公開日 2018/06/20 08:00
「Roon」がバージョン1.5に進化! MQAデコードがどう行われているかチェックした
LINN DS対応も検証
Roonが5月に最新バージョン1.5を公開。新たにMQAのソフトウェア・デコードやLINN DSからの再生に対応するなど、今回のアップデートでも大きな進化を果たした。本記事では特にMQA対応について、佐々木喜洋氏が詳細な検証を行った。
音楽再生ソフトウェア「Roon」の最新バージョン1.5が5月にリリースされた(関連ニュース)。昨年12月のバージョン1.4以来となる大幅なアップデートとなったが、今回のバージョン1.5における機能面の改良は主に次の3点だ。
1、Roonのセットアップに内部データベースを使用
Roon ltd.が収集したハードウェアの情報をもとに設定を簡易化できるようになった。
2、MQAのコアデコード対応
MQA音源をソフトウェア・デコードできるようになった。またMQA音源にDSP処理が適用できるのもRoon1.5の特徴のひとつだ。
3、LINN DSからの再生に対応
RoonからLINNのネットワークプレーヤー「DS」を出力機器として使用できるようになった。ただし機器カテゴリーは「RoonReady」ではなく、「Roon tested device」であり、DLNA/UPnPともRoon独自のRAATとも異なる独自送信方式を採用しているようだ。
■RoonのMQA対応を一歩踏みこんで検証する
これまでもバージョンアップの都度、新機能について触れてきたが、この1.5での目玉は何と言ってもMQA対応であろう。RoonもMQAも、ここ数年におけるデジタルオーディオの最先端において話題の中心になってきたトピックだけに、今回、RoonがMQA対応したことの意義は大きい。
また、MQAは後述するように「コアデコード」「フルデコード」のように再生に複数の段階があり、再生機器の対応レベルも「レンダラー」「フルデコーダー」など種類がある。これらがユーザーにとってMQAをわかりにくくしている側面もあるだろう。一方でRoonはシグナルパスの表示など再生プロセスを明快に示してくれることが特徴のひとつで、このRoonを通じてMQAの再生プロセスを確認することは、MQAの理解を深めることにもつながると思う。
そこで今回、RoonのMQA対応について一歩踏み込んで解説していきたい。また、「Audirvana Plus 3」などすでにMQA対応している再生ソフトウェアとの違い、またMQAレンダラーとMQAフルデコーダーの違いなどについても改めて考察していく(もう一つの目玉であるLINN対応についてはこちらのページで紹介する)。
■Roonが「MQAソフトウェア・デコーダー」に対応したことの意味
MQAの原理やメリットの詳細な解説は、こちらの記事で詳しく紹介しているので、本項では最小限にとどめる。興味ある方は参照してみてほしい。
ごく簡単に説明すれば、MQAとは音楽ファイルの新しいフォーマットであり、特徴は「高音質」でかつ「ファイルサイズが小さい」ということだ。そして、ファイルサイズを小さくするためにMQAは「オーディオ折り紙」と呼ぶ独自技術を採用している。
オーディオ折り紙はその名の通り、音楽ファイルを1回(88.2kHzまたは96kHzまで)、または2回以上(176.4kHzまたは192kHz以上)、折り畳み(圧縮)を行うという技術だ。
MQA音源を再生するためには、この折り畳みを展開するデコーダーが必要となる。1回分の折り返し(88.2kHzまたは96kHzまで)を展開することを「コアデコード」、2回以上の折り返し(176.4kHzまたは192kHz以上)を展開することを「フルデコード」と呼ぶ。
MQAのデコーダーには、PCやMacで動作するソフトウェア・デコーダーと、USB-DACなどのオーディオ機器に搭載されたハードウェア・デコーダーがある。ソフトウェア・デコーダーはコアデコードまでしか対応できず(だからMQAコアデコーダーと呼ぶ)、一方でハードウェア・デコーダーはフルデコードも可能だ。このような対応になっている理由については、フルデコードを行うためにはハード(DAC)の情報が必要だからと説明されている。
また、ハードウェア・デコーダーには「MQAフルデコーダー」と「MQAレンダラー」の2種類がある。両者のちがいだが、MQAフルデコーダーは単体でMQA音源の認証とフルデコードが可能。対してMQAレンダラーは単体では認証とコアデコードができない。そのため、MQAレンダラーは必ずMQAコアデコーダーとの組み合わせで使わなければならない。
ソフトウェアのMQAコアデコーダーと組み合わせれば、MQAレンダラーでもフルデコード(176.4kHzまたは192kHz以上)が可能となる。これはMQAレンダラーがポータブル機器などの処理能力が限られている機器向けのデコーダーだからだ。
DACがフルデコーダー搭載であれば、従来のRoonでもMQA音源を再生してDACにデータを送ることはできていた(これはRoon以外のソフトでも同様だ)。それが今回のRoon1.5で、ソフトウェアによるMQAコアデコーダーが搭載されたことにより、MQA対応でないUSB-DACを接続していても96kHzまでのMQA再生が、MQAレンダラーを接続すれば192kHz以上のMQA再生が可能になった。
逆を言えば、1.4までの従来のRoonにMQAレンダラー対応DACを組み合わせても、MQAは展開できず、コア部分(44.1kHz/16bit)が再生される。そのDACはMQA非対応と同じ扱いになるわけだ。
■Roon1.5でのMQA対応の実際
今回はRoonのMQA対応のテストをするために、次の機材を使用した。
・iFI Audio「xDSD」「micro iDSD BL」(MQAレンダラー)
・Meridian「ULTRA DAC」(MQAフルデコーダー)
試聴に用いたシステムを図にすると、以下のようなかたちになる。
このほかにRoon1.5とAudirvana Plus 3をMac(MacBook Airを使用)上で使用する。テスト音源はいつものようにe-onkyo musicからダウンロードしたMQA音源と、ロスレス音楽ストリーミング「TIDAL」のMQAストリーミング(TIDAL MASTERS)を用いた。
音楽再生ソフトウェア「Roon」の最新バージョン1.5が5月にリリースされた(関連ニュース)。昨年12月のバージョン1.4以来となる大幅なアップデートとなったが、今回のバージョン1.5における機能面の改良は主に次の3点だ。
1、Roonのセットアップに内部データベースを使用
Roon ltd.が収集したハードウェアの情報をもとに設定を簡易化できるようになった。
2、MQAのコアデコード対応
MQA音源をソフトウェア・デコードできるようになった。またMQA音源にDSP処理が適用できるのもRoon1.5の特徴のひとつだ。
3、LINN DSからの再生に対応
RoonからLINNのネットワークプレーヤー「DS」を出力機器として使用できるようになった。ただし機器カテゴリーは「RoonReady」ではなく、「Roon tested device」であり、DLNA/UPnPともRoon独自のRAATとも異なる独自送信方式を採用しているようだ。
■RoonのMQA対応を一歩踏みこんで検証する
これまでもバージョンアップの都度、新機能について触れてきたが、この1.5での目玉は何と言ってもMQA対応であろう。RoonもMQAも、ここ数年におけるデジタルオーディオの最先端において話題の中心になってきたトピックだけに、今回、RoonがMQA対応したことの意義は大きい。
また、MQAは後述するように「コアデコード」「フルデコード」のように再生に複数の段階があり、再生機器の対応レベルも「レンダラー」「フルデコーダー」など種類がある。これらがユーザーにとってMQAをわかりにくくしている側面もあるだろう。一方でRoonはシグナルパスの表示など再生プロセスを明快に示してくれることが特徴のひとつで、このRoonを通じてMQAの再生プロセスを確認することは、MQAの理解を深めることにもつながると思う。
そこで今回、RoonのMQA対応について一歩踏み込んで解説していきたい。また、「Audirvana Plus 3」などすでにMQA対応している再生ソフトウェアとの違い、またMQAレンダラーとMQAフルデコーダーの違いなどについても改めて考察していく(もう一つの目玉であるLINN対応についてはこちらのページで紹介する)。
■Roonが「MQAソフトウェア・デコーダー」に対応したことの意味
MQAの原理やメリットの詳細な解説は、こちらの記事で詳しく紹介しているので、本項では最小限にとどめる。興味ある方は参照してみてほしい。
ごく簡単に説明すれば、MQAとは音楽ファイルの新しいフォーマットであり、特徴は「高音質」でかつ「ファイルサイズが小さい」ということだ。そして、ファイルサイズを小さくするためにMQAは「オーディオ折り紙」と呼ぶ独自技術を採用している。
オーディオ折り紙はその名の通り、音楽ファイルを1回(88.2kHzまたは96kHzまで)、または2回以上(176.4kHzまたは192kHz以上)、折り畳み(圧縮)を行うという技術だ。
MQA音源を再生するためには、この折り畳みを展開するデコーダーが必要となる。1回分の折り返し(88.2kHzまたは96kHzまで)を展開することを「コアデコード」、2回以上の折り返し(176.4kHzまたは192kHz以上)を展開することを「フルデコード」と呼ぶ。
MQAのデコーダーには、PCやMacで動作するソフトウェア・デコーダーと、USB-DACなどのオーディオ機器に搭載されたハードウェア・デコーダーがある。ソフトウェア・デコーダーはコアデコードまでしか対応できず(だからMQAコアデコーダーと呼ぶ)、一方でハードウェア・デコーダーはフルデコードも可能だ。このような対応になっている理由については、フルデコードを行うためにはハード(DAC)の情報が必要だからと説明されている。
また、ハードウェア・デコーダーには「MQAフルデコーダー」と「MQAレンダラー」の2種類がある。両者のちがいだが、MQAフルデコーダーは単体でMQA音源の認証とフルデコードが可能。対してMQAレンダラーは単体では認証とコアデコードができない。そのため、MQAレンダラーは必ずMQAコアデコーダーとの組み合わせで使わなければならない。
ソフトウェアのMQAコアデコーダーと組み合わせれば、MQAレンダラーでもフルデコード(176.4kHzまたは192kHz以上)が可能となる。これはMQAレンダラーがポータブル機器などの処理能力が限られている機器向けのデコーダーだからだ。
DACがフルデコーダー搭載であれば、従来のRoonでもMQA音源を再生してDACにデータを送ることはできていた(これはRoon以外のソフトでも同様だ)。それが今回のRoon1.5で、ソフトウェアによるMQAコアデコーダーが搭載されたことにより、MQA対応でないUSB-DACを接続していても96kHzまでのMQA再生が、MQAレンダラーを接続すれば192kHz以上のMQA再生が可能になった。
逆を言えば、1.4までの従来のRoonにMQAレンダラー対応DACを組み合わせても、MQAは展開できず、コア部分(44.1kHz/16bit)が再生される。そのDACはMQA非対応と同じ扱いになるわけだ。
■Roon1.5でのMQA対応の実際
今回はRoonのMQA対応のテストをするために、次の機材を使用した。
・iFI Audio「xDSD」「micro iDSD BL」(MQAレンダラー)
・Meridian「ULTRA DAC」(MQAフルデコーダー)
試聴に用いたシステムを図にすると、以下のようなかたちになる。
このほかにRoon1.5とAudirvana Plus 3をMac(MacBook Airを使用)上で使用する。テスト音源はいつものようにe-onkyo musicからダウンロードしたMQA音源と、ロスレス音楽ストリーミング「TIDAL」のMQAストリーミング(TIDAL MASTERS)を用いた。
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