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公開日 2012/04/27 20:17
NHKとパナソニック、145インチ「8K4K」スーパーハイビジョン対応PDPを共同開発
世界初の自発光・直視型SHVディスプレイ
日本放送協会(以下 NHK)とパナソニック(株)は、次世代のテレビ放送方式として研究開発を進める8K4K画素の高精細な「スーパーハイビジョン(以下 SHV)」映像の表示に対応した、145インチのプラズマディスプレイパネルを共同開発し、記者発表を行った。
はじめにNHK理事・技師長の久保田啓一氏が、NHKのSHV技術への取り組みと、今回のプラズマディスプレイを共同開発した経緯を説明した。
久保田氏は、NHKの次世代放送技術に対する取り組みを紹介。「デジタル放送を育て成熟させること、そして次世代の新しいサービスを開発することがNHKのミッション」と説きつつ、NHK放送技術研究所では「20年後」までを見据えつつ、「4つの柱」となる技術テーマを設定して研究開発に取り組んでいることを紹介した。
その中で、NHKが「10年後」の実現を目標として研究を進めているのがSHVだ。久保田氏はSHVについて「私たちにとってもフラグシップ的なサービスだ」として位置付けた。
SHV対応のディスプレイは、これまでにもフロント投射型のプロジェクターや、液晶方式のディスプレイなどで実現してきたが、自発光・直視型のディスプレイが製品化され、公開される機会は今回が世界で初めてになる。
SHVの技術的なテーマは、約3,300万画素の超高解像映像と22.2chのサラウンドにより、「視聴者にあたかもその場所にいるような臨場感」を提供すること。NHKでは1995年からSHVの開発に着手。2020年には試験放送のスタートが目標に掲げられているが、久保田氏は「デジタル技術が急速に進化している時代なので、2020年という目標時期を前倒して、できるだけ早くサービスを提供していくことも検討している」と、同技術の進化を加速させる考えを示した。
SHV規格の国際標準化に関する取り組みについても触れられた。直近ではSHVのテレビスタジオ規格として提案されたパラメーターについて、現在開催されているITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)の会合で勧告案の作成が進められており、5月1日開催予定のスタディグループで承認されれば、今夏頃には国際標準規格化される可能性もあるという。またSHVの番組製作機材や放送用伝送機材についても開発が進行している。
今夏に開催されるロンドン五輪については、NHKが英国のBBCとOBS(オリンピック放送機構)と共同で、SHVで撮影したコンテンツのパブリックビューイングを行う計画も発表している(関連ニュース)。また今日公開された145インチのSHV対応PDPを、五輪期間中にロンドンのIBC(International Broadcast Center)に設置して、SHVのライブ放送やレコーディング映像のデモンストレーションを実施する予定であるという。
今回発表されたSHV対応ディスプレイについて、久保田氏は「NHKが育んできたプラズマディスプレイの駆動制御技術と、パナソニックの世界で最もレベルの高いPDP関連の技術がタッグを組んだことで完成させることができた」とし、今後も次世代の新しいサービスに向けて、両者共同で技術の進化を押し進めていく考えについてもを述べられた。
続いて、パナソニック(株)役員 AVCネットワークス社 上席副社長の伊藤好生氏が登壇し、今回共同開発した145インチのSHV対応PDPの技術的特徴を説明した。
SHV対応ディスプレイは、画面の大きさと映像の「実物感」の表現力が求められると伊藤氏は語る。そして、その「実物感」を表現するためには「緻密で細やかな表現」「質感豊かな色再現」「滑らかな動画応答」「自然な階調表現」など、ディスプレイとしての基本性能が大事になるという。伊藤氏は「パナソニックでは画面の大型化が可能であり、これらの基本性能を実現するためのポテンシャルが最も高いディスプレイとして、自発光で直視型のプラズマディスプレイ技術を選択して、開発を進めてきた」とし、SHV対応ディスプレイに関連して、同社の持つPDP技術の先進性とノウハウに大きなアドバンテージがることをアピールした。
NHKとの共同研究については、開発に着手した時期は2007年4月。以降、2012年のオリンピック開催に合わせて今回のディスプレイを完成させることを目標に、これまで約5年間に渡って開発が行われてきた。その過程でパナソニックは、09年5月には103インチの高精細プラズマテレビを試作。10年5月には58型の高精細PDPをNHK技研などで展示し、PDPの大型化と高精細化に関する技術の進化をアピールしてきた。また一方では、フルHD対応の103型、4K対応の152型の製品化を実現し、大型PDPの量産化技術を確立してきた。
今回開発された145インチのPDPは、同社のフルHD対応の42インチPDPと比べて、画面の大きさが「10倍以上」、画素数は「16倍」、画素ピッチも「縦横0.417mm」と精細度についても同等以上の性能を実現している。
画面の横幅は約3.2m、高さが約1.8mという「世界最大級」のサイズを実現。画素数は「横7,680×縦4,320」画素で、アスペクト比は16対9。フレームレートは「60フレーム/秒」、画素ピッチは「縦横0.417mm」。蛍光体はRGB縦ストライプ配置となる。伊藤氏は「NHKが推薦する1.6mの視聴距離で、臨場感の高い映像体験が得られる」と説明を加えた。パネルの応答速度に関する具体的な数値は公開されなかったが「これまでのPDPと同等のレベル(パナソニック説明員)」であるという。
伊藤氏の説明によれば、このPDPに採用した主要技術につは大きく2つのキーポイントがあるという。
一つ目はパネルを高速・安定駆動するための技術。パネルの走査線が4,000本を超えるため、新しい駆動技術と信号処理技術が必要とされた。パナソニックはNHKと技術協力を図り、SHVの高画質を維持したままで信頼性の高い表示を可能にする技術を実現したという。
二つ目は大型高精細パネルを製造する技術。3,300万を超える高精細な画素の全てを均一、かつ美しく発光させるため、セルの微細加工技術と、バラつきなく形成する技術が求められたが、パナソニックの大型PDPに関連するノウハウの蓄積が今回の製品化に貢献したと伊藤氏は胸を張った。
伊藤氏は「今後も多くの方々に新しい、臨場感あふれる映像体験を提供し続けるため、パナソニックは機器メーカーとして、NHKと一緒に次世代のディスプレイ開発に全力を注いでいく所存だ」と意気込みを述べた。
今回実施された記者説明会では、「8K4K」画素のスーパーハイビジョンクオリティで撮影された、東京都心の空撮映像や桜並木、クジャクの映像や、22.2chサラウンドを加えた環境映像などデモ映像の紹介も行われた。その圧倒的な解像感と豊かな色再現は息をのむほどだったが、本機の完成度を説明員に訊ねたところ「今回のデモ用セットはまだ出来上がったばかり。これからさらに画質を向上させていく」のだという。
本機は5月24日から27日まで開催されるNHK放送技術研究所一般公開で展示を計画している。また6月3日から8日まで、アメリカで開催される国際会議「The SID International Symposium」でも報告が予定されている。
はじめにNHK理事・技師長の久保田啓一氏が、NHKのSHV技術への取り組みと、今回のプラズマディスプレイを共同開発した経緯を説明した。
久保田氏は、NHKの次世代放送技術に対する取り組みを紹介。「デジタル放送を育て成熟させること、そして次世代の新しいサービスを開発することがNHKのミッション」と説きつつ、NHK放送技術研究所では「20年後」までを見据えつつ、「4つの柱」となる技術テーマを設定して研究開発に取り組んでいることを紹介した。
その中で、NHKが「10年後」の実現を目標として研究を進めているのがSHVだ。久保田氏はSHVについて「私たちにとってもフラグシップ的なサービスだ」として位置付けた。
SHV対応のディスプレイは、これまでにもフロント投射型のプロジェクターや、液晶方式のディスプレイなどで実現してきたが、自発光・直視型のディスプレイが製品化され、公開される機会は今回が世界で初めてになる。
SHVの技術的なテーマは、約3,300万画素の超高解像映像と22.2chのサラウンドにより、「視聴者にあたかもその場所にいるような臨場感」を提供すること。NHKでは1995年からSHVの開発に着手。2020年には試験放送のスタートが目標に掲げられているが、久保田氏は「デジタル技術が急速に進化している時代なので、2020年という目標時期を前倒して、できるだけ早くサービスを提供していくことも検討している」と、同技術の進化を加速させる考えを示した。
SHV規格の国際標準化に関する取り組みについても触れられた。直近ではSHVのテレビスタジオ規格として提案されたパラメーターについて、現在開催されているITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)の会合で勧告案の作成が進められており、5月1日開催予定のスタディグループで承認されれば、今夏頃には国際標準規格化される可能性もあるという。またSHVの番組製作機材や放送用伝送機材についても開発が進行している。
今夏に開催されるロンドン五輪については、NHKが英国のBBCとOBS(オリンピック放送機構)と共同で、SHVで撮影したコンテンツのパブリックビューイングを行う計画も発表している(関連ニュース)。また今日公開された145インチのSHV対応PDPを、五輪期間中にロンドンのIBC(International Broadcast Center)に設置して、SHVのライブ放送やレコーディング映像のデモンストレーションを実施する予定であるという。
今回発表されたSHV対応ディスプレイについて、久保田氏は「NHKが育んできたプラズマディスプレイの駆動制御技術と、パナソニックの世界で最もレベルの高いPDP関連の技術がタッグを組んだことで完成させることができた」とし、今後も次世代の新しいサービスに向けて、両者共同で技術の進化を押し進めていく考えについてもを述べられた。
続いて、パナソニック(株)役員 AVCネットワークス社 上席副社長の伊藤好生氏が登壇し、今回共同開発した145インチのSHV対応PDPの技術的特徴を説明した。
SHV対応ディスプレイは、画面の大きさと映像の「実物感」の表現力が求められると伊藤氏は語る。そして、その「実物感」を表現するためには「緻密で細やかな表現」「質感豊かな色再現」「滑らかな動画応答」「自然な階調表現」など、ディスプレイとしての基本性能が大事になるという。伊藤氏は「パナソニックでは画面の大型化が可能であり、これらの基本性能を実現するためのポテンシャルが最も高いディスプレイとして、自発光で直視型のプラズマディスプレイ技術を選択して、開発を進めてきた」とし、SHV対応ディスプレイに関連して、同社の持つPDP技術の先進性とノウハウに大きなアドバンテージがることをアピールした。
NHKとの共同研究については、開発に着手した時期は2007年4月。以降、2012年のオリンピック開催に合わせて今回のディスプレイを完成させることを目標に、これまで約5年間に渡って開発が行われてきた。その過程でパナソニックは、09年5月には103インチの高精細プラズマテレビを試作。10年5月には58型の高精細PDPをNHK技研などで展示し、PDPの大型化と高精細化に関する技術の進化をアピールしてきた。また一方では、フルHD対応の103型、4K対応の152型の製品化を実現し、大型PDPの量産化技術を確立してきた。
今回開発された145インチのPDPは、同社のフルHD対応の42インチPDPと比べて、画面の大きさが「10倍以上」、画素数は「16倍」、画素ピッチも「縦横0.417mm」と精細度についても同等以上の性能を実現している。
画面の横幅は約3.2m、高さが約1.8mという「世界最大級」のサイズを実現。画素数は「横7,680×縦4,320」画素で、アスペクト比は16対9。フレームレートは「60フレーム/秒」、画素ピッチは「縦横0.417mm」。蛍光体はRGB縦ストライプ配置となる。伊藤氏は「NHKが推薦する1.6mの視聴距離で、臨場感の高い映像体験が得られる」と説明を加えた。パネルの応答速度に関する具体的な数値は公開されなかったが「これまでのPDPと同等のレベル(パナソニック説明員)」であるという。
伊藤氏の説明によれば、このPDPに採用した主要技術につは大きく2つのキーポイントがあるという。
一つ目はパネルを高速・安定駆動するための技術。パネルの走査線が4,000本を超えるため、新しい駆動技術と信号処理技術が必要とされた。パナソニックはNHKと技術協力を図り、SHVの高画質を維持したままで信頼性の高い表示を可能にする技術を実現したという。
二つ目は大型高精細パネルを製造する技術。3,300万を超える高精細な画素の全てを均一、かつ美しく発光させるため、セルの微細加工技術と、バラつきなく形成する技術が求められたが、パナソニックの大型PDPに関連するノウハウの蓄積が今回の製品化に貢献したと伊藤氏は胸を張った。
伊藤氏は「今後も多くの方々に新しい、臨場感あふれる映像体験を提供し続けるため、パナソニックは機器メーカーとして、NHKと一緒に次世代のディスプレイ開発に全力を注いでいく所存だ」と意気込みを述べた。
今回実施された記者説明会では、「8K4K」画素のスーパーハイビジョンクオリティで撮影された、東京都心の空撮映像や桜並木、クジャクの映像や、22.2chサラウンドを加えた環境映像などデモ映像の紹介も行われた。その圧倒的な解像感と豊かな色再現は息をのむほどだったが、本機の完成度を説明員に訊ねたところ「今回のデモ用セットはまだ出来上がったばかり。これからさらに画質を向上させていく」のだという。
本機は5月24日から27日まで開催されるNHK放送技術研究所一般公開で展示を計画している。また6月3日から8日まで、アメリカで開催される国際会議「The SID International Symposium」でも報告が予定されている。