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公開日 2022/02/17 06:35

独創的なホーンが聴かせる躍動感ある音世界。スピーカーを“革新”するアヴァンギャルドの秘密に迫る

【特別企画】小型化し設置性を大幅に向上
土方久明
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ここ最近、海外のハイエンドを中心とするスピーカーメーカーでは、ウーファー部にアンプを内蔵した「ハイブリッド型」のスピーカーをラインナップする傾向が増えつつある。中でも、独特の巨大なホーンを擁するドイツ・アヴァンギャルドは、ひと目見たら忘れられない強烈なインパクトと、手練のオーディオマニアをも唸らせる音質で、ここ日本でも非常に多くのファンを集めている。

今回、土方久明氏がアヴァンギャルドの輸入代理店を務めるエソテリックの試聴室を訪問し、中核モデルである「UNO FINO XD EDITION」を試聴することとなった。解説は、アヴァンギャルドの輸入担当も兼任するエソテリック株式会社の加藤徹也氏。土方氏はアヴァンギャルドのサウンドをどう評価するのか、その模様をレポートしよう。


エソテリックの試聴室にてアヴァンギャルドを試聴する土方久明氏(右)と、輸入を担当するエソテリックの加藤徹也氏(左)

Avantgarde「UNO XD FINO EDITION」


筐体はつや消しのブラック/ホワイトの2色をラインアップ。ホーンのカラーは10色から選択可能となっている。価格:2,860,000円(ペア/税込)
アヴァンギャルドのUNO XD FINO EDITIONは、先に発売された「UNO XD」をベースに、同社の最新技術である底面放射型ポートやシングルウーファーの採用によりコンパクトに進化させたモデル。トゥイーターに5インチ、ミッドレンジに20インチのスフェリカル(球面)ホーンが採用されたデザインが特徴的。トゥイーターには、独自のCPCネットワーク回路を搭載したOMEGAトゥイーターを採用。ミッドレンジは、18Ω OMEGAミッドレンジドライバー、ウーファーには、エアギャップ内の磁束密度を高め、磁力エネルギーの損失を防ぐアンダーハング構造のポールピースを備えたものが採用されている。


■デザインバランスに優れたホーンスピーカーシステム

ドイツのオーデンヴァルト地方に本拠地を構えるアヴァンギャルド・アコースティックは、1991年設立という比較的新しい歴史ながら、今や多くのオーディオファイルから高い評価を得る人気のハイエンドオーディオメーカーとなっている。

フラグシップシリーズの「TRIO XD」を頂点に、「DUO XD」「UNO XD」「ZERO XD」とラインナップも豊富だ。今回は、そんな同社の先鋭的なアンプ内蔵ハイブリッドモデル「UNO FINO XD EDITION」を、エソテリックの試聴室でクオリティチェックした。

UNO FINO XD EDITIONは、2016年に発売された「UNO XD」をベースにキャビネットの高さを約12センチ低くして、設置性を高めたモデルだ。まず、佇まいが本当に美しい。スクエアなキャビネットと美しいスフェリカル(球面)形状のホーンの組み合わせは、ベーシックな部分でのデザインバランスが完璧にとれており、オーディオマインドを刺激する。そして、本当にコンパクトになった。少し大型のトールボーイスピーカーにホーンが付いているようなイメージだ。

デザインが良く小型で設置しやすいため、自宅でも聴いてみたいと話す土方氏

ユニットは定評のあるUNO XDの内容を踏襲しており、25mm径のトゥイーターと、127mm径のミッドレンジユニットを搭載。トゥイーターには130mm径、ミッドレンジには500mm径のスフェリカルホーンという2つのホーンが装着される。

また、同社独自の技術として、ミッドレンジホーンには、ホーンの特性カーブにドライバーの特性をアキュレイトに適合させる「CDC(Controlled Dispersion Characteristic=放射特性コントロール)」と、強力なフェライトマグネットアッセンブリーによるミッドレンジホーンドライバーが組み合わせられる。

トゥイーターホーンには、同社独自の17Ωのハイインピーダンス・ボイスコイルと、たいへん軽量なマイラーフィルムのダイアフラムが組み合わされたドライバーユニットを採用。3kgもの重量級マグネットで駆動し、高ダイナミックレンジと下限1kHzまでの周波数レンジに対応するなど、技術的な注目点も多い。

そして250mm径のウーファーは、500Wの強力なXD-500パワーモジュールで駆動されるハイブリッド型で、DSPによるデジタルクロスオーバーネットワークにより帯域分割される。

ウーファーを駆動する500WのXD-500パワーモジュールアンプを1基搭載。高度なDSPによるデジタルクロスオーバーネットワークを搭載し、高精度な周波数コントロールをする

実は近年、海外ではハイエンドモデルを中心にハイブリッド型のスピーカーが増えており、多くのオーディオファイルからたいへん高い評価を得ている。その理由はズバリ音質。低域を内蔵アンプで駆動し、中高域を別のアンプで駆動する。つまりパワーや立ち上がりを要求される低域部分は、ウーファーとマッチングの取れたダンピングファクターに優れる専用アンプを用い、分解能や質感が音質ファクターを占める中高域に対して自由にアンプを選定できる。

話を戻すが、UNO XDに対し、UNO FINO XD EDITIONは底面放射のバスレフ型を採用している。また価格が大きく下げられていることも要注目だ。小型化と合わせ、これは「アヴァンギャルドのスピーカーを気軽に使って欲しいという」同社からのメッセージだと認識した。

■ジャンルを問うことなくさまざまな音楽に追随する

再生システムは、ネットワーク再生機能とプリアンプを搭載するエソテリックの先進的な「N-05XD」を中核に、同パワーアンプ「S-03」と組み合わせた。

試聴中の筆者。ESOTERICの「N-05XD」と「S-03」を組み合わせた。ホーンの中高域とアクティブ駆動された低域のスピードが揃っていることに驚く

女性ヴォーカル、ダイアナ・クラール『ディス・ドリーム・オブ・ユー』を再生すると、「やっぱり良いな!」と思わず声に出た。入力された音声信号への反応が良く、ホーンの良さが生きた浸透力ある音、彼女のハスキーで色気のあるヴォーカルが猛烈に訴えかけてくる。ホーンの中高域とアクティブ駆動された低域のスピードが揃っている事も特筆点。

山本剛トリオのDSD11.2MHz音源『Misty for Direct Cutting』は、分解能と音離れが良く、そこにホーンの音色がわずかに加わり、「キン!」というピアノの音色が絶品でこれが最高だ。

と、ここまでは従来アヴァンギャルドが得意とするジャズ系のソースだが、実はそれ同等に感銘を受けたのは、ポップスとクラシックを再生したときだった。男性R&Bアーティストのサム・スミスは、スピードのあるベースと等身大に音像定位するヴォーカルが印象的で、現代の楽曲への対応力の高さに感心する。アンドレア・バッティストーニ/東京フィルハーモニー交響楽団の『オーケストラ名曲集』では、眼前に広大なサウンドステージが出現。スケール感があり、同時に躍動感の強い音でもある。このスピーカーはさまざまな楽曲ジャンルを楽しめる。

■音楽的な魅力に溢れた完成度の高い音が得られる

エソテリックのフロントシステムと組み合わせて得られた音は、「まるでこのシステムで開発を行ったのではないか」と思える程に完成度が高く、一般的なラウドスピーカーではなかなか成し得ない音楽的魅力があった。

別途165,000円(税込)で突板をゼブラーノ/タイガーローズウッドに変更可能

また、低域の駆動は強力な内蔵アンプに任せ、無帰還の真空管アンプや、A級アンプと組み合わせてもいいだろう。しかもその場合は、超高能率という本スピーカーのストロングポイントがさらに生きてくる。ウーファー部はレベル、クロスオーバー周波数、10バンドのパラメトリックイコライザーが、本体背面のディスプレイとパソコンから調整可能で、設置環境の音響特性に合わせ低域の量を調整することもできるのだ。

ホーン型スピーカーというと、今までは比較的大きな専用ルームに設置するイメージを持っていたが、本機はデザインが良く小型で設置も容易。そしてアヴァンギャルドとしてはリーズナブルな価格設定も含め、とにかく導入しやすい。組み合わせるアンプによっては、途方もない音を出せる可能性を秘めており、オーディオと音楽の未来を切り開くスピーカーだと思う。

取材photo by 君嶋寛慶

(提供:エソテリック)

本記事は『季刊・Audio Accessory vol.182』からの転載です

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