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公開日 2008/07/02 18:32
「ドルビーボリューム」の説明会が開催 − “あって当たり前”を目指す注目の新技術
ドルビージャパン(株)は本日、同社の新技術「ドルビーボリューム」のマスコミ向け説明会を同社視聴室にて開催した。
ドルビーボリュームは、2007年のInternational CESで発表され、話題を呼んだ新技術。これまでCEDIAやCEATECなどでもその技術をアピールしていたが、今回、東芝の液晶テレビ“REGZA”の夏モデル「ZH500」「ZV500」各シリーズに世界で初めて採用され、一般家庭でその技術を体験できるようになった。
本日の説明会には、ドルビージャパン マーケティング部 シニア・マーケティング・マネージャーの尾関沢人氏、またREGZAの商品企画を担当している東芝 DM社 テレビ事業部 日本部 参事の本村裕史氏らが出席。ドルビーボリュームについて、デモを交えながらくわしく解説を行った。
ドルビーボリュームは、主にテレビやサラウンドシステムへの組み込みを想定した新技術。デジタル放送の普及に伴って多チャンネル化が進み、ダイナミックレンジが広がった結果、チャンネル間や番組間、また番組とCMなどで音量レベルが大きく異なるケースが増えた。チャンネルを切り替えた際、慌ててボリュームを調整したという経験は、多くの方がお持ちのはずだ。さらに、レコーダーやプレーヤー、ゲーム機など、テレビに接続される入力ソースも増える一方で、この切り替えの際にも、音量レベルの差が問題になる。
ドルビーボリュームの主な効果は2つあり、1つはこの音量レベルのバラツキを解消すること。ドルビーラボラトリーズがこれまで40年以上蓄積してきた音声近くに関する研究成果を応用して開発した。具体的には、人間の聴覚心理学モデルに基づき、音量や周波数バランス、時系列上の音成分の配置などを処理エンジンが測定・解析。独自のアルゴリズムで音量を自動調整するというものだ。
これまでのテレビでも、「オート・ゲイン・コントロール」(AGC)やコンプレッション機能など、音量のバラツキを抑える機能を搭載しているものは多数存在する。だが、たとえば会話と会話のあいだに、風の音などの背景音などがある場合、従来のAGCでは風の音のゲインも上げてしまい、息継ぎのような不快な音になってしまう、いわゆる「ブリージング」現象が起きてしまっていた。ドルビーボリュームは処理を工夫したことにより、このような現象が起きず、自然な音量調整が可能になっている。
ドルビーボリュームのもう1つの機能は、周波数帯域の調整機能。人間の耳は低音・高音に対する感度が低く、もとの周波数バランスのまま、レベルだけを下げると、低域や高域が人間の聴覚で感知できなくなってしまう。もともと小さい音のコンテンツの場合、中域を含め、すべての帯域が聴覚で感知できるレベルを下回る場合もある。このため、ドルビーボリュームでは、音量を下げた際に低域・高域のゲインを持ち上げ、オリジナルの周波数バランスを再現するように自動調整する。
ドルビーボリュームの処理は、入力された音声のTCと呼ばれる変換係数を、ドルビーボリュームのラウドネス係数(20バンド)に変換。その後、独自のアルゴリズムで音量調整や周波数調整を行い、導き出された新たなラウドネス係数をもう一度TCに変換し、最終的に音声として出力するというもの。東芝の本村氏によると、「ドルビーさんは非常にマジメに作っているので、ファームウェアが本当に重く、設計陣は実装に当たって顔が真っ青になっていた。メタブレイン・プロという強力なLSIを用いても、メモリの整理などが大変だったようだ」と裏話を披露。ドルビーボリュームの処理がかなり複雑なものであることをうかがわせた。
説明会ではデモも多数行われた。アメリカのケーブルテレビで放映された映画と、そのCMのデモでは、ドルビーボリュームOFFだとCMになったとたんに急にボリュームが大きくなり、びっくりしてしまうほどの音量レベル差があったが、ONにするとごく自然なレベルに調整され、まったくボリュームレベルを調整する必要がなかった。さらに、映画とバラエティー、音楽番組など、番組ジャンルによっても音量レベルはかなり異なるが、ドルビーボリュームをONにすると、それぞれのレベル差を意識する必要なく、自然に視聴を続けられる。
また、小音量のコンテンツの再生デモでも、ドルビーボリュームの周波数調整機能が効果を発揮。OFFでは焚き火のパチパチという音、また周りの風の音などがほとんど聞き取れないが、ONにすると全体の音量レベルを調整しつつ、環境音の周波数帯域が持ち上げられ、情報量が格段に向上した印象を受けた。
東芝の本村氏は、「これまでのREGZAでも、AGC機能を搭載していたが、音がこもってしまうなどの問題があったため、工場出荷時はOFFにしていた。ドルビーボリュームはこれが無いため、ONにした状態で出荷している」と説明。ドルビーボリュームの性能に対する強い信頼をあらわにした。
また本村氏は、「REGZAが今回搭載した自動画質調整機能『おまかせドンピシャ高画質』とドルビーボリュームは、自動で心地よさを提供するという意味で思想が近い。ただしお客様にとっては、それが当たり前の状態になってしまうので、ベネフィットを感じにくいのも確か。だが、これらの機能がないと、フラストレーションが溜まる結果になるだろう」とも述べ、“あって当たり前”の機能を提供する意義を強調した。
【問い合わせ先】
ドルビージャパン(株)
TEL/03-3524-7300
(Phile-web編集部)
ドルビーボリュームは、2007年のInternational CESで発表され、話題を呼んだ新技術。これまでCEDIAやCEATECなどでもその技術をアピールしていたが、今回、東芝の液晶テレビ“REGZA”の夏モデル「ZH500」「ZV500」各シリーズに世界で初めて採用され、一般家庭でその技術を体験できるようになった。
本日の説明会には、ドルビージャパン マーケティング部 シニア・マーケティング・マネージャーの尾関沢人氏、またREGZAの商品企画を担当している東芝 DM社 テレビ事業部 日本部 参事の本村裕史氏らが出席。ドルビーボリュームについて、デモを交えながらくわしく解説を行った。
ドルビーボリュームは、主にテレビやサラウンドシステムへの組み込みを想定した新技術。デジタル放送の普及に伴って多チャンネル化が進み、ダイナミックレンジが広がった結果、チャンネル間や番組間、また番組とCMなどで音量レベルが大きく異なるケースが増えた。チャンネルを切り替えた際、慌ててボリュームを調整したという経験は、多くの方がお持ちのはずだ。さらに、レコーダーやプレーヤー、ゲーム機など、テレビに接続される入力ソースも増える一方で、この切り替えの際にも、音量レベルの差が問題になる。
ドルビーボリュームの主な効果は2つあり、1つはこの音量レベルのバラツキを解消すること。ドルビーラボラトリーズがこれまで40年以上蓄積してきた音声近くに関する研究成果を応用して開発した。具体的には、人間の聴覚心理学モデルに基づき、音量や周波数バランス、時系列上の音成分の配置などを処理エンジンが測定・解析。独自のアルゴリズムで音量を自動調整するというものだ。
これまでのテレビでも、「オート・ゲイン・コントロール」(AGC)やコンプレッション機能など、音量のバラツキを抑える機能を搭載しているものは多数存在する。だが、たとえば会話と会話のあいだに、風の音などの背景音などがある場合、従来のAGCでは風の音のゲインも上げてしまい、息継ぎのような不快な音になってしまう、いわゆる「ブリージング」現象が起きてしまっていた。ドルビーボリュームは処理を工夫したことにより、このような現象が起きず、自然な音量調整が可能になっている。
ドルビーボリュームのもう1つの機能は、周波数帯域の調整機能。人間の耳は低音・高音に対する感度が低く、もとの周波数バランスのまま、レベルだけを下げると、低域や高域が人間の聴覚で感知できなくなってしまう。もともと小さい音のコンテンツの場合、中域を含め、すべての帯域が聴覚で感知できるレベルを下回る場合もある。このため、ドルビーボリュームでは、音量を下げた際に低域・高域のゲインを持ち上げ、オリジナルの周波数バランスを再現するように自動調整する。
ドルビーボリュームの処理は、入力された音声のTCと呼ばれる変換係数を、ドルビーボリュームのラウドネス係数(20バンド)に変換。その後、独自のアルゴリズムで音量調整や周波数調整を行い、導き出された新たなラウドネス係数をもう一度TCに変換し、最終的に音声として出力するというもの。東芝の本村氏によると、「ドルビーさんは非常にマジメに作っているので、ファームウェアが本当に重く、設計陣は実装に当たって顔が真っ青になっていた。メタブレイン・プロという強力なLSIを用いても、メモリの整理などが大変だったようだ」と裏話を披露。ドルビーボリュームの処理がかなり複雑なものであることをうかがわせた。
説明会ではデモも多数行われた。アメリカのケーブルテレビで放映された映画と、そのCMのデモでは、ドルビーボリュームOFFだとCMになったとたんに急にボリュームが大きくなり、びっくりしてしまうほどの音量レベル差があったが、ONにするとごく自然なレベルに調整され、まったくボリュームレベルを調整する必要がなかった。さらに、映画とバラエティー、音楽番組など、番組ジャンルによっても音量レベルはかなり異なるが、ドルビーボリュームをONにすると、それぞれのレベル差を意識する必要なく、自然に視聴を続けられる。
また、小音量のコンテンツの再生デモでも、ドルビーボリュームの周波数調整機能が効果を発揮。OFFでは焚き火のパチパチという音、また周りの風の音などがほとんど聞き取れないが、ONにすると全体の音量レベルを調整しつつ、環境音の周波数帯域が持ち上げられ、情報量が格段に向上した印象を受けた。
東芝の本村氏は、「これまでのREGZAでも、AGC機能を搭載していたが、音がこもってしまうなどの問題があったため、工場出荷時はOFFにしていた。ドルビーボリュームはこれが無いため、ONにした状態で出荷している」と説明。ドルビーボリュームの性能に対する強い信頼をあらわにした。
また本村氏は、「REGZAが今回搭載した自動画質調整機能『おまかせドンピシャ高画質』とドルビーボリュームは、自動で心地よさを提供するという意味で思想が近い。ただしお客様にとっては、それが当たり前の状態になってしまうので、ベネフィットを感じにくいのも確か。だが、これらの機能がないと、フラストレーションが溜まる結果になるだろう」とも述べ、“あって当たり前”の機能を提供する意義を強調した。
【問い合わせ先】
ドルビージャパン(株)
TEL/03-3524-7300
(Phile-web編集部)