公開日 2018/10/25 06:45
FMラジオのメリットを再発見! ラズパイ・オーディオで「サイマル放送」を聴く
海上忍のラズパイ・オーディオ通信(51)
■FM放送のメリットを再発見!
かつて隔週刊のFM情報誌が複数存在し、しかもかなりの発行部数(4誌合計で百数十万部)を誇ったことは、今となっては夢のような話。インターネットが普及し、無数の映像/音楽コンテンツをオンデマンドで楽しめるこの時代に、FM放送がそれだけ多くのリスナーを有していたこと、音楽の入手ルートとして重視されていたことを、テレビすら見ない10代の少年に話しても反応が鈍いのは当然だ。
オジサンの昔話で恐縮だが、80年代前半の筆者は欧米のポピュラー音楽全般に熱中し、特にプログレ/ユーロロック系の音源に飢えていた。少ない小遣いではアルバムを月に1、2枚買うのがやっとで、プログレに強い店がある西新宿まで電車を乗り継ぎ2時間という田舎の中学生にとって、FM放送は実に貴重な音源入手ルートだったのだ。
だから常にFM情報誌で放送予定をチェックしておき、めぼしい番組はとりあえずカセットテープに録音。筆者に限らず、レコード/CDレンタルが普及し始める前までは、このような音楽との接し方が一般的だったように思う。
しかも、そのような「エアチェック」には副産物がある。自分が知らない音楽、アーティストとの出会いだ。プログレというジャンルでいえば、イギリスやイタリア、ドイツなどの国別に選曲されることもあるし、シンフォニック系やジャズ系といった音の傾向で選ばれることもある。そうして知らず知らずのうちに知識が増え、自分なりに深く掘り下げられるようになるというわけだ。
私見だが、音楽の道案内的役割はストリーミングサービスに期待できない。いわゆる楽曲レコメンド機能は大半のストリーミングサービスが提供しているものの、流れるのはあくまでそのサービスが取り扱う楽曲のみ。それに、聴いて気に入ることはあっても関連情報を教えてくれないので、知識に深みが出ないのだ。この曲は○○年リリースのアルバム「△△」に収録されていて、それを最後にメンバーの□□は脱退した……などのちょっとした情報が添えられるかどうか、そこがFM放送/ラジオに及ばない(もちろん番組の方針やDJの個性にもよるけれど)。ネットを検索すれば同じという声も聞こえてきそうだが、ネット検索は情報を自分で見つける“プル型”、ラジオは勝手に教えてくれる“プッシュ型”。違いは明らかだ。
前置きが長くなったが、ラズパイ・オーディオでもFM放送を聴くことは可能だ。ただし、FMチューナーは搭載されていないし、そのような拡張カードも存在しないため、別の方法を考えなければならない。そう、「サイマル放送」だ。FM情報誌の時代とは異なり録音の必要性が低下したため、リアルタイムに聴ければ十分。正直、音質は“そこそこ”だが、長々述べたような情報源としての役割に支障はない。
それにサイマル放送であれば、放送局から遠く離れた地でも番組を聴くことができる。先日、PHILE WEBでも健筆を振るわれているオーディオ評論家・大橋伸太郎先生と食事をご一緒させていただいた折に、「私がパーソナリティを担当している鎌倉FMの番組(Pure Sound Now Music)で、The Beatlesのレア音源を流すんです」と伺って閃いた。横浜市の拙宅では電波が入らないが、サイマル放送であればOK、ラズパイでも聴ける。これぞいまどきのFM放送の楽しみ方だ、というわけで、いざ鎌倉(FM)!
かつて隔週刊のFM情報誌が複数存在し、しかもかなりの発行部数(4誌合計で百数十万部)を誇ったことは、今となっては夢のような話。インターネットが普及し、無数の映像/音楽コンテンツをオンデマンドで楽しめるこの時代に、FM放送がそれだけ多くのリスナーを有していたこと、音楽の入手ルートとして重視されていたことを、テレビすら見ない10代の少年に話しても反応が鈍いのは当然だ。
オジサンの昔話で恐縮だが、80年代前半の筆者は欧米のポピュラー音楽全般に熱中し、特にプログレ/ユーロロック系の音源に飢えていた。少ない小遣いではアルバムを月に1、2枚買うのがやっとで、プログレに強い店がある西新宿まで電車を乗り継ぎ2時間という田舎の中学生にとって、FM放送は実に貴重な音源入手ルートだったのだ。
だから常にFM情報誌で放送予定をチェックしておき、めぼしい番組はとりあえずカセットテープに録音。筆者に限らず、レコード/CDレンタルが普及し始める前までは、このような音楽との接し方が一般的だったように思う。
しかも、そのような「エアチェック」には副産物がある。自分が知らない音楽、アーティストとの出会いだ。プログレというジャンルでいえば、イギリスやイタリア、ドイツなどの国別に選曲されることもあるし、シンフォニック系やジャズ系といった音の傾向で選ばれることもある。そうして知らず知らずのうちに知識が増え、自分なりに深く掘り下げられるようになるというわけだ。
私見だが、音楽の道案内的役割はストリーミングサービスに期待できない。いわゆる楽曲レコメンド機能は大半のストリーミングサービスが提供しているものの、流れるのはあくまでそのサービスが取り扱う楽曲のみ。それに、聴いて気に入ることはあっても関連情報を教えてくれないので、知識に深みが出ないのだ。この曲は○○年リリースのアルバム「△△」に収録されていて、それを最後にメンバーの□□は脱退した……などのちょっとした情報が添えられるかどうか、そこがFM放送/ラジオに及ばない(もちろん番組の方針やDJの個性にもよるけれど)。ネットを検索すれば同じという声も聞こえてきそうだが、ネット検索は情報を自分で見つける“プル型”、ラジオは勝手に教えてくれる“プッシュ型”。違いは明らかだ。
前置きが長くなったが、ラズパイ・オーディオでもFM放送を聴くことは可能だ。ただし、FMチューナーは搭載されていないし、そのような拡張カードも存在しないため、別の方法を考えなければならない。そう、「サイマル放送」だ。FM情報誌の時代とは異なり録音の必要性が低下したため、リアルタイムに聴ければ十分。正直、音質は“そこそこ”だが、長々述べたような情報源としての役割に支障はない。
それにサイマル放送であれば、放送局から遠く離れた地でも番組を聴くことができる。先日、PHILE WEBでも健筆を振るわれているオーディオ評論家・大橋伸太郎先生と食事をご一緒させていただいた折に、「私がパーソナリティを担当している鎌倉FMの番組(Pure Sound Now Music)で、The Beatlesのレア音源を流すんです」と伺って閃いた。横浜市の拙宅では電波が入らないが、サイマル放送であればOK、ラズパイでも聴ける。これぞいまどきのFM放送の楽しみ方だ、というわけで、いざ鎌倉(FM)!