PR 公開日 2024/10/24 10:00
オープン型ヘッドホンの新スタンダード。オーディオテクニカ「ATH-ADX3000」速攻レビュー
傑作機「ATH-ADX5000」を踏襲
国産オープン型ヘッドホンの高級機として2017年の登場以来、国内外で評価されているのがオーディオテクニカ「ATH-ADX5000」だ。解像度が高く、色付けをせず正確に再生できる理想的なリファレンスの一つとして地位を確立している、オーディオテクニカのオープン型フラグシップである。しかし、音に惚れ込んでもその価格感から「憧れのアイテム」とするユーザーの声も多い。
そこでATH-ADX5000の持つ“真のオープンエアーヘッドホン”の魅力をより多くのユーザーに楽しんでもらえるよう、基本構造をそのまま受け継ぎながらも価格を抑えた「ATH-ADX3000」が登場することになった。今回、その最終サンプルを聴く機会を得たので、詳細とレビューをお届けする。
15年ほど前、海外ブランドから相次いでフラッグシップのオープン型モデルが登場し、ハイエンドモデルの標準機的存在として長年、リスナーのみならず、ライバルである他メーカーにとっても意識せざるを得ない状況が続いていた。ATH-ADX5000はまさにこうした海外ブランドのハイエンドオープン型に負けない、国産ブランドの意地をかけ開発された、渾身のフラグシップといえるだろう。
思い返せば、この時期の高価格帯モデルは15〜20万円前後であったと認識しているが、現在では、ATH-ADX5000を含め、各社フラグシップ機のメインターゲットとなるユーザーの要求に応えるモデルが開発されるにつれ、マーケット価格がさらに上昇しているという状況。結果的にマニア志向になったという印象を受ける。
そんな中新たに登場するATH-ADX3000は、オープンプライスであるが、市場想定は税込16万5千円前後という設定で、ATH-ADX5000から基本的な仕様を継承しながら、リーズナブルな価格を実現。非常にコストパフォーマンスが高い製品といえるだろう。ではいかにATH-ADX5000の技術を盛り込みつつ、価格を抑えることができているのか、ATH-ADX3000のプロフィールを紹介していきたい。
まず心臓部となるドライバー周りであるが、驚くことにタングステンコーティング振動板を備えた58mm口径ドライバーや、バッフル構造はほぼそのまま踏襲されている。しかし変わった点もあり、より様々な環境で鳴らしやすくするため、インピーダンスを420Ωから50Ωへと変更。これによりボイスコイルも新設計のものに置き換わった。磁気回路は価格面を抑えるため、パーメンジュールから純鉄ヨーク仕様へと変わっているが、振動板の素材や形状はATH-ADX5000から変わっていないという。
オープン型特有の音響空間や空気抵抗のない構造で、空気の流れをコントロールして、一定の空間を設けるため、バッフルダンパーとイヤーパッドの位置を見直し、耳からハウジングまでの音響空間をボイスコイルの位置で半分に仕切る構造とした、独自のコアマウントテクノロジーはそのまま継承した。
この他の変更点として大きいものは、フレーム筐体は金属素材から強度と軽量さを兼ね備える、エンプラ素材をメインとしたコンポジット材を採用。イヤーパッドもアルカンターラから、ベロア系素材となっている。こうした音質面や機構面での変更によって、重量も270gから約257gと軽くなり、装着時のストレスを軽減できるつくりとなった。
ハウジングパーツについても、ATH-ADX5000では職人の手により1枚アルミから削り出していたものから変更。本モデルでは試行錯誤の末、開口率はやや劣るものの、可能な限り近い開口率を維持しつつ十分な強度を持った比較的安価なパンチングを入手することができたという。
ケーブル着脱構造は引き続きA2DCプラグ方式の両出し式だが、ケーブルのシースは布巻きからタッチノイズを抑えるエラストマーシース仕様に変更。付属するハードケースもより取り回ししやすいコンパクトな樹脂製仕様のものとなっている。
試聴ではヘッドホンアンプにソニー「TA-ZH1ES」を用意し、まずはシングルエンド接続でATH-ADX3000を聴いてみた。ATH-ADX5000よりも幾分穏やかな印象で、中低域の落ち着き感のあるバランスに優れたサウンドである。キレの鮮やかさや、切り抜いたような明確な輪郭表現はATH-ADX5000よりは控えめであるものの、解像度や音ヌケの良さ、サウンドステージの正確さはきちんと継承。オーケストラの伸びやかさや、ボーカルの厚みといった点ではATH-ADX3000の方が硬さのない自然でスムーズな音運びであるように感じ、一層穏やかで聴きやすい音調だ。
秋山和慶指揮/日本センチュリー交響楽団『チャイコフスキー交響曲:第4番』ではダイナミックな音場、管弦楽器のハリの良さと太さのバランス、太鼓系の伸びの良さを実感でき、旋律の音運びもしなやかできつさがない。TOTO『タンブ』の「ギフト・オブ・フェイス」では、キックドラムのエアー感も素直に引き出し、豊かに張り出すベースのリッチさ、耳当たり優しいアタック感が心地よく感じる。
ギターサウンドの浮遊感、分離も良く、ボーカルのハリ感、シャープさも滑らかに表現。丁「呼び声」は、ボーカルの温かみあるボディの密度感、口元の動きも緻密に再現し、ハープやストリングスの質感も艶良くスムーズに描き出す。リッチなリズム隊はアタックを出しつつも弾力豊かなバランスでまとめ、躍動感も高い。
オプションの「AT-B1XA/3.0」(4ピンXLRバランスケーブル)へ差し換えて聴いてみたが、分離の良さと解像度が向上し、音場のクリアさ、低域のコントロールもよりリアルなものとなる。オーケストラの旋律は一層きめが細かくなり、余韻の伸びやかさ、楽器のボディ感の表現も的確に描写。ハーモニーの臨場感も増している。「呼び声」ではボーカルの口元のキレ、鮮度感が高まるとともに、ストリングスの分離も良くなり、情報量も増えたように感じられた。ベースの重心も一層深くなり、密度良く滑らかなサウンドに磨きがかかっている。
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ATH-ADX3000には “オーディオテクニカのオープン型を再定義する” という命題も込められており、これまでIEMで楽しんできたリスナーに対しても、オープンバックで楽しめる開放的で情報量豊かな音場体験を提供していきたいという、開発陣の思いが詰まったプロダクトだ。
近年高価格化が進む一方で、20万円以下の魅力的なオープン型ヘッドホンが少なくなっている。その空白を埋める存在としても、このATH-ADX3000は重要な役割を担っていくのではないか。長年寄り添っていける使いやすいサウンド、装着性を持った、オープン型のスタンダードリファレンスとして、定番モデルとなっていくだろう。
(提供:オーディオテクニカ)
そこでATH-ADX5000の持つ“真のオープンエアーヘッドホン”の魅力をより多くのユーザーに楽しんでもらえるよう、基本構造をそのまま受け継ぎながらも価格を抑えた「ATH-ADX3000」が登場することになった。今回、その最終サンプルを聴く機会を得たので、詳細とレビューをお届けする。
■オープン型傑作機を踏襲する素性。ATH-ADX3000の目指すものとは
15年ほど前、海外ブランドから相次いでフラッグシップのオープン型モデルが登場し、ハイエンドモデルの標準機的存在として長年、リスナーのみならず、ライバルである他メーカーにとっても意識せざるを得ない状況が続いていた。ATH-ADX5000はまさにこうした海外ブランドのハイエンドオープン型に負けない、国産ブランドの意地をかけ開発された、渾身のフラグシップといえるだろう。
思い返せば、この時期の高価格帯モデルは15〜20万円前後であったと認識しているが、現在では、ATH-ADX5000を含め、各社フラグシップ機のメインターゲットとなるユーザーの要求に応えるモデルが開発されるにつれ、マーケット価格がさらに上昇しているという状況。結果的にマニア志向になったという印象を受ける。
そんな中新たに登場するATH-ADX3000は、オープンプライスであるが、市場想定は税込16万5千円前後という設定で、ATH-ADX5000から基本的な仕様を継承しながら、リーズナブルな価格を実現。非常にコストパフォーマンスが高い製品といえるだろう。ではいかにATH-ADX5000の技術を盛り込みつつ、価格を抑えることができているのか、ATH-ADX3000のプロフィールを紹介していきたい。
まず心臓部となるドライバー周りであるが、驚くことにタングステンコーティング振動板を備えた58mm口径ドライバーや、バッフル構造はほぼそのまま踏襲されている。しかし変わった点もあり、より様々な環境で鳴らしやすくするため、インピーダンスを420Ωから50Ωへと変更。これによりボイスコイルも新設計のものに置き換わった。磁気回路は価格面を抑えるため、パーメンジュールから純鉄ヨーク仕様へと変わっているが、振動板の素材や形状はATH-ADX5000から変わっていないという。
オープン型特有の音響空間や空気抵抗のない構造で、空気の流れをコントロールして、一定の空間を設けるため、バッフルダンパーとイヤーパッドの位置を見直し、耳からハウジングまでの音響空間をボイスコイルの位置で半分に仕切る構造とした、独自のコアマウントテクノロジーはそのまま継承した。
この他の変更点として大きいものは、フレーム筐体は金属素材から強度と軽量さを兼ね備える、エンプラ素材をメインとしたコンポジット材を採用。イヤーパッドもアルカンターラから、ベロア系素材となっている。こうした音質面や機構面での変更によって、重量も270gから約257gと軽くなり、装着時のストレスを軽減できるつくりとなった。
ハウジングパーツについても、ATH-ADX5000では職人の手により1枚アルミから削り出していたものから変更。本モデルでは試行錯誤の末、開口率はやや劣るものの、可能な限り近い開口率を維持しつつ十分な強度を持った比較的安価なパンチングを入手することができたという。
ケーブル着脱構造は引き続きA2DCプラグ方式の両出し式だが、ケーブルのシースは布巻きからタッチノイズを抑えるエラストマーシース仕様に変更。付属するハードケースもより取り回ししやすいコンパクトな樹脂製仕様のものとなっている。
■オープン型の魅力を十二分に聴かせてくれるサウンドクオリティ
試聴ではヘッドホンアンプにソニー「TA-ZH1ES」を用意し、まずはシングルエンド接続でATH-ADX3000を聴いてみた。ATH-ADX5000よりも幾分穏やかな印象で、中低域の落ち着き感のあるバランスに優れたサウンドである。キレの鮮やかさや、切り抜いたような明確な輪郭表現はATH-ADX5000よりは控えめであるものの、解像度や音ヌケの良さ、サウンドステージの正確さはきちんと継承。オーケストラの伸びやかさや、ボーカルの厚みといった点ではATH-ADX3000の方が硬さのない自然でスムーズな音運びであるように感じ、一層穏やかで聴きやすい音調だ。
秋山和慶指揮/日本センチュリー交響楽団『チャイコフスキー交響曲:第4番』ではダイナミックな音場、管弦楽器のハリの良さと太さのバランス、太鼓系の伸びの良さを実感でき、旋律の音運びもしなやかできつさがない。TOTO『タンブ』の「ギフト・オブ・フェイス」では、キックドラムのエアー感も素直に引き出し、豊かに張り出すベースのリッチさ、耳当たり優しいアタック感が心地よく感じる。
ギターサウンドの浮遊感、分離も良く、ボーカルのハリ感、シャープさも滑らかに表現。丁「呼び声」は、ボーカルの温かみあるボディの密度感、口元の動きも緻密に再現し、ハープやストリングスの質感も艶良くスムーズに描き出す。リッチなリズム隊はアタックを出しつつも弾力豊かなバランスでまとめ、躍動感も高い。
オプションの「AT-B1XA/3.0」(4ピンXLRバランスケーブル)へ差し換えて聴いてみたが、分離の良さと解像度が向上し、音場のクリアさ、低域のコントロールもよりリアルなものとなる。オーケストラの旋律は一層きめが細かくなり、余韻の伸びやかさ、楽器のボディ感の表現も的確に描写。ハーモニーの臨場感も増している。「呼び声」ではボーカルの口元のキレ、鮮度感が高まるとともに、ストリングスの分離も良くなり、情報量も増えたように感じられた。ベースの重心も一層深くなり、密度良く滑らかなサウンドに磨きがかかっている。
ATH-ADX3000には “オーディオテクニカのオープン型を再定義する” という命題も込められており、これまでIEMで楽しんできたリスナーに対しても、オープンバックで楽しめる開放的で情報量豊かな音場体験を提供していきたいという、開発陣の思いが詰まったプロダクトだ。
近年高価格化が進む一方で、20万円以下の魅力的なオープン型ヘッドホンが少なくなっている。その空白を埋める存在としても、このATH-ADX3000は重要な役割を担っていくのではないか。長年寄り添っていける使いやすいサウンド、装着性を持った、オープン型のスタンダードリファレンスとして、定番モデルとなっていくだろう。
(提供:オーディオテクニカ)