公開日 2010/06/30 13:03
映像のインテリジェンスはどこまで高まったのか? − “LED REGZA”最上位「Z1シリーズ」の画質をチェックした
厳選された高画質LEDパネル搭載「47Z1」を視聴
昨年末に究極のフラグシップモデル“CELL REGZA”を発売後、半年も経たずに東芝の液晶テレビ“REGZA”シリーズが「全機種LED搭載」を実現し、“レグザ第2章”の幕開けを宣言した。フラグシップモデル「Z1」には充実した録画機能やネットワーク機能を持たせ、その高機能をスタンダードモデルの「RE1」や「HE1」にも展開する。今回は最新“LED REGZA”シリーズの中から、最上位「Z1」シリーズの47V型「47Z1」を視聴した。
■厳選された高画質LEDパネルと、その力を最大限に引き出す新エンジンを搭載
東芝のREGZAがLEDパネルを搭載したのは、09年の春夏モデルとして発売された「ZX8000」シリーズからだが、今年の春夏モデルは最上位の「Z1」シリーズだけでなく、「RE1」「HE1」の両スタンダードもLEDパネル搭載となった。3つのシリーズで展開される“LED REGZA”は、全モデルがIPS方式の液晶パネルを搭載している。Z1シリーズは55V/47V/42V/37型と4つのサイズを揃え、全機種が倍速対応のフルHD IPSクリアLEDパネルを搭載する。さらに大型モデルとなる「55Z1」(55V型)、「47Z1」(47V型)の2機種だけが、東芝専用にカスタマイズされたLEDパネルを搭載する。パネルの上層部には黒輝度を高めるために特殊なフィルムを設け、上下方向や斜め位置からの視聴時などにも高精細な映像表示を実現していることも、大型モデルだけの特長だ。クリアパネルの採用はREGZAのZ系シリーズとしては、8000シリーズの頃からスタートしているが、Z1シリーズ搭載のクリアパネルにおいても、室内照明の映り込みを抑え、パネル表面で映像が拡散しにくい特長を継承し、鮮明な描写力を獲得している。
バックライトには白色LEDを採用。エッジライト方式によるエリアコントロール駆動を行うことで、優れた精細感とコントラスト感、さらにはきめの細かい階調表現を可能にしている。Z1シリーズでLEDバックライトのレイアウトにエッジライト方式を採用した理由については、直下型方式よりもディスプレイ部の薄型化が図れ、同時に省エネ性能が高められるメリットを優先したからであるという。
映像エンジンは新開発の「次世代レグザエンジン」を搭載。Z1シリーズはコアチップをダブルで持たせた「次世代レグザエンジン Duo」を採用しており、2つのコアチップのうち1基を画質処理などの基本処理に特化させることで、一層の高画質化と操作の高速化を合わせて実現している。また、自動画質調整機能は視聴環境の色温度を感知するセンサーを加えた「おまかせドンピシャ高画質3」を搭載している。
細かい使い勝手の部分では、メインCPUのクロック周波数が333MHzから533MHzにクロックアップされたことで、EPGの表示スピードが従来モデルより約1秒短縮されるなど、高速化が図られている。またNAND型フラッシュメモリの読み出し速度も約2倍に向上し、電源オン時の起動時間もより素早くなった。実機で試してみた感触としては、電源投入後の画面表示、チャンネル切り替え、EPGの操作ともに、確かに従来のデジタルテレビよりもレスポンスがよく、とても快適だ。使い勝手の面では、「ミニ番組表」の呼び出し時に、Z9000シリーズまでは番組表画面が表示される前にいったん黒画面(ミュート)が挟まっていたのだが、Z1シリーズではこれが改善され、番組を見ながらの番組選局がより快適に行えるようになっている。
■カスタマイズ性能が高められた「映像モード」設定
REGZAシリーズの特徴である超解像技術は“第4世代”にアップデートされ、最上位機種の“CELL REGZA”「55X1」が初めて採用した「自己合同性超解像技術」がZ1シリーズの各機種に採用されている。本技術は入力画像のエッジ部周囲にある「似た画像」を抽出し、その画素を画像の位相に合わせて重ね合わせることで新たな画像を生成し、より正確な映像に補正をかけるというものだ。なお、自己合同性超解像は1080p/iの映像処理信号に対しては適用されない。
Z1シリーズではさらに、MPEG-2のデジタル映像に含まれる3つの異なる圧縮方式のフレームを、MPEGデコーダーからの情報を元に解析して、それぞれに最適な超解像処理を行う機能も設けられている。第3世代の超解像技術から採用されている「アニメーション超解像技術」も踏襲されており、入力されたアニメーション映像を自動判別し、アニメ映像にありがちな、輪郭周辺のモスキートノイズやグラデーション部のブロックノイズを低減する最適化処理も行われている。
「47Z1」の映像メニューから、超解像技術(レゾリューションプラス)の設定項目を見てみよう。「映像設定」から、「お好み調整」へと進み「詳細調整」の中に「レゾリューションプラス設定」のメニューが設けられている。「オート」と「オフ」の選択ができるほか、「オート」選択時には効果のレベルが「-2/-1/0/1/2」の5段階で切り替えられる。この辺りの仕様はZ9000シリーズと同じだ。なお、「詳細調整」では「LEDエリアコントロール設定」の項目が設けられており、LEDバックライトの効果設定も行える。本項目は「おまかせ/強/中/弱/オフ」から選ぶことができ、「強」に設定すると映像全体の明るさが抑えられ、黒色の引き締まったトーンに整えられる傾向と感じた。
「映像モード」のコンセプトもZ1シリーズで新たに変更された。Z9000シリーズでは「おまかせ/あざやか/標準/映画/テレビプロ/映画プロ/ゲーム/PCファイン/メモリー」の項目が設けられていたが、Z1シリーズでは「おまかせ/あざやか/標準/テレビプロ/映画プロ/ゲーム/PC」と、項目数がシンプルになり、「各映像モードごと」にユーザーがカスタマイズした調整値を記録しておけるようになった。例えば「おまかせ」の映像を設定値から調整して保存しておき、「あざやか」「映画プロ」「ゲーム」とそれぞれに同様の設定値保存ができる。カスタマイズを行うと、モード表示が「おまかせ:メモリー」等になり、設定値は電源OFF後も保持される。調整値の解除は映像モードごとに「初期設定値に戻す」だけでOKだ。
さらに本体に設けられた「入力端子ごと」に各映像モードのユーザーカスタマイズ値が記録できる。この機能は、1台のレグザに複数台の再生機器を接続している場合、例えば「HDMI1」につないでいるBDレコーダーは「おまかせ:メモリー」に、「HDMI2」につないでいるPS3は「ゲーム:メモリー」にといった具合に、それぞれに最適化した値を保っておいて、いつでもベストな映像でコンテンツが楽しめるので、上手く使いこなせばとても重宝するはずだ。
■「47Z1」の画質をチェックした
それでは「47Z1」の画質を見ていこう。プレーヤーのリファレンスには東芝のBDレコーダー「D-B1005K」(関連ニュース)を使った。なお、どのコンテンツも視聴時の映像設定は共通とし、映像モードは「おまかせ」、アニメモードは「オート」に固定。LEDエリアコントロール設定も「おまかせ」とした。また視聴室内は外光が射し込まない環境だったため、“おまかせドンピシャ高画質”の設定は、照明の色を「おまかせ」、外光設定は「外光なし」にした。
はじめに地上デジタル放送のニュース番組を視聴した。天気予報の映像では、女性アナウンサーの肌の質感を非常にきめ細かくクリアに再現する。アナウンサーの背景にお天気アイコン等のCGが合成される映像でレゾリューションプラスの効果を見比べてみたが、「+2」の範囲ではCGアイコンの輪郭が僅かにザワつく印象があり、「-2」ではアナウンサーの肌や服の質感がやや平坦になってしまう感触だったので、「0」以外の数値に調整するのであれば「±1」くらいで、全体がスッキリと引き締まった感じになるのではと思う。
BDタイトルは、7月14日に発売を控えるブルーレイ版「風の谷のナウシカ」(ウォルト・ディズニー・ジャパン)のプルーフ版を借りて視聴した。
色彩の表現が全体的にとてもナチュラルで落ち着きがあり、物語の舞台に自然と没入して行ける。冒頭、腐海の森の中、オウムの抜け殻の上でナウシカが微睡むシーンでは、上空から降り積もってくる胞子の白い綿雪が淡く煌めきながら降り積もっていく。白色のピークから周囲への階調表現がとても繊細だ。砂漠でのユパとの再会シーンでは、キャラクターの肌や砂漠の表面の質感をザラつかせることなく、きめ細かく整えて映し出す。
物語の後半、「腐海の底」でアスベルと出会うシーンでは、ナウシカたちの足下に流れる清流の映像も、輪郭がザワつくことなく水の動きを自然に再現する。腐海の森高くから漏れてくる陽射しと、その奥に深く広がる暗闇とのコントラストは、とても滑らかなグラデーションで描ききる。石化して砕けた腐海の樹木の粉が、ナウシカの頭上に振ってくるシーンでは、暗闇の中に浮かぶ細やかな粒子を透明感豊かに表現する。シーンのひとつひとつを、一枚の風景画としてじっくりと眺めていたくなる。腐海の暗闇の奥底に描かれている風景も、“LED REGZA”では黒つぶれすることなくディティールを逃さず再現する。これまでのテレビで味わえなかったインテリジェントな映像がそこにある。
続いて映画「パリ、テキサス」(The Criterion Collection)のブルーレイを視聴した。冒頭、主人公トラヴィスが砂漠をさまようシーンでは、“ピーカン”の青空とトラヴィスが被る赤い帽子の鮮烈な色彩を自然に、かつ芳醇な深みのある色合いで再現する。トラヴィスが身にまとうスーツの、ヘタった生地の質感がよくわかる。
ロサンゼルス郊外に暮らす弟ウォルト宅にて、トラヴィスが双眼鏡で遠くの景色を望むシーン。アメリカの広大なスケールの景色に圧倒される映像だが、冒頭の砂漠の青空とは打って変わった、涼しげな空気感が漂う青空が“LED REGZA”の画面いっぱいに広がる。遠くの風景のボケ味も絶妙だ。天と地の“分かれ目”が陽光で白飛びしてしまうことなく、ピーク部分から穏やかな階調を保ったまま広がり、大地と空とそれぞれの景色を描いていく。映画の舞台に突然放り込まれてしまったような、驚くほどにリアリティの高い映像だ。
物語の後半、トラヴィスが別れた妻・ジェーンとピープ・ショウクラブのテレホンボックスで再開するシーン。マジックミラー越しに交わされる二人の長いモノローグが展開される。物語の中でも特に重要な場面だ。明るい部屋の側に立つジェーンと、暗いテレホンボックスで語りかけるトラヴィスが同じフレームに映し出される映像でも、明暗のコントラストを巧みに描き分ける。役者の顔のクローズアップも多用される場面だが、瞳や顔の皺の動きで繊細な感情を演じる役者の表情を“LED REGZA”は見事に描き分け、登場人物たちの“心のひだ”までもその画面に映し出す。本作を劇場で見たときよりも、さらに強く感情を揺さぶられてしまった。
マイケル・ジャクソンの「This is it」ブルーレイ版(ソニー・ピクチャーズ)で、音楽ソフトの再生をチェックした。インプレッションをご報告する前に、Z1シリーズが音響面でも非常にこだわったテレビであることについて、説明を加えておきたい。
Z1シリーズは本体にトゥイーターとウーファーのスピーカーユニットをそれぞれ独立したかたちで配置している。大型モデルの55V型/47V型では、さらに各々を独立のアンプで駆動するマルチアンプシステムを採り入れ、“CELL REGZA”に迫る高音質を獲得させている。
高域用にはネオジウムマグネット搭載の20mm口径ソフトドーム・トゥイーターを配置し、レスポンス性能の向上を実現。ウーファーはCCAW(カッパークラッドアルミワイヤー)をボイスコイルに採用し、振動系のレスポンスを向上させている。またフィルター部には、クロスオーバーポイントでのフラットな周波数特性を備え、スタジオモニター用スピーカーにも多くの採用実績を持つ「リンクウィッツ・ライリー型フィルター」が用いられている。
「This is it」はライブの“リハーサル”が舞台の作品だが、“LED REGZA”の画面に映し出される映像からは、観客のいない広々としたステージに満ちるキリッと引き締まった緊張感が伝わってくるようだ。ステージを照らし出すスポットライトのひんやりとした明かりが、ステージに漂うスモークの粒を細やかに浮かび上がらせる。
「Can't stop loving you」では、マイケルとバックシンガーのジュティとの掛け合いにワクワクとさせられる。ドラムスのハイハットの音は“シャキ”っと心地よく立ち上がり、高域の音はとてもよく伸びる。ボーカルの声にはしっかりとしたハリと、包み込まれるような温かさがある。マイケルの歌声をなぞりながら聴いていると、リハーサルなので少し抜いて歌っているパートと、フルボイスで熱唱しているパートとの違いが、本機のスピーカーではハッキリと伝わってくる。曲のラスト、バンドの演奏が止んで二人のアドリブによる掛け合いが続く場面では、芯のしっかりとした歌声のパワーが感じられて、気持ちがいっそう高ぶってくる。
この曲の間、マイケルは黒いジャケットに赤いシャツの出で立ちでステージに立っているが、衣装にちりばめられたスパンコールが、青から紫、そしてピンクへと移ろって行く照明に照らされて煌めく映像にうっとりとしてしまう。まるで至近距離で本番の「This is it」のステージを独り占めしているような体験だ。映画館で「This is it」を見た時とは、またひと味違った興奮が“LED REGZA”で味わえた。
■SDメモリーカードの動画や静止画も手軽に再生できて便利
最後にビデオカメラで撮影した映像を“LED REGZA”でチェックした。キヤノンのフルHD AVCHD映像の撮影が可能な「iVIS HF11」を使い、最高約24Mbpsで記録できるモードで撮影した。この時に撮影した映像でレゾリューションプラスの調整を行ってみたので、その効果を紹介しておこう。
SDメモリーカードに記録した映像は、テレビの本体に搭載されたスロットに挿入して、すぐに再生が楽しめるので便利だ。本体にSDメモリーカードを挿すと「オートスタートメニュー」が立ち上がり、自動的に「動画・写真・音楽」の再生ナビがポップアップする。もちろんAVCHDハイビジョン動画のダイレクト再生にも対応している。我が家は私も妻も写真が好きで、ふだんはデジタルカメラで撮った写真を主にパソコンで見て楽しんでいるのだが、こんな風に大きな画面のテレビで気軽に見ることができたら、これは意外に、というかひじょうに楽しめると思う。なお、SDメモリーカードスロットを本体に搭載しているのは最上位のZ1シリーズだけであり、外付HDDに録画したワンセグ番組をSDメモリーカードにダビングして、ケータイやSDメモリーカードのコンテンツ再生に対応するポータブルDVDプレーヤーなどを使って、外出先で楽しむといった使い方もできる。
Z1シリーズはエッジライト方式のLEDパネルを搭載したことで、従来モデルよりもさらに薄く、シンプルなデザインに仕上げられている。実物のテレビを目にすると「これこそが薄型テレビ」と実感させられるような、スリムできれいなシルエットだ。Z1シリーズはベゼルがブラックのアルミヘアライン調に仕上げられているので質感も高い。「うちのリビングに入れてみたらどうだろう」と想像力もたくましくなる。視聴の際、テレビをラックにセッティングしたときに、とても軽くて運搬が楽だったこともポイントが高かった。“LED REGZA”はまた、従来の蛍光管を使用するテレビよりも発光効率に優れ、消費電力が低いために省エネ性能も高いというメリットがある。画質にもたらされる恩恵だけでなく、省エネ面での進化も毎日使う家電であるテレビにとってはとても大事なことだ。“LED REGZA” Z1シリーズは所有するオーナーに、色んな満足感をもたらしてくれるテレビであると実感した。
■厳選された高画質LEDパネルと、その力を最大限に引き出す新エンジンを搭載
東芝のREGZAがLEDパネルを搭載したのは、09年の春夏モデルとして発売された「ZX8000」シリーズからだが、今年の春夏モデルは最上位の「Z1」シリーズだけでなく、「RE1」「HE1」の両スタンダードもLEDパネル搭載となった。3つのシリーズで展開される“LED REGZA”は、全モデルがIPS方式の液晶パネルを搭載している。Z1シリーズは55V/47V/42V/37型と4つのサイズを揃え、全機種が倍速対応のフルHD IPSクリアLEDパネルを搭載する。さらに大型モデルとなる「55Z1」(55V型)、「47Z1」(47V型)の2機種だけが、東芝専用にカスタマイズされたLEDパネルを搭載する。パネルの上層部には黒輝度を高めるために特殊なフィルムを設け、上下方向や斜め位置からの視聴時などにも高精細な映像表示を実現していることも、大型モデルだけの特長だ。クリアパネルの採用はREGZAのZ系シリーズとしては、8000シリーズの頃からスタートしているが、Z1シリーズ搭載のクリアパネルにおいても、室内照明の映り込みを抑え、パネル表面で映像が拡散しにくい特長を継承し、鮮明な描写力を獲得している。
バックライトには白色LEDを採用。エッジライト方式によるエリアコントロール駆動を行うことで、優れた精細感とコントラスト感、さらにはきめの細かい階調表現を可能にしている。Z1シリーズでLEDバックライトのレイアウトにエッジライト方式を採用した理由については、直下型方式よりもディスプレイ部の薄型化が図れ、同時に省エネ性能が高められるメリットを優先したからであるという。
映像エンジンは新開発の「次世代レグザエンジン」を搭載。Z1シリーズはコアチップをダブルで持たせた「次世代レグザエンジン Duo」を採用しており、2つのコアチップのうち1基を画質処理などの基本処理に特化させることで、一層の高画質化と操作の高速化を合わせて実現している。また、自動画質調整機能は視聴環境の色温度を感知するセンサーを加えた「おまかせドンピシャ高画質3」を搭載している。
細かい使い勝手の部分では、メインCPUのクロック周波数が333MHzから533MHzにクロックアップされたことで、EPGの表示スピードが従来モデルより約1秒短縮されるなど、高速化が図られている。またNAND型フラッシュメモリの読み出し速度も約2倍に向上し、電源オン時の起動時間もより素早くなった。実機で試してみた感触としては、電源投入後の画面表示、チャンネル切り替え、EPGの操作ともに、確かに従来のデジタルテレビよりもレスポンスがよく、とても快適だ。使い勝手の面では、「ミニ番組表」の呼び出し時に、Z9000シリーズまでは番組表画面が表示される前にいったん黒画面(ミュート)が挟まっていたのだが、Z1シリーズではこれが改善され、番組を見ながらの番組選局がより快適に行えるようになっている。
■カスタマイズ性能が高められた「映像モード」設定
REGZAシリーズの特徴である超解像技術は“第4世代”にアップデートされ、最上位機種の“CELL REGZA”「55X1」が初めて採用した「自己合同性超解像技術」がZ1シリーズの各機種に採用されている。本技術は入力画像のエッジ部周囲にある「似た画像」を抽出し、その画素を画像の位相に合わせて重ね合わせることで新たな画像を生成し、より正確な映像に補正をかけるというものだ。なお、自己合同性超解像は1080p/iの映像処理信号に対しては適用されない。
Z1シリーズではさらに、MPEG-2のデジタル映像に含まれる3つの異なる圧縮方式のフレームを、MPEGデコーダーからの情報を元に解析して、それぞれに最適な超解像処理を行う機能も設けられている。第3世代の超解像技術から採用されている「アニメーション超解像技術」も踏襲されており、入力されたアニメーション映像を自動判別し、アニメ映像にありがちな、輪郭周辺のモスキートノイズやグラデーション部のブロックノイズを低減する最適化処理も行われている。
「47Z1」の映像メニューから、超解像技術(レゾリューションプラス)の設定項目を見てみよう。「映像設定」から、「お好み調整」へと進み「詳細調整」の中に「レゾリューションプラス設定」のメニューが設けられている。「オート」と「オフ」の選択ができるほか、「オート」選択時には効果のレベルが「-2/-1/0/1/2」の5段階で切り替えられる。この辺りの仕様はZ9000シリーズと同じだ。なお、「詳細調整」では「LEDエリアコントロール設定」の項目が設けられており、LEDバックライトの効果設定も行える。本項目は「おまかせ/強/中/弱/オフ」から選ぶことができ、「強」に設定すると映像全体の明るさが抑えられ、黒色の引き締まったトーンに整えられる傾向と感じた。
「映像モード」のコンセプトもZ1シリーズで新たに変更された。Z9000シリーズでは「おまかせ/あざやか/標準/映画/テレビプロ/映画プロ/ゲーム/PCファイン/メモリー」の項目が設けられていたが、Z1シリーズでは「おまかせ/あざやか/標準/テレビプロ/映画プロ/ゲーム/PC」と、項目数がシンプルになり、「各映像モードごと」にユーザーがカスタマイズした調整値を記録しておけるようになった。例えば「おまかせ」の映像を設定値から調整して保存しておき、「あざやか」「映画プロ」「ゲーム」とそれぞれに同様の設定値保存ができる。カスタマイズを行うと、モード表示が「おまかせ:メモリー」等になり、設定値は電源OFF後も保持される。調整値の解除は映像モードごとに「初期設定値に戻す」だけでOKだ。
さらに本体に設けられた「入力端子ごと」に各映像モードのユーザーカスタマイズ値が記録できる。この機能は、1台のレグザに複数台の再生機器を接続している場合、例えば「HDMI1」につないでいるBDレコーダーは「おまかせ:メモリー」に、「HDMI2」につないでいるPS3は「ゲーム:メモリー」にといった具合に、それぞれに最適化した値を保っておいて、いつでもベストな映像でコンテンツが楽しめるので、上手く使いこなせばとても重宝するはずだ。
■「47Z1」の画質をチェックした
それでは「47Z1」の画質を見ていこう。プレーヤーのリファレンスには東芝のBDレコーダー「D-B1005K」(関連ニュース)を使った。なお、どのコンテンツも視聴時の映像設定は共通とし、映像モードは「おまかせ」、アニメモードは「オート」に固定。LEDエリアコントロール設定も「おまかせ」とした。また視聴室内は外光が射し込まない環境だったため、“おまかせドンピシャ高画質”の設定は、照明の色を「おまかせ」、外光設定は「外光なし」にした。
はじめに地上デジタル放送のニュース番組を視聴した。天気予報の映像では、女性アナウンサーの肌の質感を非常にきめ細かくクリアに再現する。アナウンサーの背景にお天気アイコン等のCGが合成される映像でレゾリューションプラスの効果を見比べてみたが、「+2」の範囲ではCGアイコンの輪郭が僅かにザワつく印象があり、「-2」ではアナウンサーの肌や服の質感がやや平坦になってしまう感触だったので、「0」以外の数値に調整するのであれば「±1」くらいで、全体がスッキリと引き締まった感じになるのではと思う。
BDタイトルは、7月14日に発売を控えるブルーレイ版「風の谷のナウシカ」(ウォルト・ディズニー・ジャパン)のプルーフ版を借りて視聴した。
色彩の表現が全体的にとてもナチュラルで落ち着きがあり、物語の舞台に自然と没入して行ける。冒頭、腐海の森の中、オウムの抜け殻の上でナウシカが微睡むシーンでは、上空から降り積もってくる胞子の白い綿雪が淡く煌めきながら降り積もっていく。白色のピークから周囲への階調表現がとても繊細だ。砂漠でのユパとの再会シーンでは、キャラクターの肌や砂漠の表面の質感をザラつかせることなく、きめ細かく整えて映し出す。
物語の後半、「腐海の底」でアスベルと出会うシーンでは、ナウシカたちの足下に流れる清流の映像も、輪郭がザワつくことなく水の動きを自然に再現する。腐海の森高くから漏れてくる陽射しと、その奥に深く広がる暗闇とのコントラストは、とても滑らかなグラデーションで描ききる。石化して砕けた腐海の樹木の粉が、ナウシカの頭上に振ってくるシーンでは、暗闇の中に浮かぶ細やかな粒子を透明感豊かに表現する。シーンのひとつひとつを、一枚の風景画としてじっくりと眺めていたくなる。腐海の暗闇の奥底に描かれている風景も、“LED REGZA”では黒つぶれすることなくディティールを逃さず再現する。これまでのテレビで味わえなかったインテリジェントな映像がそこにある。
続いて映画「パリ、テキサス」(The Criterion Collection)のブルーレイを視聴した。冒頭、主人公トラヴィスが砂漠をさまようシーンでは、“ピーカン”の青空とトラヴィスが被る赤い帽子の鮮烈な色彩を自然に、かつ芳醇な深みのある色合いで再現する。トラヴィスが身にまとうスーツの、ヘタった生地の質感がよくわかる。
ロサンゼルス郊外に暮らす弟ウォルト宅にて、トラヴィスが双眼鏡で遠くの景色を望むシーン。アメリカの広大なスケールの景色に圧倒される映像だが、冒頭の砂漠の青空とは打って変わった、涼しげな空気感が漂う青空が“LED REGZA”の画面いっぱいに広がる。遠くの風景のボケ味も絶妙だ。天と地の“分かれ目”が陽光で白飛びしてしまうことなく、ピーク部分から穏やかな階調を保ったまま広がり、大地と空とそれぞれの景色を描いていく。映画の舞台に突然放り込まれてしまったような、驚くほどにリアリティの高い映像だ。
物語の後半、トラヴィスが別れた妻・ジェーンとピープ・ショウクラブのテレホンボックスで再開するシーン。マジックミラー越しに交わされる二人の長いモノローグが展開される。物語の中でも特に重要な場面だ。明るい部屋の側に立つジェーンと、暗いテレホンボックスで語りかけるトラヴィスが同じフレームに映し出される映像でも、明暗のコントラストを巧みに描き分ける。役者の顔のクローズアップも多用される場面だが、瞳や顔の皺の動きで繊細な感情を演じる役者の表情を“LED REGZA”は見事に描き分け、登場人物たちの“心のひだ”までもその画面に映し出す。本作を劇場で見たときよりも、さらに強く感情を揺さぶられてしまった。
Z1シリーズは本体にトゥイーターとウーファーのスピーカーユニットをそれぞれ独立したかたちで配置している。大型モデルの55V型/47V型では、さらに各々を独立のアンプで駆動するマルチアンプシステムを採り入れ、“CELL REGZA”に迫る高音質を獲得させている。
高域用にはネオジウムマグネット搭載の20mm口径ソフトドーム・トゥイーターを配置し、レスポンス性能の向上を実現。ウーファーはCCAW(カッパークラッドアルミワイヤー)をボイスコイルに採用し、振動系のレスポンスを向上させている。またフィルター部には、クロスオーバーポイントでのフラットな周波数特性を備え、スタジオモニター用スピーカーにも多くの採用実績を持つ「リンクウィッツ・ライリー型フィルター」が用いられている。
「This is it」はライブの“リハーサル”が舞台の作品だが、“LED REGZA”の画面に映し出される映像からは、観客のいない広々としたステージに満ちるキリッと引き締まった緊張感が伝わってくるようだ。ステージを照らし出すスポットライトのひんやりとした明かりが、ステージに漂うスモークの粒を細やかに浮かび上がらせる。
「Can't stop loving you」では、マイケルとバックシンガーのジュティとの掛け合いにワクワクとさせられる。ドラムスのハイハットの音は“シャキ”っと心地よく立ち上がり、高域の音はとてもよく伸びる。ボーカルの声にはしっかりとしたハリと、包み込まれるような温かさがある。マイケルの歌声をなぞりながら聴いていると、リハーサルなので少し抜いて歌っているパートと、フルボイスで熱唱しているパートとの違いが、本機のスピーカーではハッキリと伝わってくる。曲のラスト、バンドの演奏が止んで二人のアドリブによる掛け合いが続く場面では、芯のしっかりとした歌声のパワーが感じられて、気持ちがいっそう高ぶってくる。
この曲の間、マイケルは黒いジャケットに赤いシャツの出で立ちでステージに立っているが、衣装にちりばめられたスパンコールが、青から紫、そしてピンクへと移ろって行く照明に照らされて煌めく映像にうっとりとしてしまう。まるで至近距離で本番の「This is it」のステージを独り占めしているような体験だ。映画館で「This is it」を見た時とは、またひと味違った興奮が“LED REGZA”で味わえた。
■SDメモリーカードの動画や静止画も手軽に再生できて便利
最後にビデオカメラで撮影した映像を“LED REGZA”でチェックした。キヤノンのフルHD AVCHD映像の撮影が可能な「iVIS HF11」を使い、最高約24Mbpsで記録できるモードで撮影した。この時に撮影した映像でレゾリューションプラスの調整を行ってみたので、その効果を紹介しておこう。
SDメモリーカードに記録した映像は、テレビの本体に搭載されたスロットに挿入して、すぐに再生が楽しめるので便利だ。本体にSDメモリーカードを挿すと「オートスタートメニュー」が立ち上がり、自動的に「動画・写真・音楽」の再生ナビがポップアップする。もちろんAVCHDハイビジョン動画のダイレクト再生にも対応している。我が家は私も妻も写真が好きで、ふだんはデジタルカメラで撮った写真を主にパソコンで見て楽しんでいるのだが、こんな風に大きな画面のテレビで気軽に見ることができたら、これは意外に、というかひじょうに楽しめると思う。なお、SDメモリーカードスロットを本体に搭載しているのは最上位のZ1シリーズだけであり、外付HDDに録画したワンセグ番組をSDメモリーカードにダビングして、ケータイやSDメモリーカードのコンテンツ再生に対応するポータブルDVDプレーヤーなどを使って、外出先で楽しむといった使い方もできる。
Z1シリーズはエッジライト方式のLEDパネルを搭載したことで、従来モデルよりもさらに薄く、シンプルなデザインに仕上げられている。実物のテレビを目にすると「これこそが薄型テレビ」と実感させられるような、スリムできれいなシルエットだ。Z1シリーズはベゼルがブラックのアルミヘアライン調に仕上げられているので質感も高い。「うちのリビングに入れてみたらどうだろう」と想像力もたくましくなる。視聴の際、テレビをラックにセッティングしたときに、とても軽くて運搬が楽だったこともポイントが高かった。“LED REGZA”はまた、従来の蛍光管を使用するテレビよりも発光効率に優れ、消費電力が低いために省エネ性能も高いというメリットがある。画質にもたらされる恩恵だけでなく、省エネ面での進化も毎日使う家電であるテレビにとってはとても大事なことだ。“LED REGZA” Z1シリーズは所有するオーナーに、色んな満足感をもたらしてくれるテレビであると実感した。