公開日 2011/06/20 09:59
折原一也が見た新“DIGA” − DMR-BZT900が「プレミアム」の理由
VGP2011SUMMER 総合金賞受賞
「原信号忠実再生」の思想に基づく論理的な性能向上。パナソニックが作り上げたデジタル技術のアドバンテージが、ビジュアルグランプリ総合金賞を受賞したDMR-BZT900の性能に反映されている。改めて同社の独創性を探求してみることにしよう。
■「プレミアム」と呼ぶにふさわしい仕様を実現
「世界初」の4番組同時録画に対応(スカパー!HD録画分を含む)したパナソニックのDIGA BZTシリーズ。HDD容量別にBZT900/800/700/600と4機種をラインナップするが、中でも最上位のDMR-BZT900(以下BZT900)は機能面の特徴に加えて、DIGA開発陣が積み上げてきた高画質・高音質技術が数多く盛り込まれている。シリーズ中の他モデルとは一線を画す、まさに「プレミアム」と呼ぶにふさわしいモデルだ。
BZT900の高画質・高音質の贅沢な設計は凄まじい。2D画質の秀逸さもさることながら、『アバター』を観ると分かるように、3Dでも他機では再現し得ない物体表面の質感・微細情報を「目が冴える」ほどに表現する。
音質面でもS/Nを重視したキレと空間再現に優れたサウンドが魅力。「新・真空管サウンド」のようなアナログテイストのサウンドを再現しようという旺盛なチャレンジ心も非常にユニーク。専用機以上のクオリティを持つBDレコーダーと言っても良い。
本機が非常に高い評価を得ている理由は、ハードウェア設計・ソフトウェア設計の両方を高レベルで拮抗させ、進化を実現してきたDIGA開発陣の努力抜きにはなし得ない。そのバックボーンには、「原信号を忠実再生する」という極めてオーソドックスかつもっとも重要な開発思想がある。
例えば、本機が実現する圧倒的な高画質映像は、独自LSI「UniPhier(ユニフィエ)」に起因する部分が非常に大きい。「原画忠実再生」というポリシーは、UniPhierで信号処理を一元化するDIGAだからこそ実現可能となる。
本機の映像処理プロセスを見てみよう。ここでは、デコード、i/p変換、クロマアップサンプリング等を1チップで正確に行い、ビット丸めのない状態で一体化して行っているのが分かる。
BDディスクから読み出したデータをデコードし、得られた4:2:0フォーマットの映像信号を直接i/p変換し、さらにプログレッシブ化された4:2:0信号に対してマルチタップのクロマアップサンプリング処理を施し、12bitの4:4:4フォーマット化してHDMIから出力する。輝度と色双方の映像信号の帯域と階調特性の限界を追求するプロセスを採用することで、原画が持つ映像情報を最大限に引き出すことができるというわけだ。
驚かされるのは、既に2009年発売のDMR-BW970世代から素材のi/p変換とクロマアップサンプリングを一体化した仕組みを採用しているということだ。2010年モデルでは3D素材に対してもマルチタップのクロマアップサンプリング処理が適用されており、あらゆる映像ソースに対して「原画忠実再生」を追求している。
こういった素材の情報を最大限に引き出す仕組みはパナソニックが開発したもので、処理工程の大部分をUniPhierで行うアドバンテージが発生する。
パナソニック機の仕組みを研究した他メーカーの追従も激しいはずだが、今回のBZT900では先行ランナーならではの余裕が実際の映像からもうかがえた。
■他に例を見ない独自の発想を随所に盛り込む
音質面での設計においてもBZT900のアプローチは非常に正統的。HDMI伝送時の低クロックジッターシステムを確立するため、水晶発振器(VCXO)を独立して設けることでクロックジッターを低減させ、またオーディオクロック・スタビライザーで、AVアンプに伝送するパラメーターを安定化させている。
さらに、高音質コンデンサー、ハイファイオーディオ用オペアンプといった各種高音質パーツを搭載することで、レコーダーでありながら再生専用機以上のサウンドを実現する。
BZT900にのみ採用された「ハイクラリティサウンド」にも触れておこう。この機能を有効にすると、アナログ映像信号の動作を完全に停止(ビデオDACを停止)でき、アナログ映像に起因するHDMI経路へのノイズ発生を根源から絶つことができる。これはUniPhier内部でのブロック個別電源カット機能を応用したもの。HDMI接続されている際に、使用しないアナログビデオ信号を受け持つブロックの電源を落とすことでHDMI伝送の「ピュア度」をキープするというわけだ。一般的なノイズ対策では、既にそこにあるノイズを少なくするという取り組みであるのに対して、本機の場合はノイズ発生源そのものを無くすというアプローチを施している。
BD再生中にHDDやチューナーを停止できるおなじみの「シアターモード」も「ハイクラリティサウンド」同様に、クオリティに悪影響を与える要因を根本から絶つという発想で作られている。
BZT900に盛り込まれた高画質・高音質設計を詳細に見ていくと、他に例を見ない独自発想が随所に盛り込まれていることがよく分かる。UniPhierというLSIの優秀さと、それを生かした「原信号忠実再生」の思想に基づく論理的な性能向上。パナソニック技術陣が作り上げたデジタル技術のアドバンテージが、BZT900の性能を他に比肩するもののないレベルへと引き上げているのだ。
(取材・執筆/折原一也)
■「プレミアム」と呼ぶにふさわしい仕様を実現
「世界初」の4番組同時録画に対応(スカパー!HD録画分を含む)したパナソニックのDIGA BZTシリーズ。HDD容量別にBZT900/800/700/600と4機種をラインナップするが、中でも最上位のDMR-BZT900(以下BZT900)は機能面の特徴に加えて、DIGA開発陣が積み上げてきた高画質・高音質技術が数多く盛り込まれている。シリーズ中の他モデルとは一線を画す、まさに「プレミアム」と呼ぶにふさわしいモデルだ。
BZT900の高画質・高音質の贅沢な設計は凄まじい。2D画質の秀逸さもさることながら、『アバター』を観ると分かるように、3Dでも他機では再現し得ない物体表面の質感・微細情報を「目が冴える」ほどに表現する。
音質面でもS/Nを重視したキレと空間再現に優れたサウンドが魅力。「新・真空管サウンド」のようなアナログテイストのサウンドを再現しようという旺盛なチャレンジ心も非常にユニーク。専用機以上のクオリティを持つBDレコーダーと言っても良い。
本機が非常に高い評価を得ている理由は、ハードウェア設計・ソフトウェア設計の両方を高レベルで拮抗させ、進化を実現してきたDIGA開発陣の努力抜きにはなし得ない。そのバックボーンには、「原信号を忠実再生する」という極めてオーソドックスかつもっとも重要な開発思想がある。
例えば、本機が実現する圧倒的な高画質映像は、独自LSI「UniPhier(ユニフィエ)」に起因する部分が非常に大きい。「原画忠実再生」というポリシーは、UniPhierで信号処理を一元化するDIGAだからこそ実現可能となる。
本機の映像処理プロセスを見てみよう。ここでは、デコード、i/p変換、クロマアップサンプリング等を1チップで正確に行い、ビット丸めのない状態で一体化して行っているのが分かる。
BDディスクから読み出したデータをデコードし、得られた4:2:0フォーマットの映像信号を直接i/p変換し、さらにプログレッシブ化された4:2:0信号に対してマルチタップのクロマアップサンプリング処理を施し、12bitの4:4:4フォーマット化してHDMIから出力する。輝度と色双方の映像信号の帯域と階調特性の限界を追求するプロセスを採用することで、原画が持つ映像情報を最大限に引き出すことができるというわけだ。
驚かされるのは、既に2009年発売のDMR-BW970世代から素材のi/p変換とクロマアップサンプリングを一体化した仕組みを採用しているということだ。2010年モデルでは3D素材に対してもマルチタップのクロマアップサンプリング処理が適用されており、あらゆる映像ソースに対して「原画忠実再生」を追求している。
こういった素材の情報を最大限に引き出す仕組みはパナソニックが開発したもので、処理工程の大部分をUniPhierで行うアドバンテージが発生する。
パナソニック機の仕組みを研究した他メーカーの追従も激しいはずだが、今回のBZT900では先行ランナーならではの余裕が実際の映像からもうかがえた。
■他に例を見ない独自の発想を随所に盛り込む
音質面での設計においてもBZT900のアプローチは非常に正統的。HDMI伝送時の低クロックジッターシステムを確立するため、水晶発振器(VCXO)を独立して設けることでクロックジッターを低減させ、またオーディオクロック・スタビライザーで、AVアンプに伝送するパラメーターを安定化させている。
さらに、高音質コンデンサー、ハイファイオーディオ用オペアンプといった各種高音質パーツを搭載することで、レコーダーでありながら再生専用機以上のサウンドを実現する。
BZT900にのみ採用された「ハイクラリティサウンド」にも触れておこう。この機能を有効にすると、アナログ映像信号の動作を完全に停止(ビデオDACを停止)でき、アナログ映像に起因するHDMI経路へのノイズ発生を根源から絶つことができる。これはUniPhier内部でのブロック個別電源カット機能を応用したもの。HDMI接続されている際に、使用しないアナログビデオ信号を受け持つブロックの電源を落とすことでHDMI伝送の「ピュア度」をキープするというわけだ。一般的なノイズ対策では、既にそこにあるノイズを少なくするという取り組みであるのに対して、本機の場合はノイズ発生源そのものを無くすというアプローチを施している。
BD再生中にHDDやチューナーを停止できるおなじみの「シアターモード」も「ハイクラリティサウンド」同様に、クオリティに悪影響を与える要因を根本から絶つという発想で作られている。
BZT900に盛り込まれた高画質・高音質設計を詳細に見ていくと、他に例を見ない独自発想が随所に盛り込まれていることがよく分かる。UniPhierというLSIの優秀さと、それを生かした「原信号忠実再生」の思想に基づく論理的な性能向上。パナソニック技術陣が作り上げたデジタル技術のアドバンテージが、BZT900の性能を他に比肩するもののないレベルへと引き上げているのだ。
(取材・執筆/折原一也)