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公開日 2020/12/14 19:09

エプソン、年末の社長会見。「持続可能な社会を実現する思いにブレはない」

コロナ影響下でも通期業績は前年並確保
PHILE WEBビジネス 徳田ゆかり
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セイコーエプソン(株)は本日12月14日、年末社長会見を開催。同社代表取締役社長の小川恭範氏が出席し、2020年の同社の活動と、強化領域であるオープンイノベーションの取り組み等について説明した。

セイコーエプソン(株)代表取締役社長の小川恭範氏

■2020年の振り返り

小川氏は2020年4月1日に社長に就任、同時に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大となり、事業の継続と社員の感染防止にあたった。そんな中での2020年度の通期業績は以下表のとおりとして、前期並との見通し。

2020年度の通期業績見通し

2020年度新型コロナウイルスによる売上収益のマイナス影響については、通期1300億円程度を見込む。生産面でロックダウンでの工場停止、物流面の混乱による一部での供給不足が継続、販売面では活動制限の困難が続くが、2Q以降は在宅需要やBtoB商品需要で回復傾向にあるとした。

新型コロナウイルスによる影響

新型コロナウイルス対策としては、「在宅勤務やソーシャルディスタンスの保持など新たな働き方で企業活動を継続。生産現場でも安全を守りつつ早期回復をすべく活動、新製品立ち上げ現場では遠隔システム活用で立ち上げ支援、品質課題対応を実施している。販売ではオンラインでの接点活動などさまざまな工夫をしている」と説明した。

新型コロナウイルス対策

従来から解決すべき社会課題として、気候変動と資源枯渇、持続可能な社会の実現に対する期待の高まり、ライフスタイルの多様化への対応など6つのテーマを掲げているエプソン。新型コロナウイルスなどの社会状況下でも「価値創造ストーリーに基づき、強みを生かしたイノベーションにより持続可能な社会実現に貢献したいとの思いにブレはない。エプソンが創業以来培ってきた、省・小・精の技術を核に、マイクロピエゾ、マイクロディスプレイ、センシング、ロボティクスを始めとする技術資産をベースに、産業構造の革新、循環型経済の牽引などに向けイノベーションを引き続き推進する」とあらためて強調した。

解決すべき社会課題として掲げる6つのテーマ

価値創造のストーリー

■現在取り組んでいる各イノベーションの進展

○インクジェットイノベーション


大容量インクタンクモデルは、2019年までに170の国と地域に広がった。新興国を中心に据え、先進国でも市場開拓を進め、同社インクジェットプリンターにおける大容量タンクモデルの割合は2019年度は約6割半ばまで拡大。2020年10月で世界累計販売台数5,000万台を達成、大容量インクタンク方式カテゴリーでグローバル販売台数シェアナンバーワンを維持。

インクジェットプリンターは大容量インクタンクモデルが伸長

商業産業インクジェットプリンターでは、大量生産大量消費からニーズの多様化による他品種少量生産が進み環境への配慮が求められている中、商業産業分野ではデジタルへの移行が進む。エプソンではテキスタイル、ラベル、サイネージを成長領域と位置付けさらなる拡大を図るとともに、拠点整備も進める。

商業産業インクジェットプリンターの取り組み

拠点整備も進める

オフィス共有では、1分100枚の高速複合機をあらゆるビジネス向けに展開。2019年からは学校現場を対象にアカデミックプランを開始し、学校における印刷課題への解決策を提案している。

○ビジュアルイノベーション

フラットパネルディスプレイの拡大により、縮小傾向にあるプロジェクター市場。新型コロナウイルスにより各種イベントの中止延期、ロックダウンで高光束や企業向けプロジェクターなどの事業環境は厳しい。影響について検証を進め、戦略の見直しや採算改善施策をすみやかに実行する。

一方、新型コロナウイルスによる教育用途での利用、巣ごもり需要で家庭でのニーズは高まっており、10月には3LCDプロジェクターの世界累積販売台数3,000万台達成。19年連続世界シェアNo.1を継続。今後大きな成長が期待されるスマートグラス市場のニーズを受けて、9月に第四世代スマートグラス光学エンジンの外販を開始した。

ビジュアルイノベーションの新たな取り組み

○ウェアラブルイノベーション

世界ウォッチ市場は約7兆円。中長期的トレンドは、新興地域中心に安定的に推移すると見られる。短期的には新型コロナウイルス影響でのインバウンドの減少、個人消費の落ち込みで厳しい状況。こうした中でも着実に売上を確保しつつ、メリハリある費用コントロールで採算確保を図る。

そんな中でも、グランドセイコーは今年60周年、オリエントは今年70周年。長年培ったアナログウオッチ製造のための匠の技を強化継承する。エプソンブランドのウオッチ「TRUME」では、人の動きで発電する環境配慮型のスイングジェネレーターを搭載したモデルを11月に発売した。

○ロボティクスイノベーション

世界的な人件費上昇、人材獲得競争激化、安定生産への重要性の高まりに加えた工場の分散化など、ロボット市場の高い成長が予測される。9年連続世界シェアNo. 1の産業用スカラーロボットを軸に、経営資源投下を継続。省人化・自動化の加速を捉えてさらなる事業拡大を目指す。

ロボティクスイノベーションの取り組み

■第2期中期経営計画で掲げるオープンイノベーションによる取り組み

2019年にインクジェットヘッドの産業利用を目的としたエレファンテックへの出資、デジタル印刷シフト加速、最先端プレシジョンコアプリントヘッドをラインナップに加えて、インクジェットヘッドの外販も強化。エプソンが主催するイベント ハッカソンなど顧客接点強化を図った。

2020年度は新取組を強化

2020年度は新取組(上図オレンジ色部分)を強化し、アイディア・技術ベースから、社会全体に至る社会への影響度、そして協力から出資に至るエプソンの関与度も拡大し、将来成長につながるさまざまなオープンイノベーションの展開を進めていく。

2020年度の活動では、オープンイノベーション加速に向けた迅速な意思決定や投資実行を可能とする50億円のベンチャー投資ファンド「エプソンクロスインベストメント」を4月に設立。パートナーとともに社会課題の解決に向けたサービスの創出を目的とし、会津若松にオープンイノベーション拠点を7月に開設。顕在化した社会課題解決へ新サービスの創出を目指す。第四世代スマートグラス光学エンジンVM‐40の外販を9月に開始。協業・オープンイノベーションにより、応用範囲を広げる事業開拓や市場開発を推進する。

オープンイノベーションのさらなる取り組み

■2021年に向けた考え方

2020年は外部環境が大きく変わり、解決すべき社会課題、世界のメガトレンドに加えて新たな当たり前として、人との対面を前提としないニューノーマルに対応する必要があった。ニューノーマルは、エプソンの強みを生かしたイノベーションにもとづく産業構造の革新と、循環型経済の牽引の実現に向けた取り組みに合致すると考える。2021年も引き続き、テレワーク、オンライン教育の拡大、遠隔支援、サービス拡大・加速、工場の省人化・自動化加速などにおいて大きな役割を果たす。

外部環境の変化

その上で持続可能な社会、心豊かな生活など、未来の人々が望む社会を実現するため、新しい発想ややり方に挑戦する。イノベーションを通じて、 “Exceed Your Vision” を実現する。

イノベーションを通じて、“Exceed Your Vision”を実現

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