公開日 2019/02/14 07:00
STAX「CES-A1」 レビュー&開発者インタビュー。コンデンサー型イヤホンの先駆けを“現代的”にアップデート
【特別企画】密閉化による音色の変化も見逃せない
2018年12月、スタックスのコンデンサー型ヘッドホン(イヤースピーカー)専用アクセサリー「CES-A1」が発売された。もともとオープン構造であるイヤースピーカーへ、音漏れを気にせず使える遮音性や装着感を与え、使い方の幅を大きく広げる製品だ。
今回、岩井喬氏がCES-A1の効果を体験すると共に、CES-A1の開発者へ舞台裏などをインタビュー。これまでのイヤースピーカーの歩みも振り返りつつ、その魅力をお届けする。
【1】ポータブル型イヤースピーカーの歩み
【2】「CES-A1」開発者・長山氏インタビュー
【3】「SRS-002」&「SR-003MK2+SRM-D10」にて、CES-A1の効果をチェック
スタックスのイヤースピーカーのラインナップの中でひときわ個性が引き立っているのが、専用のドライバーユニットをセットにしたポータブルシステム「SRS-002」とインナーイヤー型の「SR-003MK2」である。
今でこそポータブルオーディオ製品は多様を極め、コンデンサー型の選択肢も増えてきたが、SRS-002、SR-003MK2の源流となる「SR-001」の登場は、現代のヘッドホンブームのはるか以前である1990年代。今のスタックスの前身、スタックス工業時代最後の製品である。
当時はインナーイヤー型イヤホンの高級モデルが1万円程度であったが、そのなかで3万円台という価格は高級機といえるもの。初の本格的なポータブル・コンデンサー型であることも含め、愛好家の垂涎の的であった。
しかし大きな問題として、ポータブル機器であるのに開放型であるため、屋外、特に電車内などでは盛大に音漏れしてしまう。高音質ではあるものの、積極的に外へ持ち出すのは気がひけるという点が常につきまとっていたのである。密閉型へのニーズは少なくなかったというが、音質を犠牲にする可能性が高いこともあり、この点を打破するには時間を要することとなった。
SR-001はその後改良が加えられ、「SR-001MK2」としてロングセラーを記録。さらにSR-001MK2の接続端子をプロバイアス 5pin仕様とした「SR-003」も、SR-003MK2として生まれ変わった。これら“SR-001系”シリーズは20mmのコンデンサー型ユニットを搭載。MK2では防塵構造の見直しなどを図り、より信頼性が増した。一方で基本的な開放型構造にはいっさい手を加えることなく、そのまま2000年代のヘッドホンブームを迎えたのである。
その後ドライバーユニット部を刷新したSRS-002が誕生。時代はプレーヤーにポータブルアンプを加えて楽しむことが浸透しており、ドライバーユニットが必要というイヤースピーカーの特徴もハードルとならないほど市場は熟成していた。
そして2017年、“SR-001系”の音漏れを解消する提案として、密閉化できるカバーの試作が発表された。イベントなどで2種類の試作カバー&イヤーチップを聴き比べるデモを行い、製品化への意見を募った。その後も測定、試聴を幾度も繰り返し、試作も数十種類実施して完成したのが「CES-A1」だ。
■ポータビリティはもちろん音質のアップグレードも果たすアクセサリー「CES-A1」
CES-A1は密閉カバー「CC-A1」とイヤーチップ「ET-A1」がセットとなったアクセサリーである。
密閉カバー「CC-A1」は非対称レイアウトを採用し、中心軸をずらすことによってハウジング背後から放射される音を拡散、定在波の発生も抑え込んだ。これにより単なる密閉効果だけでなく、解像度の向上と優れた音像定位の再現性を獲得している。
内部に設けたリブは剛性を高めて不要な共振を抑制。さらにアルミ製ロゴプレート背後に設けた吸音スペースには吸音材を充填。これはカバー内の残響音コントロールのために設けられており、吸音スペースとの隔壁に設けられた無数の穴=開口部は音波通過時の消音を行い、振動膜への干渉を防いでいる。
イヤーチップ「ET-A1」はCC-A1を取り付けることで本体そのものが重くなり、付属の標準イヤーチップだけでは保持しきれないことを解消するために開発された。耳穴に接する部分は標準品同様の楕円形状として、幅広いリスナーの耳穴への適合性を高めている。
また外耳道の密着性を高めたことで、低音域の損失を抑制。耳介に接する部分はショートフック形状のシリコン素材を用いているが、耳穴に接する部分とは弾力性の異なる硬度として最適なフィット感、密着度の向上を図ったという。Sサイズは耳穴に接する部分が白色、Lサイズは同じ個所がグレーとなる。
“SR-001系”は、イヤホンとしてカナル形状を取り入れた初期のモデルであり、イヤーチップだけでは保持が難しい場合に備えヘッドバンド状のパーツ「アークAssy」が用意されていた。今回登場したET-A1を標準イヤーチップと交換することで、アークAssyがなくとも“SR-001系”ハウジングの装着性が格段に向上する。さらに外耳道の密着性が高まったことで、使い勝手のみならず音質改善も期待できる点は実に喜ばしい。
今回、岩井喬氏がCES-A1の効果を体験すると共に、CES-A1の開発者へ舞台裏などをインタビュー。これまでのイヤースピーカーの歩みも振り返りつつ、その魅力をお届けする。
【1】ポータブル型イヤースピーカーの歩み
【2】「CES-A1」開発者・長山氏インタビュー
【3】「SRS-002」&「SR-003MK2+SRM-D10」にて、CES-A1の効果をチェック
■ポータブルオーディオ・ブームに先駆けて登場したスタックスのインナーイヤー型
スタックスのイヤースピーカーのラインナップの中でひときわ個性が引き立っているのが、専用のドライバーユニットをセットにしたポータブルシステム「SRS-002」とインナーイヤー型の「SR-003MK2」である。
今でこそポータブルオーディオ製品は多様を極め、コンデンサー型の選択肢も増えてきたが、SRS-002、SR-003MK2の源流となる「SR-001」の登場は、現代のヘッドホンブームのはるか以前である1990年代。今のスタックスの前身、スタックス工業時代最後の製品である。
当時はインナーイヤー型イヤホンの高級モデルが1万円程度であったが、そのなかで3万円台という価格は高級機といえるもの。初の本格的なポータブル・コンデンサー型であることも含め、愛好家の垂涎の的であった。
しかし大きな問題として、ポータブル機器であるのに開放型であるため、屋外、特に電車内などでは盛大に音漏れしてしまう。高音質ではあるものの、積極的に外へ持ち出すのは気がひけるという点が常につきまとっていたのである。密閉型へのニーズは少なくなかったというが、音質を犠牲にする可能性が高いこともあり、この点を打破するには時間を要することとなった。
SR-001はその後改良が加えられ、「SR-001MK2」としてロングセラーを記録。さらにSR-001MK2の接続端子をプロバイアス 5pin仕様とした「SR-003」も、SR-003MK2として生まれ変わった。これら“SR-001系”シリーズは20mmのコンデンサー型ユニットを搭載。MK2では防塵構造の見直しなどを図り、より信頼性が増した。一方で基本的な開放型構造にはいっさい手を加えることなく、そのまま2000年代のヘッドホンブームを迎えたのである。
その後ドライバーユニット部を刷新したSRS-002が誕生。時代はプレーヤーにポータブルアンプを加えて楽しむことが浸透しており、ドライバーユニットが必要というイヤースピーカーの特徴もハードルとならないほど市場は熟成していた。
そして2017年、“SR-001系”の音漏れを解消する提案として、密閉化できるカバーの試作が発表された。イベントなどで2種類の試作カバー&イヤーチップを聴き比べるデモを行い、製品化への意見を募った。その後も測定、試聴を幾度も繰り返し、試作も数十種類実施して完成したのが「CES-A1」だ。
■ポータビリティはもちろん音質のアップグレードも果たすアクセサリー「CES-A1」
CES-A1は密閉カバー「CC-A1」とイヤーチップ「ET-A1」がセットとなったアクセサリーである。
密閉カバー「CC-A1」は非対称レイアウトを採用し、中心軸をずらすことによってハウジング背後から放射される音を拡散、定在波の発生も抑え込んだ。これにより単なる密閉効果だけでなく、解像度の向上と優れた音像定位の再現性を獲得している。
内部に設けたリブは剛性を高めて不要な共振を抑制。さらにアルミ製ロゴプレート背後に設けた吸音スペースには吸音材を充填。これはカバー内の残響音コントロールのために設けられており、吸音スペースとの隔壁に設けられた無数の穴=開口部は音波通過時の消音を行い、振動膜への干渉を防いでいる。
イヤーチップ「ET-A1」はCC-A1を取り付けることで本体そのものが重くなり、付属の標準イヤーチップだけでは保持しきれないことを解消するために開発された。耳穴に接する部分は標準品同様の楕円形状として、幅広いリスナーの耳穴への適合性を高めている。
また外耳道の密着性を高めたことで、低音域の損失を抑制。耳介に接する部分はショートフック形状のシリコン素材を用いているが、耳穴に接する部分とは弾力性の異なる硬度として最適なフィット感、密着度の向上を図ったという。Sサイズは耳穴に接する部分が白色、Lサイズは同じ個所がグレーとなる。
“SR-001系”は、イヤホンとしてカナル形状を取り入れた初期のモデルであり、イヤーチップだけでは保持が難しい場合に備えヘッドバンド状のパーツ「アークAssy」が用意されていた。今回登場したET-A1を標準イヤーチップと交換することで、アークAssyがなくとも“SR-001系”ハウジングの装着性が格段に向上する。さらに外耳道の密着性が高まったことで、使い勝手のみならず音質改善も期待できる点は実に喜ばしい。