公開日 2013/06/20 11:30
SHURE最上位イヤホンがもたらす“3つの感動” − 「SE846」を大橋伸太郎がレビュー
様々な試聴環境でSE846を使い倒す
SHUREのフラグシップイヤホン「SE846(関連ニュース)」を大橋伸太郎が徹底レビュー。同氏が本機の試聴で感じた“3つの感動”を語る。
■SE846には「感動」がある
SHUREのイヤホン製品フラグシップモデル SE846は、これまでに例のない飛びぬけた製品である。同社の技術が結集し、音質がよいだけではない。SE846には「感動」があるのだ。
SE846を最初に手に取ると、太く質感の高いケーブルに高級機の手応えを感じるが、イヤホンであることに変わりはない。しかし、本体がスケルトンであることに気付くと、そこからもう目が離せなくなる。透明度の高い無着色樹脂の流線型ハウジングの向こうに、SF映画に登場する未来のテクノロジーか、あるいは精密時計のような小宇宙さえ感じさせる技術が詰まっている。
■第一の感動:スケルトン筐体の中に見えるテクノロジーに魅せられる
最初に目が引き付けられるのは、“SHURE”の刻印のあるボックスの下にある金色に輝くデバイスだ。資料の図解を参照すると、これは3ウェイのクロスオーバー。スピーカーシステムでいうネットワークである。次にそれ以外の構成部品に目を凝らすと、主要なドライバーは4つで、それぞれ01〜04のナンバーが刻印されている。ナンバーの周辺にさらに小さな数字があることに気付く。01が15〜200Hz、02は隠れて見えないが03が200Hz〜2kHz、04が2kHz〜20kHzとある。SE846は低域(2基)、中域、高域の各ドライバーが完全に独立した3ウェイ4ドライバー構成なのだ。
ドライバー群とノズル(イヤパッドを被せるステンレス製チューブ)の中間に、金属の板をミルフィーユのように重ね合わせた部品がある。これは、10枚のステンレス板をレーザーで溶接したローパスフィルターだ。10枚のフィルターはそれぞれ異なったパターンの溝が切られ、これが全長4インチ(約10cm)の一種の音響迷路のような役割を果たして、90Hz付近から低域を自然にロールオフ(減衰)させる。
小さな筐体に凝集したこの技術の密度は凄い。見ているだけで飽きさせない。これが最初の「感動」であった。
■第二の感動:圧縮音声でも妥協しない音質
実際にSE846を耳に装着してみよう。ケーブル部は硬いのだが、形状記憶性があり首に馴染みやすい。やや大型のハウジングは耳の上側から耳道に押し込むタイプで、最初は装着にやや戸惑うが、ケーブルとの接合部が回転するので、一度装着すると耳道との一体感が優れていることに気付く。
今回は、一番スタンダードな「バランス」ノズルを装着して試聴を行った。初めにiPhoneに接続し、CDからリッピングした圧縮音源を聴く。再生したのは、エレーヌ・グリモー(フランスのピアニスト)が弾くシューマンのピアノコンチェルト イ短調である。冒頭、高域の分解能とブリリアントな美しさに息を呑む。一音一音のきらめき、粒立ち、倍音の豊かさは圧巻だ。
実をいうと、最初にこの曲を聴いたのも、大抵のイヤホン、あるいはオーバーヘッドホンがこの一曲で敗退するからである。第三楽章冒頭で高域から低域まで一気に下降していくパッセージがあり、低音を持ち上げて強調したヘッドホン、イヤホンはある帯域から音質が変ってしまう。SE846は難なくこれを突破。ツイン構成という点から低域を誇張した製品と考えると間違いで、演出のないタイトでニュートラルな本物の低域である。ぶよぶよ肥大していないので、くだんの第3楽章で低域へ下がっていっても音質が一定で響きのバランスが崩れない。
低域の解像感は圧巻で、早いパッセージで左手低域の動きと音程がこれだけ鮮明に<見える>イヤホンは絶無。ツイン構成だけに量感は豊かでそれが高域の輝かしさとバランスし、Fレンジ全体にエネルギーが満ちていて凹凸がなくフラットで力強い。これまで圧縮音源だから、イヤホンだから、と妥協して聴いていたことに気付いて愕然とする。耳が洗われるというのはこういうことである。これが第二の「感動」である。
■SE846には「感動」がある
SHUREのイヤホン製品フラグシップモデル SE846は、これまでに例のない飛びぬけた製品である。同社の技術が結集し、音質がよいだけではない。SE846には「感動」があるのだ。
SE846を最初に手に取ると、太く質感の高いケーブルに高級機の手応えを感じるが、イヤホンであることに変わりはない。しかし、本体がスケルトンであることに気付くと、そこからもう目が離せなくなる。透明度の高い無着色樹脂の流線型ハウジングの向こうに、SF映画に登場する未来のテクノロジーか、あるいは精密時計のような小宇宙さえ感じさせる技術が詰まっている。
■第一の感動:スケルトン筐体の中に見えるテクノロジーに魅せられる
最初に目が引き付けられるのは、“SHURE”の刻印のあるボックスの下にある金色に輝くデバイスだ。資料の図解を参照すると、これは3ウェイのクロスオーバー。スピーカーシステムでいうネットワークである。次にそれ以外の構成部品に目を凝らすと、主要なドライバーは4つで、それぞれ01〜04のナンバーが刻印されている。ナンバーの周辺にさらに小さな数字があることに気付く。01が15〜200Hz、02は隠れて見えないが03が200Hz〜2kHz、04が2kHz〜20kHzとある。SE846は低域(2基)、中域、高域の各ドライバーが完全に独立した3ウェイ4ドライバー構成なのだ。
ドライバー群とノズル(イヤパッドを被せるステンレス製チューブ)の中間に、金属の板をミルフィーユのように重ね合わせた部品がある。これは、10枚のステンレス板をレーザーで溶接したローパスフィルターだ。10枚のフィルターはそれぞれ異なったパターンの溝が切られ、これが全長4インチ(約10cm)の一種の音響迷路のような役割を果たして、90Hz付近から低域を自然にロールオフ(減衰)させる。
小さな筐体に凝集したこの技術の密度は凄い。見ているだけで飽きさせない。これが最初の「感動」であった。
■第二の感動:圧縮音声でも妥協しない音質
実際にSE846を耳に装着してみよう。ケーブル部は硬いのだが、形状記憶性があり首に馴染みやすい。やや大型のハウジングは耳の上側から耳道に押し込むタイプで、最初は装着にやや戸惑うが、ケーブルとの接合部が回転するので、一度装着すると耳道との一体感が優れていることに気付く。
今回は、一番スタンダードな「バランス」ノズルを装着して試聴を行った。初めにiPhoneに接続し、CDからリッピングした圧縮音源を聴く。再生したのは、エレーヌ・グリモー(フランスのピアニスト)が弾くシューマンのピアノコンチェルト イ短調である。冒頭、高域の分解能とブリリアントな美しさに息を呑む。一音一音のきらめき、粒立ち、倍音の豊かさは圧巻だ。
実をいうと、最初にこの曲を聴いたのも、大抵のイヤホン、あるいはオーバーヘッドホンがこの一曲で敗退するからである。第三楽章冒頭で高域から低域まで一気に下降していくパッセージがあり、低音を持ち上げて強調したヘッドホン、イヤホンはある帯域から音質が変ってしまう。SE846は難なくこれを突破。ツイン構成という点から低域を誇張した製品と考えると間違いで、演出のないタイトでニュートラルな本物の低域である。ぶよぶよ肥大していないので、くだんの第3楽章で低域へ下がっていっても音質が一定で響きのバランスが崩れない。
低域の解像感は圧巻で、早いパッセージで左手低域の動きと音程がこれだけ鮮明に<見える>イヤホンは絶無。ツイン構成だけに量感は豊かでそれが高域の輝かしさとバランスし、Fレンジ全体にエネルギーが満ちていて凹凸がなくフラットで力強い。これまで圧縮音源だから、イヤホンだから、と妥協して聴いていたことに気付いて愕然とする。耳が洗われるというのはこういうことである。これが第二の「感動」である。