HOME > ニュース > Gadgetニュース
ソフトバンクは8月24日、ワイモバイルブランドの新料金プラン「シンプル2」を2023年10月以降に提供開始することを発表した。従来の料金プラン「シンプル」と同様、通信容量に応じて「S」「M」「L」という3つの料金体系を設ける分かりやすい仕組みは維持しながらも、内容にいくつか変更が加えられている。
その1つは通信量の増量だ。従来のシンプルはSプランが3GB、Mプランが15GB、Lプランが25GBであったのが、シンプル2ではそれぞれ4GB、20GB、30GBへと増量がなされている。
そしてもう1つは、料金の変化だ。月額基本料金はシンプルでSプランが2,178円、Mプランが3,278円、Lプランが4,158円であったのが、シンプル2ではそれぞれ2,365円、4,015円、5,115円と値上がりしており、とりわけM・Lプランの値上げ幅が大きい。
だが、同時に割引も変化しており、新たに「PayPayカード」で料金を支払うことで月額187円の値引きが受けられる「PayPayカード割」が追加されたほか、「SoftBank光」「SoftBank Air」などとのセット契約で適用される「おうち割 光セット(A)」の値引き額が、M・Lプランでは月額1,650円(従来は1,100円)にアップされている。
加えて、月当たりのデータ通信量が1GB以下の場合、Mプランでは1,100円、Lプランでは2,200円の値引きが受けられ、全ての割引を適用すると、やはり割引を適用したSプランの料金(980円)同じ額になる。それでいて通信量が追加されていることから、割引を適用すれば従来と大きく変わらない水準で利用でき、お得感が高いというのがソフトバンク側の説明だ。
ただここで1つ疑問が沸くのが、なぜワイモバイルが現在のタイミングで新料金プランの投入に至ったのか?ということだ。確かに、サブブランドの価格帯を巡る競争は激しく、2023年にはKDDIの「UQ mobile」ブランドが新料金プラン「コミコミプラン」「トクトクプラン」などを投入したほか、従来この価格帯が手薄だったNTTドコモも新料金プラン「irumo」を提供するなど、対抗策を打ち出している。
だが、UQ mobileの新プランやirumoも、発表直後から「分かりにくい」との声が多く、高い評価を得られたとは言い難い。一方でワイモバイルの料金プランは、S・M・Lという3段階の分かりやすい料金プランを維持しており、利用者からの評価も高く、2022年度末時点で契約数が1,000万を超えるなど好調だ。それだけになぜ、料金プランに手を加える必要があったのか?という点が気になるところだ。
ソフトバンクの料金を統括している専務執行役員の寺尾洋幸氏はその理由について、データ通信量の増加を挙げている。寺尾氏によると、1人当たりのトラフィックが2023年度は2020年度の倍以上に急増しており、「今のS・M・Lプランでは少し窮屈になってきた」ということから、通信量を増やした新プランを投入するに至ったと説明している。
確かに、NTTドコモ回線が都市部で「つながらない」という声が急増したように、ここ最近携帯各社の想定を超えたトラフィックの増加が起きている印象が強いことから、通信量を増やすこと自体は理解できる。だが、新たな料金プランで基本料金が値上がりしていることや、PayPayカードに紐づく割引が増えるなど、割引が複雑化していることに対しては、疑問の声が起きているのも確かだ。
寺尾氏は基本料金の値上げについて、「我々は通信のインフラを支えないといけないことが最大の責務だと思っている。ただ安くすればいい、破壊的に安くすればいい、壊して再投資できない状態になって本当にいいのか?、ということだと思う」と答えている。通信や販売店などのインフラ維持に加え、5Gへの投資もしていかなければならない現状、通信量を増やしながらも十分な収益性を確保して事業を継続していくため、今回のような仕組みを取るに至ったといえる。
そしてもう1つ、寺尾氏が重視したのが「経済圏」であるという。携帯4社は現在、通信サービスやポイントなどを軸として自社系列のサービス利用を促進し、ユーザーを囲い込むいわゆる“経済圏ビジネス”に力を入れている。
実は、ワイモバイルが新料金プランを発表した同日には、KDDIがauブランドの新料金プラン「auマネ活プラン」を発表している。その内容を見ると、KDDI系列のクレジットカードや銀行などを契約し、支払先に指定することで値引きが受けられるなど、経済圏ビジネスに非常に重点を置いた内容となっていたことから、いかに携帯電話会社にとって経済圏ビジネスが重要かという様子を見て取ることができる。
それだけにソフトバンクとしても、ワイモバイルブランドでも経済圏ビジネスを一層強化する必要が出てきたといえ、PayPayカード割が新たに追加されたことや、M・Lプランでおうち割 光セット(A)の値引き額が強化されたことなどが、その傾向を象徴している。
とりわけPayPayカードに関しては、運営会社のPayPayカード株式会社(ワイジェイカード株式会社)がPayPay株式会社の傘下となって以降、契約拡大を強化しており、PayPayカード割は手数料無料のカードでも割引が受けられる。それゆえ寺尾氏も、「顧客の負担が一切なく、申し込むだけで加入できる」ことをメリットとしてアピールするなど、ワイモバイルを軸にPayPayカードの獲得につなげたい様子を見せる。
とはいえ、携帯各社が経済圏ビジネスに力を入れるのは、本業である携帯電話料金で売上を高めるのが難しくなっているからでもある。その原因は市場の飽和に加えもう1つ、菅義偉前政権下で進められた政治主導による携帯電話料金引き下げ以降、国が携帯電話料金に対して非常に厳しい目を光らせているからこそだろう。
だが一方で、ここ最近は円安や、それを機としたエネルギー価格の高騰などによってあらゆるものの値段が上がっており、基地局などで多くの電力を消費する携帯各社も、電気代の値上げが業績に影響を与えるようになってきた。大幅な値上げトレンドにありながら、携帯電話料金だけが国による補助もなく、値下げを続けることが求められる状況には首をかしげざるを得ない。
筆者は正直、一連の携帯料金引き下げで日本の携帯電話料金が下がり過ぎたと思っているし、それが5Gの整備遅れにつながるなど、日本のモバイルネットワークに悪影響を与えているとも感じている。
それだけに、今回のワイモバイルの料金プランからは、円安などによるコストの高まりで携帯各社が料金を上げたいが、思うように上げられず複雑化が進むなど無理が出ている印象を受けてしまう。行政側には、適正な水準まで料金を上げることを容認する姿勢が求められるのではないだろうか。
■新料金プラン「シンプル2」。新たに加わったいくつかの変更点
その1つは通信量の増量だ。従来のシンプルはSプランが3GB、Mプランが15GB、Lプランが25GBであったのが、シンプル2ではそれぞれ4GB、20GB、30GBへと増量がなされている。
そしてもう1つは、料金の変化だ。月額基本料金はシンプルでSプランが2,178円、Mプランが3,278円、Lプランが4,158円であったのが、シンプル2ではそれぞれ2,365円、4,015円、5,115円と値上がりしており、とりわけM・Lプランの値上げ幅が大きい。
だが、同時に割引も変化しており、新たに「PayPayカード」で料金を支払うことで月額187円の値引きが受けられる「PayPayカード割」が追加されたほか、「SoftBank光」「SoftBank Air」などとのセット契約で適用される「おうち割 光セット(A)」の値引き額が、M・Lプランでは月額1,650円(従来は1,100円)にアップされている。
加えて、月当たりのデータ通信量が1GB以下の場合、Mプランでは1,100円、Lプランでは2,200円の値引きが受けられ、全ての割引を適用すると、やはり割引を適用したSプランの料金(980円)同じ額になる。それでいて通信量が追加されていることから、割引を適用すれば従来と大きく変わらない水準で利用でき、お得感が高いというのがソフトバンク側の説明だ。
ただここで1つ疑問が沸くのが、なぜワイモバイルが現在のタイミングで新料金プランの投入に至ったのか?ということだ。確かに、サブブランドの価格帯を巡る競争は激しく、2023年にはKDDIの「UQ mobile」ブランドが新料金プラン「コミコミプラン」「トクトクプラン」などを投入したほか、従来この価格帯が手薄だったNTTドコモも新料金プラン「irumo」を提供するなど、対抗策を打ち出している。
だが、UQ mobileの新プランやirumoも、発表直後から「分かりにくい」との声が多く、高い評価を得られたとは言い難い。一方でワイモバイルの料金プランは、S・M・Lという3段階の分かりやすい料金プランを維持しており、利用者からの評価も高く、2022年度末時点で契約数が1,000万を超えるなど好調だ。それだけになぜ、料金プランに手を加える必要があったのか?という点が気になるところだ。
ソフトバンクの料金を統括している専務執行役員の寺尾洋幸氏はその理由について、データ通信量の増加を挙げている。寺尾氏によると、1人当たりのトラフィックが2023年度は2020年度の倍以上に急増しており、「今のS・M・Lプランでは少し窮屈になってきた」ということから、通信量を増やした新プランを投入するに至ったと説明している。
確かに、NTTドコモ回線が都市部で「つながらない」という声が急増したように、ここ最近携帯各社の想定を超えたトラフィックの増加が起きている印象が強いことから、通信量を増やすこと自体は理解できる。だが、新たな料金プランで基本料金が値上がりしていることや、PayPayカードに紐づく割引が増えるなど、割引が複雑化していることに対しては、疑問の声が起きているのも確かだ。
寺尾氏は基本料金の値上げについて、「我々は通信のインフラを支えないといけないことが最大の責務だと思っている。ただ安くすればいい、破壊的に安くすればいい、壊して再投資できない状態になって本当にいいのか?、ということだと思う」と答えている。通信や販売店などのインフラ維持に加え、5Gへの投資もしていかなければならない現状、通信量を増やしながらも十分な収益性を確保して事業を継続していくため、今回のような仕組みを取るに至ったといえる。
そしてもう1つ、寺尾氏が重視したのが「経済圏」であるという。携帯4社は現在、通信サービスやポイントなどを軸として自社系列のサービス利用を促進し、ユーザーを囲い込むいわゆる“経済圏ビジネス”に力を入れている。
実は、ワイモバイルが新料金プランを発表した同日には、KDDIがauブランドの新料金プラン「auマネ活プラン」を発表している。その内容を見ると、KDDI系列のクレジットカードや銀行などを契約し、支払先に指定することで値引きが受けられるなど、経済圏ビジネスに非常に重点を置いた内容となっていたことから、いかに携帯電話会社にとって経済圏ビジネスが重要かという様子を見て取ることができる。
それだけにソフトバンクとしても、ワイモバイルブランドでも経済圏ビジネスを一層強化する必要が出てきたといえ、PayPayカード割が新たに追加されたことや、M・Lプランでおうち割 光セット(A)の値引き額が強化されたことなどが、その傾向を象徴している。
とりわけPayPayカードに関しては、運営会社のPayPayカード株式会社(ワイジェイカード株式会社)がPayPay株式会社の傘下となって以降、契約拡大を強化しており、PayPayカード割は手数料無料のカードでも割引が受けられる。それゆえ寺尾氏も、「顧客の負担が一切なく、申し込むだけで加入できる」ことをメリットとしてアピールするなど、ワイモバイルを軸にPayPayカードの獲得につなげたい様子を見せる。
とはいえ、携帯各社が経済圏ビジネスに力を入れるのは、本業である携帯電話料金で売上を高めるのが難しくなっているからでもある。その原因は市場の飽和に加えもう1つ、菅義偉前政権下で進められた政治主導による携帯電話料金引き下げ以降、国が携帯電話料金に対して非常に厳しい目を光らせているからこそだろう。
だが一方で、ここ最近は円安や、それを機としたエネルギー価格の高騰などによってあらゆるものの値段が上がっており、基地局などで多くの電力を消費する携帯各社も、電気代の値上げが業績に影響を与えるようになってきた。大幅な値上げトレンドにありながら、携帯電話料金だけが国による補助もなく、値下げを続けることが求められる状況には首をかしげざるを得ない。
筆者は正直、一連の携帯料金引き下げで日本の携帯電話料金が下がり過ぎたと思っているし、それが5Gの整備遅れにつながるなど、日本のモバイルネットワークに悪影響を与えているとも感じている。
それだけに、今回のワイモバイルの料金プランからは、円安などによるコストの高まりで携帯各社が料金を上げたいが、思うように上げられず複雑化が進むなど無理が出ている印象を受けてしまう。行政側には、適正な水準まで料金を上げることを容認する姿勢が求められるのではないだろうか。