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公開日 2015/07/17 18:00

“IEM向け”に開発された注目のアナログポタアンALO audio「Rx」の実力検証

【特別企画】電圧15V・広Dレンジ・低インピーダンス
岩井 喬
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Rx / Black
■“IEM向け”ポタアン「Rx / Black」の実力を、岩井喬が徹底検証

個々のリスナーの耳型を採取して製作されるカスタムIEMの世界が特別なものではなくなってきた一方で、世界各国からいくつものブランドがこの分野に参入を果たし、百花繚乱ともいえる様相を呈している。これらカスタムIEMたちは多くが高感度な設計となっており、高価ではないポータブルプレーヤーであっても音量そのものは十分なレベルを確保することができる。

しかしながら、再生する周波数により変動するインピーダンスへの対応という点では、前述したようなプレーヤー単体では消化しきれず、音質バランスが崩れるケースも少なくない。特にこうした場合、音量ばかり大きくなってしまい、理想といえる遮音性の高さを誇るカスタムIEMでは非常に耳障りなサウンドとなってしまうのだ。また、カスタムを含むIEMの多くが複数のBA型&ダイナミック型ドライバーを搭載するマルチウェイ型であり、変動するインピーダンス特性もより複雑なものとなり、アンプ側への負担も大きなものとなってくる。

インピーダンス変動は再生する音楽の周波数により変わってくるが、イヤホンの世界ではスペック以上に低いインピーダンスとなることもあり得るのだ。こうした問題を解決する手段として有効なのが、アンプやプレーヤー出力の“低インピーダンス化”である。いわゆる“ロー出しハイ受け”のセオリーを実践するわけであるが、安全上の問題やオペアンプなどの出力段の制約からプレーヤーやポータブルアンプの出力インピーダンスは10Ω以上となっているものも少なくない。

<インピーダンスの変動>
インピーダンスとは、交流における電気抵抗(電気の流れにくさ)のこと。インピーダンスは、周波数に比例して大きくなる性質がある。
つまりスピーカーやヘッドホン/イヤホンなどのオーディオ機器では、再生する音源の周波数によってインピーダンス値が上下する。複数ユニットを搭載するマルチウェイ型のIEMの場合、このインピーダンスの変動が複雑であり、また出力インピーダンスが高いアンプの場合、インピーダンスの変動による負荷がアンプ側に掛かりやすくなる。この状態への対応として「アンプの低インピーダンス化」がポイントとなっている。


例えばAstell&Kernの「AK100」は出力インピーダンスが22Ωであったが、その後に発売された「AK120」では3Ωに改善されており、低インピーダンス化に対して気を配っていることがわかるだろう(AK100Mk2も3Ωに改善された)。また低インピーダンス化にあたってはダンピングファクターに対しても効果があり、ヘッドホン&イヤホンの駆動能力向上が期待できるのである。

<ダンピングファクターとは>
スピーカーやヘッドホンのユニットに対する、アンプの制動力のこと。アンプから音声入力されて振動を起こすユニット(振動板)は、慣性の法則により音声が止まった際にすぐ静止することができず、余分な振動が生まれる。
ここで、ユニットの余分な振動を抑えるアンプの能力をダンピングファクターといい、一般にダンピングファクターが高いほど制動力があり音にキレが出る。
計算式は「スピーカー/ヘッドホンのインピーダンス÷アンプの出力インピーダンス」で表される。この計算式から、アンプの出力インピーダンスの値が低いほど、ダンピングファクターの値は高くなり、ユニットに対する制動力が上がることになる。


こうした低インピーダンス化に対して力を入れつつ、昨今普及を見せるIEMとの親和性の高さを念頭に置いた製品として注目されているのが、ALO audioのポータブルヘッドホンアンプ新「Rx」だ。

Rx / Black。スタンダードモデルはマットな質感のブラック

同ブランドの“Rx”という名称のシリーズ自体は2009年に登場してから代を重ね、Mk3ではバランス駆動にも対応するなど、数あるポタアンのなかでも人気の高いラインナップの一つといえるだろう。そしてこの春登場した新Rxは、モデル名もシリーズ名のみのシンプルなものに立ち返り、“原点回帰”を果たした。その決意の高さ、Rxシリーズへの自信を感じさせるプロダクトに仕上げられている。

次ページ“原点回帰”した新Rx。電圧15V設計のIEM向け仕様に迫る

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