公開日 2011/12/27 15:09
特別座談会:ビジュアルグランプリ「批評家賞」選出議事録 − 2011年優秀モデルはコレだ
今回で第12回目を迎えたビジュアルグランプリ「批評家賞」。貝山知弘氏、山之内正氏を始めとするビジュアルグランプリ審査員の投票により最優秀製品として選出されたのは、ソニーの4K対応SXRDプロジェクター「VPL-VW1000」とAVアンプ「TA-DA5700ES」だった。AV業界の今後を占う議論も含めて、批評家賞受賞製品が選ばれるまでの議事録を掲載する。なお、詳細な内容は「AVレビュー 2012年1月号」に掲載中なので、こちらもぜひご覧いただきたい。
【目次】
・第1部:2011年優秀モデルを選出する
・第2部:「失われた10年」を取り戻せ!
●優秀機続出のプロジェクター
言葉本来の意味において「AV」を両立したソニー
貝山 今回の批評家賞は映像系、音声系にそれぞれ分けて投票する方式を採用しました。結果的に同一メーカーが両部門のトップに輝いたのはある意味で非常に妥当な結果だと私は考えます。
製品としての進化を「オーディオ」そして「ビジュアル」両方で成し遂げているメーカーはソニーだけと言っても過言ではありません。ソニーが幅広い研究を行っている成果が「VPL-VW1000ES」「TA-DA5700ES」で結実したのです。
ややもすれば、ビジュアル側へのアプローチが偏りがちなメーカーが多い中で、「オーディオ&ビジュアル」本来の意味での貢献度が非常に高いメーカーがソニーだということでしょう。
林 特に、VPL-VW1000ESの業界に対する貢献度は大ですね。
貝山 他のメーカーへの励みになるはずです。
−− VPL-VW1000ESはネイティブ4K機であると同時に3D対応第2世代機でもあります。4Kフォーマットへのアプローチが他を圧する評価を獲得した理由だと思いますが、3Dムーブメントはまだまだ途上にあります。まずは2年近くが経過した「3D」に対するハード・コンテンツ両面からの総括を行っていただくことにしましょうか。
貝山 3D対応製品は各社ともに明るさの確保という課題に真摯に取り組んだ成果が現れつつあると思います。2010年モデルと比較するとその差は顕著です。階調やダイナミックレンジを確保することにもつながりますから、大変好ましい傾向だと言えるでしょう。ただ、厳しいことをあえて申し上げれば、本当に必要な明るさの100%を獲得するには至っていない。
岩井 平均的な水準としては、どれぐらいのレベルに達しているとお考えですか?
貝山 概ね70%ぐらいですね。求められるレベルの100%が獲得できれば、いわゆる一流館で『アバター』を観たのと同じような感動が家庭でも味わえるようになるはずです。メガネをかけて鑑賞する以上、家庭用プロジェクターに今まで以上の明るさを求めるのは必然です。そうしないとドラマの細部が見えてきません。作品そのものの生死にも関わる問題です。
−− 3D機として、その目標水準に近いものはありますか?
貝山 まず三菱のLVP-HC7800D、次にビクターのD-ILA一連の新モデルでしょう。
−− DLPを採用したメリットが三菱機の高評価に現れていますか?
貝山 そうですね。今まで表現しきれなかった『アバター』『Disney’sクリスマス・キャロル』の細部が三菱機では、はっきり見えていました。画の中で描き出される階調面での優位性も実感できました。
村瀬 クロストーク発生に関しては、反射型方式よりもDLP方式の方がより抑えることができます。開口時間がより多くキープできるので、同じ明るさのランプを用いた場合でも必然的にDLPの方が明るくなります。概ね2割ぐらいの違いがあるように感じます。
岩井 シャープもDLPプロジェクターを出していますが、両機種の差はどのあたりにあるとお考えですか?
村瀬 プロジェクターそのものの性能は、自分の印象はほぼイコールだと思います。ただ、決定的に差が出ているのはメガネの作り込みの差ですね。三菱機はクロストークの少なさ、明るさの確保というポイントでアドバンテージを発揮できているように感じます。
−− 透過型液晶の3D、つまりエプソン機の評価はいかがですか?
村瀬 エプソンはEH-TW8000とTW6000の2ラインありますが、TW8000の出来具合、特にコントラストの部分で特に感心させられました。ただ、クロストークの発生頻度に関しては、他方式よりも若干多めに感じます。480Hzでドライブする技術があるので第1世代モデルとして頑張っている印象はありますが、第2世代に突入した他社機と比べると、まだまだ改善の余地があると感じます。
大橋 ここまで話題に上がったのはすべて投写型プロジェクターです。直視型テレビについて3Dの仕切り直しが早くも求められた一年だったと思います。現実に私の周辺で3Dテレビを購入した一般ユーザーは「初めは好奇心でやっていたけど、メガネをかけるのが億劫ですぐにやらなくなってしまった」と口を揃えて話しますから。
・第1部:2011年優秀モデルを選出する
・第2部:「失われた10年」を取り戻せ!
「批評家賞」が選出されるまで 「批評家賞」は、VGP(ビジュアルグランプリ)の一部門。本賞以外の賞が全て販売店票が加味されているのに対し、「批評家賞」は専任審査員8名の投票のみで選出される。各人がビジュアル、サウンド分野それぞれで優秀製品ベスト3を選ぶ。1位票は5点、2位票は3点、3位票は1点とし、合計得票数が最も多い製品が「批評家賞」受賞モデルとなる。 (審議日:2010年10月22日) 審査員 貝山知弘(審査委員長)、山之内正(副審査委員長)、岩井喬、大橋伸太郎、折原一也、鴻池賢三、林正儀、村瀬孝矢 |
●優秀機続出のプロジェクター
言葉本来の意味において「AV」を両立したソニー
貝山 今回の批評家賞は映像系、音声系にそれぞれ分けて投票する方式を採用しました。結果的に同一メーカーが両部門のトップに輝いたのはある意味で非常に妥当な結果だと私は考えます。
製品としての進化を「オーディオ」そして「ビジュアル」両方で成し遂げているメーカーはソニーだけと言っても過言ではありません。ソニーが幅広い研究を行っている成果が「VPL-VW1000ES」「TA-DA5700ES」で結実したのです。
ややもすれば、ビジュアル側へのアプローチが偏りがちなメーカーが多い中で、「オーディオ&ビジュアル」本来の意味での貢献度が非常に高いメーカーがソニーだということでしょう。
林 特に、VPL-VW1000ESの業界に対する貢献度は大ですね。
貝山 他のメーカーへの励みになるはずです。
−− VPL-VW1000ESはネイティブ4K機であると同時に3D対応第2世代機でもあります。4Kフォーマットへのアプローチが他を圧する評価を獲得した理由だと思いますが、3Dムーブメントはまだまだ途上にあります。まずは2年近くが経過した「3D」に対するハード・コンテンツ両面からの総括を行っていただくことにしましょうか。
貝山 3D対応製品は各社ともに明るさの確保という課題に真摯に取り組んだ成果が現れつつあると思います。2010年モデルと比較するとその差は顕著です。階調やダイナミックレンジを確保することにもつながりますから、大変好ましい傾向だと言えるでしょう。ただ、厳しいことをあえて申し上げれば、本当に必要な明るさの100%を獲得するには至っていない。
岩井 平均的な水準としては、どれぐらいのレベルに達しているとお考えですか?
貝山 概ね70%ぐらいですね。求められるレベルの100%が獲得できれば、いわゆる一流館で『アバター』を観たのと同じような感動が家庭でも味わえるようになるはずです。メガネをかけて鑑賞する以上、家庭用プロジェクターに今まで以上の明るさを求めるのは必然です。そうしないとドラマの細部が見えてきません。作品そのものの生死にも関わる問題です。
−− 3D機として、その目標水準に近いものはありますか?
貝山 まず三菱のLVP-HC7800D、次にビクターのD-ILA一連の新モデルでしょう。
−− DLPを採用したメリットが三菱機の高評価に現れていますか?
貝山 そうですね。今まで表現しきれなかった『アバター』『Disney’sクリスマス・キャロル』の細部が三菱機では、はっきり見えていました。画の中で描き出される階調面での優位性も実感できました。
村瀬 クロストーク発生に関しては、反射型方式よりもDLP方式の方がより抑えることができます。開口時間がより多くキープできるので、同じ明るさのランプを用いた場合でも必然的にDLPの方が明るくなります。概ね2割ぐらいの違いがあるように感じます。
岩井 シャープもDLPプロジェクターを出していますが、両機種の差はどのあたりにあるとお考えですか?
村瀬 プロジェクターそのものの性能は、自分の印象はほぼイコールだと思います。ただ、決定的に差が出ているのはメガネの作り込みの差ですね。三菱機はクロストークの少なさ、明るさの確保というポイントでアドバンテージを発揮できているように感じます。
−− 透過型液晶の3D、つまりエプソン機の評価はいかがですか?
村瀬 エプソンはEH-TW8000とTW6000の2ラインありますが、TW8000の出来具合、特にコントラストの部分で特に感心させられました。ただ、クロストークの発生頻度に関しては、他方式よりも若干多めに感じます。480Hzでドライブする技術があるので第1世代モデルとして頑張っている印象はありますが、第2世代に突入した他社機と比べると、まだまだ改善の余地があると感じます。
大橋 ここまで話題に上がったのはすべて投写型プロジェクターです。直視型テレビについて3Dの仕切り直しが早くも求められた一年だったと思います。現実に私の周辺で3Dテレビを購入した一般ユーザーは「初めは好奇心でやっていたけど、メガネをかけるのが億劫ですぐにやらなくなってしまった」と口を揃えて話しますから。
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