公開日 2018/11/23 08:00
JVC「DLA-V7/V5」レビュー。満を持して登場したネイティブ4K D-ILAプロジェクターの実力に迫る
特徴と魅力を評論家・大橋伸太郎が解説
■JVCのネイティブ4K対応D-ILAプロジェクターにファン待望の新モデル「DLA-V7/V5」が登場
JVCのD-ILAプロジェクター「DLA-V7」「DLA-V5」は、同時に発表された最上位の8Kモデル「DLA-V9R」(レビュー記事)以上に注目される製品だ。3機種は揃ってVGP2019で総合金賞を受賞した。
JVCは民生用4Kデバイスの開発が遅れ、画素ずらしで仮想画素を生成するe-shiftで4K解像度を得ていた。e-shiftは優れた技術だが、ネイティブデバイスを越えるものではない。一方、D-ILAならではの深みのある色彩と豊かな暗部階調には離れ難い魅力がある。少なからぬファンはネイティブ4KのD-ILAを待ち望んでいた。そうして一昨年末、「DLA-Z1」(レビュー記事)が登場した。
同機はレーザーフォスファーを搭載し期待に違わぬ性能だったが、半業務機的な性格ゆえに巨大過ぎしかも価格が350万円(税抜)もする。少なからぬ数のホームシアターユーザー、D-ILAファンが若干の恨めしさの混じった視線でZ1の巨体を眺めたに違いない。
そして、Z1から2年経たないこの10月、DLA-V7/V5が発売された。8K e-shiftのV9Rは当然4Kネイティブデバイス搭載だが、下の2機種は4K e-shift機かと思ったがそうではなく、何とZ1で初搭載の0.69インチ4Kデバイスを搭載する。価格は100万円と75万円。光源はレーザーでなくUHPだが、内容を知る程に衝撃的な戦略価格であることが分かる。
その理由の第一に、2機種ともフロントエンドまでオールガラスレンズを搭載する点がある。DLA-V9Rの100mm口径16群18枚に及ばないが、V7/V5は15群17枚のオールガラスレンズを搭載する。V9Rのレポートでも書いたが、プロジェクターの画質の半分はレンズの品位で決まる。
理由の第2が、0.69型ネイティブ4K D-ILAデバイスが、Z1初搭載から2年間の生産実績を経て進歩していること。平坦化と反射効率の改善が図られ、開口率も向上。デバイスを駆動するデジタルドライバーLSIが新開発された。
ユーザーフレンドリーな新機能、「オートトーンマッピング」に注目したい。HDRコンテンツの分析と研究が生み出した機能で、コンテンツのメタデータのMAX CLL/FALLを参照し、ソフトの輝度の特性に合わせてピクチャートーン、ダークレベル、ブライトレベルを自動調整する。「調整レベル」もJVCらしい機能。スクリーンサイズ(100インチ基準)を入力すると、輝度とガンマを自動で適正化する。画質モードで今回HDR10/HLGが分化し、どちらもフラグを自動検出して自動対応する。
DLA-V7/V5の両機ともハイコストパフォマンス機だが、75万円でネイティブ4Kとオールガラスレンズを実現したDLA-V5に注目したい。
DLA-V9Rのレポートでも視聴した8Kで撮影したモロッコの映像(※8Kカメラ撮影の映像をATMOSから4K出力し130インチスクリーンに投写) は、オンフォーカスの個所の表現に甘さ、にじみがなく、4K e-shiftでしばしば現れたエンハンスに伴うエッジの強調がない。
素直で自然な佇まいの大画面映像は、スクリーンサイズが大きいほど映像に深い奥行きと立体感が生まれる思わず魅了される。一方、本機は標準設定でややあっさりした色乗りなので、D-ILAらしい画を望むなら積極的に調整を試みるべきかもしれない。
一方のV7はV9Rと共に新シネマフィルターを採用しDCI P3をカバーする。V5はBT.709を100%カバーするに止まるため、両機は色域に違いがある。映像デバイス、レンズシステム等V5と共通部分が多いのだが、V7にはJVCが積み上げたカラーマネジメントのノウハウが盛り込まれ、JVCファンが溜飲を下げるD-ILAらしい画の濃密さ、陰影感という点で違いを見せつける。
DLA-V9Rの他に先んじた8K解像度のインパクトに目を奪われがちだが、8Kダイレクト入力に未対応であることを考慮すると、今回登場のD-ILA4Kネイティブ機の本命はV7/V5のほうである。両機種ともオールガラスレンズ搭載、画質上の妥協はない。レーザーフォスファーは輝度パワーと寿命で明らかに有利だが、特性に関してはUHPと一長一短である。
ホームシアターファン全てに薦められるのがV5、一方、D-ILAファンは躊躇わずV7を選ぶべきだ。4K本放送が今始まろうとしている。受信チューナーを購入してDLA-V5/V7に接続すれば、直視型テレビでは体験出来ない、大きく、きめ細かく、濃い「別世界」がそこにある。
JVCのD-ILAプロジェクター「DLA-V7」「DLA-V5」は、同時に発表された最上位の8Kモデル「DLA-V9R」(レビュー記事)以上に注目される製品だ。3機種は揃ってVGP2019で総合金賞を受賞した。
JVCは民生用4Kデバイスの開発が遅れ、画素ずらしで仮想画素を生成するe-shiftで4K解像度を得ていた。e-shiftは優れた技術だが、ネイティブデバイスを越えるものではない。一方、D-ILAならではの深みのある色彩と豊かな暗部階調には離れ難い魅力がある。少なからぬファンはネイティブ4KのD-ILAを待ち望んでいた。そうして一昨年末、「DLA-Z1」(レビュー記事)が登場した。
同機はレーザーフォスファーを搭載し期待に違わぬ性能だったが、半業務機的な性格ゆえに巨大過ぎしかも価格が350万円(税抜)もする。少なからぬ数のホームシアターユーザー、D-ILAファンが若干の恨めしさの混じった視線でZ1の巨体を眺めたに違いない。
そして、Z1から2年経たないこの10月、DLA-V7/V5が発売された。8K e-shiftのV9Rは当然4Kネイティブデバイス搭載だが、下の2機種は4K e-shift機かと思ったがそうではなく、何とZ1で初搭載の0.69インチ4Kデバイスを搭載する。価格は100万円と75万円。光源はレーザーでなくUHPだが、内容を知る程に衝撃的な戦略価格であることが分かる。
その理由の第一に、2機種ともフロントエンドまでオールガラスレンズを搭載する点がある。DLA-V9Rの100mm口径16群18枚に及ばないが、V7/V5は15群17枚のオールガラスレンズを搭載する。V9Rのレポートでも書いたが、プロジェクターの画質の半分はレンズの品位で決まる。
理由の第2が、0.69型ネイティブ4K D-ILAデバイスが、Z1初搭載から2年間の生産実績を経て進歩していること。平坦化と反射効率の改善が図られ、開口率も向上。デバイスを駆動するデジタルドライバーLSIが新開発された。
ユーザーフレンドリーな新機能、「オートトーンマッピング」に注目したい。HDRコンテンツの分析と研究が生み出した機能で、コンテンツのメタデータのMAX CLL/FALLを参照し、ソフトの輝度の特性に合わせてピクチャートーン、ダークレベル、ブライトレベルを自動調整する。「調整レベル」もJVCらしい機能。スクリーンサイズ(100インチ基準)を入力すると、輝度とガンマを自動で適正化する。画質モードで今回HDR10/HLGが分化し、どちらもフラグを自動検出して自動対応する。
DLA-V7/V5の両機ともハイコストパフォマンス機だが、75万円でネイティブ4Kとオールガラスレンズを実現したDLA-V5に注目したい。
DLA-V9Rのレポートでも視聴した8Kで撮影したモロッコの映像(※8Kカメラ撮影の映像をATMOSから4K出力し130インチスクリーンに投写) は、オンフォーカスの個所の表現に甘さ、にじみがなく、4K e-shiftでしばしば現れたエンハンスに伴うエッジの強調がない。
素直で自然な佇まいの大画面映像は、スクリーンサイズが大きいほど映像に深い奥行きと立体感が生まれる思わず魅了される。一方、本機は標準設定でややあっさりした色乗りなので、D-ILAらしい画を望むなら積極的に調整を試みるべきかもしれない。
一方のV7はV9Rと共に新シネマフィルターを採用しDCI P3をカバーする。V5はBT.709を100%カバーするに止まるため、両機は色域に違いがある。映像デバイス、レンズシステム等V5と共通部分が多いのだが、V7にはJVCが積み上げたカラーマネジメントのノウハウが盛り込まれ、JVCファンが溜飲を下げるD-ILAらしい画の濃密さ、陰影感という点で違いを見せつける。
DLA-V9Rの他に先んじた8K解像度のインパクトに目を奪われがちだが、8Kダイレクト入力に未対応であることを考慮すると、今回登場のD-ILA4Kネイティブ機の本命はV7/V5のほうである。両機種ともオールガラスレンズ搭載、画質上の妥協はない。レーザーフォスファーは輝度パワーと寿命で明らかに有利だが、特性に関してはUHPと一長一短である。
ホームシアターファン全てに薦められるのがV5、一方、D-ILAファンは躊躇わずV7を選ぶべきだ。4K本放送が今始まろうとしている。受信チューナーを購入してDLA-V5/V7に接続すれば、直視型テレビでは体験出来ない、大きく、きめ細かく、濃い「別世界」がそこにある。