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公開日 2008/10/14 16:39

【一条真人の体当たり実験室】新type Rは「VAIO 00[ダブルオー]」 − 最高峰の一体型PCの実力は?

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最近のデスクトップPCは個性がなくて、ちょっとつまらないと思っていたところに、強烈なアイデンティティを持つPCが登場した。それがVAIOの新 type Rだ。従来、ディスプレイ一体型PCというのはあまりハイエンドには存在しなかった。これは主に排熱や拡張性の問題だ。

VAIO type R ビデオエディション

ハイエンドPCは当然、高速なCPUを搭載しているが、それが強烈な熱を発生し、一体型では処理が難しくなる。ノートPCのジャンルでもゲーミングノートというものがあり、これらはハイエンドな3D対応GPUを搭載した上で、高速なCPUを搭載するため、強烈な発熱の処理が問題となっている。果たして、type RがクワッドコアCPUの発熱をどう処理しているのか、興味深いところだ。

拡張性に関しては、最近のPCではほとんどの機器がUSBで行えるし、グラフィックスチップに関しても、ヘビーなゲームユーザー以外であれば、はじめからある程度のGPUを搭載していれば、問題にならないということだろう。

今回はこのVAIO type Rのビデオエディションを試用し、そのポテンシャルを探ってみた。

■本体の奥行きは10cm以下、広範囲なポジション調整も可能

実際に目にしたtype Rは、25.5インチという大型ディスプレイを搭載するせいもあり、さすがに大きく感じる。しかし、これはユーザーから目にした表面積の大きさであり、本体自体の奥行きは実に10センチを切っている。

上部背面には廃熱のためのスリットがある。また、本体の厚さが10センチもないのには驚かされる

現在では24インチ程度のディスプレイは珍しくないが、これとミドルタワーなどのハイエンドデスクトップPCを組み合わせると、type Rよりもかなりスペースを取ってしまう。これに対して、type Rはほとんどディスプレイ並のスペースしか必要とないわけで、その省スペース性は驚異的だ。

上面の背面側には排気用のスリットがあり、全域から空気が抜けるようになっているため、エアフローはよさそうだ。果たしてどれだけの排熱能力を持っているのか、と興味を持ちながら、type Rを起動してみると、起動時にファン音が大きくなる以外は、あまり大きなノイズを感じさせない。ブルーレイ再生など、比較的CPU負荷の高い処理をしても、あまり耳障りなノイズを発生させない。

インターフェース類は左右及び、右背面に横向きに搭載されている。右背面には入力、出力のためのHDMIポートを持つ。入力HDMIポートを使えば、ディスプレイとしても使うことができるし、外部出力を使えば大型TVなどに映像を出力できる。

また、一体型ではそのポジショニングが気になる。ユーザーの利用用途にあった角度に調節できないと使っていてストレスが溜まるが、type Rはこの部分でも自由度が高い。左右に+45度〜-45度回転でき、傾きは-5度〜15度まで調節できる。さらに高さ調節も可能であり、必要があれば60mmまで位置を高くすることができる。下手なディスプレイよりも高い調節能力を持っており、ユーザーに適した位置で使うことができる。

入力デバイスは、キーボード、マウスに加えて、リモコン、そして、ビデオ編集用のジョグコントローラが付属する。キーボードはアイソレーションタイプで、1つ1つのキーが他のキーから離れ独立しており、タッチも悪くない。また、Felicaポートも搭載している。単3電池2本で駆動する。

本体に付属するキーボードとマウス

マウスはデスクトップ向けとしてはごく一般的なジョグホイールを持つタイプで、全面ブラックで高級感を感じさせる。これも単3電池2本で駆動する。ジョグコントローラはビデオエディションならではの付属アイテムであり、USB接続になる。リモコンはTP1などと変わらないWindows Media Centerボタンを持つものだ。

ジョグコントローラーはビデオエディションのみに付属する

AV機能の操作に便利なリモコンも付属する


■AVC変換機能を搭載したレコーダー機能

ビデオエディションは地デジダブルチューナーを搭載するため、現行の主要レコーダーと同様に2番組を同時録画可能だ。ソフトはTP1などにも搭載されているGiga Pocket Digitalだが、TP1よりもやや強化されている。特にtype Rビデオエディションならではの高機能は「VAIO AVCトランスコーダー」と呼ばれるハードウェアトランスコーダーを搭載していることだ。

このトランスコーダーは動画を高速に他の形式に高速に変換することができるハードウェアで、地デジ録画時にはH.264形式の4つのモードにリアルタイム変換して記録できる。記録可能なモードはHD×2モード、SD×2モードで、ビットレートはHD高画質が約10Mbps、HD長時間が約5Mbps、SD標準が約2.5Mbps、SD長時間が約1.5Mbps。ちなみにHDの解像度は1,440×1,080ドットだ。

予約画面ではDRモードに加えて、4つの変換モードが選択できる

HDモード記録では解像度は1,440×1,080ドットになる

解像度が1,440×1,080である理由は、地デジの解像度がそもそも1,440×1,080であり、このトランスコーダーが高速変換できるのは、解像度が同じか低い場合に限られるためだ。このトランスコーダーの特性に関しては後でも触れる。

画質的には、同社のレコーダーBDZシリーズのAVC変換よりもやや落ちる印象。ある程度、高画質な録画を期待するなら、HD高画質を使うのがいいだろう。SD長時間モードのビットレートが約1.5Mbpsと低いため、とりあえず長時間録画したい場合に、DRモードの約10倍の長時間録画ができるのが便利だ。

ちなみに、AVC変換機能は再変換ができない。そのため、AVC変換で録画した場合、モバイルデバイスへの転送ができなくなってしまう。レコーダーでは再変換が可能なのに、この仕様はやや残念だ。また、HAVC変換で録画したタイトルは録画一覧でもサムネイルが表示されない。

AVC変換録画タイトルはサムネイルが表示されない


■録画連携機能も強化された

今回の「Giga Pocket Digital」では録画の連携機能も強化された。録画を再生した後、プレーヤー画面にその録画に関連する番組、ビデオ、商品、店舗が表示され、必要があれば、目的の録画を再生したり、予約したり、リンクを表示させたりすることができる。

録画の再生終了で関連情報画面が表示される

この機能を使えば、連続ドラマなどの場合、そのドラマの録画があれば、「関連するビデオ」から探して再生することができる。また、「関連する番組」に表示された関連番組をそのまま録画予約することができる。

また、「関連する商品」で興味のある商品をダブルクリックすれば、その商品情報へのリンクを表示させたり、ショッピング情報を検索できる。また、「関連する店舗」で店舗名をダブルクリックすれば、そこの地図を表示できる。

商品をクリックすると、関連情報とリンクが表示される

■学習型自動録画が追加された「おまかせ・まる録」とおすすめ番組

今回の「おまかせ・まる録」機能には、従来の指定キーワード、ジャンルなどからの自動録画に加えて、ユーザーの好みを学習し、おすすめ番組を自動録画する機能が追加された。この機能はオン/オフが可能で、レベルを3段階に調節することができる。さらに、「意外なおすすめも含む」オプションを設定することで、普段はあまり見ないような番組を録画予約してくれる。

「好みに合わせて〜」をチェックすると学習型自動録画が実行される

学習型自動録画は3レベルに設定できる


Myカルテではユーザーの録画、視聴の傾向を表示することができる

ビデオ一覧でおすすめ番組のリストを見ることができる


■DSD Direct Playerを搭載

type Rでは入力インターフェースに関して、TP1と同様に、AV機能をマウスおよびリモコンから使用することができ、リモコン操作時はよりアイテムが大きく表示され、操作しやすいという美点を受け継いでいる。

TP1同様、リモコンのVAIOキーを押すことで、VAIOメニューが表示され、そこからAVアプリを選択起動できるのだが、TP1でのTV視聴、録画の再生、BD/DVDの再生、インターネット、Life FLOW、ホームネットワークに加え、DSD再生が加わっている。

AVアプリを起動できるVAIOメニュー

このDSD再生ではDSD Direct Playerが起動する。これは音楽CDあるいははWAVファイルをDSD形式に変換して、高音質に再生できるアプリだ。

DSDダイレクトプレーヤー

■Vaioならではのビデオ編集ソフト強化

type Rビデオエディションには、本格的なビデオ編集ソフト「Adobe Premiere Pro CS3」が付属しているが、これを機能強化してくれるのがオリジナルソフト「VAIO Edit components」で、さまざまな機能を持っている。

まずは、プロキシ編集機能だ。HDVやAVCHDなどのハイビジョンコンテンツは編集処理が重いが、プロキシ編集機能では編集用の低画質な代替え動画を作成し、編集時はそれで編集し、出力時に、オリジナルの高画質で出力することにより、編集作業のレスポンスを上げることができる。

正直、ビデオエディションの搭載するクワッドCPUの場合、ハイビジョン映像を編集しても極端にストレスが溜まることはないのだが、オーダーメイドでデュアルコアCPUを選択した場合などはメリットが大きいだろう。

プロキシ編集以外に、必要な部分だけをレンダリングすることで、高速レンダリングが可能なスマートレンダリング機能、SD解像度動画のアップコンバート処理や、独自のオシャレなエフェクト処理などいろいろなオリジナル機能が追加されている。

プレビュー画面右が、オリジナルのトランジション「スクリーンチューブ」

■ハードウェアアクセラレーションによる高速ビデオ変換

「VAIO Content Explorer」は動画形式を変換するソフトだが、VAIO AVCコンバーターはこのソフトでの変換をハードウェアでサポートして高速化してくれる。6分27秒のHDVビデオ映像をいくつかの形式で変換し、手動計測でタイムを計った結果が以下のようになる。

・AVCHD HighPro(1,920×1,080/14Mbps):53分19秒
・AVCHD HighPro(1,440×1,080/9Mbps):6分26秒
・AVCHD HighPro(1,440×1,080/7Mbps):5分51秒
・AVCHD HighPro(1,440×1,080/5Mbps):5分48秒
・PSP(画質優先):3分17秒

オリジナルよりも解像度を上げた1,920×1,080の場合は極端に時間がかかっているが、同解像度の1,440×1,080の場合はきわめて高速だ。ビデオを同解像度や解像度を下げて変換する場合はAVCコンバーターの恩恵は絶大だと言える。

ちなみに、このソフトはVAIO MovieStoryのビデオ出力にも使われるため、MovieStoryのビデオ出録も高速化される。

ビデオ形式変換ソフト「VAIO Content Explorer」

■ハイクオリティなディスプレイ

さまざまな強力なソフトウェアで武装したtype Rだが、使い始めて、まず、驚かされたのはそのディスプレイのクオリティの高さだ。単品で発売されているディスプレイのなかでも、これほどの色表現力を持ったディスプレイはそうないだろう。

最近はカタログスペックばかりで実性能に首をかしげるようなディスプレイも少なくないが、type RのAdobe色カバー率96%、NTSC比103%という性能はハッタリではなく、きわめて高い色彩表現力を持っている。

さらに色モードコンテンツごとに自動的に切り替え、最適な表示を実現するが、必要に応じて目的の色モードを選択することもできる。

■高いサウンド再生能力

type Rではディスプレイの左右の端にスピーカーを配置しているのに加え、背面中央にウーファーユニットを搭載している。このスピーカーユニットはディスプレイの端のわずか3センチ程度の部分に埋め込まれている。このスペースに収めるために、円形ではなく縦長のスピーカーを開発したそうだが、音楽CDを再生してみると、そのサイズを考えれば、驚異的とも言える繊細な描写力を持っている。

また、BDビデオやDVDビデオの再生では、ドルビーホームシアターによって、5.1チャンネル仮想サラウンド再生が可能。ウーファーユニットのおかげで低音域も十分に効いたサラウンド音で映画が楽しめた。

2スピーカーで仮想サラウンドが楽しめるドルビーホームシアター


■目的の決まった人ならオーナーメイドで

さて、これだけの高い性能を持つVAIO type Rビデオエディションだが、現在のPCとしてはハイエンドな部類に入る、40万円前後という価格になる。地デジWチューナー、クワッドコアCPUを搭載し、記録型BDドライブ、ハードウェアトランスコーダーまで搭載することで、地デジ視聴・録画、ビデオ編集からブルーレイ鑑賞まで、スキのないマシンなので無理もないと言えるが、ユーザーの目的が特定の用途であれば、ソニースタイルのVAIOオーダーメイドでよりリーズナブルに購入することができる。

たとえば、高画質なディスプレイを持つブルーレイ再生機として使えればいいという人であれば、OSをVista Home Premiumにし、CPUをCore2Duo E8400、HDDを500GB、BD-ROMドライブ、地デジチューナー無し、などとすることで25万円以下になる。この高性能ディスプレイと省スペース性を考えればリーズナブルな価格と言える。

TV+レコーダー代わりでちょっとビデオ編集もしたいけど、もっと安くということなら、ハードウェアエンコーダーなしで、OSをVista Home Premiumにし、CPUをCore2Duo E8400、HDDを1TB、記録型BDドライブ、地デジチューナー付きとすることで31万円程度になる。

■VAIOの新しい存在意義を定義するマシン

さて、type Rはここまで紹介してきたように高いポテンシャルを持ったマシンだが、重要なポイントは単に機能を向上させただけではなく、その高い性能をディスプレイ一体型のボディに収めたパッケージングにあるのは言うまでもない。

単に高性能ということであれば、高機能なパーツを組み合わせた自作PCでも実現できることだが、このディスプレイ一体型というフレームワークのなかで、高性能かつハイクオリティなPCを実現したところが、ソニーならではと言えるだろう。ユーザーにとっては新たな魅力を持つPCだ。

この新type Rは、メディアPCとしてのVAIOの存在意義を再定義し、再びスタートラインに立ったことを宣言する区切りとなるPCなのではないかと思う。再びゼロからスタートするラインを引いた、言わば「VAIO 00(ダブルオー)」だ。

(一条真人)

執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。

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