公開日 2012/12/10 11:46
オーディオテクニカ「ADシリーズ」連続レビュー − 第3回「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」
オーディオテクニカのオープンエアーダイナミック型ヘッドホン「ADシリーズ」がこの秋、数年ぶりにリニューアル。フラグシップモデルの「ATH-AD2000X」を筆頭に、「ATH-AD1000X」「ATH-AD900X」「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」の5ラインナップを展開している。
今回、野村ケンジ氏が新ADシリーズ5モデルを一斉試聴。各製品のクオリティはもちろんのこと、シリーズ内での位置付けなどトータルでのレビューを3回連続でお届けする。
第3回:「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」
第1回「ATH-AD2000X」「ATH-AD1000X」のレビューはこちら
第2回「ATH-AD900X」のレビューはこちら
その下の2モデル、「ATH-AD700X」と「ATH-AD500X」が、今回のモデルチェンジで最も変化したモデルかもしれない。デザインを見る限り、先代ではこの2つが独立したシリーズであった印象も感じられるが、今回のリニューアルに伴い、「ATH-AD900X」と共通デザインのボディを持つ弟モデルへと、ある意味でのグレードアップを果たしている。
そういった経緯もあってか、ADシリーズのなかでもいちばん見分けが付けにくいのが、「ATH-AD900X」と「ATH-AD700X」だ。外観上の違いは、ハニカムパンチングが施されたアルミ製ハウジングに付けられているバッジと、ジョイント部に書かれた製品型番のカラーリングくらい。また、スペック的な違いもドライバーのディテールがメインで、「ATH-AD900X」は専用設計、「ATH-AD700X」は汎用設計のようだが、53mm口径やCCAWボビン巻きボイスコイルなど、カタログ上のスペックはほぼ同一となっている。
実際のサウンドも、ほとんどキャラクターは変わらない。元気が良く、それでいてニュアンス表現が細やかなリアル系サウンドは同じ。細かく聴き比べれば、解像度感が微妙に異なるという程度でしかない。ただし、その微妙な差が大きく影響するのか、「ATH-AD700X」の方はヴォーカルの表現力はやや減退し、歌声の感動具合はだいぶ弱まる。見方を変えれば、冷静で自然なサウンドともいえる。どちらが好みかは、ユーザー次第だろうし、クオリティにそれほどの差はないので、単純に予算に合わせたチョイスでも、不満に思うことはないだろう。
いっぽう、末弟の「ATH-AD500X」は、外観やスペックから兄弟モデルとの違いを認識しづらいのは同じであるものの、サウンドクオリティやサウンドキャラクターは、すぐ上の2モデルに対してやや傾向が異なっている。まず広がり感が“普通”レベルになり、その分ギュッとつまったサウンドキャラクターに感じられる傾向にあるのだ。もちろん、オープンエアーならではのヌケの良さは持ち合わせている。しかし、空間的な広がりや立体的な音像表現よりも、ヌケの良さや高域の伸びやかさに注力したチューニングに感じられるのだ。これには、解像度感の違いが影響しているものと思われる。その分ガッツのある、元気な音を聴かせてくれるので、これはこれで悪くない。
このように、リニューアルされたADシリーズは、得意の空間表現や広がり感だけでなく、サウンドクオリティについても、さらには装着感に関しても大きな進化を果たした、なかなかに優秀なモデルたちだといえる。好みによってどれがベストかは異なるだろうが、いずれを選んでも十分な満足感を得られるはずだ。
(野村ケンジ)
今回、野村ケンジ氏が新ADシリーズ5モデルを一斉試聴。各製品のクオリティはもちろんのこと、シリーズ内での位置付けなどトータルでのレビューを3回連続でお届けする。
第3回:「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」
第1回「ATH-AD2000X」「ATH-AD1000X」のレビューはこちら
第2回「ATH-AD900X」のレビューはこちら
その下の2モデル、「ATH-AD700X」と「ATH-AD500X」が、今回のモデルチェンジで最も変化したモデルかもしれない。デザインを見る限り、先代ではこの2つが独立したシリーズであった印象も感じられるが、今回のリニューアルに伴い、「ATH-AD900X」と共通デザインのボディを持つ弟モデルへと、ある意味でのグレードアップを果たしている。
そういった経緯もあってか、ADシリーズのなかでもいちばん見分けが付けにくいのが、「ATH-AD900X」と「ATH-AD700X」だ。外観上の違いは、ハニカムパンチングが施されたアルミ製ハウジングに付けられているバッジと、ジョイント部に書かれた製品型番のカラーリングくらい。また、スペック的な違いもドライバーのディテールがメインで、「ATH-AD900X」は専用設計、「ATH-AD700X」は汎用設計のようだが、53mm口径やCCAWボビン巻きボイスコイルなど、カタログ上のスペックはほぼ同一となっている。
実際のサウンドも、ほとんどキャラクターは変わらない。元気が良く、それでいてニュアンス表現が細やかなリアル系サウンドは同じ。細かく聴き比べれば、解像度感が微妙に異なるという程度でしかない。ただし、その微妙な差が大きく影響するのか、「ATH-AD700X」の方はヴォーカルの表現力はやや減退し、歌声の感動具合はだいぶ弱まる。見方を変えれば、冷静で自然なサウンドともいえる。どちらが好みかは、ユーザー次第だろうし、クオリティにそれほどの差はないので、単純に予算に合わせたチョイスでも、不満に思うことはないだろう。
いっぽう、末弟の「ATH-AD500X」は、外観やスペックから兄弟モデルとの違いを認識しづらいのは同じであるものの、サウンドクオリティやサウンドキャラクターは、すぐ上の2モデルに対してやや傾向が異なっている。まず広がり感が“普通”レベルになり、その分ギュッとつまったサウンドキャラクターに感じられる傾向にあるのだ。もちろん、オープンエアーならではのヌケの良さは持ち合わせている。しかし、空間的な広がりや立体的な音像表現よりも、ヌケの良さや高域の伸びやかさに注力したチューニングに感じられるのだ。これには、解像度感の違いが影響しているものと思われる。その分ガッツのある、元気な音を聴かせてくれるので、これはこれで悪くない。
このように、リニューアルされたADシリーズは、得意の空間表現や広がり感だけでなく、サウンドクオリティについても、さらには装着感に関しても大きな進化を果たした、なかなかに優秀なモデルたちだといえる。好みによってどれがベストかは異なるだろうが、いずれを選んでも十分な満足感を得られるはずだ。
(野村ケンジ)