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公開日 2012/12/28 15:03

JVC「DLA-X95R」レビュー − 圧倒的クオリティの画質はまさに“プレミアムモデル”

取材・執筆/山之内 正
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4Kプロジェクターが見せる映像は、いま家庭で味わえる最高画質に相当する。一方、ソフトも映画を中心に画質をきわめた作品が目白押し。ハードウェアとコンテンツが揃って高い境地に達したいまこそ、その成果を存分に味わうべき時なのだ。

DLA-X95RはJVCが4Kプロジェクターの最高峰として投入した最新作で、画素ずらしの手法で3840x2160画素の4K解像度を実現する「e-shift技術」を第2世代に改良、前作のX90Rを上回る精細感を確保したとされる。e-shiftデバイスの平面性を改善したほか、光学系のリファインは多岐にわたる。

DLA-X95R

そのなかにはX75Rと共通する改善も含まれるのだが、ワイヤーグリッドの改良などX95Rだけに適用された技術も少なくない。精度の高いデバイスを抽出して搭載することにより、X75Rの9万対1を大幅に上回る13万対1のネイティブコントラストを達成したことと合わせ、その性能はまさにプレミアムモデルと呼ぶにふさわしいものだ。

BDソフトのフルHD信号から4K信号を生成するスケーリング処理は、4Kプロジェクターの画質を左右する重要な技術だ。今回は、映像信号の1フレーム内で高域成分を検出して4K信号を生成するプロセスを大幅に見直したことが新しい。検出範囲を拡大するとともに、映像の特性に適した処理の適用という一歩踏み込んだ概念を導入したことが注目ポイントで、コンテンツの種類を「フィルム」、「高解像度」、「HD」、「SD」、「ダイナミック」という5つのプロファイルに分けて、それぞれの映像に最適な処理を施す。フィルム撮影の映画は「フィルム」を選び、レンズのボケ味を生かして自然な遠近感を引き出す。一方、最近急速に増えている4K撮影の作品は「高解像度」に切替え、緻密なテクスチャーを最大限に引き出すという具合だ。

「フィルム」など5種類のプロファイルに加え、エンハンス、ダイナミックコントラストなどを100段階で調整できる機能も用意された

さらに、それぞれのプロファイルごとに低域、中域、高域の各帯域で設定値を100段階で調整する機能を併用すると、ボケ味を維持しつつ細部の鮮鋭感を上げるなど、まさに狙い通りの映像に追い込むことができる。前作では背景も含めて一様に細部が強調されていたような場面でも、今回は一気に作品本来のトーンに近付くことが期待できる。

プロファイルや設定値を選ぶ際に役立つのが、新たに導入された解析画面の表示機能だ。周波数成分ごとに色分けし、どの周波数の信号がどの位置にどの程度含まれるのかをリアルタイムで表示するもので、コンテンツの特徴をひと目で把握できる。高域成分が多い作品は「高解像度」を選んでディテールを積極的に引き出すなど、活用方法はいろいろ。マニアックだが頼りになる注目機能だ。

DLA-X95Rで『アラビアのロレンス』を見ると、最先端のレストアの成果に息を呑む。フィルムモードに新設されたカラープロファイル「フィルム3」を選び、4Kプロファイルも「フィルム」を設定。色温度はキセノン1がベストだろう。この設定では砂粒や馬の毛並みのような微細情報を自然な範囲で見せつつ、適度にぼかされた背景との対比で人物と周囲の風景の間の遠近感をなめらかに描写し、気が遠くなるような広大な風景を一切の強調感を排して自然に描き出す。その吸い込まれそうな距離感によってスクリーンの存在が消えたような錯覚に陥り、テレビではまず体験し得ない没入感に浸ることができる。

『ダークナイト・ライジング』は本機の底知れぬディテール情報とコントラスト再現能力を思い知らされる作品だ。映画館で見たときにもここまでの立体感を感じられなかったのは、まず黒の描写の違いに理由がある。シネマモードで見るとバットマンとキャットウーマンのコスチュームの質感が驚くほどリアルで、周囲との対比で二人の存在感が際立つし、ベインとの最初の対決の場面では闇のなかでの二人の動きがまるで3D作品を見ているように立体的で、スクリーンの手前に飛び出してくるような迫力が感じられた。

IMAX撮影シーンに切り替わったときの圧倒的臨場感もこの作品の重要な見どころだ。4Kプロファイルを「高解像度」に設定すると、微細な情報だけを際立たせる効果があり、質感と階調だけで誇張のない立体感を引き出して見せる。見慣れたフルHDの映像とはリアリティの次元が異なり、ネイティブの4K信号をスクリーンに投影していると言われても納得してしまうほどの情報が詰まっている。その緻密さは100インチはもちろんのこと、120インチから140インチあたりまで拡大しても甘さの片鱗すら見せない。

本機にそなわるコントラストの余裕は3D映像の描写にも威力を発揮する。『ヒューゴの不思議な発明』を例にとれば、自動機械の動きとそれを凝視するヒューゴとイザベルの表情を見るだけで、本機の3D表現の奥の深さを理解できるはずだ。いい意味で3D映像を見ていることを忘れさせてくれるような自然な立体感があり、明るさとディテールどちらについても「3Dとしては良好」というエクスキューズが必要ないと感じさせる。

ホームシアター人気が以前ほど盛り上がらないという声をよく聞く。だが、DLA-X95Rが実現する映像世界のインパクトの強さと奥の深さを体験すると、これに刺激を受けない映画ファンはほとんどいないのではないかと思ってしまう。4K技術は2世代目を迎えて確実な進化を遂げ、プロジェクターの価値を着実に高めている。

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