V型は100万円を切る程度、50V型は60万円程度での販売を想定しているという。もちろん、販売価格は最終的に市場の動向を見ながら決定されることになるだろう。
また同社は、宮崎県の同社工場3番館を以前から建設していたが、今年10月から一部ラインを起ち上げ、今回発表した50V型HDパネルを量産・出荷する。3番館は当初、42V型換算で月産10万台からスタートし、来夏には月産20万台に増強する。
さらに同社は、中国のHD規格に適合したALIS方式の42型HD PDPを量産開始することも発表した。
今春、中国で策定されたHD規格は、来年1月から施行されることが決定している。テレビセットの性能を数十項目に渡って規定しており、解像度は水平、垂直ともに720TV本以上、輝度は42〜50V型以上の場合60cd/m2、暗室コントラスト150対1などの数値が規定されている。
今回開発したパネルの解像度は1,280×1,080で、これにより解像度を高め、42V型として初めて中国のHD規格に対応させた。輝度は1,200cd/m2、コントラストは10,000対1。
なお、この42V型HDパネルを日本国内で展開する予定はない。同社では既に42V型フルHDパネルの開発を表明していることから、国内の最新モデル「W42P-HR9000」に搭載している1,024×1,080のパネルを継続して採用し、順次フルHDに切り換えていくことになるだろう。
以下、日本国内で展開される予定の3パネルの概要を紹介しよう。
■50V型フルHDパネル
50V型のフルHDパネルは、同社が以前から採用しているALIS方式を採用。アドレス電極をパネルの片側のみに装備するシングルスキャン方式を実現したことにより、部品点数の削減が可能になった。シングルスキャン方式の部品点数を100とすると、デュアルスキャンの場合は130程度になると言う。
輝度は1,100cd/m2。背景輝度を下げる高コントラスト制御技術を新開発したことにより、10,000対1の高コントラストを実現した。
セル構造は、42V型フルHDパネルの等比設計とし、開口率も42V型と同等の60%を実現した。
また、動画と静止画で信号処理を変える高画質LSIを新たに搭載。これにより階調性と動画の表示品質を高めた。
パネルのガラスの厚さも、従来の2.8mmから1.8mmに変更し、ガラスの重みを約4kg程度削減した。
なお、50/60V型フルHDパネルは、高純度赤色蛍光体を採用したことにより色再現性能を高め、テレビセット時でHDTV規格比100%以上を実現できるという。
■50V型HDパネル
フルHDパネルと同様、FHPとして初めての50V型パネルとなる。解像度は1,280×1,080で、他社製品で主流になっている1,366×768のワイドXGAに比べ、30%以上画素数が多い。
50V型フルHDと同じくALIS方式のシングルスキャンを採用。ALISはもともと開口率が高いが、今回放電ガスの組成を変更したことで駆動波形を改良するなどの工夫を施し、50V型で業界最高クラスとなる1,300cd2を実現した。そのほか、10,000対1のコントラスト比、高画質LSI、1.8mm厚ガラスの採用による軽量化などはフルHDパネルと同様。
同社では、「セル面積は水平0.288(×3)×垂直0.58と60V型フルHDと同等で、2〜3mの距離で視聴した場合はフルHD PDPと同等の繊細な表現が楽しめる」としている。
■60V型フルHDパネル
60V型フルHDは、これまで同社が生産してきた55V型と同様、ALIS方式と同じ電極構造を持つe-ALIS方式を採用。駆動はシングルではなくデュアルスキャンとなる。ピーク輝度は1,000cd/m2、暗室コントラストは5,000対1。
新開発した高画質LSIを装備。サブフィールドの制御方法を新たに高度化し、動画のノイズを大幅に低減させ、階調表現を向上させたという。
■「PDPの需要拡大、大型化がますます顕著に」
本日行われた記者発表会では、冒頭、FHP社長の井本義之氏が、PDP事業戦略について説明した。
井本氏は、「昨年末に42V型フルHDパネルを発表したが、その後新製品の発表がなく、FHPはダメなのかな、と思われた方もいたのではないか。今日は半年間の成果をすべて発表する」と、開発が順調に進んでいたことを強調。
薄型テレビの市場動向については、「液晶パネルの供給能力が飛躍的に高まったことで価格が下がり、40〜42V型クラスの液晶とPDPの価格が拮抗してきた」とし、「これにより需要がさらに増え、大型化、フルHD化がさらに進むだろう」と予測した。
また、PDPの需要、サイズ構成比は、いずれも昨年末時点での予測値を変更したことを明らかにし、「昨年末は、2010年時点でのPDP需要を1,650万台と予測していたが、現時点では2,200万台と予測している」と、価格低下により大幅に需要が拡大すると予想。特に50V型以上の大型PDPが増えると想定し、2010年時点で半数が50V型以上になると予測した。
井本氏はまた、同社の事業方針について、「世界初・世界一の技術開発」「原価低減の加速」「3番館立ち上げ加速と生産体制の強化」を挙げ、技術開発分野ではALIS方式の進化と大型化・高精細化への対応、原価低減ではシングルスキャンならではの部品点数の少なさを活用していく考えを示した。
井本氏は宮崎工場三番館についても触れ、前述したとおり、今年10月に月産10万台で立ち上げ、来夏には20万台に増強することを改めて説明。従来の二番館は月産10万台なので、工場全体では月産30万台の生産能力を持つことになる。
■「PDPは液晶よりテレビとしての基本性能に優れる」
パネルの詳細については、FHP商品設計統括部長の苅谷教治氏が説明。今回の製品について、「需要の大型化、高精細化に対応し、フルHDパネルと、50/60V型といった大型製品を拡充した」と説明した。
また苅谷氏は、来年度以降、80V超の大型フルHDパネルを開発する計画を表明。さらに大型化を加速させる考えだ。
さらに、従来から同社が主張している、PDPの強みについて改めて説明。自発光デバイスゆえに視野角や階調表現力に優れ、動画ボケが少ないなどの特徴を列挙。「液晶に対して、テレビとしての基本性能に優れている」とした。
同社が独自に開発するALIS方式の優位性についても言及。「セル開口率が高いため高輝度で、従来と同様の電極数で2倍の高精細表示が可能。また、HDTVの垂直1080ラインをシングルスキャンで表示できる」と述べた。
■質疑応答
以下、発表会で行われた質疑応答を紹介する。
Q: 昨年春に松下電器とPDP分野での協業を発表しているが、今回の製品にその成果は反映しているか?
A: 今回の製品には反映されていない。強いて言うなら、ガラスは1.8mm厚のものを使っており、これは松下と同じだが、協業と言うより標準化に近い。
Q: 原価低減のための具体的な方策は?
A: パネルの多面取りを行うと原価が下がることはご承知の通りだ。それに加え、当社で採用しているALIS方式ではシングルスキャンでフルHDを実現でき、回路モジュールのコストを削減できる。
Q: 50V型HDパネルについて、解像度が上がったことで製品価格が上がることはあるか?
A: 画素数が上がったからと言って高く売ることはない。市場価格に合わせていく。
Q: 中国では液晶の勢力が拡大しているのではないか?
A: 50V型以上ではPDPの優位性が見直されていると認識している。これは世界中で言えることだが、松下電器やパイオニアなどと一緒に、PDPのメリットをもっと強く訴求していく必要があると認識している。
Q: 3番館以降の増産計画について教えて欲しい。
A: 事業規模にあった、適正な時期に投資を行っていく。率直に言って、現在の生産設備は他社に比べ半年から1年遅れており、この差を埋めるため、まずは3番館に注力する。最近、投資をしなければダメという論調があるようだが、これはおかしい。あくまで適正な投資を心がけていきたい。
(Phile-web編集部)
量産開始時期は、50V型HDパネルが今年10月、60V型フルHDパネルが今年11月、50V型フルHDパネルが来年3月。このパネルを搭載したテレビセットの発売は、早くても1〜2ヶ月先になる。
同社では、昨年12月に42V型フルHDパネルを開発し(関連ニュース)、来年春に出荷を開始することを発表していた。本日、出荷時期は来年6月に遅れることが明らかにされたが、60/50V型のフルHDパネルが発表されたことで、来年6月以降は42/50/60V型のフルHDパネルが揃うことになる。HDパネルは37/42/50/55V型を生産し、フルHDと合わせて7種類のパネルを国内に供給していく計画だ。
なお、同社では昨年9月に55V型フルHDパネルの開発を発表、今年夏に商品化すると発表していたが、55V型は開発を中止したことが明らかにされた。
今回発表したパネルを搭載したテレビセットは日立製作所などが販売することになる。このため、テレビセットの販売価格を現段階で推測することは難しいが、同社説明員の話によると、60V型は100万円を切る程度、50V型は60万円程度での販売を想定しているという。もちろん、販売価格は最終的に市場の動向を見ながら決定されることになるだろう。
また同社は、宮崎県の同社工場3番館を以前から建設していたが、今年10月から一部ラインを起ち上げ、今回発表した50V型HDパネルを量産・出荷する。3番館は当初、42V型換算で月産10万台からスタートし、来夏には月産20万台に増強する。
さらに同社は、中国のHD規格に適合したALIS方式の42型HD PDPを量産開始することも発表した。
今春、中国で策定されたHD規格は、来年1月から施行されることが決定している。テレビセットの性能を数十項目に渡って規定しており、解像度は水平、垂直ともに720TV本以上、輝度は42〜50V型以上の場合60cd/m2、暗室コントラスト150対1などの数値が規定されている。
今回開発したパネルの解像度は1,280×1,080で、これにより解像度を高め、42V型として初めて中国のHD規格に対応させた。輝度は1,200cd/m2、コントラストは10,000対1。
なお、この42V型HDパネルを日本国内で展開する予定はない。同社では既に42V型フルHDパネルの開発を表明していることから、国内の最新モデル「W42P-HR9000」に搭載している1,024×1,080のパネルを継続して採用し、順次フルHDに切り換えていくことになるだろう。
以下、日本国内で展開される予定の3パネルの概要を紹介しよう。
■50V型フルHDパネル
50V型のフルHDパネルは、同社が以前から採用しているALIS方式を採用。アドレス電極をパネルの片側のみに装備するシングルスキャン方式を実現したことにより、部品点数の削減が可能になった。シングルスキャン方式の部品点数を100とすると、デュアルスキャンの場合は130程度になると言う。
輝度は1,100cd/m2。背景輝度を下げる高コントラスト制御技術を新開発したことにより、10,000対1の高コントラストを実現した。
セル構造は、42V型フルHDパネルの等比設計とし、開口率も42V型と同等の60%を実現した。
また、動画と静止画で信号処理を変える高画質LSIを新たに搭載。これにより階調性と動画の表示品質を高めた。
パネルのガラスの厚さも、従来の2.8mmから1.8mmに変更し、ガラスの重みを約4kg程度削減した。
なお、50/60V型フルHDパネルは、高純度赤色蛍光体を採用したことにより色再現性能を高め、テレビセット時でHDTV規格比100%以上を実現できるという。
■50V型HDパネル
フルHDパネルと同様、FHPとして初めての50V型パネルとなる。解像度は1,280×1,080で、他社製品で主流になっている1,366×768のワイドXGAに比べ、30%以上画素数が多い。
50V型フルHDと同じくALIS方式のシングルスキャンを採用。ALISはもともと開口率が高いが、今回放電ガスの組成を変更したことで駆動波形を改良するなどの工夫を施し、50V型で業界最高クラスとなる1,300cd2を実現した。そのほか、10,000対1のコントラスト比、高画質LSI、1.8mm厚ガラスの採用による軽量化などはフルHDパネルと同様。
同社では、「セル面積は水平0.288(×3)×垂直0.58と60V型フルHDと同等で、2〜3mの距離で視聴した場合はフルHD PDPと同等の繊細な表現が楽しめる」としている。
■60V型フルHDパネル
60V型フルHDは、これまで同社が生産してきた55V型と同様、ALIS方式と同じ電極構造を持つe-ALIS方式を採用。駆動はシングルではなくデュアルスキャンとなる。ピーク輝度は1,000cd/m2、暗室コントラストは5,000対1。
新開発した高画質LSIを装備。サブフィールドの制御方法を新たに高度化し、動画のノイズを大幅に低減させ、階調表現を向上させたという。
■「PDPの需要拡大、大型化がますます顕著に」
本日行われた記者発表会では、冒頭、FHP社長の井本義之氏が、PDP事業戦略について説明した。
井本氏は、「昨年末に42V型フルHDパネルを発表したが、その後新製品の発表がなく、FHPはダメなのかな、と思われた方もいたのではないか。今日は半年間の成果をすべて発表する」と、開発が順調に進んでいたことを強調。
薄型テレビの市場動向については、「液晶パネルの供給能力が飛躍的に高まったことで価格が下がり、40〜42V型クラスの液晶とPDPの価格が拮抗してきた」とし、「これにより需要がさらに増え、大型化、フルHD化がさらに進むだろう」と予測した。
また、PDPの需要、サイズ構成比は、いずれも昨年末時点での予測値を変更したことを明らかにし、「昨年末は、2010年時点でのPDP需要を1,650万台と予測していたが、現時点では2,200万台と予測している」と、価格低下により大幅に需要が拡大すると予想。特に50V型以上の大型PDPが増えると想定し、2010年時点で半数が50V型以上になると予測した。
井本氏はまた、同社の事業方針について、「世界初・世界一の技術開発」「原価低減の加速」「3番館立ち上げ加速と生産体制の強化」を挙げ、技術開発分野ではALIS方式の進化と大型化・高精細化への対応、原価低減ではシングルスキャンならではの部品点数の少なさを活用していく考えを示した。
井本氏は宮崎工場三番館についても触れ、前述したとおり、今年10月に月産10万台で立ち上げ、来夏には20万台に増強することを改めて説明。従来の二番館は月産10万台なので、工場全体では月産30万台の生産能力を持つことになる。
■「PDPは液晶よりテレビとしての基本性能に優れる」
パネルの詳細については、FHP商品設計統括部長の苅谷教治氏が説明。今回の製品について、「需要の大型化、高精細化に対応し、フルHDパネルと、50/60V型といった大型製品を拡充した」と説明した。
また苅谷氏は、来年度以降、80V超の大型フルHDパネルを開発する計画を表明。さらに大型化を加速させる考えだ。
さらに、従来から同社が主張している、PDPの強みについて改めて説明。自発光デバイスゆえに視野角や階調表現力に優れ、動画ボケが少ないなどの特徴を列挙。「液晶に対して、テレビとしての基本性能に優れている」とした。
同社が独自に開発するALIS方式の優位性についても言及。「セル開口率が高いため高輝度で、従来と同様の電極数で2倍の高精細表示が可能。また、HDTVの垂直1080ラインをシングルスキャンで表示できる」と述べた。
■質疑応答
以下、発表会で行われた質疑応答を紹介する。
Q: 昨年春に松下電器とPDP分野での協業を発表しているが、今回の製品にその成果は反映しているか?
A: 今回の製品には反映されていない。強いて言うなら、ガラスは1.8mm厚のものを使っており、これは松下と同じだが、協業と言うより標準化に近い。
Q: 原価低減のための具体的な方策は?
A: パネルの多面取りを行うと原価が下がることはご承知の通りだ。それに加え、当社で採用しているALIS方式ではシングルスキャンでフルHDを実現でき、回路モジュールのコストを削減できる。
Q: 50V型HDパネルについて、解像度が上がったことで製品価格が上がることはあるか?
A: 画素数が上がったからと言って高く売ることはない。市場価格に合わせていく。
Q: 中国では液晶の勢力が拡大しているのではないか?
A: 50V型以上ではPDPの優位性が見直されていると認識している。これは世界中で言えることだが、松下電器やパイオニアなどと一緒に、PDPのメリットをもっと強く訴求していく必要があると認識している。
Q: 3番館以降の増産計画について教えて欲しい。
A: 事業規模にあった、適正な時期に投資を行っていく。率直に言って、現在の生産設備は他社に比べ半年から1年遅れており、この差を埋めるため、まずは3番館に注力する。最近、投資をしなければダメという論調があるようだが、これはおかしい。あくまで適正な投資を心がけていきたい。
(Phile-web編集部)