PR 公開日 2024/03/15 06:30
さらに除電効果を高めた「NAZO STAT Version2」。大型カートリッジでも使用可能
サイズ違いのリング状カーボンを2種類添付
基本設計はそのままに、使い勝手を高めるべくリニューアル
ブライトーンが先頃発売した、ちょっと不思議な形のスタビライザー「NAZO STAT」は、2023年の4月に亡くなられた医師でオーディオ探究者の永瀬宗重(ながせ・そうじ)氏が最晩年に試作されたものを、永瀬氏と親交のあった同社の福林羊一代表が磨き上げて商品化したものだ。
基本はステンレス削り出しで、持ちやすいようにくびれをつけた円柱の下面へ薄い円盤を取り付け、その円盤はレコードの塩ビ面へ外周の円形で線接触している。その接触面からレコードの静電気をスタビライザー本体へ吸収し、突端へ取り付けられた角から空中へ放出するという考えの製品で、永瀬氏の原型へ福林氏がカーボンのシートを加え、より制振性が高まっている。
そのNAZO STATが発売早々にしてVersion2にモデルチェンジされた(以下NAZO STAT2)。その理由は想像に難くない。オリジナルの下面プレートは除電効果を最大化するためだろう、かなり大きく盤面へ張り出していて、最内周の無音溝が隠れてしまうくらいだった。ということは、ギリギリまで切ってあるレコードをSPUのような大柄のカートリッジで聴くと、両者が干渉して音溝の最内周まで届かないという現象が発生したのではないか。
そのためであろう、新型は下面プレートの外周がφ103mmへ縮小され、線接触の内周がレーベルの直径ジャストのφ100mmとされている。これで盤面へNAZO STAT2が当たらないということが発生することはほぼないと考えられる。実際にわがレファレンス盤へ載せてみたが、どれも問題なかった。
オリジナルのNAZO STATは、永瀬氏の試作品になかった工夫として前述のように天面と下面プレートの周囲へカーボンのシートが張られ、さらに制振性を高めている。今回のVersion2では、下面プレートのリング状カーボンを外径違いで2種類添付し、よりユーザー愛用のカートリッジへ干渉しにくいシートを用いるようにと配慮されている。
問題は、これらの変更点で音質や除電効果が変わるのか、変わるとするならばその幅はどれくらいか、ということであろう。このたび、少し時間をかけて試聴・実験することが叶ったので、結果をお伝えしようと思う。
スクラッチノイズの減少を確認。大型カートリッジでも問題なく使用できる
取材は自宅リスニングルームで行った。愛用のターンテーブルシート・オヤイデ「BR-12」と組み合わせて音を聴く。クラシックは、というよりまず1枚目のレコードへ針を落とした瞬間から、スクラッチノイズが極端に耳へ障らなくなっていることに気付く。これはオリジナルのNAZO STATでもまったく同じように感じたことで、これこそが除電の効果を最も端的に表す項目である。クラシックは清澄なホールの空気へ、艶やかで瑞々しい弦と抜けの良い管が織り合わせる音楽が染みわたっていくように響く。
片面をかけ終えると、やはり無音溝へ行く前にプレートとカートリッジが接触するが、この除電と制振の効果を得るために払う代償としては、個人的には大きなものではないと考える。手持ち盤の中から、結構内周まで切ってあるレコードを何枚かかけてみたが、ハウジングの大柄なオーディオテクニカ「AT33PTG/II」を使っても最内周まで全部聴き通すことができた。
続いてジャズの盤をかける。やはりスクラッチノイズはほとんど耳に障らず、普通にかけるとやや攻撃的なサウンドに聴こえるこの盤が、音の活気やカルテットが演り合う気合などを漲らせつつ、ピシリと決まったアタックと、ある種のジェントルさを味わわせるのが素晴らしい。音量を下げずに長時間聴いても聴き疲れしなくなるという、本質的な向上がなければ現出しない世界が呆気なく眼前に現れたのには感激した次第だ。クラシックで感じた高域方向のキャラクター差は、ジャズではほとんど感じさせない。
ポップスへ盤をかけ替えると、もともとかなりパワフルにガンガン歌い上げるタイプの歌姫が、ほんの僅かにおしとやかなたたずまいを獲得したように感じる。もっともっとボリュームを上げて聴いても耳へ障らない、そういうシグナルでもあろう。試しに音量を上げてみると、うむ、確かに歪み成分が耳へ届かなくなったのであろう、許容範囲が遥かに高まっている。こういうロックの盤のみならず、しっとりとした女性ボーカルなどでは、さらにこの持ち味が生きてくるのではないか。
このたびの仕様変更で、永瀬氏が遺されたNAZO STATはさらに高い汎用性を得たといって差し支えなかろう。「これを売り出して大儲けするんだ」と、生前の永瀬氏はいたずらっぽく微笑まれていた。そこまではいかないかもしれないが、より多くの人へこの音を体験してほしい、そんな感慨が強くなった今回の試聴だった。
(提供:ブライトーン)