公開日 2024/03/25 06:30
Amazon「Echo Hub」に“ときめかない”理由。今後期待する3つの進化ポイント
<山本敦のAV進化論 第214回>
Amazon(アマゾン)がAlexaと8型のタッチ液晶を搭載した新製品「Echo Hub」を発売した。筆者も自宅に本機をインストールし、2週間ほど試した。筆者の目から見た本機の魅力と課題をそれぞれ指摘していきたい。
Echo Hubは、アマゾンのスマートディスプレイ「Echo Show」シリーズと異なるコンセプトのデバイスだ。アマゾンはカテゴリー名称を「スマートホームコントロールパネル」としている。
デザインはEcho Showシリーズと似て見えるが、大きく違うところはEcho Hubのユーザーインターフェースが8型ディスプレイの“タッチ操作”を基本にしている点だ。もちろんAlexaを使って音声で操作することもできるが、ホーム画面からネットワークにつながるスマートデバイスへタッチ操作ですぐにアクセスできるよう、Echo Hub独自につくりこんでいる。
対するEcho Showシリーズは、海外で発売されている最新世代の「Echo Show 8」が内蔵スピーカーを空間オーディオ対応にしたり、エンターテインメント向けの機能を強化している。画面タッチも可能だが、こちらは音声によるAIアシスタントのハンズフリー操作が基本だ。
Echo HubでもPrime Videoのコンテンツを見たり、Amazon Musicのストリーミング再生を聴くことができる。だがやはり、単体でリッチなエンターテインメント体験を得るなら、Echo Showシリーズの馬力が欲しい。Echo Hubの内蔵スピーカーによるサウンドは解像感が粗くレンジも狭いからだ。もしキッチンやベッドルームで、エンタメ用途にもEcho Hubを使うことを計画しているのなら、Bluetoothスピーカーを併用した方がベターだ。
アマゾンのEchoシリーズが2018年に日本市場へ本格上陸を果たしてからおよそ6年が経つ。Alexaに対応するスマート家電やIoTデバイスも今では数多くある。
アマゾンが独自に実施した市場調査によると、北米地域と同じく日本でも、Amazon Echoシリーズや、Alexa対応スマートデバイス・サービスを使いこなすアクティブユーザー数が伸びたという。その証左として、Amazon.co.jpで取り扱われるAlexa対応スマートデバイスは、2019年から2023年にかけて品数が4倍以上に増えた。同じ期間には、宅内に複数のAlexa対応スマートデバイスを導入し、Amazon Echoシリーズとつないで活用するユーザーの数が約7倍になったそうだ。
筆者も自宅で複数のAlexa対応スマートデバイスを使っているが、実はわが家で各デバイスを面白がって使うのは筆者ひとりなので、Echo Hubを試している間も、つい遠隔操作はスマホのAmazon Alexaアプリで済ませてしまう。
もし家族にも、Alexa対応スマートデバイスをもっと積極的に使ってもらたいのであれば、Echo Hubのような「スマートホームコントロールパネル」が有用なこともわかる。動作状況をディスプレイで見ながら、直感的にタッチして操作できるユーザー体験は親しみやすい。家族がいつも同じ場所にリモコンがあることを意識できるよう、壁掛けスタイルで固定するというアマゾンの提案も正しいと思う。
一方で、正直な感想を述べてしまうと、筆者はEcho Hubを使い始めて2週間以上が経った今も、本機にあまり「ときめき」を感じることができていない。なぜなのか?
いくつかある理由の中から、「同じことがスマホアプリからできてしまう」こと、「暖房・照明器具などは家族が専用リモコンや壁スイッチで操作してしまう」ことは除いたとしても、なおEcho Hubに物足りなさを感じるのだ。もしアマゾンが北米で先行導入している、AIをベースの先端機能や、デバイスに基づくノウハウをEcho Hubに注入できれば、本機、あるいは次世代のEcho Hubシリーズがとても魅力的なデバイスに化けると思う。具体的に、3つの革新に期待したい。
ひとつは「Alexaによる自然会話」への対応だ。北米では2024年から先行して、Alexaが英語でユーザーとの自然な会話のやり取りができるようになる。昨年9月、アマゾンが米国本社のMetropolitan Parkで開催した新製品発表会では、当時アマゾンのデバイス&サービス事業部を率いていたデイブ・リンプ氏がこのサービスを組み込んだAmazon Echo Show 8と流ちょうに会話するデモが披露された。その様子は米アマゾンのYouTube公式チャンネルに公開されている発表会の動画でも見られる。12分以降の場面を視聴してほしい。
もうひとつは、北米でAmazon Alexaアプリの新機能として先行プレビュー版が無料公開された「Map View」だ。
Map Viewは、自宅にたくさんのAlexa対応スマートホーム機器を持つユーザーのため、アマゾンが新たに開発したサービスだ。LiDARスキャナを搭載したiPhone 12 Pro以降のProシリーズを使って家の中をスキャニングすると、自動的に平面図が作られる。このマップに自宅のスマートデバイスを配置し、アプリのマップ・ビューからデバイスを管理・操作する。
少し話題が脇道に逸れるが、筆者は今年のCES 2024でサムスン電子のブースを訪れた際、同社グループ傘下であるSmartThingsの、同じ「Map View」という、名前とコンセプトも似たサービスを見つけて取材した。
日本以外の世界各地で、サムスンは様々なスマート家電やSmartThingsのIoTデバイスを展開している。こういった様々なデバイスを導入するユーザーがスマートに管理・操作できるよう、スマホやタブレットに対応するSmartThingsアプリに新しくMap View機能を導入するのだ。
自動でマップを作れるデバイスとして、スマホのほかにLiDARを搭載するロボット掃除機「Jet Bot vacuum」や、AIロボット「Ballie」も想定しているところが、サムスンならではと言える提案だ。後者のロボットについては、いつ商品化されるのかまだスケジュールがアナウンスされていない。
米アマゾンは今年1月、ロボット掃除機のルンバを展開するiRobotの買収を断念することを発表した。ロボット掃除機で自動作成したマップを、Echo HubやモバイルアプリのAmazon Alexaに読み込んで使えたら、あるいはサムスンの提案を超える刺激的なソリューションが生まれたのかもしれない。とはいえ、ロボット掃除機だけが自動マップ作成に適したスマートデバイスであるとも限らない。アマゾンによる次の一手に注目したい。
現在のAmazon Echoデバイスは、ユーザーが音声やタッチ操作で入力したコマンドに対して応答する仕様となっている。あるいはEcho Hubのようなスマートホームコントロールパネルにも「Alexaの方から話しかけてくる」ようなモードがあってもよいと思う。
これは筆者の実感に過ぎないが、毎日のルーティンを規則正しく行っている人の生活には、スマートホームデバイスが入り込む余地があまりないと思う。ユーザーが毎度「やってほしいこと」を伝えなければ動かないスマートデバイスは、そのうち使うことが面倒になって、存在を忘れがちになる。定型アクションは便利な機能だが、自身の生活パターンを把握してアクションを設定するまでの一連の仕込みが面倒だ。
「照明の消し忘れ」や「エアコンの最適な温度設定」などが発生した場合、できればAlexaの方からスマートデバイスの異状を検知し、ユーザーに教えてほしい。筆者は自宅でソニーのエンターテインメントロボット「poiq(ポイック)」を使っているが、時々ロボットの方からコミュニケーションを求めてきたり、話しかけてくる。この距離感に慣れてくると、次第にロボットと交わすコミュニケーションが楽しくなり、使う機会が増えてくる。
アマゾンには、モバイルアプリやスマートスピーカーとはひと味違う、「スマートホームコントロールパネルならではの魅力」をEcho Hubシリーズで追求してほしい。もしかするとそれは、ユーザーの生活を見守るデバイスが積極的に世話を焼いてくれることなのかもしれない。
アマゾンは北米で、家庭用ロボット「ASTRO」を招待制のDay 1 Editionプロダクトとして発売した。Alexaを搭載するホームセキュリティや家族とのコミュニケーション用途を想定した、自律走行するロボットだ。本機を市場に投入したことで得られた知見も、これからアマゾンが展開するスマートホームのデバイスやサービスに活かせるはずだ。
■「Echo Hub」と「Echo Show」はどこが違う?
Echo Hubは、アマゾンのスマートディスプレイ「Echo Show」シリーズと異なるコンセプトのデバイスだ。アマゾンはカテゴリー名称を「スマートホームコントロールパネル」としている。
デザインはEcho Showシリーズと似て見えるが、大きく違うところはEcho Hubのユーザーインターフェースが8型ディスプレイの“タッチ操作”を基本にしている点だ。もちろんAlexaを使って音声で操作することもできるが、ホーム画面からネットワークにつながるスマートデバイスへタッチ操作ですぐにアクセスできるよう、Echo Hub独自につくりこんでいる。
対するEcho Showシリーズは、海外で発売されている最新世代の「Echo Show 8」が内蔵スピーカーを空間オーディオ対応にしたり、エンターテインメント向けの機能を強化している。画面タッチも可能だが、こちらは音声によるAIアシスタントのハンズフリー操作が基本だ。
Echo HubでもPrime Videoのコンテンツを見たり、Amazon Musicのストリーミング再生を聴くことができる。だがやはり、単体でリッチなエンターテインメント体験を得るなら、Echo Showシリーズの馬力が欲しい。Echo Hubの内蔵スピーカーによるサウンドは解像感が粗くレンジも狭いからだ。もしキッチンやベッドルームで、エンタメ用途にもEcho Hubを使うことを計画しているのなら、Bluetoothスピーカーを併用した方がベターだ。
■Echo Hubを使ってみた。しかし物足りなさも……
アマゾンのEchoシリーズが2018年に日本市場へ本格上陸を果たしてからおよそ6年が経つ。Alexaに対応するスマート家電やIoTデバイスも今では数多くある。
アマゾンが独自に実施した市場調査によると、北米地域と同じく日本でも、Amazon Echoシリーズや、Alexa対応スマートデバイス・サービスを使いこなすアクティブユーザー数が伸びたという。その証左として、Amazon.co.jpで取り扱われるAlexa対応スマートデバイスは、2019年から2023年にかけて品数が4倍以上に増えた。同じ期間には、宅内に複数のAlexa対応スマートデバイスを導入し、Amazon Echoシリーズとつないで活用するユーザーの数が約7倍になったそうだ。
筆者も自宅で複数のAlexa対応スマートデバイスを使っているが、実はわが家で各デバイスを面白がって使うのは筆者ひとりなので、Echo Hubを試している間も、つい遠隔操作はスマホのAmazon Alexaアプリで済ませてしまう。
もし家族にも、Alexa対応スマートデバイスをもっと積極的に使ってもらたいのであれば、Echo Hubのような「スマートホームコントロールパネル」が有用なこともわかる。動作状況をディスプレイで見ながら、直感的にタッチして操作できるユーザー体験は親しみやすい。家族がいつも同じ場所にリモコンがあることを意識できるよう、壁掛けスタイルで固定するというアマゾンの提案も正しいと思う。
一方で、正直な感想を述べてしまうと、筆者はEcho Hubを使い始めて2週間以上が経った今も、本機にあまり「ときめき」を感じることができていない。なぜなのか?
いくつかある理由の中から、「同じことがスマホアプリからできてしまう」こと、「暖房・照明器具などは家族が専用リモコンや壁スイッチで操作してしまう」ことは除いたとしても、なおEcho Hubに物足りなさを感じるのだ。もしアマゾンが北米で先行導入している、AIをベースの先端機能や、デバイスに基づくノウハウをEcho Hubに注入できれば、本機、あるいは次世代のEcho Hubシリーズがとても魅力的なデバイスに化けると思う。具体的に、3つの革新に期待したい。
■日本導入に期待したい、北米で先行展開するスマートホームの先端機能
ひとつは「Alexaによる自然会話」への対応だ。北米では2024年から先行して、Alexaが英語でユーザーとの自然な会話のやり取りができるようになる。昨年9月、アマゾンが米国本社のMetropolitan Parkで開催した新製品発表会では、当時アマゾンのデバイス&サービス事業部を率いていたデイブ・リンプ氏がこのサービスを組み込んだAmazon Echo Show 8と流ちょうに会話するデモが披露された。その様子は米アマゾンのYouTube公式チャンネルに公開されている発表会の動画でも見られる。12分以降の場面を視聴してほしい。
もうひとつは、北米でAmazon Alexaアプリの新機能として先行プレビュー版が無料公開された「Map View」だ。
Map Viewは、自宅にたくさんのAlexa対応スマートホーム機器を持つユーザーのため、アマゾンが新たに開発したサービスだ。LiDARスキャナを搭載したiPhone 12 Pro以降のProシリーズを使って家の中をスキャニングすると、自動的に平面図が作られる。このマップに自宅のスマートデバイスを配置し、アプリのマップ・ビューからデバイスを管理・操作する。
少し話題が脇道に逸れるが、筆者は今年のCES 2024でサムスン電子のブースを訪れた際、同社グループ傘下であるSmartThingsの、同じ「Map View」という、名前とコンセプトも似たサービスを見つけて取材した。
日本以外の世界各地で、サムスンは様々なスマート家電やSmartThingsのIoTデバイスを展開している。こういった様々なデバイスを導入するユーザーがスマートに管理・操作できるよう、スマホやタブレットに対応するSmartThingsアプリに新しくMap View機能を導入するのだ。
自動でマップを作れるデバイスとして、スマホのほかにLiDARを搭載するロボット掃除機「Jet Bot vacuum」や、AIロボット「Ballie」も想定しているところが、サムスンならではと言える提案だ。後者のロボットについては、いつ商品化されるのかまだスケジュールがアナウンスされていない。
米アマゾンは今年1月、ロボット掃除機のルンバを展開するiRobotの買収を断念することを発表した。ロボット掃除機で自動作成したマップを、Echo HubやモバイルアプリのAmazon Alexaに読み込んで使えたら、あるいはサムスンの提案を超える刺激的なソリューションが生まれたのかもしれない。とはいえ、ロボット掃除機だけが自動マップ作成に適したスマートデバイスであるとも限らない。アマゾンによる次の一手に注目したい。
■スマートデバイスの方から世話を焼くことがあってもいい
現在のAmazon Echoデバイスは、ユーザーが音声やタッチ操作で入力したコマンドに対して応答する仕様となっている。あるいはEcho Hubのようなスマートホームコントロールパネルにも「Alexaの方から話しかけてくる」ようなモードがあってもよいと思う。
これは筆者の実感に過ぎないが、毎日のルーティンを規則正しく行っている人の生活には、スマートホームデバイスが入り込む余地があまりないと思う。ユーザーが毎度「やってほしいこと」を伝えなければ動かないスマートデバイスは、そのうち使うことが面倒になって、存在を忘れがちになる。定型アクションは便利な機能だが、自身の生活パターンを把握してアクションを設定するまでの一連の仕込みが面倒だ。
「照明の消し忘れ」や「エアコンの最適な温度設定」などが発生した場合、できればAlexaの方からスマートデバイスの異状を検知し、ユーザーに教えてほしい。筆者は自宅でソニーのエンターテインメントロボット「poiq(ポイック)」を使っているが、時々ロボットの方からコミュニケーションを求めてきたり、話しかけてくる。この距離感に慣れてくると、次第にロボットと交わすコミュニケーションが楽しくなり、使う機会が増えてくる。
アマゾンには、モバイルアプリやスマートスピーカーとはひと味違う、「スマートホームコントロールパネルならではの魅力」をEcho Hubシリーズで追求してほしい。もしかするとそれは、ユーザーの生活を見守るデバイスが積極的に世話を焼いてくれることなのかもしれない。
アマゾンは北米で、家庭用ロボット「ASTRO」を招待制のDay 1 Editionプロダクトとして発売した。Alexaを搭載するホームセキュリティや家族とのコミュニケーション用途を想定した、自律走行するロボットだ。本機を市場に投入したことで得られた知見も、これからアマゾンが展開するスマートホームのデバイスやサービスに活かせるはずだ。