公開日 2010/03/29 10:20
JVCの3Dイメージングプロセッサー「IF-2D3D1」を山之内正氏がみた − ビクター開発者にきく本機の導入メリット
独自技術による高画質リアルタイム2D-3D変換の実力
ビクター・JVCは今春、独自のリアルタイム2D-3D変換技術を搭載した業務用3Dイメージプロセッサ「IF-2D3D1」を世に送り出した。3D映像の制作現場に数多くの革新をもたらす可能性を秘めた本機の実力を、山之内正氏がレポートする。
家庭用3Dテレビの成否はソフトの供給に左右される。どんなに進化したハードウェアが登場しても、十分なコンテンツがなければその性能を発揮できないのは自明の理だ。放送とパッケージ両面からの大量のコンテンツ供給がなければ、デジタルハイビジョンの普及もあり得なかったであろう。
同じハイビジョンでも3Dの場合はコンテンツ製作の難易度は格段に高くなる。撮影から編集まで、すべてのプロセスにおいて多様な機材と技術が必要になり、製作コストは2D映像とは比較にならないほど大きい。3Dコンテンツを潤沢に供給するためには、なんらかの手段による低価格化・効率化が不可欠なのだ。
ビクターの「IF-2D3D1」は、そんな現状を打破するために開発された業務用の3Dイメージングプロセッサである。既存の2D映像をリアルタイムで3D変換する機能を核に、3Dの撮影・編集作業を支援する機能を網羅しており、3D映像製作現場でいますぐ活用できる機能を数多く搭載する。今年1月初旬の発表後、米CESへの出展と同時に注目を集め、映像制作の現場等から多くの問い合わせが寄せられる中、このほど日本と欧米の両市場へ出荷が始まったという。
2D-3D変換機能は、ビクターが開発した独自の変換アルゴリズムを採用し、視差量を変更する「Parallax」と、立体感の強さをコントロールする「Intensity」、「Sub-intensity」の調整機構を積む。後者は、映像の奥行き感を演出する画面全体の湾曲度とオブジェクト毎の凹凸感を調整するもので、被写体の種類や各シーンの特徴に合わせて60ステップで調整が可能だ。
2D-3D変換機能によって実現する立体効果は、自然な立体感と遠近感の再現を重視しているという印象を受けた。そのため、強度をかなり強めに設定してもほとんど破綻は見られないし、コンテンツの種類やシーンごとに最適な調整を追い込む作業にも無理がない。これは本機の大きなメリットといえそうだ。
実際の操作は非常に簡単で、本体の2D-3Dボタンを押すだけで3D変換画像が得られ、出力はL/R独立のほか、計4種類の3Dフォーマット(ライン・バイ・ライン、サイド・バイ・サイド・ハーフ、アバーヴ・ビロウ、チェッカーボード)から選ぶことができる。
2D-3D変換機能以外の注目機能として、2台のビデオカメラを用いた3D撮影時または編集時に役立つ「3Dミキサー」機能がある。複数の機能を積むが、特に2台のカメラの位置合わせや、ホワイトバランスや露出を揃えるときに役立つスプリット機能は使用頻度が高そうだ。もちろんスプリット位置は任意に調整ができる。視差を最適化するために片方のカメラを倒立で使用する場合は、映像を回転させつつ同期を揃えるローテーション機能が有効だ。さらに、信号波形の比較用に波形モニターとベクトルスコープを画面上に表示することもでき、左右の映像の信号レベルでの確認が容易に行える。
なお、3Dメガネを外した状態で視差を確認するための表示モードとして、赤と青の映像で出力するアナグリフモードのほか、LとRの画像を0.5秒単位で交互に出力するLRシーケンシャル表示も装備するが、後者は3D映像製作者の要望に応えて搭載したという点が興味深い。熟練した3Dクリエーターであれば、交互に出力される映像を見て立体効果を判断できるのだという。
3D映像の需要は今後急速に高まることが予想されるが、3Dコンテンツを製作する環境の整備にはまだまだ時間がかかるというのが現実だろう。それだけに、本機のように手軽に使えるイメージプロセッサーが登場する意義は非常に大きい。映画、ゲーム、放送という具合に様々な分野で3D映像の需要が高まるなか、本機が活躍する場面は飛躍的に増える可能性がある。
2D-3D変換機能については、家庭用3Dテレビへの搭載という大きな可能性が広がっていることにも注目しておきたい。すでに一部メーカーの3Dテレビは同様な機能を内蔵することが明らかになっているが、どこまで自然な立体効果が得られるかは未知数であり、各社の試作段階の映像を見ていても、まだまだ進化の余地が大きいと感じることが多い。
一方、限られたサンプル映像での確認ではあるが、ビクターが完成させた独自の3D変換アルゴリズムには自然な遠近感という点で一歩抜きん出た良さがあり、業務用として通用する精度の高さもそなわっている。本機の変換機能はフレームメモリーを必要としない方式のため、テレビなど民生機への導入も比較的容易に実現できるという。本格的な3Dコンテンツの製作環境が浸透するまでの期間は、完成度の高い2D-3D変換機能が重要な役割を果たすことは明らかなので、今後の展開が大いに楽しみである。
【取材協力】
※写真左から
・日本ビクター(株)ビジネス・ソリューション事業部 プレゼンテーションビジネスユニット 企画グループ 主査 鶴岡 広国氏
・日本ビクター(株)ビジネス・ソリューション事業部 プレゼンテーションビジネスユニット長 弘田 和政氏
・JVC・ケンウッドホールディングス(株)統合技術戦略推進部 コア技術開発センター 第六部 統括部長 長谷川 順一氏
・日本ビクター(株)事業開発部 新事業開発室 次世代映像事業グループ シニアスタッフ 関家 康文氏
【製品に関する問い合わせ先】
日本ビクター(株)ビジネス・ソリューション事業部
プレゼンテーションビジネスユニット マーケティンググループ 放送チーム
TEL/045-450-2648
家庭用3Dテレビの成否はソフトの供給に左右される。どんなに進化したハードウェアが登場しても、十分なコンテンツがなければその性能を発揮できないのは自明の理だ。放送とパッケージ両面からの大量のコンテンツ供給がなければ、デジタルハイビジョンの普及もあり得なかったであろう。
同じハイビジョンでも3Dの場合はコンテンツ製作の難易度は格段に高くなる。撮影から編集まで、すべてのプロセスにおいて多様な機材と技術が必要になり、製作コストは2D映像とは比較にならないほど大きい。3Dコンテンツを潤沢に供給するためには、なんらかの手段による低価格化・効率化が不可欠なのだ。
ビクターの「IF-2D3D1」は、そんな現状を打破するために開発された業務用の3Dイメージングプロセッサである。既存の2D映像をリアルタイムで3D変換する機能を核に、3Dの撮影・編集作業を支援する機能を網羅しており、3D映像製作現場でいますぐ活用できる機能を数多く搭載する。今年1月初旬の発表後、米CESへの出展と同時に注目を集め、映像制作の現場等から多くの問い合わせが寄せられる中、このほど日本と欧米の両市場へ出荷が始まったという。
2D-3D変換機能は、ビクターが開発した独自の変換アルゴリズムを採用し、視差量を変更する「Parallax」と、立体感の強さをコントロールする「Intensity」、「Sub-intensity」の調整機構を積む。後者は、映像の奥行き感を演出する画面全体の湾曲度とオブジェクト毎の凹凸感を調整するもので、被写体の種類や各シーンの特徴に合わせて60ステップで調整が可能だ。
2D-3D変換機能によって実現する立体効果は、自然な立体感と遠近感の再現を重視しているという印象を受けた。そのため、強度をかなり強めに設定してもほとんど破綻は見られないし、コンテンツの種類やシーンごとに最適な調整を追い込む作業にも無理がない。これは本機の大きなメリットといえそうだ。
実際の操作は非常に簡単で、本体の2D-3Dボタンを押すだけで3D変換画像が得られ、出力はL/R独立のほか、計4種類の3Dフォーマット(ライン・バイ・ライン、サイド・バイ・サイド・ハーフ、アバーヴ・ビロウ、チェッカーボード)から選ぶことができる。
2D-3D変換機能以外の注目機能として、2台のビデオカメラを用いた3D撮影時または編集時に役立つ「3Dミキサー」機能がある。複数の機能を積むが、特に2台のカメラの位置合わせや、ホワイトバランスや露出を揃えるときに役立つスプリット機能は使用頻度が高そうだ。もちろんスプリット位置は任意に調整ができる。視差を最適化するために片方のカメラを倒立で使用する場合は、映像を回転させつつ同期を揃えるローテーション機能が有効だ。さらに、信号波形の比較用に波形モニターとベクトルスコープを画面上に表示することもでき、左右の映像の信号レベルでの確認が容易に行える。
なお、3Dメガネを外した状態で視差を確認するための表示モードとして、赤と青の映像で出力するアナグリフモードのほか、LとRの画像を0.5秒単位で交互に出力するLRシーケンシャル表示も装備するが、後者は3D映像製作者の要望に応えて搭載したという点が興味深い。熟練した3Dクリエーターであれば、交互に出力される映像を見て立体効果を判断できるのだという。
3D映像の需要は今後急速に高まることが予想されるが、3Dコンテンツを製作する環境の整備にはまだまだ時間がかかるというのが現実だろう。それだけに、本機のように手軽に使えるイメージプロセッサーが登場する意義は非常に大きい。映画、ゲーム、放送という具合に様々な分野で3D映像の需要が高まるなか、本機が活躍する場面は飛躍的に増える可能性がある。
2D-3D変換機能については、家庭用3Dテレビへの搭載という大きな可能性が広がっていることにも注目しておきたい。すでに一部メーカーの3Dテレビは同様な機能を内蔵することが明らかになっているが、どこまで自然な立体効果が得られるかは未知数であり、各社の試作段階の映像を見ていても、まだまだ進化の余地が大きいと感じることが多い。
一方、限られたサンプル映像での確認ではあるが、ビクターが完成させた独自の3D変換アルゴリズムには自然な遠近感という点で一歩抜きん出た良さがあり、業務用として通用する精度の高さもそなわっている。本機の変換機能はフレームメモリーを必要としない方式のため、テレビなど民生機への導入も比較的容易に実現できるという。本格的な3Dコンテンツの製作環境が浸透するまでの期間は、完成度の高い2D-3D変換機能が重要な役割を果たすことは明らかなので、今後の展開が大いに楽しみである。
【取材協力】
※写真左から
・日本ビクター(株)ビジネス・ソリューション事業部 プレゼンテーションビジネスユニット 企画グループ 主査 鶴岡 広国氏
・日本ビクター(株)ビジネス・ソリューション事業部 プレゼンテーションビジネスユニット長 弘田 和政氏
・JVC・ケンウッドホールディングス(株)統合技術戦略推進部 コア技術開発センター 第六部 統括部長 長谷川 順一氏
・日本ビクター(株)事業開発部 新事業開発室 次世代映像事業グループ シニアスタッフ 関家 康文氏
【製品に関する問い合わせ先】
日本ビクター(株)ビジネス・ソリューション事業部
プレゼンテーションビジネスユニット マーケティンググループ 放送チーム
TEL/045-450-2648