PR 公開日 2023/09/19 06:30
【集中連載】イヤホン イコライザー基礎知識:第5回「パライコの使いこなしノウハウ総合編」
ビクター「HA-FX150T」を例に解説
スマートフォンアプリから音質を細かくイコライジングできることも特徴であるビクターの完全ワイヤレスイヤホン「HA-FX150T」。ただ、イコライザーとは何者なのか? 理解しているようで実は少しあやふやな人もいるのでは? HA-FX150Tを例にとりながら、イコライザーの基礎知識や使いこなすコツを短期集中連載で解説します。
今回はいよいよ最終回!「周波数」「ゲイン」「Q」それぞれがどのように絡み合って音質に影響するのか? すべての項目を調整しての音質調整についてのポイントを紹介します。
【関連記事】
・第1回「イコライザーって何?」
・第2回「周波数設定の自由度こそパライコの強み」
・第3回「ゲインを調整すると音はどう変わる?」
・第4回「“Q”とは? 全体を狙うかピンポイントを狙うか」
この連載では今回までに、パラメトリックイコライザー、略してパライコの設定項目、
●周波数=どの周波数を中心に
●ゲイン=どれほどの増減量
●Q=どれほどの周波数幅
の基本を確認してきました。最終回となる今回はその設定項目すべて、そして複数のイコライジングポイントを使っての、総合的なイコライジングの考え方を紹介していきます。
パライコは奥深いもの。だからこそ使い始めの時点では選択肢をあえて絞り込み、シンプルに判断できるようにしておくのがよいでしょう。具体的には周波数・ゲイン・Qの設定をそれぞれ以下のように単純化してみるのがおすすめです。
<周波数は超低・低・高・超高域の4つの周波数帯で考える>
●8kHz超の超高域:音楽全体の空気感の抜けや広がりなど
●3〜8kHzの高域:様々な楽器の硬さや鋭さやアタックなど
●60〜200Hzの低域:ベース、ドラムスの太鼓の太さなど
●60Hz未満の超低域:ベースの超低音やホールの響きの深さなど
HA-FX150Tのパライコのイコライジングポイントは3つですので、上記から3つまでを選んで調整することになります。各帯域でのHzの数値設定はご自身のリファレンス的な曲を聴きながら詰めてみてください。例えば「3〜8kHzの高域」の幅の中でも、4kHzを増減させるのと8kHzを増減させるのでは変化のニュアンスが大きく異なります。そしてそのどちらがあなたにとってより好ましい変化であるかは、あなた自身の耳でしか判断できないのです。
<ゲインは±6dBで探ってから±4dB以内を基本に>
「ゲイン」はまず-6dBまたは+6dBの極端な設定に。すると周波数やQを動かした際の変化を聴き取りやすくなります。その状態で先に周波数とQを確定させてから、実際に適用するゲインに調整しましょう。
その実際のゲイン設定は±4dB以内での調整がおすすめ。±4dB以内までなら楽曲の雰囲気が変わり過ぎてしまうようなことは起きにくいからです。ですがそれで物足りなく感じるようなら±6dBまでフルに使うのもOK!
<Qは0.6のままを基本にする>
「Q」は当面はデフォルト設定「0.6」のままがおすすめ。幅をそれより狭くするとピンポイントで狙い撃つように精密な周波数設定が必要に。逆に広げると狙った楽器にとどまらず楽曲全体の雰囲気が大きく変わるようになってしまいます。どちらにしても初心者には少し扱いにくいのです。
以上を踏まえてもらった上で最後に、パライコの実践的な使い方を具体例を通して見てもらいましょう。設定テーマは「YOASOBI『アイドル』をよりディープ&ソリッドな低音で楽しむ!」です。
まずは「ディープ」な響きを引き出すために超低域を持ち上げます。スマートフォンアプリ「Victor Headphones」を起ち上げ、サウンドモード設定の[CUSTOM 1/2/3]のいずれかを選ぶと、周波数・ゲイン・Qを自由に調整できるポイントが3つ用意されていますが、まずはそのうちの(1)を周波数40Hz、ゲイン+4dBにしてみましょう。
このセッティングで聴いてみると、超低域につられて低域100Hz付近も一緒に持ち上がり、低音全体がボワンボワンとした緩いボリューム感になってしまっています。これでは「ソリッド」とは言えません。
ここでQを調整して対処するのもありですが、今回は違うやり方をしてみます。ポイント(1)の設定はそのまま、ポイント(2)を周波数80Hz、ゲイン-2.5dBにセッティング。
このようにポイント同士の周波数設定を近付けると、ポイント(1)のイコライジングカーブの高域側とポイント(2)のイコライジングカーブの低域側が重なって合成され、新しいイコライジングカーブが生まれます。ポイント(1)単体の赤細線のカーブは40Hzを中心に左右対称。対してポイント(2)と合成された太白線は右側のみが急峻に落ちる左右非対称のカーブになっており、40Hzから120Hzあたりまでの膨らみを抑え込めていることに注目です。2つのポイントの周波数を近づけることで左右非対称のカーブを作るこの設定方法は、パライコならではのテクニックのひとつと言えます。
これで再び「アイドル」を聴いてみましょう。すると超低域の「ディープ」な響きは適度に強調されつつ、低域の緩い膨らみは抑えられ「ソリッド」さも確保できています。これぞディープ&ソリッドです。ポイント(3)がまだ余っていますが、別に無理に使う必要はありません。イコライジングを最小限に済ませられるならそれに越したことはないのです。
パライコの実践的な使いこなしのイメージ、そしてパライコの奥深さは伝わりましたでしょうか?
しかしこれはほんの一例に過ぎません。ここから先のパライコの可能性はみなさん次第。曲に合わせて、その日の気分に合わせて、好みの変化に合わせて、様々なイコライジングをお試しあれ。
(提供:JVCケンウッド)
今回はいよいよ最終回!「周波数」「ゲイン」「Q」それぞれがどのように絡み合って音質に影響するのか? すべての項目を調整しての音質調整についてのポイントを紹介します。
【関連記事】
・第1回「イコライザーって何?」
・第2回「周波数設定の自由度こそパライコの強み」
・第3回「ゲインを調整すると音はどう変わる?」
・第4回「“Q”とは? 全体を狙うかピンポイントを狙うか」
パライコの使い方総合編
この連載では今回までに、パラメトリックイコライザー、略してパライコの設定項目、
●周波数=どの周波数を中心に
●ゲイン=どれほどの増減量
●Q=どれほどの周波数幅
の基本を確認してきました。最終回となる今回はその設定項目すべて、そして複数のイコライジングポイントを使っての、総合的なイコライジングの考え方を紹介していきます。
設定の幅をあえて絞り込んでシンプルに考える
パライコは奥深いもの。だからこそ使い始めの時点では選択肢をあえて絞り込み、シンプルに判断できるようにしておくのがよいでしょう。具体的には周波数・ゲイン・Qの設定をそれぞれ以下のように単純化してみるのがおすすめです。
<周波数は超低・低・高・超高域の4つの周波数帯で考える>
●8kHz超の超高域:音楽全体の空気感の抜けや広がりなど
●3〜8kHzの高域:様々な楽器の硬さや鋭さやアタックなど
●60〜200Hzの低域:ベース、ドラムスの太鼓の太さなど
●60Hz未満の超低域:ベースの超低音やホールの響きの深さなど
HA-FX150Tのパライコのイコライジングポイントは3つですので、上記から3つまでを選んで調整することになります。各帯域でのHzの数値設定はご自身のリファレンス的な曲を聴きながら詰めてみてください。例えば「3〜8kHzの高域」の幅の中でも、4kHzを増減させるのと8kHzを増減させるのでは変化のニュアンスが大きく異なります。そしてそのどちらがあなたにとってより好ましい変化であるかは、あなた自身の耳でしか判断できないのです。
<ゲインは±6dBで探ってから±4dB以内を基本に>
「ゲイン」はまず-6dBまたは+6dBの極端な設定に。すると周波数やQを動かした際の変化を聴き取りやすくなります。その状態で先に周波数とQを確定させてから、実際に適用するゲインに調整しましょう。
その実際のゲイン設定は±4dB以内での調整がおすすめ。±4dB以内までなら楽曲の雰囲気が変わり過ぎてしまうようなことは起きにくいからです。ですがそれで物足りなく感じるようなら±6dBまでフルに使うのもOK!
<Qは0.6のままを基本にする>
「Q」は当面はデフォルト設定「0.6」のままがおすすめ。幅をそれより狭くするとピンポイントで狙い撃つように精密な周波数設定が必要に。逆に広げると狙った楽器にとどまらず楽曲全体の雰囲気が大きく変わるようになってしまいます。どちらにしても初心者には少し扱いにくいのです。
YOASOBI「アイドル」をソリッドな迫力に仕上げる
以上を踏まえてもらった上で最後に、パライコの実践的な使い方を具体例を通して見てもらいましょう。設定テーマは「YOASOBI『アイドル』をよりディープ&ソリッドな低音で楽しむ!」です。
まずは「ディープ」な響きを引き出すために超低域を持ち上げます。スマートフォンアプリ「Victor Headphones」を起ち上げ、サウンドモード設定の[CUSTOM 1/2/3]のいずれかを選ぶと、周波数・ゲイン・Qを自由に調整できるポイントが3つ用意されていますが、まずはそのうちの(1)を周波数40Hz、ゲイン+4dBにしてみましょう。
このセッティングで聴いてみると、超低域につられて低域100Hz付近も一緒に持ち上がり、低音全体がボワンボワンとした緩いボリューム感になってしまっています。これでは「ソリッド」とは言えません。
ここでQを調整して対処するのもありですが、今回は違うやり方をしてみます。ポイント(1)の設定はそのまま、ポイント(2)を周波数80Hz、ゲイン-2.5dBにセッティング。
このようにポイント同士の周波数設定を近付けると、ポイント(1)のイコライジングカーブの高域側とポイント(2)のイコライジングカーブの低域側が重なって合成され、新しいイコライジングカーブが生まれます。ポイント(1)単体の赤細線のカーブは40Hzを中心に左右対称。対してポイント(2)と合成された太白線は右側のみが急峻に落ちる左右非対称のカーブになっており、40Hzから120Hzあたりまでの膨らみを抑え込めていることに注目です。2つのポイントの周波数を近づけることで左右非対称のカーブを作るこの設定方法は、パライコならではのテクニックのひとつと言えます。
これで再び「アイドル」を聴いてみましょう。すると超低域の「ディープ」な響きは適度に強調されつつ、低域の緩い膨らみは抑えられ「ソリッド」さも確保できています。これぞディープ&ソリッドです。ポイント(3)がまだ余っていますが、別に無理に使う必要はありません。イコライジングを最小限に済ませられるならそれに越したことはないのです。
パライコの実践的な使いこなしのイメージ、そしてパライコの奥深さは伝わりましたでしょうか?
しかしこれはほんの一例に過ぎません。ここから先のパライコの可能性はみなさん次第。曲に合わせて、その日の気分に合わせて、好みの変化に合わせて、様々なイコライジングをお試しあれ。
(提供:JVCケンウッド)