公開日 2022/01/13 06:30
真空管アンプはさらに“進化”する。トライオードの最新鋭機「EVOLUTION」、迫真の表現力
【特別企画】「KT88」のハードな表現を堪能
トライオードから登場した真空管プリメインアンプ「EVOLUTION」。出力管にKT88を搭載、「TRV-88SER」の上位機種に位置づけられるが、外観の仕上げは「MUSASHI」の意匠が継承されている。特徴的なのは電子ボリュームを初搭載したことに加え、リモコンによる電源のON/OFFに対応していること。「使い勝手」にもこだわったトライオードの最新モデルのサウンドをレポートする。
■トライオードの今後の方向性を示す意欲作
日本を代表する真空管アンプメーカーであるトライオードには数多くのモデルがラインナップされているのは周知の通り。そのような中、同社アンプのひとつの方向性を明示する新モデルが、2021東京インターナショナルオーディオショウで発表された。
その名は「EVOLUTION」。進化を意味する新コンセプトのプリメインアンプである。
真空管の構成は、KT88×4本、12AU7×2本、12AX7×2本で、AB級のプッシュプルで動作。定格出力は40W+40W(8Ω)で、入力端子はRCAインターコネクト端子のLINE入力が4系統、さらに入力セレクターとボリュームをバイパスできる、MAIN IN入力を1系統備え、パワーアンプとしても使用できる。
大きな特徴は3点ある。まず1点目はトライオードの真空管アンプとして初となる電子ボリュームを採用したこと。
これは、近年アナログボリュームの生産が減少したことに対応したためで、本モデルではJRC製(注:現在は日清紡マイクロデバイス)の最上位グレードのボリュームが採用されている。トライオードの山崎代表によると音質はアナログボリューム以上だという。また、電子ボリュームはギャングエラーが根本的に発生しないことも大きなメリットだと言える。
2点目はリモコンを搭載すること。これにより、リスニングポイントから電源のON/OFFや音量調整、ミュート、入力切り替えが可能になり操作性が大幅に向上した。
3点目はフロントパネルには視認性に優れた大型のディスプレイが搭載された斬新なデザインで、ボリューム数値や入力のポジションが表示される。
また真空管アンプとしての使い勝手も考慮され、シャーシ天面には、バイアスメーターとバイアス調整ボリュームが備えられており、メーターを確認しながらバイアス調整が可能だ。
■ジャズの熱い演奏が眼前に炸裂。ヴォーカルの口元もリアル
今回は試聴ソースにSACDとアナログを用いた。
まずはEVOLUTIONと対面。デザインは、定評のある同社の「MUSASHI」や「TRZ-300W」を踏襲しており、ブラックのシャーシに赤いLEDの表示部がかなり新鮮だ。シャーシ寸法は440W×210H×330Dmmで質量は30kgと流石に重量級である。
まずは、筆者のSACDジャズソースにおけるレファレンスの1枚、エリック・ミヤシロ『TIMES SQUARE〜Live at STB 139〜』を再生した。
トラック1の「BLUE BIRDLAND」が出た瞬間、「おお! これはいいぞ!」と思わず口に出る。演奏がとにかく熱い。スピーカーにはJBLの「HDI-3800」を使用したが、このHDIホーンからハイトーンのトランペットが眼前に炸裂し、バックとなるビックバンドの迫力もかなりのもの。EVOLUTIONがHDI-3800のウーファーをしっかり駆動している。僕は自然とボリュームを上げて聴き入ってしまった。
次に聴いた手島 葵のLP『Highlights from Simple is best』では、一聴してセンター定位するヴォーカルの口元がリアル。聴感上のS/Nも良く、前後の定位もよく分かる。バックミュージックの楽器はコントラストの描き分けがが素晴らしく、陰影のつけ方も自然だった。
◇
いかがだったろうか。EVOLUTIONは、電子ボリュームやリモコン、斬新的なフロントディスプレイによってユーザビリティが大きく向上している。
さらに多くの方がKT88真空管に期待するであろう、ハードな表現を持ちつつ、定評のあるMUSASHI譲りの分解能の高さやS/Nの良さも感じた。
「まさにこんな音が聴きたかった!」という感じの音がする真空管アンプで、今後のトライオードが展開していく製品の先駆けとなりそうな存在に嬉しくなってしまった。
■開発者の声:トライオード 代表取締役 山崎順一氏
EVOLUTIONは、トライオード四半世紀を越えて、新たな取り組みの基本となる製品です。ネーミングのごとく「進化」を基本としています。ソースのデジタル化が進む一方、ハードはというと、特に真空管アンプを含むハイファイ装置は音質にこだわりを注視しすぎて、ユーザー目線での「使いやすさ」に重点を置いた製品は少ないように思います。
リモコンで「電源」を入れられることや、表示の見づらさをデジタル表示にすることで解消しました。そして最大の進化は初のハイエンド電子ボリュームの採用です。これによりアナログボリュームの欠点を解消し、シャーシ内の信号回路の最短化と情報量の損失を限りなく少なくし、音楽空間の再現性に多大な恩恵をもたらしました。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・analog vol.74』からの転載です。
■トライオードの今後の方向性を示す意欲作
日本を代表する真空管アンプメーカーであるトライオードには数多くのモデルがラインナップされているのは周知の通り。そのような中、同社アンプのひとつの方向性を明示する新モデルが、2021東京インターナショナルオーディオショウで発表された。
その名は「EVOLUTION」。進化を意味する新コンセプトのプリメインアンプである。
真空管の構成は、KT88×4本、12AU7×2本、12AX7×2本で、AB級のプッシュプルで動作。定格出力は40W+40W(8Ω)で、入力端子はRCAインターコネクト端子のLINE入力が4系統、さらに入力セレクターとボリュームをバイパスできる、MAIN IN入力を1系統備え、パワーアンプとしても使用できる。
大きな特徴は3点ある。まず1点目はトライオードの真空管アンプとして初となる電子ボリュームを採用したこと。
これは、近年アナログボリュームの生産が減少したことに対応したためで、本モデルではJRC製(注:現在は日清紡マイクロデバイス)の最上位グレードのボリュームが採用されている。トライオードの山崎代表によると音質はアナログボリューム以上だという。また、電子ボリュームはギャングエラーが根本的に発生しないことも大きなメリットだと言える。
2点目はリモコンを搭載すること。これにより、リスニングポイントから電源のON/OFFや音量調整、ミュート、入力切り替えが可能になり操作性が大幅に向上した。
3点目はフロントパネルには視認性に優れた大型のディスプレイが搭載された斬新なデザインで、ボリューム数値や入力のポジションが表示される。
また真空管アンプとしての使い勝手も考慮され、シャーシ天面には、バイアスメーターとバイアス調整ボリュームが備えられており、メーターを確認しながらバイアス調整が可能だ。
■ジャズの熱い演奏が眼前に炸裂。ヴォーカルの口元もリアル
今回は試聴ソースにSACDとアナログを用いた。
まずはEVOLUTIONと対面。デザインは、定評のある同社の「MUSASHI」や「TRZ-300W」を踏襲しており、ブラックのシャーシに赤いLEDの表示部がかなり新鮮だ。シャーシ寸法は440W×210H×330Dmmで質量は30kgと流石に重量級である。
まずは、筆者のSACDジャズソースにおけるレファレンスの1枚、エリック・ミヤシロ『TIMES SQUARE〜Live at STB 139〜』を再生した。
トラック1の「BLUE BIRDLAND」が出た瞬間、「おお! これはいいぞ!」と思わず口に出る。演奏がとにかく熱い。スピーカーにはJBLの「HDI-3800」を使用したが、このHDIホーンからハイトーンのトランペットが眼前に炸裂し、バックとなるビックバンドの迫力もかなりのもの。EVOLUTIONがHDI-3800のウーファーをしっかり駆動している。僕は自然とボリュームを上げて聴き入ってしまった。
次に聴いた手島 葵のLP『Highlights from Simple is best』では、一聴してセンター定位するヴォーカルの口元がリアル。聴感上のS/Nも良く、前後の定位もよく分かる。バックミュージックの楽器はコントラストの描き分けがが素晴らしく、陰影のつけ方も自然だった。
いかがだったろうか。EVOLUTIONは、電子ボリュームやリモコン、斬新的なフロントディスプレイによってユーザビリティが大きく向上している。
さらに多くの方がKT88真空管に期待するであろう、ハードな表現を持ちつつ、定評のあるMUSASHI譲りの分解能の高さやS/Nの良さも感じた。
「まさにこんな音が聴きたかった!」という感じの音がする真空管アンプで、今後のトライオードが展開していく製品の先駆けとなりそうな存在に嬉しくなってしまった。
■開発者の声:トライオード 代表取締役 山崎順一氏
EVOLUTIONは、トライオード四半世紀を越えて、新たな取り組みの基本となる製品です。ネーミングのごとく「進化」を基本としています。ソースのデジタル化が進む一方、ハードはというと、特に真空管アンプを含むハイファイ装置は音質にこだわりを注視しすぎて、ユーザー目線での「使いやすさ」に重点を置いた製品は少ないように思います。
リモコンで「電源」を入れられることや、表示の見づらさをデジタル表示にすることで解消しました。そして最大の進化は初のハイエンド電子ボリュームの採用です。これによりアナログボリュームの欠点を解消し、シャーシ内の信号回路の最短化と情報量の損失を限りなく少なくし、音楽空間の再現性に多大な恩恵をもたらしました。
(提供:トライオード)
本記事は『季刊・analog vol.74』からの転載です。