公開日 2019/11/29 06:40
2万円台で買える"オーディオファン向けのサウンドバー”。デノン「DHT-S216」レビュー
【PR】サウンドマネージャーが直々チューニング
デノンから、新サウンドバー「DHT-S216」が12月上旬に登場する(製品情報)。製品コンセプトは“ピュアでストレートなサウンドバー”。実売22,500円前後という手頃な価格ながら、同ブランドのハイエンド機も手掛けるサウンドマネージャー・山内氏によるチューニングを施している点、サラウンド/バーチャル処理などをバイパスして入力された音声信号をアンプに届ける「Pureモード」を備える点がユニークだ。
サウンドバーというと映画視聴向けというイメージが強いが、本機は2ch再生をベースに音作りを実施したという。つまり"オーディオファン向けのサウンドバー”とも言えるモデルなのだ。その実力を、海上 忍氏がチェック。リビングでの便利かつ高品位なリスニングスタイルも提案する。
■「テレビ」は単なる映像表示装置ではなく、多彩なソースの窓口に。
音再生に徹するサウンドバーが登場
昔も今もリビングの主役はテレビ、しかしその機能は大きく変化した。表示装置としての機能は言うに及ばず、アプリを利用して動画/音楽ストリーミングを受信したり、スマートフォンで撮影した動画や写真を鑑賞したりする機能が求められる現在、後付けされる「サウンドバー」の立ち位置が変化するのも当然だ。そして、この状況を見据えたかのようなサウンドバー「DHT-S216」がデノンから発売される。本機は「音」にこだわったという点が特徴だ。Android OS搭載テレビと組み合わせた環境でレビューしていこう。
■シンプルな外観、シンプルな機能。
ARC対応で利便性+48kHz音源のデジタル伝送も実現
このDHT-S216というサウンドバーは、単体で見たときの機能は比較的シンプルなもの。サブウーファー2基を内蔵する横幅890ミリ/高さ66ミリ/奥行き120ミリのワンボディタイプ、背面にはHDMI入力・出力端子を各1系統装備。4K/60p/HDCP 2.2パススルーとBluetoothにも対応、最近のサウンドバーの基本機能は一通り押さえているが、むしろ機能を絞り込んでいる節すら見受けられる。
その理由は「ARC」にある。ARC(Audio Return Channel)とは、HDMIが定める規格のひとつで、映像/音声データをHDMIケーブルで双方向伝送するというもの。テレビ側にもARC対応のHDMI端子が必須となるが、ケーブル1本でテレビ側の音声がサウンドバーに出力できる。
ARCの説明では、セットアップが容易になることのメリットが説かれることが多いが、48kHz/2ch(リニアPCM)をデジタル伝送できることを見逃してはいけない。音楽のソースはテレビ側に用意された音楽再生機能はもちろん、NetflixやAmazon Musicなどのアプリでもいいし、YouTubeという選択肢もある。この際、再生はテレビに任せ、サウンドバーは鳴らすことに徹すべし...DHT-S216という製品からは、そんな開発者の声が聞こえてきそうな雰囲気がある。
■高級機も手掛けるサウンドマネージャーが2ch再生を基本にチューニング
余計な経路を排する「Pureモード」も搭載
実際、DHT-S216の音へのこだわりはエントリークラスのサウンドバーでは突出している。その代名詞ともいえる機能が、新たに導入された「Pureモード」だ。
Pureモードを有効化すると、入力された音声信号はデコード後、アンプ段へ直接伝送される。デコード後のサラウンド処理・ヴァーチャル音声技術の処理をバイパスするため、音の純度がもっとも高まるという。Pureモードを基準に音決めするということは、すなわちステレオ/2ch再生がDHT-S216という製品の骨格であり、テレビや映画の音はその肉付けという考え方だ。
筐体も細部にこだわる。定在波の影響を最小限に留めるため、できるだけ平らな面をなくす工夫が施されているほか、音ヌケのために開口部を設けつつも剛性を確保できるよう最適バランスをとっているという。両サイドのバスレフポートにくわえ、背面/底面にもポートを設けるなど、低域の量感を確保するための工夫にも抜かりがない。
DENONブランドのサウンドマネージャーを務める山内慎一氏が、最終的な音質調整を担当していることもポイントだ。それだけ開発に気合が入っているといえるが、音決めなどの工程がハイエンドオーディオのそれに準じているわけで、念入りな検証が重ねられるとも解釈できる。実際、底面に取り付けられたゴム足の高さは、当初3ミリだったものが最終段階で6ミリに変更されたというエピソードもあり、「DENONの音」に対する一貫した姿勢が感じられる。
■繊細にして明快な音。テレビで音楽を聴くのはこんなに楽しい
試聴にはAndroid OS搭載のSONY BRAVIAを利用した。もちろんARCに対応しているので、1本のHDMIケーブルでつなげばセットアップ完了、あとはテレビ前の位置を微調整するだけ。DHT-S216の高さは66ミリと背は低めなため、おそらく大半のテレビで画面にカブることなく使えるはずだ。
まずはテレビ内蔵の音楽再生アプリを試してみる。テレビ側面のポートにUSBメモリを挿入しMusicアプリを起動すればOK、あっさり再生が始まる。MP3やAACなど圧縮音源からリニアPCM(WAV)、192kHzのFLACまでひと通り再生したが、テレビのリモコンで操作できるところがいい。テレビで音楽なんて...と言うことなかれ、アートワーク付きの曲は画面にアルバム画像が表示される楽しみがあるのだ。
その音は繊細にして明快。アコースティックギターはアルペジオの一音一音がくっきりと描かれ、倍音成分も心地よく伸びる。細かく刻まれるハイハットも団子状にならずメリハリを残しつつ、音の消え際がすっきり収束するところがいい。このあたり、筐体の剛性を気にかけつつ開口部を確保した成果だろう。ボーカルの定位が明瞭でテレビの画面中央に口もとが浮かぶところは、ステレオ/2ch再生を真摯に追求したサウンドバーだから為せる技だ。
それにしても、テレビを音楽プレーヤーとして使うのは悪くないアイデアだ。Google Playでネットワーク再生(DLNA)に対応したアプリを追加すればNASの音源を再生できるし、ストリーミングアプリを利用してもいい。Amazon Alexaに対応したテレビであれば、スマートフォンの「Amazon Music」アプリからキャストする(Alexa Cast機能)という使いかたもできる。DHT-S216はBluetoothにも対応するが、伝送がWi-Fi経由となるキャストのほうが音質的に有利だ。
YouTubeに多数アップロードされているPVも再生してみたが、これが予想以上に楽しめる。音とアルバムカバー画像だけでは、テレビの大画面が生かしきれず消費電力が惜しいような気もするが、YouTubeは「画と音」なだけにサウンドバーとの相性は抜群。DHT-S216のサブウーファーが本領を発揮し、スマートフォンやPCで見るときと比べると迫力は雲泥の差だ。ふだんYouTubeを主要音源にしている家人にこのシステムを見せれば、さぞや気に入るに違いない。
今度はUHD-BDプレーヤーを接続し、ディスク再生を試す。「プライベートライアン」のクライマックス付近は、炸裂する爆弾が大迫力。にわかにバー型とは思えない低域の量感と瞬発力は、75ミリ×2基のサブウーファーの働きもあるがバスレフポートの配置が奏功しているようだ。ドルビーアトモスのトレイラーソフト「Amaze」は、バーチャルサラウンドではあるが、眼前に広大な音場が形成されその中を葉が回転しながら落ちていくような印象。聞けば、バーチャライズの前段でデコードした音声を再構築するDENON独自の処理を行っているそうで、それが効果を発揮しているのだろう。
■音に一家言ある方にもお勧めできるサウンドバーだ
テレビの薄型化が進み、内蔵のスピーカーでは満足できる音質を得にくいことから人気を集めるサウンドバーというカテゴリ。製品開発競争の中で多機能化を指向する製品もあるが、このDHT-S216は「再生はテレビに任せ、音に徹する」という道を選んだ。
この価格帯でこの音質は、企画段階で製品のプライオリティーをどこに置くかが明確に決められていたからこそ実現できたに違いない。これからホームシアターに挑戦しようという人はもちろん、音に一家言ある方にもお勧めできるサウンドバーだ。
(協力:ディーアンドエムホールディングス)
サウンドバーというと映画視聴向けというイメージが強いが、本機は2ch再生をベースに音作りを実施したという。つまり"オーディオファン向けのサウンドバー”とも言えるモデルなのだ。その実力を、海上 忍氏がチェック。リビングでの便利かつ高品位なリスニングスタイルも提案する。
■「テレビ」は単なる映像表示装置ではなく、多彩なソースの窓口に。
音再生に徹するサウンドバーが登場
昔も今もリビングの主役はテレビ、しかしその機能は大きく変化した。表示装置としての機能は言うに及ばず、アプリを利用して動画/音楽ストリーミングを受信したり、スマートフォンで撮影した動画や写真を鑑賞したりする機能が求められる現在、後付けされる「サウンドバー」の立ち位置が変化するのも当然だ。そして、この状況を見据えたかのようなサウンドバー「DHT-S216」がデノンから発売される。本機は「音」にこだわったという点が特徴だ。Android OS搭載テレビと組み合わせた環境でレビューしていこう。
■シンプルな外観、シンプルな機能。
ARC対応で利便性+48kHz音源のデジタル伝送も実現
このDHT-S216というサウンドバーは、単体で見たときの機能は比較的シンプルなもの。サブウーファー2基を内蔵する横幅890ミリ/高さ66ミリ/奥行き120ミリのワンボディタイプ、背面にはHDMI入力・出力端子を各1系統装備。4K/60p/HDCP 2.2パススルーとBluetoothにも対応、最近のサウンドバーの基本機能は一通り押さえているが、むしろ機能を絞り込んでいる節すら見受けられる。
その理由は「ARC」にある。ARC(Audio Return Channel)とは、HDMIが定める規格のひとつで、映像/音声データをHDMIケーブルで双方向伝送するというもの。テレビ側にもARC対応のHDMI端子が必須となるが、ケーブル1本でテレビ側の音声がサウンドバーに出力できる。
ARCの説明では、セットアップが容易になることのメリットが説かれることが多いが、48kHz/2ch(リニアPCM)をデジタル伝送できることを見逃してはいけない。音楽のソースはテレビ側に用意された音楽再生機能はもちろん、NetflixやAmazon Musicなどのアプリでもいいし、YouTubeという選択肢もある。この際、再生はテレビに任せ、サウンドバーは鳴らすことに徹すべし...DHT-S216という製品からは、そんな開発者の声が聞こえてきそうな雰囲気がある。
■高級機も手掛けるサウンドマネージャーが2ch再生を基本にチューニング
余計な経路を排する「Pureモード」も搭載
実際、DHT-S216の音へのこだわりはエントリークラスのサウンドバーでは突出している。その代名詞ともいえる機能が、新たに導入された「Pureモード」だ。
Pureモードを有効化すると、入力された音声信号はデコード後、アンプ段へ直接伝送される。デコード後のサラウンド処理・ヴァーチャル音声技術の処理をバイパスするため、音の純度がもっとも高まるという。Pureモードを基準に音決めするということは、すなわちステレオ/2ch再生がDHT-S216という製品の骨格であり、テレビや映画の音はその肉付けという考え方だ。
筐体も細部にこだわる。定在波の影響を最小限に留めるため、できるだけ平らな面をなくす工夫が施されているほか、音ヌケのために開口部を設けつつも剛性を確保できるよう最適バランスをとっているという。両サイドのバスレフポートにくわえ、背面/底面にもポートを設けるなど、低域の量感を確保するための工夫にも抜かりがない。
DENONブランドのサウンドマネージャーを務める山内慎一氏が、最終的な音質調整を担当していることもポイントだ。それだけ開発に気合が入っているといえるが、音決めなどの工程がハイエンドオーディオのそれに準じているわけで、念入りな検証が重ねられるとも解釈できる。実際、底面に取り付けられたゴム足の高さは、当初3ミリだったものが最終段階で6ミリに変更されたというエピソードもあり、「DENONの音」に対する一貫した姿勢が感じられる。
■繊細にして明快な音。テレビで音楽を聴くのはこんなに楽しい
試聴にはAndroid OS搭載のSONY BRAVIAを利用した。もちろんARCに対応しているので、1本のHDMIケーブルでつなげばセットアップ完了、あとはテレビ前の位置を微調整するだけ。DHT-S216の高さは66ミリと背は低めなため、おそらく大半のテレビで画面にカブることなく使えるはずだ。
まずはテレビ内蔵の音楽再生アプリを試してみる。テレビ側面のポートにUSBメモリを挿入しMusicアプリを起動すればOK、あっさり再生が始まる。MP3やAACなど圧縮音源からリニアPCM(WAV)、192kHzのFLACまでひと通り再生したが、テレビのリモコンで操作できるところがいい。テレビで音楽なんて...と言うことなかれ、アートワーク付きの曲は画面にアルバム画像が表示される楽しみがあるのだ。
その音は繊細にして明快。アコースティックギターはアルペジオの一音一音がくっきりと描かれ、倍音成分も心地よく伸びる。細かく刻まれるハイハットも団子状にならずメリハリを残しつつ、音の消え際がすっきり収束するところがいい。このあたり、筐体の剛性を気にかけつつ開口部を確保した成果だろう。ボーカルの定位が明瞭でテレビの画面中央に口もとが浮かぶところは、ステレオ/2ch再生を真摯に追求したサウンドバーだから為せる技だ。
それにしても、テレビを音楽プレーヤーとして使うのは悪くないアイデアだ。Google Playでネットワーク再生(DLNA)に対応したアプリを追加すればNASの音源を再生できるし、ストリーミングアプリを利用してもいい。Amazon Alexaに対応したテレビであれば、スマートフォンの「Amazon Music」アプリからキャストする(Alexa Cast機能)という使いかたもできる。DHT-S216はBluetoothにも対応するが、伝送がWi-Fi経由となるキャストのほうが音質的に有利だ。
YouTubeに多数アップロードされているPVも再生してみたが、これが予想以上に楽しめる。音とアルバムカバー画像だけでは、テレビの大画面が生かしきれず消費電力が惜しいような気もするが、YouTubeは「画と音」なだけにサウンドバーとの相性は抜群。DHT-S216のサブウーファーが本領を発揮し、スマートフォンやPCで見るときと比べると迫力は雲泥の差だ。ふだんYouTubeを主要音源にしている家人にこのシステムを見せれば、さぞや気に入るに違いない。
今度はUHD-BDプレーヤーを接続し、ディスク再生を試す。「プライベートライアン」のクライマックス付近は、炸裂する爆弾が大迫力。にわかにバー型とは思えない低域の量感と瞬発力は、75ミリ×2基のサブウーファーの働きもあるがバスレフポートの配置が奏功しているようだ。ドルビーアトモスのトレイラーソフト「Amaze」は、バーチャルサラウンドではあるが、眼前に広大な音場が形成されその中を葉が回転しながら落ちていくような印象。聞けば、バーチャライズの前段でデコードした音声を再構築するDENON独自の処理を行っているそうで、それが効果を発揮しているのだろう。
■音に一家言ある方にもお勧めできるサウンドバーだ
テレビの薄型化が進み、内蔵のスピーカーでは満足できる音質を得にくいことから人気を集めるサウンドバーというカテゴリ。製品開発競争の中で多機能化を指向する製品もあるが、このDHT-S216は「再生はテレビに任せ、音に徹する」という道を選んだ。
この価格帯でこの音質は、企画段階で製品のプライオリティーをどこに置くかが明確に決められていたからこそ実現できたに違いない。これからホームシアターに挑戦しようという人はもちろん、音に一家言ある方にもお勧めできるサウンドバーだ。
(協力:ディーアンドエムホールディングス)