公開日 2017/08/15 10:00
【製品批評】Technics 「SL-1200GR」 ― 待望の廉価機。上位機との差はさほど大きくない
10万円台半ばのアナログプレーヤー
アナログプレーヤー
TECHNICS
SL-1200GR
¥148,000(税別)
テクニクスがブランドの復活を果たし、待望のターンテーブルシステムSL‐1200Gを発売したのが昨年のことであった。一方、かつてのSL‐1200シリーズに比べると価格が数倍に達してしまったため、廉価な姉妹機の登場を望む声も聞かれるようになった。
その声に応えて発売されることになったのが今回紹介するSL‐1200GRである。価格はSL‐1200Gの約半分、10万円台半ばでハイファイ仕様のアームつきターンテーブルが手に入るのは今日かなり画期的なことと思われる。というのも、外見から分かる通り本機は上位機種の構成をほぼ忠実に受け継いでいて、一見すると区別がつかないほどよく似ているのだ。
基本スペックを変えずコストダウンを実現した外見はよく似ているが、見えない部分にはそれなりのコストダウンが図られていることはいうまでもない。ただしコギングの起きないコアレス方式はそのまま継承。回転数の制御回路も基本的に同一なので、ワウ・フラッターやS/Nなどはまったく変わらない。
プラッターは最上部に真鍮を配した3層構造からアルミダイカストとデッドニングラバーの2層構造に変更して軽量化されているが、強化リブ構造による剛性向上が奏功。またキャビネットはSL‐1200Gの4層構造から2層構造に変更しながら、ベース部分のBNCにアルミダイキャストを堅固に組み合わせることによって振動対策に万全を期している。
プラッターの回転は立ち上がりが俊敏で、ほぼ一瞬で定速に達する。ハウリングマージンは十分にとれており、モーターの回転音などを拾うことも一切ない。S/Nの高さと安定感はさすがに最新技術を搭載したターンテーブルだけのことはある。
マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団が1979年に録音した『チャイコフスキー交響曲第4番』を聴くと、弱音からフォルテシモまで強弱の変化をきめ細かく鳴らし分け、ダイナミックレンジの大きなオーケストラ演奏の醍醐味を存分に味わうことができた。特に感心したのはフォルテの全奏時、すべての楽器のアタックが揃って大きな音圧が生まれる瞬間をテンションの高い音で再現したこと。強大な音圧を飽和させずに鳴らすのはレコード再生では難しい課題のひとつだが、本機は安定した低重心の響きをベースに細部も十分な解像度で描写し、音楽の骨格を保ち続けている。
テクニクスはSL‐1200Gを音質最優先のプレミアムモデル、本機をベーシックなスタンダードモデルに位置づけている。たしかにこの2製品の間には音質の違いを聴き取ることができるが、価格の違いほどには差は大きくないというのが筆者の率直な感想である。むしろこの価格でここまで質感の高いサウンドを実現していることを高く評価したい。
(山之内 正)
Specifications
●型式:ダイレクトドライブターンテーブルシステム(マニュアル)●駆動方式:ダイレクトドライブ ●駆動モーター:ブラシレスDCモーター ●ターンテーブル:アルミダイカスト、直径332mm、質量約2.5kg(ゴムシート含む) ●回転数:33 1/3、45、78r/min ●回転数調整範囲:±8%、±16% ●起動トルク:2.2kg・cm ●ワウ・フラッター:0.025% W.R.M.S.(JIS C5521) ●SN比(ランブル):78dB(IEC 98A weighted) ●トーンアーム部:ユニバーサルS字形トーンアームスタティックバランス型 ●アーム有効長:230mm ●オーバーハング:15mm ●アーム高さ調整範囲:0〜6mm ●針圧調整範囲:0〜4g(針圧直読式) ●消費電力:11W(電源オン時)、0.2W(電源オフ時) ●サイズ:453W×173H×372Dmm ●質量:約11.5kg ●取り扱い:パナソニック(株)
※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」165号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから