• ブランド
    特設サイト
公開日 2022/08/25 06:40

ARグラス「Nreal Air」がiPhoneで利用可能に。大きな一歩だが課題も【Gadget Gate】

【連載】佐野正弘のITインサイト 第20回
佐野 正弘
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
AR(拡張現実)が注目を集めて以降、登場が期待されていた眼鏡型のARデバイス「ARグラス」。実用的なサイズのARグラスがなかなか登場せず、普及が進んでいないが、最近になってようやく、現実的なサイズ感で利用できるARグラスが登場しつつある。

国内でその代表例となっているのが、中国のNrealが提供するARグラスであろう。同社のARグラスが日本で投入されたのは2019年の「Nreal Light」だが、その後2021年に、機能をそぎ落としてより軽量・コンパクトさを実現した「Nreal Air」が一般販売されたことをきっかけに注目を集めることとなった。

NrealのARグラス「Nreal Air」。大画面でコンテンツを視聴することに特化し、大きめのサングラス程度の大きさに小型化したことで注目されている

軽量・コンパクトなARグラス「Nreal Air」

 

Nreal Airは約79gという軽さと、大きめのサングラスといった程度のサイズ感を実現したARグラスで、単体での利用はできず、スマートフォンなどに接続するかたちを取っている。ただしその分、サイズが大きいバッテリーや電力消費が大きいCPUなどを搭載する必要がなく、それが小型軽量化を実現できた大きな要因の1つとなっている。

とはいえ先にも触れた通り、Nreal Lightと比べると加速度センサーが6軸から3軸に減らされていることから、認識できるのは頭の動きくらいなので、本格的なARコンテンツの利用は難しい。そこでNreal Airは、ARコンテンツを利用するというよりも、動画やWebサイトなどを大画面で利用できることに主眼を置いた設計となっている。

Nreal Airで利用できるのは、1つは接続したスマートフォンなどの画面をそのまま映し出す「Air Casting」と、もう1つは、AR空間上に複数のアプリやウィンドウを並べて表示できる「AR Space」だ。前者はスマートフォンなどの画面をそのまま出力するだけだし、後者も複数のウィンドウが開けるとはいえ、その利用はWebサイトの閲覧やYouTubeなどの動画視聴が主となっている。

接続したスマートフォンなどの画面をそのまま出力するだけでなく、AR空間上にウィンドウなどを複数設置できる「AR Space」も利用できる

ただ、眼鏡型というデバイスの性格上、大きさが利用のしやすさに直結してくるのは確かだ。それだけに、機能を割り切って装着しやすいサイズ感に仕上げ、なおかつ価格も4万円前後と安くはないまでも、テクノロジーに興味のある人達が許容しやすい価格帯を実現したことが、Nreal Airが好評を得た要因となっているわけだ。

ただ、Nreal Airを利用する上で課題は少なからずあり、その代表例がiPhoneで利用ができないことだ。Nreal Airは、USB Type-C端子でスマートフォンなどと接続するかたちが取られている上、対応する機種も一部のAndroidスマートフォンのハイエンドモデルに限定されており、専用アプリ「Nebula」もAndroid版しか用意されていない。

しかしながら、日本ではiPhoneのシェアが非常に高く、Nreal Airに対応するハイエンドAndroidスマートフォンの利用者はかなり少ない。一方で、NrealがNreal Airを販売したのは日本が世界で最初であり、Airを販売し、携帯大手3社や大手家電量販店にまで販路を広げるなど、日本市場の開拓にかなり力を入れている。

新たに発表された専用アダプター「Nreal Adapter」

 

そんな中、同社が今回新たに発表したのが「Nreal Adapter」という周辺機器である。これは、HDMI端子に接続したデバイスの映像をNreal Airに出力できるようにするデバイスで、ゲーム機などさまざまな機器の映像を出力できることが特徴なのだが、最大のポイントはNreal AirをiPhoneで利用できるようにすることに主眼が置かれていること。実際Nreal Adapterは、アップルの「Lightning – Digital AVアダプタ」をぴったり装着できるサイズに設計されている。

画面下部の白いデバイスが「Nreal Adapter」。HDMI端子を備えておりゲーム機などの映像を出力できるほか、「Lightning – Digital AVアダプタ」経由でiPhoneの画面も出力できるようになる

Lightning – Digital AVアダプタをぴったり装着できる設計となっており、iPhoneでの利用を非常に強く意識していることが分かる

Nreal Adapterの提供で、Nreal AirがiPhoneで利用できるようになったことは、iPhoneユーザー、そしてNrealのビジネスを考えてもメリットは大きいといえるが、このNreal Adapterを装着した場合、Nreal Airの機能をフルに発揮できるわけではないことも覚えておく必要がある。

というのもNreal Adapterは、接続したデバイスの画面をそのまま映し出すAir Castingにしか対応しておらず、Androidデバイスを接続した時に使えるAR Spaceが利用できないのだ。

それに加えて、Nreal Adapterは8,980円、Lightning – Digital AVアダプタはアップルのオンラインショップの価格で7,980円となっている。iPhoneユーザーがNreal Airを利用するのに、追加で1万5,000円以上の出費が求められる上に機能が制限されるというのは、購入する側の立場からすると非常に悩ましい。

今後注目されるiOSへの対応

 

であれば、iPhoneにNreal Airを直接接続して利用できるよう、ハードやアプリの対応を進めて欲しいところでもある。実際Nrealは今回の発表で、今後macOS版のNebulaアプリを2022年9月中に提供し、MacでNreal Airをフル活用できるようにするほか、Windowsに関しても「全ての機種に対応させるのは困難」としながらも、いくつかの機種への対応を目指し、開発を進めていることが明らかにされている。

Android版に加え、新たにmacOS版の「Nebula」アプリの提供を予定しているという

では、iOS版についてはどうなのか。Nrealの日本法人である日本Nrealのマーケティングマネージャーである下高原沙也佳氏によれば、iOS版はアップル側の技術的制約などもあって、開発がなかなか進めづらい状況なのだという。

それに加えて、iPhoneユーザーが過半数を占める国が日本だけという事情も開発に影響しているそうで、世界的に主流であるAndroidを優先しているため、iOS向けの開発投資は足踏みしている状況とのことだ。

筆者の周辺を見ると、Nreal Airを購入したという人の多くはAR Spaceを使っておらず、Air Castingでスマートフォンやパソコンなどを大画面で見ているという人がほとんどで、そうした現状を考慮すると「Nreal Adapterを提供すれば十分」というのが正直なところなのかもしれない。だが今後、Nreal Airを軸としてARの利用拡大を広げていくことを考えると、やはりAR Spaceへの対応も欠かせなくなってくるだろう。

そうした将来を考えると、iOSへの対応は避けられないように感じるし、もしそれを避けるのであれば、VRゴーグルの「Meta Quest 2」のように独立したARデバイスとして展開し、独自OSやプラットフォームを搭載することも視野に入れる必要が出てくるだろう。

同社が今後どのような選択を取るのかは、AR市場の今後を占う上でも、重要なポイントになってくるといえそうだ。

※テック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」のオリジナル記事を読む

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 マランツ、未踏の領域へ。「次元が異なる」弩級フラグシップコンビ「MODEL 10」「SACD 10」レビュー!
2 JBL、楽天ブラックフライデーで人気完全ワイヤレスやサウンドバーが最大36%オフ。11/21 17時より
3 DAZN、登録なしで一部コンテンツを無料視聴できる新機能。11月導入予定
4 松村北斗と上白石萌音のW主演!PMSとパニック障害を抱える男女のかけがえのない物語
5 Sonos、ブランド初のプロ向けスピーカー「Era 100 Pro」発表。PoE採用で自由かつ簡単な設置を実現
6 妥協なきデノン “もうひとつの旗艦AVアンプ”。「AVC-A10H」がデノンサラウンドアンプのあらたな一章を告げる
7 iBasso Audio、初エントリーライン「iBasso Jr.」からポータブルDAC/アンプとイヤホンを発売
8 ケーブル接続の「バランス/アンバランス」ってつまり何?
9 ビクター“nearphones”「HA-NP1T」速攻レビュー! イヤーカフ型ながら聴きイヤホンを女性ライターが使ってみた
10 ビクター、実売5000円以下の完全ワイヤレス「HA-A6T」。耳にフィットしやすいラウンド型ボディ
11/18 10:32 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー193号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.194
オーディオアクセサリー大全2025~2026
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2024年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX